愛されなくても別に (講談社文庫)

  • 講談社 (2023年7月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784065317129

作品紹介・あらすじ

“幸せ”じゃなくたって、私たちは生きていく。

家族、友人、お金、愛――
本当に必要なものは何?
人生の必需品に翻弄される現代に放つ、心ふるわすシスターフッドの傑作。
☆☆☆第42回吉川英治文学新人賞受賞作!☆☆☆


遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月8万円を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!


祝デビュー10周年! 「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者の新たな代表作!

みんなの感想まとめ

“愛されなくても別に”というテーマが印象的なこの作品は、毒親に悩む大学生たちのリアルな日常を描いています。主人公の宮田陽彩は、浪費家の母親と二人三脚で生活しながらバイトに明け暮れ、心の重荷を抱えていま...

感想・レビュー・書評

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  • 『愛されてたら、子供はなんでも許さなきゃいけないわけ』。

    私たちは誰にも必ず両親の存在があります。人間は工場で生産されるもの…という未来が来ないとも限りませんが、少なくとも現在の私たちはどのような形であれ一人の男と一人の女が結びついた先の結果としてこの世を生きています。

    しかし、オギャーとこの世に生まれ出た瞬間以降、その人生はそれぞれです。その瞬間に生き別れ両親を知らず育つという場合もあるでしょう。一方でその人生の大半を両親と共に暮らしていく、そのような人生を送られる方もいらっしゃるかもしれません。それは、その人それぞれです。そして、それぞれの人が置かれた状況というものも外部からは決して窺い知れないものがあると思います。家族は家族の数だけ形があるのだと思います。

    そんな中では、自分が思う家族の形がすべてとも言えます。家族の形に必ずしも正解があるとは言えない状況の中で人はそれぞれの家族のあり方を信じて生きていく他ないのだと思います。

    さてここに、母親と二人暮らしの生活を送る一人の女子大生を描く物語があります。『愛してるわ』と母親から毎朝かけられる言葉に『彼女の愛を疑ったことなんて、これまで一度たりともない』と思う主人公を見るこの作品。そんな彼女の日常に訪れた同級生との出会いが一つの起点を作っていくこの作品。そしてそれは、『愛される』という言葉の意味を読者が噛み締める結末を見る物語です。
    
