翻訳者の全技術 (星海社新書)

  • 講談社 (2025年2月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784065376812

作品紹介・あらすじ

「びっくりするほどよくわかる山形翻訳(+訳者解説)の秘訣が、すっきりくっきりよくわかる。意外と正論です」
ー大森望(『三体』翻訳者)

「確信した。もっと山形浩生は報われていい」
ー読書猿(『独学大全』著者)


異才の翻訳者はいかに本を読み、訳しているのか

ピケティ『21世紀の資本』をはじめ、経済から文学、ITにまで及ぶ多彩な領域で累計200冊以上(共訳含む)を手がけ、個性的かつわかりやすすぎる訳文に定評のある翻訳者が、圧倒的なアウトプットを生む読書と翻訳の秘密を完全公開。「読書は大雑把でもいい加減でもいい」という読書のコツから積ん読の是非、率直すぎて時に物議をかもす訳者解説にこめた思い、アマチュアの生存戦略やフィールドワークの面白さ、本業であるコンサルティングの本質まで縦横無尽に論じた、翻訳者・山形浩生の読書論にして勉強論、人生論。

*本書目次
はじめに

第1章 翻訳の技術
なぜ翻訳をするのか
出発点
翻訳の技術
原文通りに訳すということ
訳者解説の書き方
翻訳の基礎体力
英語について
翻訳の道具
記憶に残る翻訳家
翻訳者になるまで

第2章 読書と発想の技術
読書は大雑把でもいい加減でもいい
読書の意義
本の読み方
積ん読について
本の敷居の高さと期待効用
読まない本の危険性:積ん読の有毒性について
積ん読の時代変化
積ん読の解消
余談:山野浩一のことなど
行きがけの駄賃で:橋本治について
積ん読の先へ
勉強は小間切れでやる
わかったつもりが一番よくない
1週間なら誰でも世界一になれる
アマチュアの強みと弱み
好奇心の広げ方
オカルト雑誌とフェイクニュース
コンサルタントについて思うこと

第3章 好奇心を広げる技術
知らない世界を旅する
旅行をするなら
開発援助の現場に行くこと
社会主義国キューバの衝撃
モンゴルのノマドは自由ではない
変なものが好きだった

あとがき

みんなの感想まとめ

翻訳者がどのように本を読み、訳しているのかを深く掘り下げた本書は、読書や翻訳に対する新たな視点を提供します。著者の独自のアプローチや好奇心の広げ方は、日常生活に変化をもたらすヒントを与え、読者に挑戦を...

感想・レビュー・書評

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  •  とっても楽しくよみました! それにしても「トリッキーなタイトル」ですよね。わたしは「翻訳のテクニック本」かとおもっていましたが、違うようです。
     タイトルをよくみれば「者」と「全」がついています。著者の山形浩生さんは、100冊以上翻訳されている翻訳家さん。つまりタイトルの「翻訳者」さんです。そして「全技術」は、ほぼ「人生」の意味でしょう。つまり、このタイトルは「山形浩生読本」と同等なのです。山形さんの放談を、インタビュアーさんがまとめられています。

     YouTubeの「ゆる民俗学ラジオ」を検索しようと、めんどうなので「ゆる」で調べたら「積読チャンネル」がでてきました。「ゆる」仲間みたい。なにげに視聴したら、この本が紹介されていました。このチャンネル、面白いんだけどちょっと長いし中身をどんどんしゃべるので、はじめの部分だけ視聴して、そこで出た「おもしろおじさん」∑(゚Д゚;) 「積読」!?(〃゜口゜)!? のワードで選書しました。

     山形さんの翻訳本は、読んだことないけど「ピケティ」とか翻訳されてる有名なかただそうです。しかし、本業はコンサルタントだそうです。翻訳は、基本的に自分の興味や理解のためで、副業というか趣味みたいなものだとか。だから、既存の翻訳本が気にいらないからって、同じ本を勝手に翻訳することもままあるようです。
     タイトルに「翻訳」ってはいってるし、翻訳についてもあれこれ語られています。わたしは「言葉選び」のはなしがおもしろかったです!

