どちらかが彼女を殺した 新装版 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065321393

作品紹介・あらすじ

容疑者は二人。
東野圭吾がたどり着いた究極の「推理」小説。

ーーー

最愛の妹が偽装を施され殺害された。

愛知県警豊橋所に勤務する兄・和泉康正は
独自の”現場検証”の結果、容疑者を二人に絞り込む。

一人は妹の親友。もう一人は、かつての恋人。
妹の復讐に燃え真犯人に肉薄する兄、
その前に立ちはだかる練馬署の加賀刑事。

殺したのは男か? 女か?
究極の推理小説。

感想・レビュー・書評

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  • 再読である。初読の頃、kuma0504は東野圭吾のコンプリートを目指していた。1997年末の頃である。単行本が次々と文庫化され、東野圭吾は読みやすいミステリー小説として愛読していた(その後コンプリートは諦めた)。

    これは難渋した。いわゆる本格推理ものだと思った。一つの伏線も見逃してはならない。容疑者は2人に絞られている?それなのに、犯人がどちらかがわからない?それは即ち読者への挑戦ということである。

    もちろん容疑者が2人に絞られるのには納得しても、「どちらかが彼女を殺した」と限ったわけではないとも考えた。2人の共犯も考えられるわけだ。しかし探偵役の兄の康正はそれを否定する。「共犯で行う必要もメリットもないのだ」(174p)。でも、「巻き込まれ」型もあるから保留した。最終盤で、共犯説は明確に否定される。それを含めて作者はきちんキチンと凡ゆる可能性を潰してゆく。正直全部検討し切れなかった。「放課後」や「浪花少年探偵団」と比べても、かなり理詰めな内容。まるで教授の指導のもと、実験結果を検討する理学生の気分だった。

    本作については後に東野圭吾は「最後に犯人を書いていなかったら、読者は驚くだろうな、という意外性を狙った」「別に犯人は明かさなくでもいいじゃないか」と「ミステリーの書き方」(幻冬舎文庫)で、その狙いを語っている。お陰で私は右往左往したことを思い出した。文庫版には、単行本にはない解説対談なるものが「袋とじ」で存在する。でも明確に犯人は書いていない「袋とじ」だったのだ。そこで、此処で解説されている事実をもとに、私は「犯人はコイツだ」と決めていたのだが、後に始めたばかりのインターネットを駆使してネタバレサイトを読むと「もう1人の方」だった、という思い出を、今回ネタバレサイトをも再読して、思い出した。実は、今回、前回と全く同じ間違いをしたことを此処で告白したい。確率は1/2なのに‥‥毎度のことながら何という迂闊な‥‥。何という進歩のないことか!

    ちなみに、この頃のまるで黒子のように事件に迫ってゆく加賀恭一郎が私は一番好きである。加賀が一方の容疑者のことを「眠れる森の美女を目覚めさせる必要がありそうですね」(319p)というセリフがある。加賀の言い方に揶揄したような調子が含まれていたのは、復讐に傾いている被害者の兄の心を落ち着かせるためだけではない、と私は思う。このバレーの題名こそが、優秀なのに練馬署に加賀がくすぶっている最大の要因であることは、「新参者」に明かされている。加賀は自分をも揶揄していたのである。と今では、思いつくことができる。その決着は、今度の新作で着くのだろうか。どうも、事前評判を聞くがきりではまだまだの気がするのではあるが‥‥。ともかく、新作を読むための練習の再読であった。

  • 東野圭吾先生の加賀恭一郎シリーズ最新作「あなたが誰かを殺した」の発刊に合わせて、新装版として刊行されたもの。「ミステリ界にケンカを売りたかった」「伝説の一作」という帯の言葉に惹かれて手に取った。

    加賀恭一郎シリーズは、私にとっては2010年の日曜劇場「新参者」が原点である。当時、好きが高じてDVD-BOXまで買い、阿部寛扮する加賀の「ちなみに聞いてみただけです」の口癖がしばらく抜けなかった。書籍は本作が初読みとなる。

    冒頭、和泉園子が自室で自殺。遺体を発見した、他県の警察官で唯一の肉親の兄・康正は他殺を疑い、通報前に異常を示す証拠品を持ち出す。その後、現場検証で一人だけ特異な動きを見せる加賀。案の定、すぐに康正のもとに現れる。

    加賀は何点か確認したいと説明を求め、康正は動揺を抑えつつ慎重に答える。一通り質疑を終えた別れ際に、加賀は康正の認識の前後関係に僅かな矛盾がある点を突く。一瞬動揺が顔に出る。そう、「加賀恭一郎に嘘は通用しない」のである。

