春のほとりで

  • 講談社 (2024年8月21日発売)
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784065363010

作品紹介・あらすじ

十代のあなたに会いにいこう。
声を殺して泣いた日も、無理して笑ったあの日も。
ぐっと押し込めた心の痛みを、君嶋彼方は掬いとる。
学校の片隅で紡がれる、青とも春とも限らない日々を描いた連作短編集。

■収録作品
走れ茜色 「俺と同じ人を好きな君。だからこの嘘は、絶対に隠し通す」
樫と黄金桃 「小学生時代の忘れたい過去。あの子だけがそれを知っている」
灰が灰に 「屋上で出会った不良。ある日、彼に屋上に呼び出されーー」
レッドシンドローム 「偶然見つけてしまった親友の裏アカ。一体どうしてこんなこと」
真白のまぼろし 「初めて漫画を描いていると話せた友達。一緒に描こうと決めたのに」
青とは限らない 「唯一心を許せる男友達。男女の友情って成立しないの?」
大人になれば忘れてしまう、全力でもがいたあの日のこと

『君の顔では泣けない』の著者最新作
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感想・レビュー・書評

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  • 推し作家さんの1人である君嶋さんの良さが詰まったような素敵な青春作品だったと思います。最近、仕事で荒んでいた私の心にもすっと沁み入るような、嫌味がなく、そしてしつこくない、良い塩梅の青春加減でした。

    本作は、ある高校を舞台にした6篇からなる短編集。同じ人を好きになってしまった2人の関係性を描く「走れ茜色」。小学校の時の旧友と再会し、過去の秘密がバラされることに怯える主人公を描く「樫と黄金桃」。ある不良と、クラスで酷い扱いを受ける主人公との交流を描く「灰が灰に」。クラスの友達のとんでもない裏アカを見つけてしまう「レッドシンドローム」。初めて漫画を描いていると打ち明けた友達との関係を描く「真白のまぼろし」。男友達との友情を描く「青とは限らない」。

    まず、若い作家さんということもあって、学校の描写がすごく現代に近いうえ、価値観も現代の若者っぽい感じが、作品にリアリティを生み出しているように感じました。そして現代の若者の繊細な心理描写という点では君嶋さんは素晴らしかったと思います。

    君嶋さんは、過去作で男女の入れ替わりや、アロマンティックアセクシャルを見事に書き上げた丁寧な筆致ということもあり、それが複雑化する現代の若者の繊細な心情を描くのに上手くマッチしていると個人的には感じました。

    これまでの作品ももちろん好きなのですが、個人的には今作が1番好きかもしれないです。住野よるさんとか好きな人は本作はたまらないのかなと思いました。

  • 「10代のあなたに会いに行こう」の言葉に誘われて手に取ってみた。
    残念ながら…10代の私には会えなかった。
    だって、みんなスマホも普通に持ってるし。
    描かれている時代が、ごく最近のことのように思えた。
    20代位の方がしっくりくる物語かも。
      
    でも、クラスでマウント取り合うこと、すぐに恋愛ネタに絡めてくることなどなど、いつの時代も同じようなことが繰り広げられているんだなぁと、ちょっと懐かしくなった。
    ラストの繋がり方は予想通りで、スッキリ!

  • ある高校2年生のクラスメートたちの連作短編集。

    青春って青い春って書くけど、青く爽やかって感じじゃなくて、まだ熟してなくて青くて苦いストーリー。

    みんなそれぞれ苦い思い出やリセットしたいことがあり、それを隠して高校生活をスタートする。でも、それがうまくいく場合もあり、時に綻びが見えたりして、みんな悩み苦しんでいる。

