タイタン (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 66
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065302460

作品紹介・あらすじ

【AIと人類を巡る超巨弾エンタメ小説が文庫化】

今日も働く、人類へ

至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。
人類は≪仕事≫から解放され、自由を謳歌していた。
しかし、心理学を趣味とする内匠成果【ないしょうせいか】のもとを訪れた、
世界でほんの一握りの≪就労者≫ナレインが彼女に告げる。
「貴方に≪仕事≫を頼みたい」
彼女に託された≪仕事≫は、突如として機能不全に陥った
タイタンのカウンセリングだった――。

アニメ『バビロン』『HELLO WORLD』で日本を震撼させた
鬼才野﨑まどが令和に放つ、前代未聞の超巨大エンターテイメント。

感想・レビュー・書評

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  •  本作は、ヒトの「仕事」が全てAIに取って代わり、過去の概念に成り果ててしまった未来の物語です。人類の英知を超えた究極のAI誕生によって、何が起こっているのでしょうか?

     時は2205年、ジョン・レノンの『イマジン』の世界観を具現化したような、国境も戦争もないユートピアとして描かれるのですが‥

     世界に12拠点あるうちの一つ、北海道の第二知能拠点のAI『タイタン』が処理能力低下に陥ります。
     ごく限られた就労者(管理者)側は、このAIを一旦人格化し、臨床心理の観点から原因分析しようと試みます。この【働けなくなったAI】の【カウンセリングの仕事】を強制依頼されるのが、心理学を趣味(仕事ではない)とする主人公の内匠成果。

     物語の中心となる展開は伏せますが、まずは非常によくできた話だな、と思いました。昨今の科学技術の進歩を考える時、妙な近未来として現実味を帯びている気がしてきます。
     でも、ヒトの仕事を全てAIが代替している世界は、本当にユートピアなんでしょうか? これ程読み手に仕事の意義を考えさせるSF小説もないと思います。

     個人的には、社会的な役割がなくなれば、個人の能力を発揮する場面が減り、人間の想像力が退化することで、社会の存続も発展も減衰していく気がします。全ての判断がAIに委ねられる世界は、もはやディストピアではないでしょうか?

     「今後10年〜20年間で 、49%の仕事がAIに取って代わられる」「AIが人類の知能を超えて、制御不可となる技術的特異点が訪れる」などと、不安を煽る分析や学説は聞き覚えがあります。
     私たちの子どもたち、さらにその子孫に、素晴らしいと思える世界を残していく義務が、今を生きる大人には確実にありますね。

    • マメムさん
      初コメです。
      ユートピアなのかディストピアなのか考えさせられる作品ですね。
      私達が夢見る世界が将来の世代に幸福と活力を残せるのか、非常に興味...
      初コメです。
      ユートピアなのかディストピアなのか考えさせられる作品ですね。
      私達が夢見る世界が将来の世代に幸福と活力を残せるのか、非常に興味深いテーマだと思います。
      2024/01/14
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      マメムさん、こんにちは♪
      4回目ほどの「初コメです」でした(笑)
      「いいね」の爆裂激押しに恐縮しております。
      マメムさん、こんにちは♪
      4回目ほどの「初コメです」でした(笑)
      「いいね」の爆裂激押しに恐縮しております。
      2024/01/14
    • マメムさん
      NO Book & Coffee NO LIFEさん、お返事ありがとうございます。
      爆裂激押し失礼しました。不定期に発動するので、ご勘弁下さ...
      NO Book & Coffee NO LIFEさん、お返事ありがとうございます。
      爆裂激押し失礼しました。不定期に発動するので、ご勘弁下さい(^_^;)
      2024/01/14
  • とても考えさせられる作品で面白かった。
    野﨑まどさんの初読み作品である『タイタン』は、途方もない未来を描いたSFでありながら、どこか現実の延長に有り得そうな世界観で読みやすい一方、非常に考えさせられるメッセージ性を感じた。

    『タイタン』と呼ばれるAIによって、人々から『仕事』と言う概念すら過去の歴史になった世界。内匠成果という女性は、心理学を『仕事』ではなく『趣味』として世界の人々に発信する日常を送っていた。

