福島第一原発事故の「真実」 検証編 (講談社文庫)

  • 講談社 (2024年2月15日発売)
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感想 : 8
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  • 本 ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065328187

作品紹介・あらすじ

あなたはまだ本当の「フクシマ」をしらない!

東日本壊滅はなぜ免れたのか? 取材期間13年、のべ1500人以上の関係者取材で浮かび上がった衝撃的な事故の真相。他の追随を許さない圧倒的な情報量と貴重な写真資料を収録した、単行本『福島第一原発事故の「真実」』は、2021年「科学ジャーナリスト大賞」受賞するなど、各種メディアで高く評価された。文庫化にあたっては、同書を事故の進展を時系列で追った「ドキュメント編」と「検証編」に分冊して刊行した。

検証編は、福島第一原発事故を13年にわたって検証取材してきた報告書である。事故を巡る様々な謎を解き明かす過程をできるだけ詳細に記録することで、この事故が突きつける意味と危機における教訓を読み取る。本書の内容は、2021年2月に刊行された単行本第2部「検証―事故はなぜ起きたのか?  本当に防ぐことはできなかったのか?」をもとに新たに判明した事実を加筆した3章を加えた。

極限の危機。核の暴走を食い止めようと、吉田所長らは、爆発や被ばくの恐怖と闘いながら決死の覚悟で現場にとどまり、知恵を絞り出して、原子炉に水を入れ続けた。幸いにして、格納容器の爆発は免れたが、東日本壊滅のシナリオは現実になる可能性があった。
当時の政府のシミュレーションでは、最悪の場合、福島第一原発の半径170キロ圏内がチェルノブイリ事故の強制移住基準に達し、半径250キロ圏内が、住民が移住を希望した場合には認めるべき汚染地域になるとされた。半径250キロとは、北は岩手県盛岡市、南は横浜市に至る。東京を含む東日本3000万人が退避を強いられ、これらの地域が自然放射線レベルに戻るには、数十年かかると予測されていた。
長期にわたる取材で、この最悪シナリオが回避されたのは、消防注水の失敗や格納容器のつなぎ目の隙間から圧が抜けたりといった幾つかの偶然が重なった公算が強い。この事故では、当初考えられていた事故像が新たに発見された事実や知見によって、どんでん返しのように変わった例は枚挙に暇がない。この極限の危機において、人間は核を制御できていなかった。それが「真実」である。

感想・レビュー・書評

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  • NHKメルトダウン取材班『福島第一原発事故の「真実」 検証編』講談社文庫。

    2021年に刊行された単行本『福島第一原発事故の「真実」』をドキュメント編と検証編に分冊し、加筆修正、文庫化。

    ドキュメント編に次いで、検証編である。

    東日本大震災による津波により全交流電源の喪失したことから福島第一原発は1号機、3号機、2号機が次々とメルトダウンを起こし、1号機、3号機、4号機が相次いで水素爆発を起こした。

    この大事故により東日本一体は少なからず放射能に汚染される。冷却機能を失った原子炉の暴走を食い止めたのは皮肉にも消防車による注水の失敗や原子炉格納容器の継目からの水素の漏洩といった偶然が重なったことだった。

    最初に1号機の冷却装置であるイソコンの問題である。イソコンに関する知識不足、稼働以来40年間も試験稼働を行っていないことなど様々な問題が指摘される。

    第2の問題はベントの遅れである。メルトダウンし、上昇し続ける原子炉内の圧力を低下させるために実施すべきベントがその構造と上昇した放射線の影響で遅れる。

    第3の問題は1号機への消防車からの注水がほぼゼロだったことである。水が外部から原子炉に向かうルートに抜け道があるために注水は原子炉に届いてなかったのだ。こうした構造を所員たちが理解していなかったことが一番の問題である。

    第4の問題は津波への備えが不十分であったことだ。『想定外』を免罪符のようにかざし、過去の津波被害を無視し、責任を逃れようとしている。

    第5の問題は複雑な機構の減圧装置がなかなか機能しなかったことだ。手動と電動の複合起動による減圧装置が稼働しているのか否か解らないというのもおかしい。

    これだけの人為的なミスによる大事故を起こしておきながら、損害賠償や廃炉作業に莫大な税金が投入され、電気料金への上乗せまで行いながら、東京電力が普通に生き残っていることに納得がいかない。そもそも関東へ電力を供給する危険な発電所が東北にあるというのがおかしい。

