狂気の山脈にて 新訳クトゥルー神話コレクション 6 (星海社FICTIONS)

  • 講談社 (2025年2月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (576ページ) / ISBN・EAN: 9784065379943

作品紹介・あらすじ

TRPGクリエイター・まだら牛、推薦!

人類はまだこの地球(せかい)の本当の姿を知らない。
クトゥルー神話の最重要原典にして、ラヴクラフト文学の最高峰。

怪奇小説作家H・P・ラヴクラフトが創始し、人類史以前より地球へと飛来した邪神たちが齎す根源的な恐怖を描いた架空の神話大系〈クトゥルー神話〉。
その新訳コレクション第6集となる本書では、怪死を遂げた貴族の奇妙な来歴を辿る「故アーサー・ジャーミンとその家系にまつわる事実」、ミスカトニック大学の探検隊が人跡未踏の南極大陸に隠された忌まわしき地球の歴史と遭遇する大冒険譚ーークトゥルー神話において屈指の知名度を誇る表題作「狂気の山脈にて」、 “悪魔の蠅”を凶器とする殺人を企んだ医学博士の恐るべき顛末が明かされる「翅のある死」、イィスの“大いなる種族”の精神交換による地球侵略の一端が暴かれる「時間(とき)を超えてきた影」など、15篇+αを収録。

人跡未踏の人外魔境から、秘められた宇宙史が放たれるーー!

〔収録作品〕
・洞窟のけだもの The Beast in the Cave
・眠りの壁の彼方 Beyond the Wall of Sleep
・フアン・ロメロの変容 The Transition of Juan Romero
・故アーサー・ジャーミンとその家系にまつわる事実 Facts concerning the Late Arthur Jermyn and His Family
・潜み棲む恐怖 The Lurking Fear
・前哨地 The Outpost
・狂気の山脈にて At the Mountains of Madness
・翅のある死 Winged Death
・封函 The Sealed Casket
・イィスの夢 Dreams of Yith
・丘の木 The Tree on the Hill
・シャーロットの宝石 The Jewels of Charlotte
・時間(とき)を超えてきた影 The Shadow Out of Time
・彼方よりの挑戦 The Challenge from Beyond
(C・L・ムーア、A・メリット、HPL、ロバート・E・ハワード、F・B・ロング)
・覚書 Notes
・[付録]陰気な山脈にて あるいは、ラヴクラフトからリーコックへ At the Mountains of Murkiness or, From Lovecraft to Leacock
(アーサー・C・クラーク)

感想・レビュー・書評

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    初のラヴクラフト。
    狂気山脈はもうのちの『エイリアン』と『プロメテウス』的な発想の原点。かつ物体X。
    人類が誕生する前に居て、文明を築いていたという。
    その詳細、専門用語、世界観がかなり細かくてゾッとするしそのディティールに胸を打たれる。過去作との背景のつながりもあるのだろうし、これはキングに影響を与えるのもよくわかった。また、安易に怪物の容姿を出さないのも魅力的で、小説ならでは。想像してワクワクするし、怖くもあってお見事。

    ただ、文章の回りくどさ、横道に逸れる感じ、勿体振り方、「恐れずに言おう」みたいなフリが少し自分には合わないように思えてしまって、読みづらかったのは本音。全編読もうとしたけど、厳しくもあった

  •  ラヴクラフトは、同じようなテーマの作品を続けて創作することがあった。前期は、私たち――一部の人類の先祖の正体が悍ましいものだったり、環境に適応することで悍ましい姿に変容していく「人類の進化・変化」をテーマにしたもの。晩年は、何らかの手段によって自身の肉体を奪われたり他生物の肉体に囚われたりするような「精神交換や乗っ取り」をテーマにしたもの――。
     6集は「クトゥルー神話を下敷きにした偽史」「人間の変容」「秘境冒険もの」と3つのテーマに分けて、表題作である『狂気の山脈にて』など15編の他、付録(ボーナストラック)として、ラヴクラフトがプロットを書き留めた覚書に、SF小説の巨匠であるアーサー・C・クラークによるクトゥルー神話のパロディ小説『陰気な山脈』を併録。
    -------------------------------------------------------------------------
    『洞窟のけだもの』
     観光で訪れた洞窟の中で迷ってしまった私。助けを求めて大声を出していると、誰かが近づいてくる音がしたのだが――。
    (10代の若きラヴクラフトが執筆した作品で、文体にすでにらしさが表れている。)

    『眠りの壁の彼方』
     殺人を犯した男が精神病院に強制入院させられる。二重人格を思わせる発作を起こす男にわたしは興味をひかれ、ある試みを実行すると――。
    (恐らく、ラヴクラフトが初めて宇宙的恐怖をテーマにした作品。後に生まれる神話に連なる作品の「原型」と思わせる内容。)

    『フアン・ロメロの変容』
     私が働いていた鉱山で起きた大規模な陥没事故と、フアン・ロメロの変死事件。この二つを関連付けるかもしれない、私が見た奇妙な夢の内容とは――。
    (ポーやマッケンなど、ラヴクラフトが影響を受けた先人の作風が漂う内容。)

    『故アーサー・ジャーミンとその家系にまつわる事実』
     突如、焼身自殺を遂げた学者、アーサー・ジャーミン。彼がそのような暴挙に走った原因とは――。
    (遺伝をテーマにしたゴシックホラー。当時のラヴクラフトは本作のようなテーマを複数創作していて、これらは後の『インスマス~』にも影響を与えていたかもしれない。)

