異形のヒグマ OSO18を創り出したもの

  • 講談社 (2025年2月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784065385241

作品紹介・あらすじ

道東を恐怖と混乱に陥れた「牛を襲うヒグマ」の正体とは? ハンターの焦燥、酪農家の不安、OSO18をめぐる攻防ドキュメント!

山の神を「怪物」に変貌させたのは大自然か、それとも人間か?

66頭の牛を襲撃し、神出鬼没、「忍者グマ」とも称されたOSO18は、23年夏に野垂れ死んだ姿で発見された。
著者2人は2年にわたりOSO18の生態を調査、伝説のハンターたちとともにOSO18を追い続けた。
追うハンター、痕跡を消すヒグマ、そして被害におびえる酪農家の焦燥をつづり、ヒグマとの駆除か共生かで揺れる人間社会と、牛を襲うという想定外の行為を繰り返した異形のヒグマがなぜ生まれたのか、これから人間は変貌し続ける大自然とどう向き合えばいいのかを問う一冊!!

(目次)
序 章 たった一枚の写真
第一章 正体不明の怪物
第二章 端緒
第三章 託された男たち
第四章 宿命
第五章 縄張り
第六章 出現
第七章 消失
第八章 禁猟区
第九章 突然の死
第一〇章 消えた亡骸
第一一章 怪物の実像
第一二章 名前を持たなかったヒグマ
終 章 人間たち

みんなの感想まとめ

人間と自然の共存を問いかけるこの作品は、道東で恐怖を巻き起こしたヒグマOSO18の実態を追ったドキュメンタリーです。数年にわたり66頭の牛を襲ったこの「忍者グマ」は、捕獲を試みる人々の焦燥や、ヒグマに...

感想・レビュー・書評

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  • OSO18(オソ18)と名付けられたヒグマ。
    道東地域、標茶町を中心に2019年から4年にわたり牛を計66頭襲った。足形の横幅が18センチである事から大型のオスと推定された。一度に複数の牛を襲う。殺して食べるだけでなく怪我をさせるだけだったり、まるで、襲う行為を楽しむかのように。人前には姿を見せず仕掛けた箱罠も簡単に破り、2度とかからない。人々はあらゆる手段で捕獲、駆除を試みる。

    異形のヒグマ、確かにそうだ。
    草食と肉食両方兼ね備え、知恵もある。
    広い地域に出没し、国道272号線を何度も横断している。無人カメラに写り込み、足形、糞があればその痕跡を追うが、見つからない。
    「オレが仕留める」腕に覚えのあるハンターはそう思ってただろう。
    人々がOSO18に対して抱く感情も複雑だ。憎しみ、恐れと同時に尊敬の念もあったかもしれない。
    便宜上、この個体をOSO18と名付けた事により、恐怖が増大したという見方もなるほどと思った。
    そして
    結末が凄く興味深い。それはそれで伝説になりそう。

    先日、裁判で猟銃保持の権利を取り戻した熟練ハンターが記者に熊との共存を問われ、
    「そんなの無理。熊の頭を撫でてみろ。お腹から食われるんだよ。」と一蹴していた。
    遠く離れた地域に住む私はハッとさせられた。現場の実情を伺い知る。ヒグマの地域に住む方、携わる方のご苦労を実感し敬う。できる事はそれぐらいか。
    そろそろヒグマが冬眠から起きる時期にさしかかる。被害が出ない事を祈るばかりだ。

  • ミステリーとして読めるノンフィクション。

    前提が全て覆される展開がとても面白い。
    名前をつけ、その者の存在を確することが、これほどまでに人間を惑わすことであると、初めて実感した。

  • 自身が食べる以上に次々と牧牛を死傷させ、残された18cmの足跡から超大型の猟奇的なヒグマとして恐れられたOSO18。本書はNHKのディレクター2人がOSO18を追うドキュメントである。残念ながら生きたOSO18をテレビカメラに収めることはできなかったが、OSO18が処分された屠殺場を自ら探索して発見した骨からOSO18の正体を探る経緯は、当に調査報道というべきであり圧巻。足跡は追跡中から本当は16cmであり、標準的な体格のヒグマであることは判明していたが、OSO18の正体が判明したのはこのディレクターの功績。牛を食べることなく殺傷したのは単純に仕留める程の体格に恵まれなかったためである。基本的に草食を食べる方向に進化したヒグマであるはずのOSO18は骨の分析から肉食を主にしており、それは他のオスグマとの競争に勝てずに本来の主食であるドングリなどの植物を食べられずやむを得ずに肉食をしたのではないかと推察されている。当初喧伝されていた大型の猟奇的ヒグマとは対照的な姿である。環境の変化によってオオカミが絶滅し、エゾジカが繁殖し、本来は草食であるヒグマが肉食を覚えたという、人間の独善的な行動の結果である。私たちの思い込みや認識、環境破壊について色々と考えさせられる本であった。

  • 猛獣パニック、というジャンルは長きに渡り人気のある分野です。JAWSの鮫、ジュラシックパークのティラノサウルスに並び、日本では「ヒグマ」に対する畏怖があるように思います。吉村昭の「羆嵐」で描かれる三毛別事件を筆頭に、北海道のヒグマは今もなお圧倒的な存在感があります。