    定価1,815円
    ★★★★★

  • 福島の原子力発電所の事故について10年以上の取材をNHKが行いまとめた

    1, 2, 3号機はメルトダウンかつ水素爆発
    停止中の4号機は水素爆発

    事故対応マニュアルの中身を知らない政府が現場に介入することで、現場に更なる負担と混乱を強いる

    当時の事故対応を検証することで、その対応策が有効だったかを振り返り、今後の事故対応に活かす

    デブリは未だに回収する目処も立っておらず、更なる災害の火種となる懸念もあり、事故はまだ終わっていない

    ネットフリックス THE DAYS

  • 2024年4月4日購入。

  • 第9章 巨大津波への備えは本当にできなかったのか
    を読んで愕然とする
    津波対策が必要だという意見が社内や業界で握りつぶされてただけではないか
    東電経営陣の責任は非常に重い

    注水がうまくいかなかったからこそ容器内の温度が上昇しなかったとか、装置が不出来だったことが結果的に大惨事を防いだとか、判断ミスがいい方に転んだとか、偶然と奇跡の連続で首の皮一枚つながった福島原発事件
    神の存在を信じてしまいそうなほどの奇跡でこの国は滅亡しなかったといえる

    だからこそ今、全原発即時廃炉以外に選択肢はない
    一度しか起きないからこそ奇跡。二度目の奇跡はあり得ない
    神様がいたとしても二度目の慈悲は与えないだろう
    再稼働や新増設を進めたら、次は地獄だ

  •  東日本大震災が起こった直後、福島第一原子力発電所の中でどのようなことが起こっていたのか、なぜ事故が防げなかったのか、逆にもっと最悪の事態にならなかったのはなぜかを詳細に検証した本。同時に出た「ドキュメント編」と合わせて読むと、当時のリアルな状況が克明にわかり、より原発の理解とコントロールできないことの恐ろしさが深まる。

     建設から40年間、一度も非常用冷却装置の実作動試験を実施していなかったことで、経験のない人間が重要な徴候を見逃していた疑惑が浮かび上がってくる。そこには、スリーマイル島という事故で教訓を学んだアメリカと、学ぼうとしない日本の違いが現れている。
     また、当時の吉田所長の英断だと思われていた海水注入が、実はまったく原子炉に届いていなかったという事実が今では明らかになっている。その海水がどこに行ったのか、取材班がイタリアでの実験などで調査を進めていくと、複雑な配管の中の低圧復水ポンプという一点の落とし穴から巨大な復水器のプールに流れ着いていたことが検証できた。
     巨大津波への対策を、電力会社同士の談合めいた慣行で遅らせようとしたり、かなり杜撰な対応もメールで明らかになっている。想定される津波の高さがわかっていながら対応を怠ったのは人災そのもので、組織としての東京電力の罪は重い。

     今回の文庫化にあたり、新たに明らかになった事実から大幅に加筆された第11章から第13章については驚きの連続だった。特に、メルトダウン寸前だった2号機が危機をまぬがれたのは、注水失敗という偶然の水不足によって「水-ジルコニウム反応」が遅れ、逆にブレーキをかけたらしい、ということだ。原子炉には水をかけて冷却し続けないと大変なことが起きると誰もが信じていただけに、この事実は衝撃だった。他にも、1号機の土台のコンクリートが消滅して宙ぶらりんになっているなど、信じられない事実が次々と明らかになっている。この他に、まだ人類が知らない、気づいていないことがどれだけあるのだろう。
     事故から十数年経っても膨大なデブリのひとかけらも取り出せていない現状を考えると「事故の真実はまだよくわかっていない」ということに尽きる。本書を読んで感じたのは、人間は原子力を扱えるほど賢くないということだ。このような状況から目をそむけて、無闇に原発再稼働を推進する政府に大きな不信を抱かざるを得ない。
     政府にあれだけ忖度している不甲斐ないNHKの中にも、このような気骨のあるジャーナリストが存在していることを知って少し安心した。本書は今後も読み続けられてほしい。

  • ドキュメント編に続き、大変なボリュームであったが読了。どのように対処すればよかったのか、何も明らかにされていないのにも関わらず、新たな原発を新設することを止めれない現実が重い。あらゆる人が目を通してほしい一冊である。

  • あれから13年も経ていまだにこれかよ…感。石棺にすべき。

  • 評価5以上の内容 素晴らしい
    解説も最高

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