きこえる

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1163
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065334546

作品紹介・あらすじ

謎が「きこえて」くる。衝撃が、あなたの耳に直接届く。物語×音声。小説を立体的に体感する、まったく新しい「謎解き」の新体験型エンタメ、誕生!突然死んでしまったシンガーソングライターが残した「デモテープ」。家庭に問題を抱える少女の家の「生活音」。何十年ぶりに再開した二人の男の「秘密の会話」。夫婦仲に悩む女性が親友に託した「最後の証拠」。古い納屋から見つかったレコーダーに残されていた「カセットテープ」。私たちの生活に欠かせない「音」。すべての謎を解く鍵は、ここにある。※この作品は「耳を使って体験する」ミステリーです。必要に応じて、本文中に「2次元コード」が登場します。そこからアクセスできる音声を聞いていただくことで物語を楽しむ「鍵」を得ることができます※

感想・レビュー・書評

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  • 聞いて初めてわかる驚きの真相… バラエティに富んだストーリーと音声効果に感動しちゃう #きこえる

    ■きっと読みたくなるレビュー
    おもろい!そしてスゴイ!

    何がスゴイって、決して音声だけに頼っていない点ですよ。言ってみれば邪道な小説ともとれるのですが、本作は音声で小説の出来を誤魔化しているわけではなく、音声をつかうことで、よりパワーアップさせている点なんです。

    さすがは数々の傑作を書いている直木賞受賞の作家先生です。各短編の小説自体が当たり前のように高品質で、短編のお手本ですかというほどの出来です。そこに音声を使うことで、倍々ゲームで面白くしてるんですよね。

    しかもバラエティに富んでる内容で、次から次へと色んなパターンで攻めてくるんです。十人十色な登場人物、様々な場面設定やプロット、そしてなにより音声効果の多様さに驚きました。

    一作目のような音声の使い方はまぁ想像できる。でも二作目以降の使い方はまったく想像だにしなかったですね、発想力に感服。音声も出来もしっかりしてるし、完全に参りました。

    〇聞こえる
    ライブハウスを経営する女性と歌手を希望する少女の物語。少女の夢を叶えるため二人は生活を共にしていたが、ある日事件に巻き込まれて…

    素敵な曲ですね~。この曲自体も道尾先生のオリジナルということで、才能がエグイよ。私にも分けてください。夢を追いかける若者の姿がこの曲のように美しく、また静かな情熱が素敵な作品でした。

    〇にんげん玉【おすすめ】
    社会人生活をリタイヤした初老の主人公は、金融セミナーに参加していた。しかしそのセミナー講師は、見覚えがあって…

    うまい、聞いて初めてわかる真実。主人公の前時代的な価値観がイイですね、私もこんな人間にならないようにしなきゃ。人間の屑っぷりが堪能できる、ユーモラスな作品でした。

    〇セミ【超おすすめ】
    都会から田舎の学校に転校してきた小学生の物語。母は離婚し、父は事故で亡くしたため、祖父母のもとで生活している彼。新しい学校の友人と仲良くなれるのか…

    道尾先生は少年時代の生活や、子どもたちの心情、友人関係を描くのが上手いよ…ちょっと泣いちゃうじゃん。目をつぶって自転車の後ろに乗るエピソードなんかは、これだけで少年時代を懐かしめちゃう。マジ素晴らしい。年齢を重ねても、損得なく笑いあえるような友達は宝ですね。

    聞こえてくる音声は、なかなかの驚愕でした。手の込んだ仕掛けを…

    〇ハリガネムシ【おすすめ】
    一流大学を卒業するも、社会でつまずいてしまい、学習塾の講師を生業としている主人公。彼には気になる女生徒がいて、立ち入った行動をしてしまうのだが…

    短編のお手本みたいな導入、その後にゾワゾワ感が満載で物語が進行し、最後には納得のオチ。シンプル分かりやすく丁寧、誰にでもおススメできる完成度が高い作品です。なお本作の音声は、全作品の中で最も「ドキッ!」としました。

    ラスト主人公のもやもやした描写が秀逸で、自分もこれまでやってきたことを振り返る、良い機会になった気がしました。

    〇死者の耳
    夫とうまくいっていない友人に頼まれ、スマホの音声を録音していた女性。そこから聞こえてきた友人のセリフは、なんと夫の死体を見つけたという内容で…

    女性の醜い部分が悲しく描かれていて胸が苦しい。きっとこれからは幸せになれるよ。読了後にQRコードにアクセスすると、なんとも腹立たしくなりました… 人間の汚さ、愚かさ、怖さが脳天を貫きました。

