息のかたち

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  • 講談社 (2024年7月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784065361733

作品紹介・あらすじ

ひょんなことからひとの「息」が見えるようになった京都の高校生・夏実の物語。

どんな世界になっても息づくいのちの躍動を描いた青春小説。

コロナウイルスという「目にめーへんややこしいもん」にも変えられないもの。
突然の休校や陸上大会の延期、急なモテへの戸惑い、そして受験と進路……
コロナ禍の「青春のかたち」を切り取った、待望の作品集。

息は、光は、そこにある。気に留めるか、留めないか、そのちがいがあるだけ。

感想・レビュー・書評

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  • 河原をランニング中、飛んできたバットが後頭部にあたり、夏実はひとの吐く息の色かたちが目にみえるようになった。

    私がまず感じたのは、主人公は夏実ではなく「息」だということ。

    息は自由で、つかみどころがなく、色や形をかえるし、はるか遠くまでいくことができる。
    コロナ禍の話なので、息苦しく感じるところもあった。

    夏実を通して私には見えない、息の世界を見せてもらえたと思う。
    不思議な小説で読者により、感じ方はかわるだろう。
    私にとっては、わかりやすい言葉で表現したわかりにくい小説だった。

    • きたごやたろうさん
      分りました。
      私は基本的にはネタバレになるような感想は記載しない主義なんですが、ギリギリのところで感想を書いてみますね。
      分りました。
      私は基本的にはネタバレになるような感想は記載しない主義なんですが、ギリギリのところで感想を書いてみますね。
      2024/11/13
    • ミユキさん
      楽しみにしています。
      あ、急がないですから…
      楽しみにしています。
      あ、急がないですから…
      2024/11/13
    • きたごやたろうさん
      ありがとうございます。
      図書館にありましたが現在貸し出し中なので、まずは3週間は私に順番がまわって来ません。
      読み始めはそれ以降になりま...
      ありがとうございます。
      図書館にありましたが現在貸し出し中なので、まずは3週間は私に順番がまわって来ません。
      読み始めはそれ以降になります。
      気長にお待ちくださいませ。
      2024/11/13
  • 新型コロナが蔓延した2020年~2023年にかけて、人は人の吐く息というものに対して異様なまでの嫌悪感を抱いていたように思う。
    「飛沫」や「エアロゾル」という言葉自体にも強烈な忌避感があったのではないだろうか。

    著者は、コロナ禍の人々の息遣いを、それとは真逆の色とりどりで生き生きとしたものとして描いている。
    見境なく周囲を疑っていたあの頃、もしこんな風に人の息遣いが見えていたらもっと穏やかな気持ちで過ごせたのではないかと考えてしまう。

    主人公の夏実を取り巻く大人も皆魅力的。
    京都が舞台なのも少し時間の流れ方が違う感じがしてくつろいだ気持ちになれる。
    ただ最後の方の夏実と母のエピソードが唐突な感じがした。
    祖母と父と暮らしているのは、読んでいれば分かることだが、母の話を引っ張りすぎたような...もう少し欲しかった気がする。

  • 高2の夏実はひょんな事から他人の息が見える様になる。どうも遺伝らしい。読んでいると透明感溢れるパステルカラーを想像する、が、これは20年から24年までのコロナ禍の時代が舞台だと思うと切なくなる。あの頃の狂気溢れる自粛警察を思い出すからだ。不思議な世界なのに絵空事に感じなかった。

  • あることがきっかけで人の息のかたちが見えてしまう夏美の不思議小説。コロナが世間を席巻したあの時の設定。確か咳をした時にどんなふうに咳が広がっていくのか盛んに画面で説明していたっけ。それと同じように主人公には人それぞれの息のかたちが色付きで見えてしまいます。なんだが不思議でフワフワした小説。また、主人公が住む京都の街並みと京都弁がとてもマッチして浮かんできます。

  •  良い作品に出会えると、読み進む喜びと読み終わりが近づく哀しみが交差する思いになる。ページという物理的な存在が残り少なくなっていくことを目と手で確認しながら読む紙の本の醍醐味のひとつかもしれない。
     この本も私にとってそういう本となった。深い呼吸をしながら俯瞰で世界を捉えることを想像しながら読んだ。

     高校2年生陸上部女子の夏美は、小学生が手を滑らせて離してしまったバットが後頭部に当たってから人の息が見えるようになった。人それぞれに色や形が異なる息を見ている中、ひとりの男が息をしていないことに気づく。しかし、その男は息をしていないのではなく、、、、、
     そこから夏美の息の修業が始まる。