    だが、ある日を境に『タイタン』の異常を治すために人生初の『仕事』に携わる。そして『仕事』とは何か?タイタンと人との関わり方とは?と、様々な時間を通して学び、理解していく。

    と、概要だけを書くと面白さが伝わりにくい所ですが、私達の常識が未来の人々にとって非常識になる時代を考えると、シンギュラリティという言葉の重さも違った意味を持ちそうだなと感じました。

  • 荒唐無稽な設定と哲学的な問題提起。
    この2つがSF小説の重要なポイントだと改めて感じた。

    まず本作の設定はかなり荒唐無稽だ。舞台は約180年後の2205年。超高性能AIによって世界はコントロールされ、仕事も貨幣経済も国という概念さえもなく、人々は平和で幸福な生活を送っている。これはまあいい。SFとしては割とよくある設定だ。しかし物語の後半、AIの一つが身長1kmのヒト型で歩行してある目的に向かうというトンデモ設定になる。いやいや、流石にこれはいくら何でもあり得ないでしょ。

    次に哲学。本作の重要なテーマは”仕事”とは何か。人間としての”仕事”の本質についての考察が展開され、最後にはこの作品(作者)の考える”仕事”の定義が披露される。

    この2点が本作のSF小説としての重要なポイントだが、あまりにも荒唐無稽だからダメだとは私は思っていない。むしろSF小説は作者の想像力の及ぶ限界までのトンデモ設定にするべきだ。少なくとも私の想像力では巨人AIを歩行させるという発想は出てこない。
    では何故、とんでもなく荒唐無稽であるほど良いのか。
    そうすればするほど様々な問題提起が可能になり、第2ポイントの哲学的な深く難しいテーマを論じることができるからだ。例えば名作「華氏451度」。本を読むことが禁じられた世界を設定しているからこそ、本を読むという事の意味、考えることの意味、人間として何が大切かといった深いテーマに触れることが出来る。

    そういう点では、本作はSF小説として重要なポイントをきちんと押さえた作品だと思う。
    あとは個々人の好みだ。
    少なくとも私は自分が生きているうちにこういう世界になってくれたらありがたい。

  • 概念が生まれる前からあったはずの「仕事」に対する意味を少し理解できた気がします。
    また、タイタンによる整形とかパーソナルトレーナーとか管理栄養士とか、この時代の人間の方がなりたい自分になっているのではないかとも感じました。

    「深い闇を焚き火の灯りが削り取る。」
    「不用品も身に付けてしまう。」
    「彼の"生き甲斐"であれるように。」

    • マメムさん
      初コメです。
      タイタン任せで『仕事』を忘れてしまった人に、タイタンを通して『仕事』を学ぶ。とても良い作品ですよね。
      初コメです。
      タイタン任せで『仕事』を忘れてしまった人に、タイタンを通して『仕事』を学ぶ。とても良い作品ですよね。
      2023/05/20
    • 霽さん
      コメントありがとうございます!
      こちらの世界ではまだ仕事はあるので、この本を読んで意味を再認識出来たのが良かったです。
      コメントありがとうございます!
      こちらの世界ではまだ仕事はあるので、この本を読んで意味を再認識出来たのが良かったです。
      2023/05/21
    • マメムさん
      霽さん、お返事ありがとうございます。
      そうですね。あと何年後にタイタンみたいな世界が訪れるのか楽しみですね♪
      霽さん、お返事ありがとうございます。
      そうですね。あと何年後にタイタンみたいな世界が訪れるのか楽しみですね♪
      2023/05/21
  • AIが人の仕事をすべて肩代わりして、人は仕事することも貨幣経済に支配されることもなく生きている。そんな世界で、仕事に疑問を持ってしまったAIと、カウンセラーである女性が、旅を通じて「仕事」とは何なのかを考える。そんな物語です。
    まず世界観の構築が素晴らしい。AIと女性が積み重ねる「会話」も誠実で愛おしい。彼らの旅の結末を見届けてほしい。そう思える作品でした。

  • 「タイタン」というAIによって、人から仕事がほとんど排され、望む生活を送ることが出来るというユートピア。

    しかし、12機あるタイタンのうち、一つが謎の機能低下を起こしてしまう。
    このまま、機能が停止してしまえば、人類が何不自由なく営めている生活にも支障をきたす。
    そこで、「仕事」が与えられたのは、「趣味」で心理学を研究してきた内匠成果という女性だった。

    AIをカウンセリングする、という未知なる挑戦は、果たしてどのような結末に進むのか。

    内匠さんとタイタン(コイオス)のやり取りに、ワクワクするし、涙もする。
    一人のひとの成長を見るような、感動があった。

    「仕事」って何?