    新しい読書体験「きこえる」シリーズ、ミステリーに未知なる可能性が広がってシンプルに面白かった!ぜひ先生には続編を書いてほしいです。

  • すごすぎた。

    小説を読んで。
    QRコードを読み取って、読者だけが知る「音」の真実。

    それでも、最初は「?」という感覚だけがあって。
    パラパラと、文章を戻ってみる。
    思わず「なるほど」と声に出してしまった。
    読者が自力で辿り着く、という工夫が、すごく上手だと思う。

    作者が手掛けた『Detective X』というミステリーキットがあって、今年のお正月にドハマリした。
    あの感覚が蘇った。

    とにかく一度、読んで「聴いて」みて欲しい。

  • きこえる
     道尾秀介は「いけない」シリーズや、「フォトミステリーでミステリー小説の新しい試みをしてきたが、今回はミステリー+音声を組み合わせ、読者に新しい体験を与える。正直、読む前段階においてはイメージがわかないが、短編集になっている様なので、探りながら読んでいく。
     ※最後に動画を通しての解釈、ネタバレを整理。

    第一話 聞こえる
     まずは音声とミステリーの組み合わせはこういう事かと理解。また、純粋なミステリー集ではなく筆者得意のホラー要素もあり。
     若いシンガーソングライターの卵とライブハウスを経営する女性との物語。音声で謎を提起し、音声で全てがわかる仕組みだ。
     内容については筆者特有の薄暗いミステリーだが、残念ながら犯人はすぐに勘付いてしまった。過去に道尾秀介を読んでいる読者なら、必然、様々な可能性に勘づく訳で(笑)。二度目の音声が解答編に当たる訳だが、わかった時の衝撃は写真で見せる「いけない」の方が強い。

    第二話人間玉
    とある資産運用セミナーに参加した年配主人公。セミナーの講師は40代ほどの美男子。主人公は過去、投資などに失敗し、資産を無くしていた。しかし、今回参加したこのセミナーはおそらく詐欺まがいのものだと気づく。途中退席しようとした際にふとセミナー講師を以前見た事があると気づく。
     この話は道尾秀介らしく最高だ。音声を聴き、とある一つの違和感がうまれ、考えを整理して読み直すと・・・。見事過ぎて絶句してしまった。
    一番最後に解説をのせるので、音声聞いてもピンと来なかった人は解答として使って欲しい。
    少なからずこの作品を持ってして、今回の試みは成功だ。

    第三話セミ
     少年二人の友情がテーマの作品。母親がいなくなり父親が事故で亡くなった主人公の秀一とその友達で少し愚鈍な星矢の話。途中で気づいてしまう父親の死の真相。やはり道尾ワールド全開でもの悲しい雰囲気だが、秀一が本当に星矢の行動の意味を理解し二人が反省して大人達に説明すればきっと理解してもらえるし、良い結末になるだろう。最初、音声を聞いたとき、何故これを聞く必要がある?と疑問を持ったが、終盤で完全に理解が出来た。

    第四話ハリガネムシ
     とある塾講師と女子生徒。塾講師は女子生徒にUSB充電器タイプの盗聴器を渡し、女子生徒の生活を盗聴する。徐々に明らかになる女子生徒の家庭環境。再婚した母と働けなくなり酒に溺れて暴力を振るう義父。そしていよいよ娘にまでは手を出し。塾講師は激高しながら何も出来ずに音を聴くだけ。そして結末を迎える。
     今回流れる「音声」は短いもので、どの様な変化をもたらすかと緊張したが。実際に経験し、捻りは無いが納得してしまった。

    第五話死者の耳
     有名画家の息子の瀧沢鐘一と妻の怜那。怜那が友人にボイスレコーダーで隠し録音をする場面からスタート。旦那に気づかれない様にDVの証拠を録音するから協力して欲しいと依頼され、友人は渋々協力するが、怜那が帰ると鐘一は死んでおり、その場面のやり取りが録音されている。
     その後の経過により、怜那自身もマンションから飛び降りて亡くなった事、鐘一の遺体が自殺を匂わせる状態で不思議な格好で亡くなっていた事が判明する。
     今回の話は分かりやすく、妻が死んだ真相が重要だが、最後の動画で直ぐに理解することができる。最後、結末はそうなるだろうし、そういう表現が一番しっくり来るが、思わず「音声」とは?と笑ってしまった。

     作品通して面白かった。第二話についてはこの手法でしか表現出来ない叙述トリックで至高。この話だけで最高評価にできる。他の作品も、音声を通す事で世界が変化したり、解決したりするが、音声の役割が重要だが小さい様に感じてしまった。しかし、道尾秀介のチャレンジには脱帽で特に再三いうが第二話は音声で無ければならず、文字が必要で動画では成り立たない構成だ。いちいちスマホに持ち替えて動画サイトに飛ぶ手間はあるが、作品には満足しているので、ぜひ続編を読んでみたい。






