地中海世界の歴史2 沈黙する神々の帝国 アッシリアとペルシア (講談社選書メチエ)
- 講談社 (2024年4月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065354261
作品紹介・あらすじ
メソポタミアからローマ帝国まで、「地中海世界」4000年の歴史を、古代ローマ史研究の第一人者が描きつくす全8巻シリーズ。講談社選書メチエ創刊30周年特別企画。
第1巻と同時発売の第2巻は、ローマ帝国に先立つふたつの大帝国、アッシリアとペルシアの興亡を、大胆な仮説と人類史の大きな構想のなかで描く。
第1巻で語られた「人間が神々の声を聞いていた時代」は、紀元前1000年前後を境に大きく変容する。神々の声が人々に届かなくなっていくのである。それには、アルファベットと貨幣の発明が関係あるのだろうか――。この頃、ヘブライ人の唯一神への信仰も深まっていく。そしてこの後、「世界帝国」と呼ばれる大覇権が形成され、地中海世界の秩序は大きく変動する。
周辺地域の騎馬遊牧民や、東地中海の「海の民」の影響を受けて台頭した軍事国家アッシリアは、「強圧の世界帝国」として他を圧倒。一方、アッシリアの後にさらに大領域を治めたペルシアは、征服した諸民族の文化と信仰を尊重して貢納関係を結び、「寛容の世界帝国」をなした。これら世界帝国は西の辺境ギリシアに新たな都市国家を生み、後のローマには学ぶべき広域帝国の前例を残したのだった。
目次
はじめに
第一章 人類最大の発明
1 初期アルファベットの誕生
2 ヘブライ人の唯一神
3 貨幣の出現
第二章 強圧の世界帝国アッシリア
1 軍事国家の台頭
2 最初の「世界帝国」へ
3 帝国の分裂と文明の終焉
第三章 寛容の世界帝国ペルシア
1 キュロス王からダレイオス大王へ
2 パクス・ペルシアーナ
3 ギリシアとの戦争
第四章 神々の沈黙と「枢軸時代」
1 預言者たちとユダヤ教
2 イラン高原の宗教運動――ゾロアスター教
3 汝自身を知れ――人間の魂の発見
4 インド・中国の覚醒者たち
おわりに
感想・レビュー・書評
-
オリエントの歴史についての本。
メソポタミアからローマ帝国まで、4000年の文明史を一人の歴史家が書下ろす。と題する地中海世界の歴史全8巻のうちの第2巻。
タイトルは『沈黙する神々の帝国』副題にアッシリアとペルシアとある。本書を読む前に、早くもここで疑問?
まずは、神々が沈黙するとはどういうこと?
次に、ペルシアは言わずと知れた大帝国、そんな大帝国ペルシアとアッシリアを副題で同列に並べている。アッシリアってそんな大帝国だったの?
また、この本の表紙をよく見ると人物の写真。ひょっとしてアッシリアのアッシュルバニパル?ペルシアのキュロス2世でもなければダレイオス大王でもない、アッシリアの王が表紙を飾っている。自信と威厳に満ちた表情。帝国の支配者としてのオーラを感じるが、なぜこの人?
僕が尊敬する出口治明先生もある本で「本を選ぶときにお薦めなのは、まずは表紙の綺麗な本を選ぶこと。表紙がいい本は、出版社も力を入れているはずなので、優れた本が多い。」と言う。同感だ。表紙は大事だ。
その答えは本書を読むとなるほど、そういうことかと理解できる。
周辺国を軍事的に圧倒した強圧の世界帝国アッシリア、征服した諸民族の侵攻や習俗を尊重して貢献関係を結び、寛容の帝国を築いたペルシア。対照的な2帝国の歴史だが、なぜかアッシリアの歴史に魅力を感じる。
表紙を飾るアッシュルバニパル。彼は文字が読めることを誇りに思い、文書を収集することに興味を覚えたようだ。彼が集めた文書は図書館に保管され、その遺跡は今でも見ることができる。この図書館に保管された文書のお陰で、メソポタミア地域全体の歴史が現代まで克明に残される。文書も紙ではなく粘土板に書かれたことが、長期間の保存に耐えることができた。
なるほど今こうして、アッシリアの歴史に触れることができるのも、アッシュルバニパルの功績だ。
まだまだこの本の魅力について語りたいことがたくさんある。アルファベットについてもそう、ペルシアについてもそう、枢軸時代にも言及されてますよね。何て本を書いてくれたんだ本村先生は。読み始めたら面白すぎて止まらないじゃないか。しかしながら、もうすぐ夜が明けそうだ。会社に行かねば。本を購入するための軍資金を稼ぐために。
因みに、第3巻は、エーゲ海とギリシアがテーマ。ああ、もうどうにも止まらない。詳細をみるコメント0件をすべて表示