- 本 ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065273074
作品紹介・あらすじ
死後10年を経て再発見された、奇跡の作家。
大反響の初邦訳作品集、ついに文庫化!
2020年本屋大賞〔翻訳小説部門〕第2位
第10回Twitter文学賞〔海外編〕第1位
毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。
道路の舗装材を友だちの名前みたいだと感じてしまう、独りぼっちの少女(「マカダム」)。
波乱万丈の人生から紡いだ鮮やかな言葉で、本国アメリカで衝撃を与えた奇跡の作家。
大反響を呼んだ初の邦訳短編集。
何でもないものが詩になる、空前絶後の作家。
――川上未映子
そこに何が書かれているのか、長年考え続けることになるような短篇が並ぶ。
――円城 塔 「朝日新聞」(2019年8月11日付朝刊)より
読み終えるのが惜しくて惜しくて、一日一篇だけと自分に課していました。
いつまでも読み続けていたい一冊です。
――小川洋子
「パナソニック メロディアス ライブラリー」(TOKYO FM/JFN)より
人生はただ苛酷なわけでも、ただおかしいわけでも、ただ悲しいわけでも、ただ美しいわけでもなく、それらすべてであり、それ以上のものだ。それをわからせてくれるのが小説で、人生をそのように見る方法を提供するのが小説というものなのだ。ルシア・ベルリンの短篇は、それを私たちに教えてくれる。
――中島京子 「毎日新聞」より
彼女の鋭利で心地よい言葉は、私が何者だったかを思い出させる。
――深緑野分 noteより
救い難い状況、人の弱さや卑劣さをきっぱりと描き出す文章は、苦いユーモアとふてぶてしい気高さに満ちている。
――藤野可織 「信濃毎日新聞」より
自分を突き放したクールさがある。一読して、うわ、かっこいいなと思った。
――山内マリコ 「日本経済新聞」より
※「朝日新聞」からの引用箇所については、朝日新聞社に無断で転載することを禁じる(承諾番号22-0742)
感想・レビュー・書評
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ルシア・ベルリン
『掃除婦のための手引き書』
2020年本屋大賞翻訳部門第2位
第10回Twitter文学賞(海外編)第1位
大変申し訳ないが、掃除婦のハウツー本か何かだと思っていた
全く違っていて、著者の波瀾万丈な人生に根ざした、24篇の短編集だった
それも死後10年にやっと評価されたものだった
翻訳ものだからなのか、度々出てくる独特な比喩表現や文体になかなか馴染めず、個人的に読みやすいものと読みにくいものに分かれてしまった
しかしながら、今なんて言った?!と一瞬聞き逃してしまいそうな程サラッとしたユーモアのある表現が面白かった
ルシア・ベルリン、アラスカ生まれ
アメリカ西部の鉱山町、エルパソ、チリ、メキシコ、アリゾナ、ニューメキシコ、ニューヨークとたくさんの場所に住み移る
掃除婦、看護師、病院の事務員、シングルマザー、女性教師、電話交換手と様々な顔を持つ
三度の離婚と結婚、息子が4人
アルコール依存症
本人も祖父も母も叔父もみんなである性的虐待、孤独だった幼少時
面白かった話は、
『どうにもならない』
『セックスアピール』
『ドクターH.Aモイニハン』
『エルパソの電気自動車』
まるでコメディ映画を観ているかの様だった
『どうにもならない』
アルコール依存症なので、発作が起こるとそれこそ『どうにもならない』
酒屋が朝開店するのを必死に耐えながら待ち、息子達が起きる前にウォッカを買いに行くその姿は死に物狂いなのだが、何故かおかしい
植え込みや木の幹につかまり、歩道のひび割れを数えながら、よろよろと失神寸前に酒を手に入れる
『エルパソの電気自動車』
スノーデンさんの運転は制限速度すら出せない、しかも道路の真ん中を走る
パトカーに停められ注意されると、そんなに出せないと逆に怒る
それに左折という行為が出来ない
真っ直ぐか右折しか出来ないので、
目的地になかなか着かない
だから乗車していた著者は、尿意を我慢できずにもらしてしまう
