水の惑星「地球」 46億年の大循環から地球をみる (ブルーバックス)
- 講談社 (2024年11月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784065375594
作品紹介・あらすじ
太陽系の中でも、液体の水をたたえた惑星は、現在地球だけである。地球という惑星の進化は、水のはたらきを抜きにしては語ることができない。地球の大きな特徴である生命の存在も、「水」に支えられている。また、水は地球の表層だけではなく、プレートテクトニクスと共に、地球の内部に取り込まれ、地質学的なスケールで大循環している。しかも今後、6億年で、海の水はすべて地球内部に吸収され、海は消失してしまうという。本書では、地球の歴史を振り返りながら、「水」が地球の環境のなかで、どのような働きをしているのか? を見ていきながら、私たちにとっても欠かせない「水」を地球規模のスケールで解説していく。
主な内容
第1章 原始海の誕生海の誕生
第2章 地球上で生命を育む水
第3章 地球表層での海の役割
第4章 地球内部での水の循環
第5章 地球内部へと吸収される海
第6章 海が消える日
感想・レビュー・書評
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1. 地球における水の起源と存在量
微惑星の衝突による水の付加: 原始太陽系円盤において、スノーラインより外側で形成された氷を主成分とする微惑星や彗星が地球に衝突することで、地球に水がもたらされたというモデルが紹介されている(図1-6)。
「一方、もともと地球は水をごくわずかしか含まなかったけれども、水を含んだ微惑星や氷からなる彗星が原始の地球に衝突することで、地球に水がもたらされたとする考え方もあります。」
マグマオーシャンと原始海洋の形成: 原始地球はマグマオーシャンに覆われており、冷却が進むにつれて水蒸気が凝縮し、雨となって降り注ぎ、原始海洋が形成された(図1-7)。
「最後の巨大天体の衝突から数百万年ほど経過すると、原始大気が冷えて水蒸気が凝縮し、雨となって降りはじめたと考えられています。」
地球内部の水の存在: 地球表層の水の割合は地球全体の質量の0.02%に過ぎないが、マントル遷移層の鉱物には現在の海水量の5倍もの水を貯蔵できる可能性があり、地球内部には海水に匹敵する、あるいはそれ以上の水が存在すると考えられている。
「マントル遷移層とよばれる上部マントルと下部マントルの境界付近で安定な鉱物は、水酸基(OH⁻)を結晶構造のなかに取り込むことができます。これらの鉱物に水が最大限入ったとすると、現在の海水の5倍もの量になります。地球内部には、海水に匹敵する、あるいはそれ以上の水が存在しているともいわれています。」
2. プレートテクトニクスと水の循環
プレートの沈み込みによる水の輸送: 海底で生成された海洋プレートは、海溝でマントル内部に沈み込む際に、含水鉱物として大量の水を地球内部に運び込んでいる(図1-8, 図4-12)。
「プレートの沈み込みにともなって、海洋プレートに含まれる水は地球内部へと輸送されます。」
マントルでの含水鉱物の生成と脱水: 沈み込んだプレート内の含水鉱物は、高温高圧下で分解し、水を放出する。この水はマグマの生成を促し、火山活動を通じて再び地表に戻る。蛇紋岩化反応も重要な水の貯蔵と放出のプロセスである(図4-5)。
「マントルを構成する主要な鉱物であるカンラン石は、水と反応して蛇紋石という含水鉱物に変化します。」
中央海嶺と熱水循環: 海底の割れ目である中央海嶺では、マグマの熱によって温められた海水が熱水として循環し、様々な化学物質を溶解させながら海底から噴出する。この熱水噴出孔周辺には独自の生態系が存在する(図2-4, 図5-9)。
「中央海嶺付近の海底では、そのような熱水がところどころ海底から湧き出している熱水噴出孔がみられます。」
3. 地球の気候安定性と水の役割
炭素循環と気候調節: 海洋は二酸化炭素の主要な吸収源であり、大気中の二酸化炭素濃度を調節する重要な役割を果たしている。炭酸塩の生成や有機物の堆積などを通じて、長期的には地球の気候を安定化させる負のフィードバック機構が働いている(図3-15)。
「海水はたくさんの二酸化炭素を溶かし込むため、大気と海洋は海面を通じて二酸化炭素を交換しています。」
温室効果とハビタブルゾーン: 大気中の水蒸気や二酸化炭素などの温室効果ガスは、地球の表面温度を生命が生存可能な範囲に保つ上で不可欠である。ハビタブルゾーン(生命生存可能領域)は、液体の水が安定して存在できる領域として定義される(図3-17, 図3-18)。