     息の力のすごさを改めて教えてくれるこのお話しは京都が舞台。
    登場人物は京都弁で話す。
     万城目さんとかの本を読んでいる時も思うのだけれど、関西が舞台のお話しの地の文は頭の中で関西弁のイントネーションで読んだほうが良いのだろうか?
     関西の人が小説を読むときは、地の文は関西弁のイントネーションで読んではるんやろうか? そこ、ウチにはようわからんとこなんです。
     どなたか教えてくれまへんか。(叱られる前にナンチャッテ関西弁は撤収)

     流麗な京都弁は美しい。特に年配の女性の言葉は。
    聞いていて涼やかな風が流れているように感じる。息もそういうものなのだろう。この作品で忙しなく浅い呼吸で生活している自分に気づくことができた。

     超おすすめの作品です。ていねいに読んでくださりたい。

  • 京都の町が迫ってきた。(おばあちゃんの京都弁がいいなぁ。)
    コロナを描いた本はたくさんあるが、こんな淡々として、しかも肯定してるのがなんかよかった。息でコロナを描くのがさすがって感じ。
    読み始めは現実的で、アニメの話や高校生の青春の話からどんどん幻想的になっていって、
    最終章、お母さん、結局なんやったの?
    霧の中に迷い込んだみたいに、まさに煙にまかれた感じがして、その余韻がいいけど、はっきりさせてほしい気持ちもある。

  • なんだか不思議な話です。
    コロナ禍を背景に、ある出来事から他の人の息の形が見えるようになった女子高校生が主人公。もっともこの変わった能力は血筋らしく、祖母も父親も息の形が見えるらしい。そんなちょっと変わった能力を持った家族の普通の物語。
    祖母は茶人、父は宮大工。主人公の女子高生は初めは陸上選手だが、途中からは絵画の世界で才能を現す。舞台である京都の町はどこか柔らかく雅、そして清涼感。
    それにしても、いしいしんじってこんなに文学的だった?私の知ってるいしいしんじは『トリツカレ男』や『ポーの話』などの児童文学。それらとはかなり文体が違い、凝ったどこか抽象的な表現。しばしばそれにまぎれて具象を見逃し、話の展開が見えなくなって、前から読み直す事も何度か。
    もっとも、なんか結論の様なモノを求めるのではなく雰囲気を楽しむ物語ですね。そう見れば、コロナ禍の世界をフワフワと、でも綺麗な色彩感で、結構良い感じです。

  • コロナ禍の京都が舞台の青春小説。高校生の夏実はランニング中に金属バットが後頭部に当たったことがきっかけで不思議な能力に目覚める。それはひとの【息】が様々な色や形を持って目に見えるという。どうやら祖母と父から受け継いだ遺伝で…。その力を持っているからといって夏実にメリットはないし、大きな出来事に見舞われるわけでもない。ただ、不思議な力を持つ夏実がコロナ禍の日常を送る物語だ。地域では小学生と交流を持ち、学校では友達に囲まれ、進路に迷いながらも祖母と父に見守られ前を向いて生きていく。京都の雰囲気を楽しむ。

  • 京都で暮らす高校生で陸上部の夏実は、ジョギング中に近所の子供が手をすべらせた金属バッドが後頭部に直撃、以来、人間の吐く「息」が視覚化して見えるようになる。家族に話すと、どうやらこれ遺伝的体質らしく、祖母も父も他人の息が見えると言う。夏実はジョギングコースのベンチで出会った合気道の達人おじさんに弟子入り、呼吸法を指南してもらい、自分の息を自在に操れるようになるが、やがてコロナ禍が世界を襲い…。

    呼吸が視覚化して見えるという設定はユニークでした。しかしそれをまるで道具のように自由自在に操れるようになるとなんかファンタジーから急に少年漫画のバトルものみたいになっちゃう。鬼滅の〇〇の呼吸!みたいな(笑)

    コロナにかかってるひとの吐く息がわかり、それが風に流されて飛んでくるのを自分の呼吸でせっせと排除するとか、すごいんだけど、呼吸が見えるだけなら「そういうことあるかもね」と笑って受け入れられたのが、急に
    「ありえない」みたいな気持ちに。

    「息のかたち」「桃色吐息」「息してますえ」と連作形式になっており、最後の「息してますえ」ではついに主人公もコロナに感染ホテルに隔離生活に。あれ、他人のコロナは見えたのに自分は検査しないとわからないのか…。

    あとこれ個人的に急に気づいたんだけど、私、京都が舞台の、京都弁の現代小説ってちょっと苦手かもしれない…(※京都生まれの京都育ちです)なんかちょっとした言葉のニュアンスで「こんな言い方するかなあ?」とか、気になっちゃってダメ(^_^;)

