10分で名著 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065280492

作品紹介・あらすじ

『資本論』『源氏物語』など、手を出したものの挫折してしまった本の読みどころを、古市くんが第一人者に尋ねる、最強の読書ガイド!

感想・レビュー・書評

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  • 読書ガイド本。確かに、世界中の図書を読破したいと思った事はある。それで真理に辿り着けるのではないかと。しかし、物理的に読破は無理な上に、書物もピンキリで、質にこだわらねば無限に出版する事も可能なため、読まなくても良い本が多いという事に気づいた。また、同じ論点を違う言い方で表現している本も多い。今はマイペースに好きに読めば良いという境地だ。

    本著で紹介されるのは『神曲』『源氏物語』『相対性理論』『社会契約論』『わが闘争』『古事記』などの、誰もが一度は聞いた事のあるだろう共通言語、共通概念になり得る古典だ。人類の多くが頭にデコードした名著を、その一員としてインストールする感覚は悪くない。また、それが悠久の時を経て、過去の人類とも感覚共有できるのは、まさに至福な時間である。

    この著者はガイド本なので、ただの入り口。名著の歩き方、のような役割。また、識者との対談形式で解説が為される為に読みやすい。小難しい古典初心者にもオススメできる本だ。

  • 興味がない本についても頑張って読んでみたけど、
    やはり読んでみたいとは思えなかった。

     12冊の本の紹介があり、一番、そして私にとって唯一興味を持てたのは、ニーチェの『ツァラトゥストラ』でした。

    抜粋…
    ○ニーチェの思想は、不遇な人間、苦しみを生きる人間に対する深い智恵、として読まないと値打ちはないと思います。
    ○ニーチェは、どうやってニヒリズムに対抗するかということを誰より真剣に考えた哲学者です。
    ○現代では、何かが喪失したニヒリズムではなく初めから何もないメランコリー状態です。

    ルサンチマン(怨みや嫉妬に根ざす復讐心)や生きる意味を見失うニヒリズムに陥らずに、自己変革を続けなければいけない。というのがこの本でニーチェが一番伝えたかった事らしいです。

    日々にうんざりして、ルサンチマン、ニヒリズム、見事に陥ってるなぁ…と思い当たり、こんな昔の人が既に、そうなりがちだが、ダメだぞ!と言っているとは、びっくりでした。

    他の本についてはあまり面白く感じなかったのですが、古市さんが、無知なふりをして研究者に質問するけれど、実はしっかり読んで勉強しているのがよくわかり、なんだかその健気さが可愛らしく感じました。

    カミュの『ペスト』に関しての章だけ、何故に内容よりカミュ自身に固執した質問が多いのだろう?と気になりました。

  • ●なんだか最近は大人しい古市氏、久しぶりに読んだ。
    ●タイトル通りサクッと読めるね。丁寧な解説になってるからどれも面白い。読みたい気にはなったけど、やっぱりエネルギーを使うし、当面は積読を処理していくんだろうなあ。
    ●東さんも社会契約論で対談していて驚き。そういやゲンロンカフェでも古市氏のことを揶揄はすれど嫌ってまではいなかったな。
    ●年末にやっていた著者の日本のジレンマが懐かしい。公開収録によく参加したなあ。

  • 相対性理論や資本論など、歴史に名を残す有名な名著に挑戦しつつ、挫折した人も多いと思う。私もその一人だ。この本はそれらの名著の要約と、専門家による解説、そして古市さんとのフランクな対談記事により、まるで動画を観ているような感覚で記憶に定着させられる。(岡田斗司夫さんの解説とNewsPicksの落合さんの対談をミックスさせたイメージだ)
    もちろん原本を読むにこしたことはないのだが、今はやりのタイパを十分すぎるほど体現した一冊である。

  • 『感想』
    〇名著って何を言うのか。それはともかく少なくとも名前は知っている12の名著を語る。

    〇古い時代の本は、言葉がわかりずらいこともあるが、理解しずらい一番の原因は、その時代背景や読者が知っていること前提の知識を自分が持っていないことだと思う。この辺りを本著では解説してある。

    〇原文を読まなければ(もっと言えば本人が書いた言語本を読まなければ)著者本人が言う真理にはたどり着けない。しかしその助けをしてくれる解説書的な本がいくつもある。それは確かに訳者の考えが入ったものではあるが、それでも真理に近づくことができるし、興味を持つきっかけにもなる。

    『フレーズ』
    ・ダンテより少し前ぐらい(1300年頃)から、ヨーロッパでは都市文化が起こり始めるんですね。それまでの農村がメインの社会では、時間は季節のように円環するものでした。
    (略)春が毎年やってくるように、人間もこの世界にまた戻ってくるんですね。そういう時間感覚のなかでは、「個人」という概念は生まれません。(略)『神曲』で描かれているのは、そういった当時の個人というあり方なんです。(p.16)

    ・宇宙には絶対的な基準があると考えるからです。アインシュタインがすごいのは、そんな絶対的な基準はないと考えたところです。あるのはお互いの速度差だけ。(略)お互い相対的な立場でしかない。こういうことをアインシュタインは数式にして発表したんですね。

    ・物理学って、本来は神のような宗教的な概念からどんどん離れていく感じがするじゃないですか。でも、量子力学の最先端を研究するような物理学者が歳を重ねると、意外と神様のことを言い始めるんです。(p.82)