    『すみません、前回の講義を欠席していたんですが、その際のプリントを頂いてもいいですか?』と、授業後『教壇に立つ教授へと声を掛け』るのは主人公の宮田陽彩(みやた ひいろ)。『悪いけど、欠席者のフォローはしていないから。友達にでも見せてもらってください』と言われた宮田は、『前回は胃腸炎で…』とすがるも断られてしまいます。『教室内を見回』し、『同世代の人間がこんなにも存在しているのに、この中に友達と呼べる人間は一人もいない』、『コミュニケーション能力を求める社会が、今日も私を殺そうとしている』と思う宮田は『教室を足早に』後にします。そんな宮田は『掛け持ちで週六のシフトを入れ』『月では二百時間ほど』をアルバイトに費やしています。『月に二十万ほど稼げる計算』という宮田は、『稼いだ金の内、八万は家に入れ』、『残りはほとんど学費で消える』という日々を生きています。『貸与型の奨学金を借りてはいるが、手を付けてはいない』、『卒業と同時に一括返済するつもり』という宮田が『大学に入学した理由はただ一つ、大卒の資格を得て就職するため』でした。
    場面は変わり、バイト先のコンビニの『レジ前に立つ』宮田は、『同じ大学の先輩である堀口』とシフトに当たります。『二年留年し、現在は大学六年生。ろくでなし大学生のイメージを具現化したような男』という堀口は『宮田ちゃんはさ、生きてて楽しい?』、『俺の彼女もさ、全身脱毛したくて貯金してんだって』、『もしかして宮田ちゃん、処女?』…と軽口で話しかけてくる宮田。『私は堀口が嫌いだ』と思う宮田は『嫌いであるからこそ気安くコミュニケーションを取れている部分もある』と思います。そんな中、『自動ドアが開』き、喋り続けていた『堀口の言葉が』『不自然に』『途切れ』ます。そこには、『ども』と挨拶を口にする『綺麗に色の抜けた金髪。髪の隙間から覗く耳たぶには、シンプルな黒のピアスがぶら下がっている』という女性の姿がありました。『先週からここでバイトを始めた女で、私とは同じ大学、同じ学科、さらには同じ学年』というのは江永雅(えなが みやび)。『あんま喋ってくれない』と江永を苦手とする堀口は『逃げるようにバックヤードへと引っ込』みます。そして、『制服に着替えた江永がレジへと出て』きました。『ワイヤレスイヤホン』をつけて『音楽を聴きながら仕事をする』という江永に『仕事は頼み辛い』と思う宮田は『自分でやった方がよっぽど早い』と商品棚に向かいます。
    再度場面は変わり、『午前五時前』に家へと辿り着いた宮田、疲れて『瞼がどんどんと重くな』るも『ねえ、ごはん作って』という声に起こされます。『午前七時、寝始めてからまだ二時間』という中に『おはよ』と微笑みかける母親。『バラ柄の刺繍が入ったレースのブラジャー』に『藍色のレギンスパンツ』という姿の母親は『成人間近の娘がいるとは思えない』姿を見せます。『ねえ、早くごはん作って。ホットサンドが食べたい』と言う母親に『それぐらい自分でやってよ』という『喉まで出掛かった言葉を、すんでのところで呑み込』み『危ない、面倒なことになるところだった』と思う宮田。『築三十一年の二階建てアパートの一室』に親子で暮らす宮田は、『小学一年生の時に両親』の離婚を経験しました。やがて『音信不通に』なった父親と、『何度か恋人を替え』た母親。そして、『小学二年生の頃』、『母が恋人とセックスしているところを目撃した』宮田は『ただひたすらに恐ろしかった』と『トイレへと駆け込んで泣』きます。しかし、結局、『母に愛されるために』『何も知らない子供を演じ』てそれからを生きてきた宮田。そして、食事を終え『化粧を施し』『余所行きの女の顔にな』った母親は『愛してるわ、陽彩』と『毎朝の決まり文句を言う』と家を後にします。
    三度場面は変わり、教室で席に着いた宮田の横に『あの、ここ座っていいですか』と一人の女性が声を掛けてきました。『木村』と書かれたファイルを開く女性に『先週の授業を用事があって欠席しちゃって。もし良かったらプリント、撮らせてくれません?』と声を掛けた宮田。しかし『それって、私に得なことあります?』と『強烈な言葉』を返された宮田は『別の人に頼むから…』と話を切ろうとします』。それに『頼める人がいないから私に声を掛けたんじゃないの』と言う木村は『誰が知り合いなの』とも詰め寄ります。宮田は『江永さん』と『バイト先が同じだし、知り合いと言っても嘘ではないだろう』と思い答えます。それに『江永って、江永雅?』と動揺する木村は『あの子とはあんまり関わらない方がいいよ』、『江永さんのお父さん、殺人犯なんだって』と説明する木村は、『江永さんに頼るくらいなら私がプリントの画像を送ったげる』と続け『SNSのアカウント』を友達登録することになりました。『江永雅には気を付けて』と念押しする木村は『近付いたら魂が穢れるよ』とまで言い切ります。しかし、そんな日の夜、『タイミングが良いことにまた江永と同じ』シフトになった宮田は近付いてきた『成人式』の話題から江永と会話を深めていきます。そして、一緒に暮らすようになっていく宮田と江永。そんな二人のそれからが描かれていきます。

    “遊ぶ時間?そんなのない。遊ぶ金?そんなの、もっとない。学費のため、家に月8万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす ー そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!”と内容紹介にうたわれるこの作品。2021年に第42回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃さんの代表作の一つです。しかし、しかしです。武田綾乃さんと言えば、広く世の中一般には累計200万部を売り上げた「響け!ユーフォニアム」シリーズがなんと言っても有名です。漫画となりTVアニメ化もされた同作のことはブクログに集うみなさまであれば知らない方はいらっしゃらないでしょう。そして、同時に同作の印象をそのまま武田綾乃さんに重ねてしまうのは人の世の常だと思います。かくいう私も全くもってそうだったのですが、今回この作品を読み始めてビックリ!そこに描かれていく世界は「響け!ユーフォニアム」とは似ても似つかない物語。極めてシリアスに人の生き様を描く物語世界が存在したからです。そして、そこには上手い!と感じるさりげない表現が多々登場します。3つほど見てみましょう。特徴は短い表現の中にキリリと強いインパクトを残すところです。