     読みたかった「積ん読」(文中の表記法です)については、全体の約10%ほどです。「読書と発想の技術」の章で展開されています。おもしろかったです!
     物理的なものとしての本の「流れ」であり、心理的な「期待」でもある「積ん読」をどう認識するかは、ひとそれぞれだなと思いました。
     例えるなら、よけいな体の脂肪を「怠惰」とみるか、「美と富」の象徴とみるか、みたいな感じ? (笑)
     いえいえ、『ロード・オブ・ザ・リング』のヘルムズ・ディープの戦いを例に、自由への道を示してくれます。
     「積ん読」に思わず反応してしまうひとなら、読むことをおすすめします。
     なつかしい本が登場したりで、なんかむしょうに本を買いたくなりす!

     山形さんの興味の幅が広く、SF、パソコン、旅行、工作などから、もちろん本業のコンサルおもしろ話まで、盛りだくさんでした。ジェネラリストを自認されている通り、まさに「山形浩生読本」ですね。
     ちょっとグチっぽいところがあったりして、わたしも歳の近いおじさん、共感し、応援する気持ちになりました。\(^o^)/

  • 翻訳者の全技術
    星海社新書 326
    著:山形 浩生
    出版社:星海社

    山形翻訳のすごさ という帯につられて購入したはいいものを自分の語彙力なさ、いや、語学力のなさに泣いた

     特長
     ①読書とあまり変わらないスピードで翻訳ができる
     ②わかりやすすぎて、「無理やり理解を押し付ける」と言われる
     ③専門用語や定訳はあえてあまり意識しない
     ④時に訳者解説で本の内容にダメ出しする ……

    言語が違えば、まったく同一の意味ではあり得ないというのは理解ができます。だからといって、それをできるだけ、母国語に近づけようとしようたって、それもどうやってもやり方すらわからない。

    でも、翻訳の神様のもっているスキルを1つでも盗みたくで前に進む

    翻訳教祖の辛辣なお言葉

    ・みんな、本をちゃんと読まないんだ

    ・翻訳自体が、そこで主張されていることが読めておらず、なんとなく単語を並べて訳文をでっちあげている

    ・いやいやそうじゃない、君たちが思っているよりずっと単純なことを言っているんだよ、とつっこみたくなる

    ・翻訳をするとき、よっぽど古いとかすさまじく専門用語を使っているとかでもない限り、ぼくはほとんどの本の言っていることはすぐわかる

    ・翻訳家のスキルというのは、ただ外国語を翻訳する語学力だけでなく、読書の経験値や想定読者の理解なども含まれる

    ・ある程度数をこなさなきゃいけない、とにかく乱読しましょう、自分が知りたいことに関してはむずかしくても挫折しなからでも繰り返し読み込もう

    ・本は気軽に読め、世間で言われているほど古典はすごくない、気負わず読めばよい、いい加減に読み散らかしてもいい

    ・本を死蔵することは、本に対する裏切りだ(とりあえずの積ん読はOK)

    ・なんか全集で買ったものでも、次第に全集にこだわらずにほんとうに必要な巻だけ残しておけるようになる

    ・自分に残るその最後の30冊こそが、己にとって、真の積ん読になるだろう

    ・勉強は小間切れでやる

    ・わかったつもりが一番よくない

    ・やはり「なぜ」と考える意識が大切だとぼくは思う。

    目次

    はじめに
    第1章 翻訳の技術
    第2章 読書と発想の技術
    第3章 好奇心を広げる技術
    あとがき

    ISBN:9784065376812
    出版社:星海社
    判型:新書
    ページ数:208ページ
    定価:1300円(本体)
    2025年02月17日 第1刷発行