    康正は復讐を心に秘め、容疑者たちに、時には刑事になりすましてまで話を聞く。毛髪採取など次第に行動も大胆に。この辺り、警察官とはいえそこまでするかなと感情移入が削がれるも、妹へのよほどの強い執着ゆえかと思い直す。

    康正の足取りを、加賀は常に先読みし、何度も現場となった園子の部屋を確認したいと言う。あくまで個人の判断で。刑事のしつこさを超える執拗さ。封筒の開け方、蛇口に残らない指紋、ドアチェーン切断の真偽。加賀の洞察力は健在である。

    物語としては、全編を通して次々と波乱の展開が起きるというものではなく、康正の推理を中心に淡々と静かに進行していく。終盤、加賀が康正を焼鳥屋に誘い、互いの感触を探り合う駆け引きも、このシリーズらしい見せ場である。

    加賀は、事前に調べ上げた康正の高潔な仕事ぶりを引き合いに早まった行動を諌め、過ちを犯すようなら阻止すると伝える。と同時に、思い止まると信じているともいう。心の奥底まで見通す炯眼が加賀恭一郎の真骨頂である。

    結末も昨今のミステリ作品のような衝撃的なものではない。しかし、容疑者たちの自白がルーレットのように二転三転する中、康正が引っ掛かっていた加賀の意味ありげな確認を反芻し、答えが閃くも実は…という展開は十分読み応えがあった。

  • 1995年の文庫に収録されたものの新装版ということで、再読になるのかな⁇と思いながら読んでみた。

    うっすらと記憶にあるような感じだったが、加賀恭一郎シリーズが好きな自分としては、こんなラストだったことに驚いて…
    いや肝心なラストを全く覚えてなかったわぁとなった。
    完全に記憶違いか、たんに忘れていただけなのか。

    今までならもっと深みとじんわりと心を満たしてくれるものがあったはずなのだが…。と思ってしまった。




    事件は、東京でOL生活を送る園子が郷里の愛知県に住む兄へ電話を入れることから始まる。

    絶望感漂う声で、信じていた相手に裏切られて…という電話であり、週末に実家に帰ってくるはずなのに戻ってこずに連絡も取れなくなる。

    兄の康正は、交通課の警察官であり勤務が明けた月曜日に上京し、園子の死体を発見するのである。
    自殺を装っていたが妹は殺されたと確信できる手がかりがあり、ひとりで犯人を探そうとするのだが、自殺説に疑問を持つのが加賀恭一郎なのである。

    兄康正が真犯人を突き止めるためにとった偽装に加えて、もともとの犯人の偽装もあり、この複雑さを極めた謎を解くのが加賀である。

    犯人捜しと倒叙推理にどう決着が…。




  •  「二枚目の便箋の、半分あたりまで書いたところで誤字をした。何とかうまくごまかせないかと字をなぞってみたが、却って汚くなってしまった。和泉園子は顔をしかめて破りとり、くしゃくしゃと丸めて屑籠にほうりこんだ」(冒頭から三行抜粋)
     読了後改めて読み直すと重要な文章だと思う。

     兄に電話をかけた
    「お兄ちゃん以外、誰も信じられなくなっちゃったんだ」「あたしが死んだら」「きっと一番いいだろうと思う」と沈んだ声で続けた。
    12月のある日の出来事である。
    兄「あした必ず帰ってこいよ」
    園子「帰れたらね」兄「きっとだぞ」
    兄は園子が思っている以上に、妹のことを信頼してくれているようだった。
     でもあたし、そんなに強くないんだよ、と園子は電話に向かって呟いた。
     この電話で兄(和泉康正)は、たったひとりの肉親に不安を覚えた。

     園子が勤務しているのは、電子部品メーカーの東京支社だった。従業員は約三百名。本社は愛知県だが、実質的に社の中枢部は東京支社にある。兄は、愛知県警の交通課に勤務している。

     佃潤一と出会ったのは、去年の十月である。
    交際が始まった。彼は長男である。園子が潤一を紹介した相手は兄ではなく、唯一の親友弓場佳世子である。まさかこの日の出会いが破滅を呼ぶことになるとは、夢にも思わなかった。あれから数日経った。彼か佳世子のどちらかが、あたしを殺してくれればいいのに、と不吉な空想をした。
     作品の冒頭から事件発覚前までの説明です。

     東野作品の加賀恭一郎シリーズの初期の頃、26年くらい前の作品です。
    感想は、序盤から中盤へと中弛みがなく、怒涛の如く事態が展開し終盤まで突入する。康正と加賀刑事の論争と推理そして駆け引きが面白い。
     これは小説家の巧拙の違いが如実に出た作品だと思います。それにしても、練馬署の加賀刑事はヤバいですね。
     読書は楽しい。