    いしいしんじは源氏物語の京都弁訳も「はるんはるんうるさいねん!」とちょっとイライラしてしまったのだけど、今回も「いちいちはんねんはんねんいうな!なんぼ京都人でも敬語は目上にしか使わん」って思っちゃったりして、私の性格が悪いんですね、変なところにひっかかって、内容自体は何を伝えたいのかあんまりわかんなかった…。

  • 高校生の夏実は、ジョギング中に金属バットが頭にあたった日から、人の息が見えるようになった。そして、どうやらそれは父親も祖母も同じだということも知った。そんな夏実のコロナ禍での高校生活を描く3連作。
    不思議な設定なのに、不思議さを感じさせないところが面白かった。
    3番目の「息してますえ」が、一番好きだ。

  • コロナ禍、京都で高校生活を送る少女の物語。
    ひょんなことからひとの「息」が見えるようになった夏実、実は父も祖母も見える人だった…
    不思議な事なんだけれど、京都が舞台だと自然に受け入れられるのは私だけだろうか。
    息が色づき、動き…生きるというのはそういうことなんだと感じた。
    色鮮やかな世界が描かれ、懸命に生きている姿が描かれ、ふわっとした空気を感じながらも心にスッと溶け込んでくるような優しさを感じた。
    多くは語られない夏実の母にも思いを寄せずにはいられなかった。
    コロナは今もなお続いているけれど、発生当初の息詰まるような雰囲気は今はない。
    当時を思い出しながら、夏実の青春の日々を思いながら読んだ。
    呼吸を意識しながら過ごそうと、ふとそんなことを思った一冊。

  • ある日金属バットが頭に当たった夏実は、人の吐く息が目に見えるようになる。そんな彼女のコロナ禍の日常、事件、悩みながら決める進路などのおはなし。色とりどり、形も様々にあらわれる息が素敵。息をしているとはつまり生きていることとおんなじであって、息のかたちを見られている側はどこか深いところに触れられるように感じてしまうがために夏実が急にモテモテになってしまうという事件が面白かった。古代ギリシアでプネウマ(息)が生命のもと、命そのものとされていたのを思い出す。私たちは自分でも知らぬうちに常に命のかたちを吐き出していて、それがちぎれては世界に満ちているなんて、なんてロマンティックなんだろうか。
    3章の展開はちょっと唐突に感じたが、おばあちゃんの「息してますえ」の一言はすごく好き。その場の緊迫した空気をさっと払うユーモアもあるけど、この小説の「息」のイメージの豊かさによってコロナ禍のやるせなさをやわらげる感じが良かった。夏実も家族も、周りの人々も、たくましく息をしてそれぞれの生活を生き抜いている。


  • ⭐️息のかたち
     息が見え、操ることができる家系の夏実。コロナ禍の状況を背景に、インターハイは中止だが、オリンピックは開催、進学問題、母への想いなどが描かれる。ファンタジー要素があるが、なかなかいい感じ。おばあちゃんの「無事、いうのんは、危険がないとか、大事のうて平穏やとか、そんな意味やあらへんねん。おきとことの、自然にまかす、いうことやねんて。」という言葉が刺さった。素敵なキャラだ。

  • なんとも言えない。
    文体が好きだから読めたけど、内容はうーん。
    とはいえ、コロナがあったからこそ生まれた文学。どんな状況も文化を生み出す。
    コロナを知らない世代が読んだら意味わからんのやろうなあ…。

  • 息の形が見えるようになったら。
    それぞれの息、それぞれの形。

  • 『金属バットが頭に直撃したその日から、夏美はひとの口から出る吐息が目に見えるようになった。』
    で始まる、コロナ禍の青春小説。
    いしいしんじさんの本はふわふわとした不思議な読後感がある。
    関西の言葉もテンポ良く、2つめの『桃色吐息』の章は面白かった。

  • 慌ただしい暮らしの中でまとった固い表皮を、ペリペリとはがして、ティーンの頃のようなヒリヒリする肌と心の感覚を思い出させてくれる本だった。
    穏やかで、何となく懐かしい物語。
    子守唄を歌ってくれた母の、ささやく歌の間に絡まる吐息を思い出した。

  • 息や声、いしいしんじは見えないものを描こうとしている、と思った。
    私たちは冬の寒空の下でしか、白く染まった息を見ることができない。その息が見えて、操って物理的な力を行使したり、人の心に作用するのは面白い。
    息繋がりで、鬼滅の刃の話題が出たが、そこから着想を得たのだろうかと思ってしまった。

  • 息で見えるつながる気持ち。
    見えないけど確かにあるものが見えるというのは不思議な感じふぁする。

  • 着想が面白く、表現にも瑞々しさを感じた。
    でも、進むにつれて難解になって私の頭脳を超えてしまった

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著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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