  • 山形の翻訳は多数読んできたが、単著?は初めてかもしれない。その時の興味のつながりで、どの方位にもつまみ食いしてみればいいじゃん、というのは、共感。

  • 山形浩生の「経済のトリセツ」
    https://cruel.hatenablog.com/

    Books that I wrote/translated
    https://cruel.org/books/books.html

    翻訳者の全技術 山形 浩生(著/文) - 星海社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065376812

  • 翻訳家・山形さんの魅力はいくつかある。あとがきで著者の主張に疑問を呈したり時に反旗を翻したり。毀誉褒貶もあると聞く。そして翻訳家の傍ら、コンサルタントもして、開発支援もしている。多才な人だ。彼の脳内を知ろうと読んでみた。

    第1章では翻訳家としての矜持がわかる。良い翻訳には原文と向き合うだけではなく、世界そのものを観察することも大切だ、という。世界を深く知るための大きな手がかりに旅行と工作があるのだと。意外性はないかもしれないが、うなづく。

    印象的なのは、「一瞬だけ一番になろう」という考え方。歴史に残るのは、ゴールラインを最初に切った人間であり、途中で誰が一番になっていたか、なんて事は顧みられない、という。似た話は他でも聞いた気はするが実践者の言葉はよい。

    彼が評価するorしない同業者にも切り込む。へえ、ここまでいうのだ、というのが率直な感想。あと、「嫌われ者のポジションに自ら飛び込んでいっていると言う自覚」「僕がもう少し人好きがして、政治的に立ち回りがうまくければ」と言う箇所は吹いた。

    良かったのは読書との向き合い方が展開される中盤から。最高なのは、読まない本の危険性 積ん読の有毒性だ。

    積読は彼曰く、「その人の怠慢であり、未練でしかない。そして、それを「読まなくたっていいんだ」と嘘つくのは、ごまかしであり、まして「読まない、本にこそ価値がある」などと言ってみせるのは倒錯」だそうだ。しかも、「それを放置すればするほど、精神をみ、地は腐敗する。可能性だったはずのものが、もう単なる言い訳になり果てるのだ」。

    鋭い指摘は続く。「自分が目を向けられずにいる。己の失敗や間違い、自分のかつての浅はかさ、そして何より、自分の怠慢と先送り。やると言ってやらなかった。数々の小さな積み重ね。果たせなかった約束の数々。でもしないことをできる。やると大切ってしまった。恥ずかしさ。もう読む事はないと、自分でもわかっている」
    「そうした無数の無責任、不義理。かつてのプライド」
    もう、申し訳ありません!しか言えない。

    それで終わらない。この後で積読の解消法も書いてある。詳細は省くが、要諦はいかに筆者を見切るか、だ。これは他の話しにも通じるだろう。

    本書はもともと雑談を構成しているそうで、読みやすいかというとそうでもない。ただ、意味はあった。筆者のいう「自分に残るその最後の30冊」を探す旅を続けようと決心し、本を閉じた。

  • 山形浩生訳とみると書籍の信頼度が増すまるでミシュラン、モンドセレクションのよう。(嫌味な含みはありません)

    読み進めるうちに超人ぶりがこれでもかと沸き立つが、個人的な付言は「好奇心の広げ方」。何気ない日常生活がルーティン化している私、食事に行く店が固定化している等々、には胸が痛いお話です。今後は少しの挑戦と変化を意識しながら暮らしていこうと誓う。
    読書についても自分の好奇心が惹かれるものに固執せず、全くの他分野にあえて飛び込む意識をもち自分の知識や見解を広げていかねば。

    これは常々不足しているなと感じることではあるが、知識を実生活や実体験にコネクトさせることに注意を向けること。これってなかなか難しい。実生活へのコネクトという面では、他人に話すネタにしようとか、得た知識を発信してみようという心意気でいいと解釈。他人を意識した読書を試みていこうと思う。