他の話は孤独や死別、貧困、確執等といった話が多かったが、悲劇を悲劇として感じさせない著者の強さを感じた
読み終えた今、私もこの人の様に人生の短編集を描くとしたら、何を選ぶだろうかとふと考えてみた詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブクログのレビューをはじめ、各所から絶賛の本作。
しかしながら、びっくりするほどわたしには合わなかったようだ。
それは読み進めても変わらず、久々の断念…
わたし自身が年度末で多忙だったせいなのか、前に読んでいた『黄色い家』が素晴らしすぎたせいなのか、受賞作品がこれ程合わない自分の感性を疑う。
また気分が乗ったら読もうかな。
この作品を読む少し前、ダメンズを断ち切って以来初めて、やっとこんな気持ちになれたな~という人に出会ったのですが、どうやら失恋したようです。
それも相まって。
今回は断念。次へいこう。
でもすき。 -
アルコール依存症一家に生まれ、アメリカ合衆国、チリ、メキシコと居住地を転々としながら、2度の離婚、3人の夫、4人の子ども達と駆け抜けてきた著者ルシア・ベルリンの起伏に富んだ人生を下地にした短編集。
正直、何を読み取るべきかは暗黙的で、単純なエンターテイメントというよりはいささか文学的。
巻末で熱烈な賛辞を贈るリディア・デイヴィス氏、訳者あとがきで同様に褒め称える岸本佐知子氏ほどの感性をもっていない自分には、それほどまでの一編一編、一文一文の熱量を感じとることはできなかった。
ただ、物語ひとつひとつが著者の人生に基づくものという背景を踏まえつつ、順不同で現れる年代をつなぎ合わせながら読んでいくと、”これが1人の人生!?なんて人生なんだ”という興味深い想いを得るし、ざらついた剥き出しの表現の中のそこここに散らばる感情のかけらに出会うと何とも言えない胸の詰まる思いがするのは確か。
全体としての読書体験が味わい深い系の一冊。 -
2020年本屋大賞(翻訳小説部門)第2位。
少し前にずっとランキングに入っていたので「読みたい」に入れていたが、ようやく行きつけの中古本屋で見つけた。
姪の結婚式に行って帰る新幹線の中で読み進む。
家庭の事情で色んな土地・国に移り住み、祖父も祖母も父も母も妹も強烈な個性の家族の中で育ち、長じてからは男と一緒になって別れてを繰り返し、様々な職業を経験しながら4人の息子を育てる、といった作者そのものの実人生を題材にしたお話の数々。
私には、面白いと思えたものとそうでもなくやや退屈に感じたものが取り混ぜてあった。
アルコール依存症の生活を描いた3編(「最初のデトックス」「どうにもならない」「ステップ」)、コインランドリーが出てくる2編(エンジェル・コインランドリー店」「今を楽しめ」)、彼女を躍起になっていい子にしようとしたシスターと先生が出てくる2編(「星と聖人」「いいと悪い」)が印象に残る。
「セックス・アピール」と「わたしの騎手」も好き。
おしなべて、悲惨なことでもさらりとした語り口でユーモアやちょっとした笑いを感じさせるところが良かった。
結婚式の中で、姪のこれまでの生い立ちを紹介する写真の中に亡くなった父や幼かった頃の息子の姿を見つけて、何だか胸が一杯になった。
作者に比べるべくもない全く平凡な人生だけれども、それでもこうやって切り取ると自分にも結構色んなことがあったんだなぁと思わされた。 -
ルシア・ベルリンの24の短篇。
私は「すべての月・すべての年」に続いて2作目。
とりわけ変わった設定ではなく、1900年代半ばの普通の生活がベースになっている短篇。
一度に全部読んだらすぐに忘れちゃうかなと思いきや、随分とずっしりとした読後感。
軽くて面白い短編集はたくさんある。
しかしこれはずっしりと面白い短編集。
これは何に因るものなのかなあと考えてみたのだけれども、まずは空気の重さまで感じられるようなリアリティ。
実体験をベースにしているものが多いと聞いてなるほどと思うと同時に、実体験を扱えばすべてこのようなリアリティが出るかと言ったらそうはいかない。
場面、表情、行動の切り取り方が素晴らしいのだ。文章のひとつひとつ、そして文章の組み合わせによって意識的にこの雰囲気を作り出しているのだから、唸らされる。