    最後の章が総まとめ的で、ありがちな話なんだけど、そう持ってくるかと、感心。

    君嶋さん作品を読むのは2作目だけど、繊細な少年少女から大人に向けて成長する不安定な高校生の姿がリアルに描かれていて、こちらの方が好み。

  • 学校の片隅で紡がれる、青とも春とも限らない日々を描いた連作短編集。(作品紹介より)
    君嶋さんの作品は、初読みでした!
    最後の短編で一気に繋がっていくところが楽しかったです。伏線とっても楽しめました。他の作品も読んでみたいです。
    読解力なくて(ToT) “ホワイトパレット”の作者…あれ?ってなりました。

  • 高校生活、青春真っ只中、一見溌剌と、キラキラ輝いて何の屈託もない時代かと思われる時ではあるが、実は自分の居場所探しや、どんな立ち居振る舞いをすれば安息に日々が過ごせるか思い悩む一番しんどい時かもしれない

    私も人一倍人見知りだったため、新学期はしんどかった
    新しい教室に入り、級友の自己紹介を聞きながらどの子となら仲良くなれそうか考えた日々が懐かしく、ちょっと胸の痛みまで思い出す

    大人から見ればどうってことない、その時代特有の心の痛みや内面の掬い取り方が上手いなと思った

    特に、私は「走れ茜色」と「灰が灰に」が心に残った

    最後章で明かされる六章の構成と繋がり
    全部担任が冬木先生だったので、まんまと騙された
    なるほどそういうことだったのか

    もう一度最初に戻り、各章を振り返ってみた

    まあ、高校なら10年ぐらい勤務している先生も確かにいるからこんなトリック?も可能だと納得

    期せずして私のお気に入りの二編とも10年前の高校生の作品だった


  • デビュー作『君の顔では泣けない』から追い続けている君嶋彼方作品。

    本作も瑞々しさに満ち溢れていた。

    「走れ茜色」
    「樫と黄金桃」
    「灰が灰に」
    「レッドシンドローム」
    「真白のまぼろし」
    「青とは限らない」
    各話のタイトルに色が入った6話収録の連作短編集。

    とある高校を舞台に繰り広げられる青春小説だがこの年代ならではの心理描写がリアル。

    大人でも子どもでもない彼らの純粋さや未熟さ、承認欲求など全ての感情が鮮明に浮かび上がる。

    読み進めるうちに感じる繋がりと違和感。
    最終話の伏線回収で構成の妙に感動した。

    あなたの青春は何色ですか?

  • Amazonの紹介より
    十代のあなたに会いにいこう。
    声を殺して泣いた日も、無理して笑ったあの日も。
    ぐっと押し込めた心の痛みを、君嶋彼方は掬いとる。
    学校の片隅で紡がれる、青とも春とも限らない日々を描いた連作短編集。

    ■収録作品
    走れ茜色 「俺と同じ人を好きな君。だからこの嘘は、絶対に隠し通す」
    樫と黄金桃 「小学生時代の忘れたい過去。あの子だけがそれを知っている」
    灰が灰に 「屋上で出会った不良。ある日、彼に屋上に呼び出されーー」
    レッドシンドローム 「偶然見つけてしまった親友の裏アカ。一体どうしてこんなこと」
    真白のまぼろし 「初めて漫画を描いていると話せた友達。一緒に描こうと決めたのに」
    青とは限らない 「唯一心を許せる男友達。男女の友情って成立しないの?」


    今迄の君嶋作品では、男女入れ替わりや時間を止めたり、恋人がアロマンティック・アセクシャルだったりとちょっと特殊な設定だけれども、登場人物達の心理描写が繊細で、この状況にどう対処していくのか、どこかリアルさが際立っていました。

    今回の作品は、より現実的で、高校生達が初めての体験をすることで垣間見る心のモヤモヤ感や爆発といった感情の剥き出しが表現されていて、大人とは違った初々しさがありました。

    出来事としては、2人が同じ人を好きになったことや友人がエロ垢を持っていたこと、高校生同士の口喧嘩など高校生としては、刺激的なことが登場します。大人になれば心の制限が発動して、なかなか思うように伝えず、控えめになってしまうところを、高校生たちは思うがままに行動していきます。