    最終章のコンサルタント話も具体的な体験からの気づきを率直に共有してくれているしおもろい。昔のベトナム気骨あるな。ただ、著者が通ってきた翻訳家や著者への批評話は前提知識がなくスーッと読み飛ばし気味になってもうた。これは個人の力量次第なのでご勘弁。そうはいっても山形浩生という稀有な存在の魅力の一端に触れられた気がした。

  •  少し前に新聞書評(日経新聞)で取り上げられていたので、図書館に予約を入れておいたもの。翻訳者として、斯界では有名らしい(本書の中で自分で言っている)。

     特に翻訳の技術、テクニックが知りたかったわけではなかったが、他言語をいかに日本語に置き換えるかという話は面白そうと思ったのだが……。

     たとえば、経済書の翻訳の多い著者。「money」は「貨幣」と、主に専門書では訳す向きが多いが、著者は「お金」と日常の言葉を選ぶ。
    「diminish という単語は経済学の世界では「逓減」が定訳になっている。だんだん減ってくる、という意味だ。(中略)クリプトナイトを前にしたスーパーマンは「私の力が逓減してきた」とはたぶん言わない。」
     と、面白おかしく訳語の選択を書いている。

     が、技術的なことはその程度。翻訳の「全」技術でもなんでもない本書。
     この手の本は、目次をまず見る。1章で「翻訳の技術」とあるが、2章は読書と発想の技術だ。3章は「好奇心を広げる技術」とある。
     次いで、まえがき/あとがきを読んでおく。自嘲気味にあとがきに、
    「われながら、なんだかまとまりのないグネグネした話になってしまったではないか」
     と。
     要は、まとまりのない、著者が好き勝手、言いたいことを放談したもののようだ。というか、まえがきに、放談したのをまとめてもらったと書いてある。そう思って読んだ方がよい。

     と、思っていたら、本書の中で、本の読み方として、以下の記述があった。

    「この人は何か説明したいことがあって本を書いたはずだ、それは何だろう」というのがまず知りたいところ。それがわかったら次に、「それをどう説明しているのか」に意識を向ける。まずそれができるような拾い読みから始める。(中略)
    ぼくは、だいたいの本を「この人は何が言いたくて本を書いたのか」を理解するための説明書として読んでいる。(中略)
    必要なところだけつまみ食いであれを読み、これを読みしているうちにものごとの全体像をなんとなく理解するタイプだった。

     この読み方で正しい。つまみ食いで済ませてよい本だったということだ。
     言いたいことは分かる。ごくごく当たり前のことを書いていた。

     ただ、松岡正剛のことをこき下ろしているのは、生前になにか因縁あった?

    「松岡正剛のように、わかってもいないくせに(またはだからこそ)分かったようなツラをして、聞きかじりで意味不明のことをつぶやいて深遠ぶりたいだけだったりする。」

     この一か所だけじゃなかったな。
     たぶん、著者も、似たところがあるから、嫌な部分も気づいてしまうのだろう。 
     本書の情報も、やたら、分かったような素振りで、聞きかじりの知識をバラまいている印象だったしね。

    Great minds think alike.

     この著者がGreatかどうかは、知らないけど。

  • 本を読む時とりあえず
    先に背景情報プロフィール
    それが書かれた時代、国など
    気になり調べる。
    最近は訳者プロフィール
    ほかにどんな作品があるか
    など確認する癖がついてきたから
    本屋で本書を見かけた時、
    興味がわき購入した。
    読書のしかた積読への意識など
    日頃の本との接し方も更新できた。
    読書する時間ますます大切にしたい。
    そして、本屋にも行こう元気でてきた。

  • 分かりやすい翻訳をするが、主流な翻訳ではないから批判もされやすい翻訳者。…らしい。著者の翻訳した本を読んだことがないから、そこらへんは分からない。
    章立ては「翻訳の技術」「読書と発想の技術」「好奇心を広げる技術」の3章構成。そこからもわかるように、翻訳だけについて書いているわけではない。また、著者は業界的に普通とされる翻訳をする人ではない(らしい)ので、書かれているのはあくまで著者にとっての翻訳論であって、翻訳の一般論を語っているわけでもない。そういう意味では、著者に興味がある人が読む本というような感じがする。