     交通課和泉康正の職業倫理「自分たちの仕事は誰を罰するかを決めるのではなく、なぜそんな悲劇が起こったかを調べることだ」

  • 母から借りた本です。
    1999年に発売された文庫の新装版のようです。
    何十年もの間、面白い作品を執筆し続ける東野圭吾さんは本当にすごい作家さんですね。
    頭の中は一体どうなっているのかしら…。

    加賀シリーズということで、作中に加賀刑事が登場するたびに阿部寛さんに変換されました(笑)
    登場人物も少なく、三角関係のもつれから殺人事件が起きたことは明らかであり、
    ここの描写が怪しい!という箇所も見つけた気がするのですが、結局、「彼女を殺した」のは「どちら」なのかは私は最後まで分かりませんでした。
    推理の手引きを読んでもピンと来ず、ネタバレサイトを読んで初めて、「へえ〜」となりました。。
    シンプルな構成ながらも、本格的なミステリです。

  • さらっとミステリ。犯人はどっちだ!と考察しながら楽しめました。

    加賀恭一郎シリーズ制覇したいなー。

  • 加賀刑事と康正の攻防おもしろかった。
    で、結局どっちが犯人なの?とクライマックスではどっかにヒントがあるはず!と思いながら読んだ。
    結局、どっちが犯人か読者には明かされずだったけど
    きっと、あっちだな、と自分で言い聞かせる(笑)
    ネットで答え合わせ(笑)

    • harunorinさん
      ゆきみだいふくさん、初コメ失礼します(*´꒳`*)
      読書を楽しんでいる様子が伝わってくるレビューいいですね
      加賀と康正の心理的駆け引きが見ど...
      ゆきみだいふくさん、初コメ失礼します(*´꒳`*)
      読書を楽しんでいる様子が伝わってくるレビューいいですね
      加賀と康正の心理的駆け引きが見どころだったからか、結局犯人は忘れてしまいました笑
       「私が彼を…」もお時間があれば是非♪
      2023/12/10
    • ゆきみだいふくさん
      harunorinさん
      コメントありがとうございます❢
      遅くなりすみません。
      『私が彼を殺した』も読みました。
      これはまさしく挑戦状ですよね...
      harunorinさん
      コメントありがとうございます❢
      遅くなりすみません。
      『私が彼を殺した』も読みました。
      これはまさしく挑戦状ですよね。
      ネットで考察されてるレビュー観てると
      皆さん細かいとこまで読み上げてるなぁと感心させられます。
      2023/12/29
    • harunorinさん
      ゆきみだいふくさん、こんにちは
      こちらこそありがとうございます(*´꒳`*)
      レビュー拝見させていただきました。まさに挑戦状と銘打つだけのこ...
      ゆきみだいふくさん、こんにちは
      こちらこそありがとうございます(*´꒳`*)
      レビュー拝見させていただきました。まさに挑戦状と銘打つだけのことありましたね。
      わたしはなんとなく袋とじを開ける気が起きなくて笑、余韻を残しつつ、ブクトモさんの感想のなかでひとつだけ、これかなーと思うもので一旦納得して、そのうち、また忘れたころに再読読しようかなと思ってます。
      2023/12/30
  • 昔読んだが内容を全く覚えていなかったので再読。タイトル通り容疑者2人の内どちらかが女性を殺したという内容だが、最終的に犯人を明かさず結論は読者に考察させるという異例な小説。この鍵を解き明かすには改めてじっくり読み返す必要があるかも(汗)こういった遊び心も流石は東野圭吾といったところ。自ら推理したいという人にはもってこいの一作!

  • 『どちらが彼女を殺した』題名のとおり、結局、最後まで犯人はどっちなのか断定はせず、想像にお任せという感じでした。
    康正の目線で加賀恭一郎を書いたもの。この2人の探り合い、やりとりが面白くあっという間に読み終わりました。
    でも、やっぱり個人的にはどちらが犯人なのか知りたい。

  • 有能な刑事2人の駆け引きが面白い!
    2人の容疑者のうち、犯人がどちらなのか最後まで断定できないのも面白い!
    さらに、最後真犯人が確定したのに、私にはどちらか分からない( ̄▽ ̄;)
    登場人物の爽やかな解決感と反する、読者のモヤモヤ感(´・_・`).。oஇ
    これまた、真犯人がわかる人!
    教えてくださいm(_ _)m

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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