    という、かなり哲学的な問いにも、一つの解を与えてくれる。

  • 『無職の私は働き疲れたAIと旅に出た。』という帯の文章が気に入って手に取った初めての作家さん。

    アニメ化されそうなSFだけど、この先の未来にあり得そうな世界。
    物語を通して「仕事とは」何か考えさせられるテーマも良い。
    私のように日々の仕事に疲れた人もきっと別世界に連れて行ってくれるのに、元の場所にちゃんと連れ返してくれる一冊。

  • 読書記録 2023.6

    #タイタン
    #野崎まど

    これは良作。
    全ての労働をAIが行って、人類が働くことから解放された西暦2205年。基幹AIタイタンは自分の"仕事"に疑問を持ち…

    AIと人類の関係の、預言的示唆に満ちていると同時に、仕事とは、働くとは何かという普遍的価値を私たちに問う物語。

    このまますぐ映画にできるじゃん、という完成度だったよ


    #読書好きな人と繋がりたい
    #読了
    #映画化希望
    #AI

    • マメムさん
      初コメです。
      アレが歩く姿を映像で観たいですね♪
      初コメです。
      アレが歩く姿を映像で観たいですね♪
      2023/06/26
    • Storiaさん
      コメントありがとうございます。
      壮大なスケールのロードムービーにできそうですね。ぜひ実現して欲しいです。
      コメントありがとうございます。
      壮大なスケールのロードムービーにできそうですね。ぜひ実現して欲しいです。
      2023/06/28
    • マメムさん
      Storiaさん、お返事ありがとうございます。
      はい、ハリウッド映画並みの完成度で映像化を期待したいですよね♪
      Storiaさん、お返事ありがとうございます。
      はい、ハリウッド映画並みの完成度で映像化を期待したいですよね♪
      2023/07/02
  • チャットGPTなどテクノロジーの発展がめざましい昨今。この本のような世界もいよいよ現実味を帯びてきたのかと思います。多分10年前なら「トンデモSF小説」扱いだったと思うけど「近未来SF小説」に近づいてきてますね。

    決して仕事をしたい訳ではないのだが、ここまで行くと「ただ生まれて生きて死んでいく」だけの人生になってしまいそうで、こんな世界を望むか?と言われれば結構疑問符。
    完全にニーチェの言う「末人」状態ですね。

    というわけでテクノロジーの発展と人生観について考えさせられる一作でした。

    1点だけ疑問点を言うと、主人公がなぜあんなことし出したのかよくわからんかった。コイオスヘの感情移入?ナレインへの反骨精神?

    余談ですが、自分の中ではナレインのイメージはバイオハザードのウェスカーですw

  • 【仕事とは?】 本質を問いかけられる作品

    影響を受け そして影響を与える その結果を受け止める

    シンプルに (言葉にすると) それだけなのですね。

    本書の中に言葉(文字)にゎされてなかったが…
    【働く】とは「人(の為に)動く」 なんだなぁ……っと改めて。

    そんな働きで仕事をする事が最大の達成感を得られるんだと思う。

    良い作品に出会えた。

    フェーベの出てくる所はエヴァンゲリオンみたぃだったけど(笑)

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著者プロフィール

【野崎まど(のざき・まど)】
2009年『[映] アムリタ』で、「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。 2013年に刊行された『know』(早川書房)は第34回日本SF大賞や、大学読書人大賞にノミネートされた。2017年テレビアニメーション『正解するカド』でシリーズ構成と脚本を、また2019年公開の劇場アニメーション『HELLO WORLD』でも脚本を務める。講談社タイガより刊行されている「バビロン」シリーズ(2020年現在、シリーズ3巻まで刊行中)は、2019年よりアニメが放送された。文芸界要注目の作家。

「2023年 『タイタン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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