    翻訳のところでは、原文の書かれた状況を考えて、原文のニュアンスなどを日本語に落とし込むべし、というようなことを書いている。当然のような気もするが、専門書なのにくだけた調子で書いていたり、原書でもわざと不自然に分かりにくく書いていたりする場合、それを表現するのにはそれなりの技量が必要だし、それができる人は多くない、ということらしい。訳書が分かりにくいときに、原文がそもそも分かりにくいのか訳が悪いのかがふつうの読者は分からないので、翻訳の評価は難しいよね、ということも言っている。
    「翻訳するときは原書と同じ順番で言葉が読者に届かないといけない」とかいう考えで、英語の並びを保ったままで翻訳すべしという不思議理論を唱えた人もいたとか。これと通じるかは分からないけど、専門書とかで、やけに読みにくい翻訳があるのはそういった考え方もあるのだろうか。(それとも特に読みやすさとかそういうことは考えていないだけなのか。)専門書を専門家が訳すのは、言語的にだけでなく、内容的にも読者に分かるように翻訳することを期待されているからだと思うのだけど。

    翻訳者や、その他色んな人を本の中で結構こき下ろしていて、関係性とかは全然分からないけど、大丈夫なのかなと思ったりした。

    その他、印象的だったりしたこと。
    ・日本の翻訳者は、他言語と比べてしっかり仕事をする傾向にあり、その分評価も高い?他言語だと本の表紙に翻訳者が載らない場合もあるそうな。
    ・最初から最後まで精読しなくてよい。あるジャンルの入り口となるような薄い入門書を読んで、概略を掴み、次に分厚い本を読んで細かいネタを掴むと、その後に読むものをつまみ食いしても細かい所が分かるようになる
    ・「説明してください」と言われて説明できるようなことはもうとっくにわかっていて、まだ言葉になっていない非常に根本的なところや、説明するまでもないと思っているところに問題の根本がある。(p170)コンサルの仕事について。

  • 結論から言うと、色々な角度からめちゃくちゃ面白い。
    突っ込み所、感心する所、普通に話が面白い所が入り乱れて、付箋をつけてみたら本の天面の小口が見えないくらいになった。

    ・タイトルからすると翻訳者になりたい人向けのエッセイみたいだけど(自分がなりたい訳ではない)、読んでから見直すとこれは「ジェネラリスト・山形浩生の全て」という意味であって、「技術」には読書術とか勉強の仕方も含まれていることが分かる。巧妙だなぁ。

    ・日本語の扱いがわりと雑(翻訳者なのに)。「うちの親は清水建設で」「ぼくが仕事の中でちょっと自慢なのが」という具合(他にもある)。
    この人の訳した本のレビューでも、翻訳の口調については賛否ある様子。本人もそれを自覚していてたまに触れている。 
    もったいぶった言い回しに惑わされるな、まず大筋を理解しよう、というのはこの人の人生哲学的に(後述)とても頷ける話ではあるんだけど、あまりにざっくばらんすぎるとちょっと気になる。

    ・読んでいくと、本業は開発援助コンサルタントであり、翻訳はその副業とのこと。
    純粋な興味や仕事での必要があってちょっと訳したものを、足りないところを補って一冊の本にするというやり方でやっているらしい。
    ルーツとしては、昔からSFに興味があって、大学のSF研で色々漁って勝手に(!?)翻訳していた流れで、翻訳業もやるようになったという流れらしい。
    このへんの話めちゃくちゃ面白い。各大学にSF研があって翻訳のシマがあったとか、サンリオSF文庫の新人起用の話とか。
    翻訳業のあるある話、色々な翻訳者の評価も面白かった。