    ※以降、ネタバレ





    第一話・・・父親は偽物。
    第二話・・・脅している後で若い。つまり、セミナー講師が元教師の主人公を先生と読んで脅している。主人公が脅されている側だと理解してから読むと全く違ったストーリー展開になる。
    第三話・・・星矢は家から聞こえて来る秀一の祖父母の会話を勘違いし、秀一が助からない病気になっている、お金が掛かる、星矢の心臓をもらって来る、星矢の両親はもういらないといっていると捉えた。
    第四話・・・塾講師に直接手伝う様にうったえる。盗聴器は周知していて、講師は死体の処理などを手伝った。
    第五話
     旦那は睡眠薬を飲んだふりをしていて妻の電話のやりとりを聞いている。妻がベランダに行った瞬間に起き上がり妻を突き落としてから裏切られたショックなどから自信も自殺した。

  • 最初と最後が面白かった。
    聞いた音を元に考えると謎が解けるっていう新感覚のミステリー。
    セミのストーリーはよく分からなかったのでまた聞く。

    ごく小さい音を聞きとる必要があるため他の音量が大きくなって耳が痛くなった。

  • ミステリ短編集なのですが、読むだけでは謎が解けません。なんと、作中に記されたQRコードを読み込み、その音声を聞くと謎が解ける……というなんとも凝った仕掛けの一冊でした。たとえばその音声部分を普通に表記することはできないの? って思いますが。そこはやっぱり音声ならではの仕掛けがありますし、インパクトも大きいです。
    まず「聞こえる」でやられました。歌に死者の声が、というありがちな要素がうまく表現されていて。これ、ぎりぎりで聞こえないようになってるんですよね。ただし歌が聴けるので雰囲気は充分に味わえるというそれだけのことかと思ったら……ラストで鳥肌でした。ホラーではなくミステリなんだけど、怖いってこれ。
    お気に入りは「セミ」。これだけはほっこりする物語です。ただし、「セミ」の立場になってみるとあれはどれほどに恐ろしいことだったのでしょうか。それなのに彼が決意した選択が素晴らしすぎるし、それを理解できた主人公も素敵です。
    いちばん音声ならではだと思ったのは「ハリガネムシ」。あの音声シーンにぞくっと来ました。これもとっても怖いです。

  • 本作品は、読むだけでなく聞くことによって推理する
    といった内容で発売前からとても楽しみにしておりました。
    動画を視聴することにより情景がより鮮明になり
    没入感がすごかったです。
    特に、第一話「聞こえる」、第二話「にんげん玉」は
    すごく好みの話でした。
    第一話の「朝が来ますように」という曲ですが、
    とても好みの曲ですごく良かったです。
    特に歌詞がとても良い曲だと思いました。
    購入するのでcdにして販売して欲しいと思いました。

    --------------------------
    ⭐内容
    第五話の短編

    第一話 聞こえる
    第二話 にんげん玉
    第三話 セミ
    第四話 ハリガネムシ
    最終話 死者の耳

    --------------------------

    読書期間 2023年11月24日

  • 本文中に登場する「2次元コード」を読み取り音声を再生して、真相を推理するという新しい試みの「体験型ミステリー」
    興味半分、冷やかし半分で、手に取り、読み始めて見たところ・・・
    期待値が高かった分だけちょっぴり残念って感じでした。
    読解力が足りないのでしょう
    不完全燃焼って感じの作品が目立ちました。
    そんな中にあっても、第三作目の『セミ』良かったと思いました。

  • 二次元コードを読み取り音声とともに
    読む小説
    セミ
    真相は切なかった
    死者の耳
    動いたから驚いた、
    自殺だった。
    自分を殺す会話が聞こえていて、
    突き落としてから…
    すごい仕掛けでした。

  • どうしても気になり、発売後すぐに入手。
    文字からの視覚情報プラス聴覚からもというのは
    中々に面白そうだと。

    確かに驚きはしたし、なるほど上手いなぁとは思ったものの
    なんというか…色物感以上のものを
    私は受け取る事が出来ずに読了。

  • 音声を聞きながら謎解きをするのがとても新体験で楽しかった!
    道尾秀介さん監修の謎解きゲーム【ディテクティブX】が好きな人にも特におすすめです!

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著者プロフィール

2004年『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』がベストセラーとなり、以後、『シャドウ』で本格ミステリー大賞、『カラスの親指』で日本推理作家協会賞、『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、『月と蟹』で直木賞を受賞。累計部数は700万部に迫る。

「2022年 『DETECTIVE X CASE FILE #1 御仏の殺人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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