王墓の謎 (講談社現代新書 2745)

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  • 本 ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065358122

作品紹介・あらすじ

「王墓はなぜ築かれたのか?」
本書のテーマは、この素朴な疑問である。
エジプトのファラオが築いたピラミッド、中国の皇帝たちが造った山陵など、
人類史には王の埋葬のためのモニュメントが数多くある。
それらは、王が自らの権力を誇示するために築造したと考えられている。
したがって、王墓の大きさは権力の大きさに比例する、
王墓は王の権力の象徴にほかならない、という理解が常識とされており、
教科書にもそう書かれている。
しかし、本書ではこの定説に真っ向から反論し、
新たな視野から王墓を理解することを目的とする。

本書では、王墓にまつわる次のような謎に挑む。
・「王墓=権力の象徴」説は、いかにして定説になったのか
・王墓は、権力者が命じた強制労働の産物なのか
・墓造りのエネルギーを、なぜ農地の拡大や都市整備に投下しなかったのか
・葬られたのは「強い王」か「弱い王」か
・高価な品々が、なぜ一緒に埋められたのか
・なぜ人類は、世界各地で王墓を築いたのか?
・「大洪水伝説」が残る地域と、王墓の誕生した地域が重なるのはなぜか
・王墓は、危機に瀕した社会が生き残るための最終手段か
・王が神格化され強大な権力を持つと、王墓が衰退するのはなぜか

この本は、「王墓=権力の象徴」というステレオタイプな理解で停止してしまっている
私たちの思考を根本から問い直すものである。

王墓は、王自らの権力欲のためのものではなく、
人々が自ら進んで社会の存続を王に託した時に、はじめて誕生する。

王墓は、王を神へ捧げるための舞台であり、
権力や富の集中を防ぐために、人類が発明した優れた機構なのだ!

古代史ミステリーの「定説」を覆す、必読の書!

感想・レビュー・書評

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  • 権力を後世に残すためではなく、神聖性を軸に同時代に生きる人々が共有するための墓、という見方はなかなか面白く、そして妙に納得出来る主張。ただ、筆者の指す「神」がなんなのか、超越的な力を持ちうる概念全般と受け取っていたが、終盤では「全知全能の神」なる存在に置換されていたことに違和感を持った。無謬の神、おおよそ唯一の存在、というのは考古学的前提としてやや危ういと思う。まあそれはともかく、王墓の来し方を無批判に受け入れていた事に気づかされたという意味でもよい本だった。

  • なかなか面白い着想の問いかけだと思うのだけれど、決定的なモノがあんまり説明出来てなくて、結局説明出来てるのかなんなのか分かりにくかった。

  • 有り S209/カ/24 棚:13

  • ピラミッドや始皇帝陵、そして日本の古墳といった巨大な王墓はなぜ誕生したのか。一昔前のステレオタイプな考え方では、絶大な権力者であった専制君主が亡くなった際に、その栄光を永久に示し続けるためのモニュメントとして、奴隷的な労働と何十年にもわたる歳月をかけて造られたという説が主流だった。

    近年になって(グレーバーの『万物の黎明』等)、王という存在が決して専制的に権力を保持していたわけではなく、洪水や戦争といった災難に対して自己犠牲的に神への祈りを捧げ、その祭壇としての王墓が災害が激甚化するにしたがって巨大化していった説が出てきている。

    また王墓に副葬品として埋められる貴金属などの装飾具についても専制君主の経済力を示すというよりも、むしろ権力の集中を防ぐためにインフレ対策として財産を没収していたという新たな見解が示されている。

    筆者は長く国立博物館の学芸員を勤め、とくに奈良の古墳などに詳しい立場にある。日本の古墳時代にいきなり巨大な王墓が出現し、それが衰退していった理由を長年追い求めてきた中で、従来の学説を翻すのは勇気の要ることなのかもしれない。

  • 209-K
    閲覧新書

  • 東2法経図・6F開架:B1/2/2745/K

  • 【蔵書検索詳細へのリンク】*所在・請求記号はこちらから確認できます
     https://opac.hama-med.ac.jp/opac/volume/482273

  • ピラミッド、墳丘等の王墓について新たな観点を提唱する本。つまり王墓が王の権力を誇示するためのもの、平民や奴隷がそのために酷使されたという定説に根拠が薄いことを示す。
    そもそもは王の定義、あり方、実体に関わる。権力者ではなく、単なる施政者とか。

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