    文中でほとんど触れられていないけど、本の背表紙を見たらば、東大とMITの修士号を取っているかなりすごい人だった。大学って東大のことだったのか…。

    ・文芸やITや哲学、歴史、とにかく知的好奇心と知識量がすごい。
    昔だったら知識人と呼ばれていたと思うけど、黴の生えた「学者」ではなく、あくまで在野の立場から、縦横無尽に手を出してみた、というスタンス。
    手を動かしてやってみること、現地に行って実態を知ることも大事。

    本人も言うようにそこがこの人の真骨頂で、結構珍しいタイプだと思う。
    そのため、普通は交わらない分野同士を繋ぐ発見をすることが稀にあり、その瞬間を求めている節もある。
    (過去にした発見について、山形はもっと評価されてもいいんじゃないか…いじいじ、というように後書きで泣き言を言ってるの面白かったな)

    ・かようにすごい人なんだけど、「この翻訳はダメ」「この本の内容は見るべき所が何もない」みたいな言い回しが割と頻繁に出てくるので、翻訳者としてどうなのと思わなくもない。「この作者/翻訳者に失望した」というかなり長い下りもあったし。
    でもなんかあんまり嫌味がないというか、しょうがないな…という気持ちになる。

    ・開発援助コンサルタントとしての話もすごく面白かった。発展途上国にインフラを作る際の日本側の思惑、現地の人とのギャップなど。
    その方面の話だけで一冊読みたい。

    ・というか、名前で検索してみたら、はてなで「経済のトリセツ」を書いている人だった。道理で名前に見覚えがあると思った。
    内容が難しいから流し見で読んでいたけど、漠然と抱いていたイメージが掘り下げられた感じがある。

    YouTubeで話しているのを見たら普通の感じだったけど(10年前にもこの本の内容のようなことを話していた。ぶれないな)、写真で見るとシルバーのピアスをしている時があり、なんというか解釈一致だった。

    ・他の翻訳者はどんなエッセイ(?)を書くんだろうと思って調べた。
    瀬田貞二の子どもの本の評論集は、平易でやさしい感じ。大森望は山形浩生と文体が似ている感じがした。
    一口に翻訳者と言っても、色々な文化圏があるんだな。

    ・他メモ。軽井沢の「Qカルbooks」で購入。大手書店もいいけどこういう本屋がとても好き(「森の本屋」もよかった)。
    旦那曰く、店長が発行したらしき「軽井沢移住顛末記」みたいな本があったらしく、その時言って欲しかった。それも読みたかったよー。

    調べたら店長さんがブログをやっていて、オーウェルの「1984年」のタイトルが新訳で「1984」となっているのは村上春樹の影響なのかな。という下りがあるのだけど、それを訳したのがまさに山形氏で、本書でタイトルについても書いていた。

    英語でもそもそもアルファベットと数字の両方の表記があるし、作者も特にこだわりがあった様子はない。
    今回、カバーデザインで「年」がないほうが収まりが良いと言われ、作中の架空言語「ニュースピーク」の雰囲気にも合っているということで、短縮して「1984」とした、とのこと。

    すごい偶然だったな。最後までチョコたっぷりで奇跡。

  • 山形浩生の翻訳家としての考え方というか思っていることの語り書き。食いつまみで翻訳書がどんどんできてしまう英語力の高さは簡単に真似できる技ではないけれど、二流の技術を組み合わせると一流になるとか、先行者利益で一瞬だけトップの世界に入るとか色々と学びが多い。なんといっても彼の本はわかりやすいことが最大の利点。クルーグマンとか彼の翻訳がなかったら読んでなかったと思うだけにだいぶ助けられた。バロウズやレッシグとかも同様。とはいえ、彼ももう若くはないので次代はどうなるのか、という感じもする。