     『深夜のコンビニは、静かに生きている貝みたいだ。貝殻の隙間から酸素が出入りするように、人間たちが入って出てを繰り返す』。

    この作品の舞台の一つは主人公となる宮田と江永が務めるコンビニです。二人は深夜のシフトに入ることが多いこともあってその情景がこんな風に描写されますが、『生きている貝』に比喩するのは面白いです。

     『透明な自動ドア越しに、光に集る羽虫が見える。バチバチバチ。吊るされた殺虫灯からはひっきりなしに命の散る音がする』。

    こちらもコンビニの情景ですが、『殺虫灯』に光を当てる表現です。『バチバチバチ』というその音を『命の散る音』と比喩します。わずか二行のアッサリとした表現ですが、その二行が強く印象に残ります。

     『基本的に、私はバイトを休みたくない。一日の休みが、一日の貧困に直結するから』。

    最後は主人公の置かれた生活の厳しさを一文で表現します。『一日の休み』=『一日の貧困』と繋げるこの表現にもドキッとさせられます。この作品は兎にも角にもこの切れ味の鋭さが一つのポイントだと思います。作者の武田さんは「響け!ユーフォニアム」でもハッとする表現で魅せてくださる方ですが、この作品ではその感覚がより研ぎ澄まされているように感じました。

    さて、そんなこの作品には同じ大学同じ学科に在籍する3人の女性が登場します。それぞれの置かれた境遇を含めご紹介します。江永と木村の素性は宮田視点の記述が中心となります。

     ・宮田陽彩: 主人公、十九歳
       - 小学校一年生の時に両親が離婚。父親は音信不通。母親は何度か恋人を変えた。
       - 高校時代から家に月八万を入れ今に至る。
       - 大学の学費も全額自己負担。貸与型の奨学金を借りている。
       - 掛け持ちで週六のシフト。月では二百時間ほど働いている。
       - 『幼い私はたった一人では生きられなかった』と母親に『恩』を感じている

     ・江永雅: 二十一歳
       - 小学六年生の時、母親と家から逃げ出す。それから一年後離婚が成立。
       - 父親は殺人犯と噂されている
       - むせ返るような『噓』の香りがする
       - 威圧的な金髪、威圧的なメイク。社会への反抗心を大袈裟に見せびらかす、甘ったれた子供みたいに見える
       - 『高校生の時には身体売って母親を食わしてやってた』

     ・木村: 十九歳
       - 下の名前は『死んでも言いたくない』
       - 薄い一重瞼、ショートカットの黒髪は、癖がなく真っ直ぐ
       - 『お金を稼ぐのは卑しいこと』と主張
       - 一人暮らしだが、母親が『九州から毎週、飛行機で来て』生活の面倒を見ている

    まさに三人三葉といった面持ちですが、それぞれの家庭の状況に何かしらがあることが分かります。その中でも物語は表紙に描かれている二人の女性、宮田と江永が中心に展開していきます。そんな物語は印象的なタイトルが付けられた三つの章から構成されています。

     ・〈愛、或いは裏切り〉
       → 3人の出会いと宮田の背後にある事情が語られる物語

     ・〈救い、或いはまやかし〉
       → ある出来事によって読者が全く予想だにできない内容に急展開する物語

     ・〈祈り、或いはエゴ〉
       → 3人のそれからが暗示されてもいく結末へ向けての物語

    最大の山場は二章に展開していくあまりに予想外な内容だと思います。他の方のレビューにもほとんどネタバレされていない究極の展開は私のレビューでも一切を伏せたいと思います。これから読まれる方には、間違いなくえええええー!と驚愕必至の息呑む展開に是非ご期待ください。

    とは言え、そんな物語の核心は上記でも少し触れた特徴的な家庭環境が描かれていくところにあります。

     ・宮田 → 父親は音信不通な中、母親に高校時代から月8万を入金させられ、家事の一切を担わされる

     ・江永 → 父親は殺人犯と噂される中、高校生の時には身体を売ることを母親に強要される

     ・木村 → 遠隔地に暮らしているはずなのに生活の全てを母親に監視され続ける

    いかがでしょうか。この世の中さまざまな家庭事情があると思いますが、3人がそれぞれ置かれた状況はいずれも胸を締め付けられるようなものです。上記もした武田さんの筆致がそんな3人の内面を赤裸々に描いていきます。ここに「響け!ユーフォニアム」でも、女子高生たちの内面を鮮やかに描き出していく武田さんの真骨頂を見る物語があります。そうです。一見、「響け!ユーフォニアム」からは全くかけ離れた世界観を描く物語に見えますが、ここには武田さんだからこそ描ける世界があることに納得させられる物語があるのです。

