DEEP LIFE 海底下生命圏 生命存在の限界はどこにあるのか (ブルーバックス)
- 講談社 (2023年5月18日発売)


- 本 ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065319338
作品紹介・あらすじ
これまで生命が存在しないと思われていた「海底地下の世界」。
しかし、そこには地上を超える豊かな「生命圏」が広がっていた!
海底下の掘削調査で採取された「地質コア試料」から発見されたさまざまな微生物群。
・微生物たちはいつからそこにいて?
・なにから栄養を摂っているのか?
・なぜ超高温・超高圧(アッチアチのカッチカチ)の世界に耐えられのか?
これらの謎を追っていくと、そこには、これまで考えられていた生命観とは違った「生命システム」が見えてきます!
海底下深部からの地質コア試料から培養された古細菌(アーキア)には、御年・数千万歳を超えるものも!!
120度以上の高温、海底下2000メートルの高圧世界でも生き続ける!
食べるものがない「超貧栄養状態」を微生物たちは、どのようにサバイブしているのか!?
微生物の生命維持の限界はどこにあるのか?
地球科学はもちろん、生命の起源やその存続の謎へと迫っていくサイエンスのおもしろさを、実際に行われた「海底下生命圏科学掘削調査」の歴史とともに臨場感あふれる筆致で紹介していきます。
著者は、大学院生時代に出逢った科学誌「science」に掲載された「海底下地質サンプルからの微生物発見」の論文に衝撃を受け、その後、さまざまな科学掘削調査に参加、さらに海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用する地球深部探査船「ちきゅう」の調査航海を指揮しながら、極限環境に生きる微生物の調査を行っている研究者です。
海底地下の世界から「生命とは何か」という根源的な問いをもとに、「地球-生命システム」という大きな展望へと広がっていく、サイエンスのフロティアを紹介します!
感想・レビュー・書評
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ブクログのプレゼントでいただいた本。ずいぶん寝かせてしまったが、やっと読了。
地球深部探査船「ちきゅう」が、深海の海底や地下深部の研究のための船ということは聞いたことがあったが、それによって海底堆積層にいる微生物の研究なども行われていたことを初めて知った。
どんな過酷な環境でも、超エコに生命を維持することができる、そのメカニズムはスゴいが、なぜそんなところで生き続けるのか、何をもって生きるというのか、モヤモヤは残る。。
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文字通り、深海における生物について。
難しい内容だったが、最新の科学に触れることができた。 -
何よりもまず、深海の更にその下、海底下の岩盤の中で微生物が生態系をなしているという事実に単純に驚いた。さらにそれらの生物は太古の昔にその環境に閉じ込められたため、進化の謎を解く鍵になるのではないかという興奮。まだ研究の端緒についたばかりなのでわからないことだらけの分野ではあるが、この先の進展が大いに期待できる、そう思わせてくれる内容であった。合い言葉は"Core on deck!"
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高圧がかかる深海の海底の更に地下深くにも古最近やバクテリアといった生命が存在するらしい。そこは岩石のごくごく小さな隙間だったり、人間ならやけどしそうな熱い環境だったりするが、極めて乏しい栄養環境の中でも生物が存在し得ることに驚かされる。我々が考える以上にハビタブルゾーンは広いということを教えてくれる。
海底下掘削などの研究環境についても紙数が割かれていて面白いが、少々内容が難しく、知識のない自分には理解もイメージもできない部分が多かった。厳密でなくてもいいので、もう少し分かりやすいものを読んでみたい。 -
深海の未知の世界に生きる微小生物。
高温、高圧、栄養素僅少など、過酷な環境下で生き延びる生物が興味深かった。 -
海底の下に生命はあるのか考えたこともなかったが、微生物が生きていた。生物の限界はどこまでなのか、我々の世界とどう影響しあっているのか興味深い。
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どでかい探査船に乗って海へ乗り出し、海底深くボーリングをして堆積物や岩石のコアサンプルを掘り出す。そこからDNAを分析したり、生化学的手法を使ったり、蛍光色素で染色してみたりで微生物の存在を明らかにしていく。
ロマンのある研究だと思う。現場の熱気が伝わってくる筆致である。しかし・・・
わかりにくい!
内容の難しさもあるとは思うのだが、急に話題が変わったり、説明不足であったり、何について語っているのか不明瞭になる箇所があったりで、よくよく注意しながら読むと意味がつかめるもののスムーズに読み進められない。もっと編集が積極的に仕事をすれば良い本になりそうだ。
しかし微生物、それも自然環境でワシャワシャと何がいるのかわからないような状態のを調べるのは、現代の科学技術をもってしてもまだまだ困難が多いことがよくわかった。 -
ブルーバックスということもあり、かなり内容は専門的だと思います。それなりに用語も飛び交っている感じ。
結構、研究活動の中身・紹介が多めなので、そういう部分に興味がある人は更に面白いかなと思います。 -
まずタイトルからして、勝手に海底に住んでいる深海生物の話と想像していました。
実際読んでみると海底地下世界とは、海の底を掘削した先の世界だったことに気付き、自分の想像もしていなかった世界がこんなにも拡がっていたことに驚きました。
こんなことを人類は行っていたのかと自分の無知を恥じ、同時に新しく入ってくる未知の情報に胸を踊らせました。
ブルーバックスシリーズは初めてでしたが、この一冊だけでは知識ではなく情報に留まってしまいそうです。他の関連した分野をまた読みたいと感じました。 -
献本御礼。
タイトルパッと見では、深海に纏わる知見が想起され、深海魚好きとしての興味が湧く。しかし、サブタイトルの"海底下"や"生命存在の限界"といった文言に触れ、自己理解の上を行く(この場合は下を行く、か?)ものと気付く。この時点で、本書に対する好奇が増す。
まず、プロローグで提示された、堆積層やらマリンスノーやらの図を見て、何となく小説"八月の銀の雪"を思い浮かべる。『そういえば、同作でも海底よりもっと深い、未知の世界が魅力的に描かれていたっけ』みたいな。全然本筋と関係ないけど。
そこから、宇宙開発と並行して進められた海洋掘削の歴史が書かれるんだけど、華々しい宇宙に比べると、何となく地味な印象。後半に書かれているように、そのイメージは間違っておらず、やっぱり開発費はだいぶ違うみたい。もったいない。
専門家ならではの見解だなって思えたのは、海底下微生物にしてみれば、地表の世界はエネルギー競争と自然淘汰が繰り返される世界で、全く穏やかでないと見えるかも、ってところ。どちらが幸せなんでしょ。
通読しての展望は、人類史上初のマントル到達は、大きなパラダイムシフトになるってこと。生命の起源としての微生物研究のみならず、資源開発とか地震対策とか、期待される方面は多岐にわたる。地学って、本当に学ぶ機会を逸し続けてきた分野だけど、今後は要注目だな。
著者プロフィール
稲垣史生の作品