    ・ホッブズとルソーの社会契約論はかなり違います。ルソーは、バラバラの個人一人ひとりが、社会を作るために全員と一斉に契約する、という変な言い方をしている。その契約によって一般意思というものが立ち上がり、人々は、その一般意思を使って政治をする権利を王や政府に委託するんだと。要するに、ルソーの社会契約は、そもそも社会をつくる契約なんです。(p.89)

    ・ルソーは、社会契約とは、人民一人ひとりが「自分の持つすべての権利とともに自分を共同体全体に完全に譲渡すること」だと言っています。だけど、各人はすべての人に自分を与えるから、結局は誰にも自分を与えないことになる。そして、自分が譲渡した権利と同じ権利が社会契約によって自分のところに戻ってくるし、自分が持っているものを保存する力を、契約前よりも多く手に入れるんだ、と。(p.90)

    ・ルソーが考える一般意思は、皆黙って自分のことだけを考える。そうすると、なぜかどこかにぼんやりと一般意思が現れるという議論になっています。(p.97)

    ・誇大妄想や被害妄想を抱えてしまうような弱い自我を持つと同時に、しかし自分の中の真実を言わなきゃいけないというアンバランスさが、近代の人間の特徴であって、ルソーはそれを極度に凝縮した人でもあるわけです。(p.100)

    ・いわゆる知識人にしか伝わらない書物での理性的な説得よりも、感情的なアジテーションの方が何倍も多くの大衆に訴えることが可能なのだ、というわけですね。(p.125)

    ・天上の世界から、地上の山にドーンと降りてくる。こういう垂直的な世界観は、朝鮮半島など北方系の王の建国神話と共通しています。(略)縄文系は、海の向こうに神の世界があるという水平的な世界観が基調になっています。(p.167)

    ・丸山眞男さんが言い出したことですけれど、彼は世界の創世神話には「つくる」「うむ」「なる」という三つの発想があると指摘しました。(p.168)

    ・スミスは国家の役割は認めていた。(p.201)

    ・私たちは細かい法律を知らなくても、おおむねルールを守っています。それは、法律のもとにある「他人に危害を与えない」という発想を理解しているからですよね。そう言った正義のルールを、人は暗黙のうちに受け入れているわけです。そのルール感覚の根本には、互いへの共感があるというのがスミスの考えです。(p.203)

    ・機会をどんどん発展させれば、労働者に払うお金が少なくなり、資本の利益が増えます。しかし他面、それを推し進めると、機械や技術が世の中全体にひろがっていき、社会でそれを共有することになっていきます。そうすると、資本は機械や技術の独占権を失っていくことにもなるわけです。現代のIT社会を言い当てているような言葉ですね。そうなんです。だから機械の導入は一方で労働者を搾取する原因にもなる。しかしそれは労働者を解放する原因にもなる。この二面性なんですよ。(p.218)

  • さらっと読めた。名著のネタバレ集的な感じかと思っていたが、どちらかと言うと名著の紹介集って感じ。

  •  この本の最大の魅力は、世界に名著を読み込んだ第一人者との対談であるが、本当に「10分」以内で読める案内となっていることだ。
     そしてこの本の最大の欠点は、この本を読んでもこれらの「名著」の何もわからないことである。

  • 名著だから難解なのか、難解でないと名著足り得ないのか?とにかく題材自体が理解しにくい。後書で書かれていた「前提知識と目的さえあればさほど難しくない」には納得できた。

  • 雑誌の対談ということで、誌面の関係か、対談もエッセンスだけ残しているという感じで、冗長でなくそれぞれが短く確かに10分で一冊のエピソードを読み切れる。

    対談している相手のチョイスがよく、さほど関心が無い分野の本でも飽きずに読める。

    アインシュタインがなぜ天才的な理論を生み出せたかという問いに対して、大学の研究室に雇ってもらえずに暇だったから、という解答は、膝を打った。暇のない現代、特に日本では独創的な理論を作り出す暇はないかもしれない。
    ルソーの「社会契約論」の理想とする社会の在り方が、今の中国の統治と合っているという東浩紀の解釈は、なんとなくルソーは近代民主主義の祖のように感じていたので、驚かされた。熟議民主主義なんて全く必要とせず、一般意志が反映される統治システムだったらなんでもいい、しかし、その一般意志も「みんなが黙って自分のことだけを考える。そうするとなぜかどこかにぼんやりと一般意志があらわれる」という「一般意志という概念自体が、自分で自分を統治するというフィクションをうまく回すための人工的な概念」なんて、そんなことでよいの⁉️と心配になった(笑)近代の世俗化に必要な概念として捻り出されたのだな。
    ここまで書かれてなお魅力があるとは、確かに読んでみたくなる(笑)

    読みたい順に読んだが、最後まで面白かった。古市憲寿は苦手だし、ニセモノ感がハンパないが、企画の勝利だといえる。

  • その後の時代に多大な影響を与えたものだが、なかなか読みづらい傑作古典をわかりやすく解説してある。読んでて面白いというより、時代的に意味のあった古典のことを取り上げている。その時代の背景や著者の思想がわかりやすく説明されていてとても面白かった。それぞれの本にわかりやすく要約が載せてあるので、それを読んで面白そうだと思ったページを読むのがおすすめ。

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著者プロフィール

1985年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。2011年に若者の生態を的確に描いた『絶望の国の幸福な若者たち』で注目され、メディアでも活躍。18年に小説『平成くん、さようなら』で芥川賞候補となる。19年『百の夜は跳ねて』で再び芥川賞候補に。著書に『奈落』『アスク・ミー・ホワイ』『ヒノマル』など。

「2023年 『僕たちの月曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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