ウイルスはそこにいる (講談社現代新書 2742)

  • 講談社 (2024年4月18日発売)
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  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065346945

作品紹介・あらすじ

ヒトはウイルスと共に生きている。私たちのからだは一見きれいに見えても実はウイルスまみれだった!
免疫学者とウイルス学者がタッグを組んで生命科学最大のフロンティアを一望!

ウイルスはつねに悪者というわけではない。われわれの身の回りには病原性を持たないウイルスがいくらでもいる。われわれのからだの表面や気道や消化管の内腔には多くの細菌が存在して常在細菌叢を形成しているが、実はこれらの場所には多種多様なウイルスが同時に存在していて、常在ウイルス叢というものが存在する。
さらに、私たちの遺伝子の中には非常に多くのウイルス由来の配列が散在している。これに加えて、ウイルスそのものまでがゲノムの中に挿入されていることがあり、その一部はなんとヒトの遺伝子として働いていることがわかってきた。つまり、ウイルスは外界からの侵入者ではなくて、一部のものはわれわれの体内に棲みついて、われわれはそれを利用しているのである。われわれのからだという「母屋」がウイルスに「軒を貸した」状態になっていて、まさに「ウイルスはそこにいる」のだ。

●なぜ感染すると病気に?
●ミクロの世界で繰り広げられる 驚きの攻防戦とは?
●新型コロナウイルスは持続潜伏する可能性が
●巧妙な仕組みで体内に潜伏する肝炎ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス
●子宮頸がんウイルス、麻疹ウイルス、エイズウイルス、EBウイルスなど、体内に潜伏する病原体

【本書の内容】
第1章 新型コロナウイルスでささやかれる持続感染の恐怖
第2章 ウイルスとは何か
第3章 ウイルスに感染すると、なぜ病気になるのか
第4章 ウイルスがからだに潜り込むカラクリ
第5章 厄介な潜伏ウイルスたち
第6章 病原性ウイルスvs.人類 ミクロの世界で繰り広げられる攻防戦
第7章 ヒトのゲノムに入り込んだウイルスたち
第8章 医学でウイルスを克服できるのか

感想・レビュー・書評

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  • ■ウイルスの大きさは通常は0.1マイクロメートル以下で、多くはナノメートル単位であり、電子顕微鏡でないとその姿を確認できない。一方、細菌は通常、マイクロメートル単位で光学顕微鏡で見ることができる。
     ウイルスは生命の最小単位とされる細胞を持たず、タンパク質の殻と核酸からなる粒子である。ミトコンドリア(エネルギー産生に関わる細胞内小器官)を持たないので、自分でエネルギーを作ることはできない。また、リボソーム(タンパク質合成に関わる細胞内小器官)を持たないので、自分でタンパク質を作ることもできない。
     宿主細胞の中に入り込んで、宿主細胞のタンパク質合成機構、代謝機構やエネルギーを借用してはじめて増殖が可能になる。
     教科書的には「ウイルスは細胞を持たず、自分でエネルギーを作れないだけでなく代謝もできない。したがってウイルスは生物ではない。」と書かれることが多い。
    ■インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスでは、呼吸器系の上皮細胞に感染して細胞内でウイルスが増殖すると、細胞が急いで炎症性サイトカインを作り始める。炎症性サイトカインとは、炎症を起こすサイトカイン(=細胞同士が互いにシグナルをやり取りするときに使う一群のタンパク質)のことで体に敵が侵入してきた際の警報役として機能する。

  • コロナの頃もウイルスの本を何冊か読んだが、何度読んでも不思議だ。
    ウイルスが意思を持っているように表現するのは誤りなのだろうが、免疫系を巧みにくぐり抜けて駆け引きし、狡猾に生き延びようとする様子は戦略的としか思えない。
    ウイルスと生物はこんな競争を何億年も繰り返してきたのだからヒトの時代になっても何も変らない。それでもヒトが知恵を武器にして、ウイルスを退治はできなくても手なずける範囲が増えているのはとてつもなく偉大なことなんだ。
    腸内細菌の話はよく聞くが、私たちの身体には細菌叢ならぬウイルス叢があって大事な役割を果しているというし、私たちの遺伝子にもウイルス由来のものがたくさんあるという。私達はまさにウイルスまみれ。これも何億年も同居してきたことの現れなのだろう。

  • 491.7/ミ

  • 有り S491/ミ/24 棚:13

  • ウイルスは常に悪者とは限らない。それどころか人のゲノムにはウイルスが組み込まれているのだとか。
    宿主がいないと増殖できないけど、コピーと変異を特色とするウイルスって実は進化を支えてきたんだろうね。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1333352

  • 【おすすめポイント】私たちはある時はウイルスと闘いながら、ある時は共存共生して生き抜いて進化してきました。今後はいかに対処し共存していくかが大事でそのためには正しく知る必要があります。数あるウィルスの中でも私たちの体に潜むあるいは可能性のあるウィルスに絞って免疫学者とウイルス学者がウイルスや免疫についてわかりやすく解説します。
    【請求記号】491.7:Mi
    【配置場所】2階
    【URL】https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28224802

  • EBウィルスと多発性硬化症
    プラス鎖
    そのままメッセンジャーRNAを造れる
    トランスポゾンは進化の為に重要

  • ウィルスは病原体としてではなく体内にも遺伝子の中にも存在する。
    コロナウィルスから老化の原因と考えられるウィルス由来の遺伝子までほとんど知っていた事柄をわかりやすくまとめて解説している。
    中学生くらいまではヒトの体を合成できるのではないかと機械論的に想像していた。その後腸内細菌叢などの存在から無理な話だと理解していたが、細菌どころかウィルスまで関連しており生命の複雑さを改めて実感した。
    ウィルスが進化して細菌になったのか、知りたいところだ。

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著者プロフィール

宮坂 昌之(みやさか まさゆき)
大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授。一九四七年長野県生まれ。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。金沢医科大学血液免疫内科、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所を経て、大阪大学医学部教授、同・医学研究科教授を歴任。医学博士・PhD。著書に『分子生物学・免疫学キーワード辞典』(医学書院、共著)、『標準免疫学』(医学書院、共著)、『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何『免疫力を強くする 最新科学が語る免疫とワクチンのしくみ』『新型コロナ 7つの謎』(いずれも講談社ブルーバックス)『新型コロナワクチン 本当の「真実」』など。

「2022年 『新型コロナの不安に答える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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