私もメキシコにいて、当時を生活しているかのような気持ちにさせられる。楽しい。
そしてもう一点は、語り手の現在の行動に説得力を持たせる過去。
ほとんどすべての作品の語り手には、過去がある。そしてその過去が間違いなく現在に影響を与えている。
その過去があっての今なのだなという納得感は、物語を楽しむ上で重要なのだが、これが絶妙である。
短篇のなかで、限られた枠のなかで、端的に、かつ印象的に過去を記述する。
それが台詞だったり、行為だったり、景色だったり。とにかく過去を印象づける。絶妙に。
とにかく高い技術によって、日常の話が大勢の人間に絶賛される物語に昇華されているのは見物。
そしてそんな難しく考えなくても、楽しく読める。
「なんかよくわからないけど、おしゃれっぽいし楽しい」っていうのでも良い。手に取ってみて欲しい。 -
原作はもちろんのこと、自分が読んだ邦訳が素晴らしいのだろう、リズムがとても心地よい。いつか原文にもチャレンジしてみたい。
知性と環境とユーモアと好奇心‥‥どれだけの幸運が重なったら、作者のような文章を紡げるようになるのだろう? 至福の時間でした。 -
衝撃的な映画を見ているよう。
都度、映画が脳内再生されるのだ。
衝撃的で奇抜、過酷なのに、ルシアのユーモアな文章がお話を華やかに、軽快にする。
ルシアの人生の壮絶さを読後に悟ってしまうくらい印象的で、何度も読み返したく、クセになる。 -
この本を手にとった人は、まず、2つのことに強く興味を惹かれる。1つは、表紙写真のルシア・ベルリンの美貌に。もう1つは、帯に書かれた彼女の人生の波乱万丈ぶりに。
1936年アラスカ生まれ。父の仕事の関係で、北米の鉱山町やチリで育つ。3度の結婚と離婚を経て、シングルマザーとして4人の息子を育てる。学校教師、掃除婦、電話交換手、看護助手として働く一方、アルコール依存症に苦しむ。2004年逝去。
2015年、彼女の全作品の中から43編を選んだ作品集”A Manual for Cleaning Women”が米国で発売され、評判となった。本書はその中から24編を選んで翻訳されたものである。小説は、ほぼすべてが彼女の経験をベースにしている。
本書を実際に読んだ人は、更に2つのことに驚く。1つは、彼女の人生が想像以上に波乱万丈であったことに。さらには、それを客観的な、時にユーモラスな語り口で物語に仕立てる彼女の作家としての腕前に。
アルコール依存症時代、夜中にどうしてもお酒を飲まずにいられなくなり、夜明けを待って、4ドルを握りしめて酒屋に45分かけて歩いて行く。お酒を飲み落ち着きを取り戻し、帰宅し洗濯を始めたところに2人の息子が起き出してくる。学校に出かける2人を送り出したあと、彼女は自宅近くの角の酒屋に向かう。「どうにもならない」という題名の短編に書かれたこのような強烈なエピソードが続く。彼女の人生は、想像を超える波乱万丈ぶりなのだ。
そういった物語を語る語り口にも強い印象を受ける。貧困や死やアルコール依存症といった悲惨な話を題材にしている短編が多いが、そこに愚痴っぽさや、後悔が全く感じられない。「楽しい思い出を語っているかのように」とは言い過ぎになるが、そのような独特な語り口は、彼女の物語にリアリティと活気を与えている。
「まるで小説のような人生」ではなく、人生を語っていたら自然に小説になっていた。そんな印象の短編集だった。 -
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「掃除婦のための手引き書」ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳|日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai....「掃除婦のための手引き書」ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳|日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/3045232022/05/06
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