    そんな物語は主人公の宮田にさらに光が当てられていきます。

     『母が私を愛してくれているように、私も母を愛している。間違いなく、愛しているはずだ』。

    そんな思いの中に日々を生きてきた宮田は他人と関わることを極端に拒み母親に尽くすように日々を生きています。

     『私はこの人に恩がある。幼い私はたった一人では生きられなかった。それを助けてくれたのは間違いなく母なのだ』。

    父親が『音信不通』となる中に、母親に『恩』を感じ母親に尽くしていく宮田。しかし、江永との出会いがそんな宮田に変化を生んでいきます。

     『母は私に愛情をくれた。そしてそれ以上の裏切りも寄越した。彼女の愛を私は疑ってはいない。だが、愛だけ与えられて、それが何だというのだろう』。

    母親からの愛に疑問を抱くようになった宮田は自分が置かれた状況を冷静に俯瞰していきます。

     『私は便利な家政婦か?それとも愛らしいペットか?部屋を掃除してくれるロボット掃除機にだって愛着が湧く、母の私への愛はそれと同じか?』

    宮田の中にふつふつと湧き上がる思い。一方で決して強くなどない宮田の心の内は逡巡を繰り返してもいきます。この辺りのヒリヒリするような展開は圧巻です。

     『愛情は、全てを帳消しにする魔法じゃない』。

    そんな宮田の心の叫びは物語を動かし読者の心も動かしていきます。物語は、三人の女性たちそれぞれが置かれた状況をすべて明らかにしながら、しかし、武田さんはザ・ハッピーエンドのような安易な展開にはもっていきません。この世の中そんな簡単にそれぞれが置かれた複雑な事情が解決することなどないからです。そんな物語が描く結末、未来は朧げにしか見えず、不安定な状況に何も変わりはない二十歳の青春を生きる主人公たちを描く結末。そこには、「愛されなくても別に」という書名に込められた武田さんの深い思いを見る結末が描かれていました。

     『愛されてたら、子供はなんでも許さなきゃいけないわけ』。

    3人の大学生が置かれた状況に光を当てていくこの作品。そこには、三人それぞれに『毒親』に苦しめられてきた女性たちの姿がありました。切れ味鋭く女性の内面を描いていく描写に息を呑むこの作品。そこに累計200万部を売り上げた武田綾乃さんの筆力を感じるこの作品。

    十代の青春を生きる女性の内面を鋭く描く物語。切れ味鋭く描かれていく圧巻の物語の内容にただただ酔う他ない、傑作だと思いました。

  • 愛されなくても別に。
    なんとも言えないこの表題に惹かれ購入した一冊。
    大学生の宮田陽彩は学生生活を謳歌することなく日々バイトに明け暮れる生活をしている。
    そのなある日、奇抜なファッションを身にまとった江永雅と出会い・・・
    宮田も江永も自分や他の人間にも期待をしない。
    どこか諦めた顔して、ただ生きるために生きている。
    そんな二人が出会うことで世界は光輝き未来は明るくなる・・・
    訳でもなく、暗く先の見えない道はずっと続いていく。
    これまでと違うのは隣で一緒に歩いてくれる人間がいる。ということだけ。
    未来が明るくならなくても、人生が光輝かなくてもいい。
    愛されなくても別に、いい。
    宮田にとって、江永にとってお互いの存在は
    暗い世界を少しだけ歩きやすく、楽しく生きていくために必要な存在。
    二人が出会ってくれて本当に良かった。
    読了後は少しだけ心が軽くなるような気持ちになりました。

  • アマゾンのおすすめ本に出てきたので読んでみました。
    タイトルから毒親の話はプンプンしていたのですが、そこはあくまでとっかかりで、実際には「自分の居場所探し」の話だったように思います。

    個人的に、女性同士がツインレイのように、お互いを支え合いながら生きていく話が好きです。
    一穂ミチさんの『光のとこにいてね』も、女性同士の存在がお互いの生きる糧になっている物語でしたが、この本にも少し似た雰囲気を感じました。