    その表現は、どこかアオハルな風を感じさせてくれます。大人になったからこそ、大人では経験することのない「初めて」が新鮮に感じ、どこか懐かしくも感じました。
    決してそれは楽しいことだけでなく、ビターな部分や切ない部分もあるのですが、それも含めて青春だなと思いました。

    今迄の君嶋作品を読んできた分、この作品はより現実的だけれども、若者らしさの心の揺れ動きも丁寧に表現されていて、個人的には一番好きかなと思いました。

    比較的明るい話題が登場するわけではなく、嫉妬といった怒りが沸々と感情剥き出しで湧いてくるのですが、その先に見えてくるのは、達成感や後悔、ちょっとの幸せといった、一言では表しづらい色んな感情が表現されていました。そこにはどこか爽快感が入り混じっていて、アオハルな印象を受けました。

    大人では味わえない色んな感情が詰まった作品でした。

  • 青春とは?
    それぞれの思い出があり、部活だったり恋愛だったり、友達と馬鹿話とかしたり。
    あの頃を思い出すような素敵な連作短編集でした。

  • あの頃の自分というより、子ども達の高校生活はこんな感じだったんだろうなぁと思う。
    最後の1話で、いろいろ回収されて読了後にパラパラと読み返しました。

  • とある高校の、とある教室。冬木先生を担任にもつ生徒たちの、ままならない学校生活が連作短編になっている。
    大人でも子どもでもない十代後半、みんないろいろあるよねーなんて半ば退屈しつつのんきに読み進めていたのだが、最終話を読んで驚愕することになった。

    え、え、10年前にLINEを使ってたような高校生が、もう26歳になって学校の先生をしてるってこと!?
    種明かしというか、その時の流れの速さにひっくりかえりそうになった。信じられなくて調べたら、LINEがサービス開始したのは13年前なんですって……。そうかぁ、そんなに昔かぁ。
    時代が交錯するタイプの叙述トリックに使われるまでの年月が経って、それにまんまとひっかかるなんて、年老いるってこういうことなのか……なんて、衝撃を受けてしまった。

    そして、姫ちゃん先生と芥川先生だけじゃなく、他の短編にでてくる生徒も同じように10年前のクラスメイトで、一冊のなかで交互に時代が行き来していたなんて二度目三度目の驚きだった。
    慌ててページを遡ってみると、伏線もちゃんと綺麗にちりばめられておりました。
    たしかに少しひっかかる部分あったもんなーというのは負け惜しみか。まさか冬木先生が水先案内人とはね。

    けれど、その事実を知るまえも知ったあとも、ストーリーに違和感はまったくない。
    読みながら、ついつい私自身が高校生だったころの姿もこのクラスの中に投影していて、あのころの感情や景色がよみがえってきた。
    だから結局のところは、高校生っていつの時代も変わらないものなのかも。
    時代を超えて、そこに集う者たち。どれだけの月日が経ったとしても、私たちはいつでもまた帰ってくることができる。タイトル『春のほとり』は、そういう普遍性を言い表しているように思えた。
    「十代のあなたに会いにいこう。」は名キャッチコピーで、きっと現役の高校生が読んでも、大人が読んでも何かが響いてくるはず。司書として、図書室で薦めたくなるような一冊だった。

    君嶋彼方という作家は、今の若手の中ではもっとも感性が鋭いというか、センサーやアンテナのようなものの精度が高いような気がする。
    時代を反映させるのが巧いというか、こういった多様性とかジェンダーを題材にする作品において、完成度がいずれも頭ひとつ抜けてる。
    恋愛、友情、家族、そんな名前のついていない関係性を、こうやって小説という形にしてどんどん開拓していってほしい。これからも読みつづけます。

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著者プロフィール

1989年生まれ。東京都出身。「水平線は回転する」で2021年、第12回小説野性時代新人賞を受賞。同作を改題した『君の顔では泣けない』でデビュー。

「2022年 『夜がうたた寝してる間に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

君嶋彼方の作品

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