「生物には水が不可欠であることから、天体表面に液体の水が存在できる領域をハビタブルゾーン(生命生存可能域)といいます。」
スノーボールアース: 過去の地球では、全球が氷に覆われた「スノーボールアース」と呼ばれる時代が存在したことが示唆されている。その脱出には、火山活動による二酸化炭素の蓄積が重要な役割を果たしたと考えられている(図3-19)。
「地球全体が氷で覆われた全球凍結は、スノーボールアースとよばれています。」
4. 生命の起源と進化における水の役割
熱水噴出孔における生命の起源説: 光の届かない深海の熱水噴出孔周辺は、化学エネルギーに富み、初期地球の環境に類似していると考えられ、生命の起源の場所の一つとして有力視されている(図2-4)。
「光の届かない深海で、熱水に含まれる硫化水素やメタンなどの化学的な物質を酸化させるときに生じる化学エネルギーを利用して、深海の生命は生きているのです。」
初期生命の進化と地球環境の変化: 光合成生物の出現による酸素の生成、地球磁場の形成による有害な宇宙線の遮断、オゾン層の形成による紫外線からの保護など、地球環境の変化は生命の進化に大きな影響を与えてきた(図2-9, 図2-10)。
「約27億年前ごろになると、ダイナモ運動によって地球磁場ができ、太陽風や宇宙線など生命にとって有害な物質が遮られることで、生物は大きな進化を遂げることになります。」
5. 地球外の水の可能性と生命探査
太陽系内の氷衛星の内部海洋: 木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスなど、氷で覆われた衛星の地下には液体の水の海が存在する可能性が高い。エンケラドスでは、プリュームとして海水が宇宙空間に噴出していることが観測されている(図1-18)。
「土星の第二衛星であるエンケラダスでは、表面の割れ目から水蒸気と氷の粒からなるプリュームが地上から数百km以上も噴き出しているのを発見しました。」
系外惑星の探査とハビタブル惑星: ケプラー宇宙望遠鏡などの観測により、太陽系外にも多数の惑星(系外惑星)が発見されており、その中には地球に似た環境を持つハビタブル惑星が存在する可能性が示唆されている(図1-20)。
「現在までに5000個以上の系外惑星が見つかっています。そして、そのなかには地球のような岩石惑星で、なおかつ表面に液体の水が存在しうるハビタブルゾーンに位置する惑星もいくつか見つかっています。」
6. 地球の未来と水の行方
地球温暖化による海洋の変化: 地球温暖化は、海水温の上昇、海洋酸性化、海面水位の上昇、熱塩循環の減速など、海洋環境に深刻な影響を与えている。
「地球温暖化にともなって、海水温が上昇したり、極域の氷床や氷河が融解することで海水の塩分濃度が薄まったりすると、深層への沈み込みが弱まってしまう可能性があります。」
超長期的な地球の未来: 数億年以上の時間スケールでは、大陸の移動と合体により、再び超大陸が形成されると予測されている。また、太陽の活動の変化や地球内部の冷却により、いずれ地球上の水は減少し、乾燥した「ドライアース」の時代が訪れる可能性も示唆されている(図6-4)。
「海水が減っていく時代に突入した地球では、今後どのような環境変化が待ち受けているのでしょうか。」
マントルへの水の吸収と海洋の消滅: 最新の研究では、プレートの沈み込みによって、従来考えられていたよりも大量の海水がマントルに吸収されている可能性が指摘されており、数億年後には海洋が消滅するシナリオも提示されている(図5-12)。
「私たちの計算によると、6億年くらいで海がすべてなくなってしまう計算になります。」 -
【蔵書検索詳細へのリンク】*所在・請求記号はこちらから確認できます
https://opac.hama-med.ac.jp/opac/volume/485431 -
女子栄養大学図書館OPAC▼https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000073026
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請求記号 450/Ka 84/2276
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【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/723119