    私自身、こういったツインレイと感じるほどの関係性を持った人はいないので、こういうつながりにはとても憧れます。

    『愛されなくても別に』を読んで思ったのは、母親との関係がうまくいっていないと、自分の居場所を外に求めざるをえなくなるのだな、ということです。
    そして、そうなったときに、どんな手段で自分の居場所を見つけるのかは、その人の価値観に委ねられている気がしました。

    宮田のように、相手に少しずつ心を開いて距離を縮めていく人もいれば、江永のように最初からオープンハートな人もいる。
    その違いも興味深かったです。

    とくに印象に残ったのは、「02.救い、或いはまやかし」です。
    木村(宮田と江永の同級生)が彼女たち二人と深く関わってくるのですが、彼女の拠り所が「そう来るか?!」という感じで。
    木村は宗教に居場所を見つけ、どっぷりハマっています。

    お金を出して自分の居場所を確保しているんですよね。
    まあ、宗教的には、羽振りが良くて人を紹介してくれる人は都合がいいわけですし、そういった人間を無条件に受け入れてくれる。
    木村のように、どこか物寂しい人間は絶好のカモなわけです。
    もちろん、全部の宗教がこういうものだとは言えませんが。

    木村と母親の関係は、宮田や江永のそれとは真逆です。
    でも、木村はその関係性に幸せを感じていない。
    木村と宮田、江永、それぞれの親子関係が対比されて描かれているのですが、どれも「いい関係」とは言いがたいのがまた興味深いところです。

    それと、宮田が江永に言ったセリフで驚くべき発言があります。

    「というか、不幸な人に興味があるの」

    これを言われて、笑って受け入れられる人っていないですよね?!
    かなり失礼なことを言っているはずなのに、それを受け入れる江永。
    よほど波長が合っているとか、何らかの理由がないと無理だと思います。

    でも、小説の面白いところって、現実ではなかなか受け入れられないようなことでも、必ず一人は理解者のような存在が現れて、物語が進んでいくところなんですよね。
    そういうところに、世知辛い世界の中でも、うっすら光が差し込んで、希望が見えてくる気がします。

    何でも話せる、甘えられる。
    そんな人が一人でもいると、自分の存在が認められているような安心感が得られるのだと思います。
    そして、そういう存在は、親子や恋人や夫婦といった形式ばった関係に限る必要はないのだな、と感じました。

    ただ、間違っても非常識な額の金銭を要求するようなものに入れこんではいけないですね。
    人間関係の心地よさは、お金で買えるものではない。
    そのことを、この本から改めて学びました。

  • 毒親に振り回され、苦しみながらも生きる3人の大学生女子の物語。
    家にお金を入れるためバイト漬けの宮田、殺人者の娘という肩書きから逃れられない江永、執着する母から逃れ宗教にすがる木村。

    負の感情を生々しく描きながらも、どこかサラリとした文体のため、彼女たちが他人事とは思えないほど感情移入した。子どもは親を選べない——まるで不幸の背比べを見ているような感覚に陥るが、それでも彼女たちが希望を持てる社会であってほしいと願わずにはいられなかった。

    タイトルの「愛されなくても別に」は、一見斜に構えた言葉のようでありながら、読後にはむしろエネルギッシュで、生きる活力を感じさせるものへと変わる。心に深く刺さる良作。

  • 毒親を持つ、宮田 陽彩(みやた ひいろ)、江永 雅(えなが みやび)、木村 水宝石(きむら あくあ) の三人の女子大学生たち。

    浪費癖の強い母親と二人暮らしし、バイトで月20万円稼いで8万円を母に渡す宮田、父が殺人犯で母に身売りを強要される江永、過干渉の母から逃げて宗教に入った木村。

    そんな宮田は、母にお金を盗まれていると知り家出する。
    そして、江永と一緒に暮らし始める。

    本書を読み進めるにつれ、それぞれ違う家庭環境だが、どの母親も酷くて心が苦しくなった。

    そういう親と上手く付き合ったり仲良くするような、お花畑的な世界ではなく、逃げてもいいし、向き合わなくてもいい。愛されなくても別に生きていける。私は私の人生を生きる...。

    そんな心の強さを感じた作品。

    子は親を選べない。親も子を選べない。
    血が繋がってるからといって一人抱える孤独から抜け出せるとは言い切れない...。

    そう思える作品でもあった。

    家族って盾にもなるけど枷(かせ)にもなりうる。

    帰りたいと思える居心地のよい家があるって大事だなぁー...。

    • 名乗るほどでない男さん
      きたごやたろう さんへ
      うわ~(*^^*) 楽しみにですね~♡
      借りですか?それとも購入??
      きたごやたろう さんへ
      うわ~(*^^*) 楽しみにですね~♡
      借りですか?それとも購入??
      2025/08/24
    • きたごやたろうさん
      名乗るほどでない男さんへ