    『潜み棲む恐怖』
     ニューヨークの田舎で残虐な大量殺人が起きる。探究心からわたしは仲間とともに、元凶と噂される館に乗り込むことに――。
    (展開はホラーの王道で神話っぽさも感じられる。解説にもある通り、実は何度か映像化されているのだが、設定は大きく変えられているので、知らないとラヴクラフト原作とは気づかないだろう。)

    『前哨地』
     アフリカ東海岸にあるグレート・ジンバブエ遺跡を舞台にした四行詩。本作の特徴的な文言の一部が後年、『翅のある死』に再利用される。

    『狂気の山脈にて』
     2回目の南極探検計画を中止させたいために、前責任者が語った、南極探検での忌まわしい体験とは――。
    (美しいグロテスクと言うのか、単純なホラーではない所がこの物語の面白さ。ギレルモ・デル・トロ監督が映像化を目指すのもわかる。旧支配者を、未来で冷凍睡眠から目覚めた我々に置き換えれば、その恐怖や悲哀に共感できるだろうか。『アウトサイダー』もそうだが、知性ある怪物をただのモンスターとして描写しないのは、ラヴクラフトが最期まで抱いていた「孤独」に由来するものだろうか。)

    『翅のある死』
     南アフリカのホテルで変死体が発見される。遺された日記に記されていた殺人計画と、その後に起きた悍ましい顛末とは――。
    (ヒールドのための代作。完全犯罪の手段として用いられる生物をTRPGに導入なら、攻撃が当たると毎ターンごとにCONを削られる毒持ちタイプか。)

    『封函』
     亡き友人から古代の遺物を譲り受けたウェッソン。欲望の塊であるウェッソンは、遺言で禁じられている遺物の封を解いたが、その中は空だった。直後、部屋の中に何者かの気配が――。
    (ラヴクラフト協力によるシーライト作。神話要素は薄いが、冒頭に登場する『エルトダウン・シャーズ』は後に魔導書の一つとしてクトゥルフ神話に取り込まれることになる。)

    『イィスの夢』
     HPLとCAS協力のもとでライメルによって書かれたソネット。「イィス」という単語を気に入ったHPLは後に、『時間を超えてきた影』でその単語を使用することにする。

    『丘の木』
     頂に一本の木が立っている丘を訪れた私。木の下で座っていると、急に禍々しい感覚と幻視に襲われる。逃げ出す前に木の写真を撮った私は、後日に現像された写真をテューニスと見ると、木の姿が当時と大きく変わっていて――。
    (ラヴクラフトに改稿されたことで合作ともされる、ライメルによる「テューニスもの」の一編。)

    『シャーロットの宝石』
     夏季の休暇で、とある古い街を訪れたテューニス。同じく街を訪れた国の連邦捜査官と懇意になった彼は、そこで「シャーロットの宝石」に纏わる噂と、それを狙う輩がいることを聞かされ、操作に協力することに――。
    (ラヴクラフト協力のもとで書かれたとされる、ライメルによる「テューニスもの」の一編で、本コレクション収録のために初めて邦訳された短編。)

    『時間を超えてきた影』
     後を継ぐであろう息子のために書かれた日記。そこに記されていたのは、謎と恐怖と深秘に満ちた体験だった――。
    (前半は5年半の空白を埋める内にじわじわと表れ出る未知の記憶に対する恐怖に侵されるが、後半は恐怖というよりも、偽史的な面白さに囚われる。なにせ精神のみとは言え、古の先住種族から人類滅亡後に登場する種族まで、古今東西の種族が一堂に会するのだから!)

    『彼方よりの挑戦』
     カナダの森でキャンプをしていたキャンベルは、中心部に楔形の記号が掘られた円盤がある、風変わりな水晶に似た立方体を拾う。眺めている内に円盤が光を発し始め――。
    (当時の人気作家5人によるリレー小説。ラヴクラフトも参加していて、いつもの遊び心で作中に神話要素を挿入したことで、結果として神話作品となった。)

    『陰気な山脈』
     新たに南極遠征が計画されていることを知った私は、中止の勧告と警告のために、私が参加していた先の南極遠征で何が起こったのか、を明らかにすることにした。そこ――陰気な山脈にいた、言語に絶する代物とは――。
    (アーサー・C・クラークが、彼に影響を与えたラヴクラフトに捧げた、『狂気の山脈にて』を下敷きにしたパロディ小説。氏はしばしば自身の作中で、映画ネタや楽屋ネタなど、現実とクロスオーバーした描写をしているが、それは本作でも行われている。)

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著者プロフィール

ライター、翻訳家。TV アニメやゲームのシナリオ/小説の執筆の他、各種媒体の作品で神話・歴史考証に携わる。クトゥルー神話研究家として数多くの著書があり、近著は『クトゥルー神話解体新書』(既刊2 冊、コアマガジン)。翻訳者としてはS・T・ヨシ『H・P・ラヴクラフト大事典』(日本語版監修、エンターブレイン)、ブライアン・ラムレイ『幻夢の英雄』(青心社)、H・P・ラヴクラフト作品集「新訳クトゥルー神話コレクション」(星海社、第6 集近日刊行)などがある。
http://chronocraft.jp/

「2024年 『グラーキの黙示3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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