  • とにかく雑にたくさんやる
    たくさんふれる
    細切れに毎日やる

  • 流石の山形節。おもしろかった。この人の考えかた好きやわー。
    分かりやすすぎてクレームが入るってなんなん。どんだけ世の中ひねくれてん。

    しかし最終章なんかは、もう翻訳の本ではなく、コンサルタントの話やん。
    取りあえず山形浩生訳ってなってたら、まず購入ってなってるわー。
    でも作者曰く積読は本に対する裏切りらしい。
    裏切りまくりのわたくしには耳の痛い話です。

  • 澁澤龍彦の言うスーパーインテリが想起された。全方位版。

  • 作者の考え方などが書いてある。
    非常に頭の良い人と思っていたが、やはり凄いと思う。
    訳者解説から読んでしまうものなあ。
    また、再読する。

  • 2026-02-11
    まあ、予想していた通りの内容ではあった。間違いなく頭がいい人だし、ある程度以上に成果を出しているのも確か。選書のセンスも信頼出来る。
    でもなあ。どうにもリスペクトに欠けるんだよね。言葉の選び方とか。さらに、手のひらの返し方にも違和感を感じる。
    ということで、読んだからといって何かが変わる訳ではない本でした。自分にとってはほぼ確認作業。

  • なんでもいいから始める。百個並行してやってもいい。そのうちどれかが実を付ける。

    誰もいない場所に乗り込んで行くのはアマチュアの特権。できたばかりの新しい世界にはまだプロがいないので全員アマチュア。多くのプロは既存のものを少しずつ広げていくのが仕事。ある世界にどっぷりつかると、新しく起きていることが面白さに、逆に気がつけなくなってしまうこともある。

    行動の人だなー。

  • ☆4.5 山形浩生の率直さは翻訳に活かされてゐる
     これはよい本だ。専門家よりジェネラリストでないと、広範にまたがった分野の翻訳はつとまらない。山形は自身をジェネラリストと自称する。
     世のなかの多くの訳者が専門的でないために、原書とシンクロできてゐない。そのため、ユーモアやジョーク・わざと不鮮明にした原文の意図を読み取れないで、わかりやすくなったり、堅苦しくなったり、仰々しかったりするといふのだ。そのとほりである。

     哲学やポモなど、わからないことをありがたがる読者すら斬り捨ててゐるが、これも科学的な姿勢としては正しい。わからないことをありがたがる・楽しむ、それはただの娯楽であって、学問の態度としては不健全だらう。わからないことはわからない。それだけだ。

     なかではキューバの社会主義の話や、ノマドがあまり動いてゐない話、バロウズなどのSFや海外文学の批評も載ってゐるので、おもしろくて必見だった。

  • 翻訳家という世界にて、山形浩生さんという方を恥ずかしながら始めて知りました。
    翻訳をする上で、直接言語を日本語にするのではなく、読者や視聴者が理解しやすく馴染みが深い言い回しへ変換されている事を理解いたしました。
    そして、原作者の方特有の言い回しや、通常の場合ではその意味を内包している言葉であっても、異なる意味が含まれている為、汲み取る作業をされており、これは実社会でも活かせる事が出来ると理解いたしました。
    そして、翻訳をする為のツールや方法、それ以外に、積読に対しての所感知る事ができました。

  • 積読チャンネルをきっかけに、本書にたどり着きました。
    IT分野の末端に関わる立場として、「伽藍とバザール」をはじめ、これまで多くの知見や考え方の恩恵を受けてきたことを実感しました。
    個人的には、本書を手がけた翻訳者の姿勢を好ましく感じています。ただし、その率直さや割り切りの良さから、読み手によって評価が分かれる可能性はあると思います。

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著者プロフィール

山形 浩生(やまがた・ひろお):1964年、東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科都市工学科およびマサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了。経済、文化、コンピュータなど、広範な分野で評論、執筆、翻訳活動を行う。訳書に『クルーグマン教授の経済入門』(ポール・クルーグマン著)、『21世紀の資本』(トマ・ピケティ著)、『ウンコな議論』『不平等論』(ハリー・フランクファート著)など多数。

「2025年 『自由は進化する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山形浩生の作品

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