      すみません。
      借りです。
      でも現在進行形で読んでます!
      名乗るほどでない男さんへ

      すみません。
      借りです。
      でも現在進行形で読んでます!
      2025/08/24
    • きたごやたろうさん
      名乗るほどでない男さんへ

      こちらの作品読了しました!
      レビューはオイラの本棚に。
      「いいね」もありがとうございます。
      名乗るほどでない男さんへ

      こちらの作品読了しました!
      レビューはオイラの本棚に。
      「いいね」もありがとうございます。
      2025/08/25
  •  初めて読む作家さんでしたが、テーマが毒親で興味を持ち、手に取りました。テーマが重く、出てくる人みんなが、苦しそうですが、どこか明るく感じられました。

     宮田さんが江永さんと繋がることが出来て、本当に良かった…。家族には恵まれなかった2人にとって、お互いの存在がお互いを支えている。

     私は木村さんのその後が気になりました。

  • 余韻残るストーリーに心奪われました。
    あの2人にはこれからも自由に生きてほしいな。

    物語の内容は、毒親が胸糞悪くて正直辛かったですが、読み終えると2人の関係性にほっこり。

    血の繋がった家族であれば無条件に支え合わなければならないんでしょうか。心に残ったのは“ーーー愛されてたら、子供はなんでも許さなきゃいけないわけ”⁉︎という言葉。愛してるの言葉って捉え方によっては呪縛にもなってしまうのかと考えさせられました。読了後に見るタイトル「愛されなくても別に」の文字は読了前のそれとは言葉の重みが全く違って見えます。

    今作で初めて武田綾乃さんの小説を読みました。何気ない日常のリアルな幸せを描くのが上手でしみじみ。まるで映像を見ているかのような作品でした。

  • 愛されることよりも愛することができることにこそ愛がある。2人が心の奥底で繋がることができ、そこに守るべきものを感じられるようになって良かった!シスターフッド物語としてすごく丁寧。過干渉親を持つあの子がどうなってしまったか心配なのが心残り。

  • 主人公である宮田ちゃんのご両親(特に母親)が見事な毒親っぷりで途中辛かった。対する江永ちゃんも自身を覆っている不可抗力の闇に押し潰されそうになっている過去を持っていて、チューハイ缶を片手に宮田ちゃんに詳細を打ち語る描写には読んでるこちらも辛くなってきた。

    でも、最後は最後ですごく素敵な終わり方でホッとした。若い女の子二人のこれからが幸で溢れてますように。

    ◉3月14日再読

  • タイトルに惹かれて購入。帯に書いてあった通り、一気読みしました。
    星5つじゃないのは、私の年代よりは、高校生や大学生くらいの若い子向きな小説かなと思ったからです。厳しい家庭環境で育った20歳前後の二人が、大学で出会って、生きる力を得ていくストーリー。
    同じような境遇で、進路や家族関係に悩んでいる高校生とかが読んだら、「大学」といういろんな人間が集まる場所に行けば、一人でいても別に大丈夫だし、もしかしたら理解し合える人との出会いがあるかもしれない、と希望が持てると思う。(そういう意味でも読書習慣って本当に大事だと思う。救いのない環境に育って、本を読むことも知らないままだと救われるきっかけが得づらい)。
    主人公のヒイロは母親が浪費家で、自分のアルバイト代に依存してくる。家事も一人で全部こなし、母が「愛してるわよ」ということを疑うこともできず、愛されているから親を許さなければいけない、と思わされている。
    大学で出会う訳ありの友達、「エナガ」は、父親が殺人犯と噂されていてみんなから避けられている。
    ヒイロは、自分より不幸そうな人に興味があり、「それでも私の方がまだ不幸だ」と思うことで自分を保っているところがあり、エナガに興味をもって近づく。
    二人は友達のようになっていくわけだが、正直言って、「親からここまでヒドイ扱いを受けて育って、そんな簡単にお互いの心の内を打ち明けられないはずだ、だから現実はもっと複雑なんだ」と突っ込みを入れながら読んでいた。
    しかし、物語の終盤、なぜ二人が友達になれたのか、ネタばらしのような仕掛けもあり、「おぉ!なるほど!」と納得。テーマは重いけどライトノベル?と思ったけど、ライトノベルと言い切れない完成度だった。
    (解説によれば、著者はライトノベルから出発して、最近では一般文芸として高く評価され始めているらしい。本作も確かに、ライトノベルの筆致ではあるがライトノベルとは言い切れない作品だと思った。←偉そう。

  • 毒親と言われる人物に育てられた大学生の話。主人公が行動的なので、ストレスなく読めます。
    主人公たちの今後を応援したくなりました。

  • そうか、そうだな!
    愛されなくても別にいいのだ!!

    「親」それも「毒」のある。
    重い内容のはずが、妙にリアルでドライで、そして言葉が深くて、スカッとした気分になれました。

  • 愛されなくても別にという強烈なタイトルが、
    だって私たちはこうして生きて行くしかないんだもんという強い意志を感じる

  • 映画化ということで、積読から、引っ張り出してきました。初読作家さんでもあります。
    テーマは重いように感じましたが、読んだ感じは想像しやすく、同調しやすくて読みやすかったです。
    傷付きたくなくて尖っていたあの頃を思い出しました。

  • 闇が深ければ深いほど、光は強く見えるように、
    どうしようもなくどん底に生きる二人が、眩しい。

    痛いほど救いようのない状況下に置かれ、
    必死にもがきながらも突き進む。

    雨に野垂れ死んだら、
    その後に雨が止んだかどうかなんて
    知ったこっちゃない!
    だから、いろんな選択をしてもいい。
    自分で選んでもいいんだ。
    それが生きる術となるならば。

    「愛されなくても別に」
    タイトルと同じこの台詞が
    ページ上に出てきた時、
    そんな台詞が生み出された過程を思って、
    泣けて仕方なかった。

    だけど読後に射す希望が、
    その台詞の続きを生み出す。

    「愛せたらそれでいい」
    愛するなんて言葉、
    二人にはちょっと大袈裟かもしれないけれど、
    幸せになってほしい、と互いに想い合う、
    そんなささやかな愛が、
    その先への一歩一歩に続いていってくれることを
    願わずにはいられない。

    なんだかどうしようもなく、愛おしいんです。
    この二人の背中を押してやりたくなるようでいて、
    本当は自分が背中を押してもらっているのかもしれない。

    みんなも出会ってほしい。
    宮田と江永に。

  • 友情とか絆とかいう言葉が安っぽく感じる
    泥沼にはまる親が子どもの手を離さない
    子どもが親の手を離せないのは愛とは違う
    二人が今後安らかに暮らせることを願ってしまう

  • この間観た映画版がよかったので、原作を読んでみた。
    作者は『響け! ユーフォニアム』の原作者でもあるのだね。

    こちらの原作もよい。映画には描ききれないディテールまでがしっかり描かれている。

    原作を読むと、映画版がよくできていることがわかる。
    大筋は原作に忠実だが、枝葉を削ぎ落とし、適度なアレンジを加え、1時間50分の映画にうまくまとめて違和感がないのだ。

    それに、南沙良と馬場ふみかが演ずるヒロイン2人は、原作から抜け出てきたようなハマり役。

  • 終わり方が好き。映画も観たい

  • 自分が抱える孤独は他人と比べようがない。

    自分が一番苦しい訳じゃないのは分かっていても、やり場のない気持ちをどう昇華すればいいのかひとつの示唆を与えてくれる作品だった。

  • 友達を作らず日々バイトに明け暮れる宮田。見た目も過去もワイルドな江永。そんな二人がひょんなことから一緒に住むことに。

    宮田と江永と、途中で離脱した木村。3人3様の家族とトラウマを抱えながら、懸命に生きている。いつの時代も親との葛藤、確執は変わらずエグいものだなと。

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著者プロフィール

1992年京都府生まれ。第8回日本ラブストーリー大賞最終候補作に選ばれた『今日、きみと息をする。』が2013年に出版されデビュー。『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』がテレビアニメ化され話題に。同シリーズは映画化、コミカライズなどもされ人気を博している。2020年に『愛されなくても別に』が第37回織田作之助賞の候補に、また2001年には同作で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。その他の著作に、「君と漕ぐ」シリーズ、『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』『嘘つきなふたり』などがある。

「2023年 『愛されなくても別に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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