    現代の北海道で数年にわたり60頭以上の牛を襲った「OSO18」というヒグマは、その呼称と凄惨な被害で大きな注目を集めました。

    その「怪物」がいかにして生まれ、どのようにして斃れたのか。警戒心が強く姿を見ることができないために「忍者」とも言われたヒグマを追い続けたNHK記者のドキュメンタリーは、取材の様子が細やかに描かれていて読みやすいです。

    人間と自然の関係について、答えの無い問いを考えさせられる読書でもありました。

  • 肉食になった異形のヒグマ(OSO18)がタイトルになっているが、読み終えて見えてきたのは人間の生態だった。

    この本の面白さは、OSO18ではなく人間を描き出したNHK記者の取材力にある。

    登場人物が全員男(オス)だったのも印象的だった。ハンター同士のプライド、記者への警戒心、記者としての意地。それぞれがぶつかり合っていて、場の空気が常にピリついている。その緊張感が、北海道の寒さも相まって妙にリアルだった。

    OSO18がなかなか姿を現さないので、正直NHK記者が足手まといなんじゃないかと思ってしまっていた。地元ハンターにも明らかに煙たがられているし、メディアの人間に対してネガティブな感情を抱かざるを得なかった。

    でも、最後の解体所のシーンで一気に見方が変わった。

    感動したのは、あれだけぶつかり合っていた人たちが、最後に焼肉を囲むシーン。

    p.241の4行目で、この記者の着眼点に鳥肌がたった。

    「網の上には、焦げついた野菜の切れ端だけが残っていた。」

    OSO18の話を読んだはずだが、最後に残ったのはヒグマではなく人の気配だった。

  • なかなか思うように進まない中での粘り腰の取材。面白かった。
    途中から明らかに避けられてるし。
    ヒグマの習性について記述があり、それがとても興味深かった。

    人間に恐れられていたOSO18は、競争に敗れたヒグマの成れの果てだった、という展開は衝撃だった。
    人里に降りてくるクマ達もまた、生き残るため、危険を感じながらも人間の生活圏に足を踏み入れる。正直可哀想に思う。
    野生動物保護政策の結果が巡り巡って、今度は人の手で処分される動物達を生み出している、というのは滑稽でしかない。
    「共存」とは何か、真剣に考えなければならないと警鐘を鳴らされたような思いだ。

  • ・積読チャンネルで知りました。積読チャンネルありがとう。
    ・良かった。なんとなくこれを読みながら、私もしかして日本のドキュメンタリーの方が読みやすいのかな……と思った。
    ・この本はOSO-18について書かれているけど、「報道されて私の目に入るのはその表層だけ」という根本的な部分を知る(これは知識として持つというよりは、刻み込むというか、心の一角をしっかり確保して置いておく、みたいな『知る』です)良いきっかけになったと思う。

  • [異形のヒグマ」は、結局、人が人間と動物の境界線を超えてしまったことで、その存在を生み出してしまったということだと思う。そして、それは一つの個体で終了ではなく、次から次へと起こりうることで、真剣な対策が講じられなければ、何も北海道の問題ではないと感じた。「OSO18を創り出したもの」、これを対岸の火事的に思うのではなく、それぞれの地域の実情に応じて早急に対策を練っていくべき課題だと思う。人家に押し入ってくる、そんな事態になったら、山を傍に抱えいてる住民にとっては死活問題になるのは間違いない。

  • OSO18と名付けられたヒグマを巡って、取材する側と現場で対処している人々との葛藤を描いた物語だが、広大な北海道の標茶が舞台だ.このヒグマ、地元の人が様々な対応をしているにもかかわらず、牛を襲ってくる.罠にも掛からない.最終的に意外な形で解決するが、人と動物のやり取りは一段と高いレベルの範疇に属するものではないかと感じた.詳細な分析の結果、このヒグマ、食べ物がかなり変化してきたことが判明している.

  • 丁度この時期に道東に居たこともあり、関係各所の状況が非常に分かりやすく頭に入ってきて当時を思い出すことができた。道民から楽しく読めると思う。
    非常に読みやすく、それでいて面白い構成なので軽い気持ちで読んで引き込まれてほしい。

  • 事実を淡々と書いているので大変読みやすい。
    著者の方達が作成したNHKのドキュメンタリーは視聴済みのため結末はわかっていたものの、映像では汲み取れなかった心情が書かれていて良かった。
    北海道に住む人間として、読んで良かったと思う。

  • 昨今のクマ被害のニュースが気になったため手に取った1冊。

    非常に読みやすく、OSO18のヒグマ被害の実態とハンターの活動内容の理解が深まった。
    自然を守ろうと保護区域を設定した中、逆にその保護区域をヒグマの逃げ場として使われていることは皮肉に感じた。

    本を読み最近のクマ被害ニュースを改めて見ると、食物連鎖の外側で生きていると思っていた我々人間も実際は食物連鎖の中でしか生きられていないのでは、と思う。

  • 人間が恐る化け物は、結局は人間が作り出したもの、という結末はなんとなく予想してたけど、後半にかけて展開が早くて面白かった。
    巨大、狂気と思われていた熊が、実は弱くて臆病で賢かっただけだったというのはちょっと予想外でよかった。
    ここまで、OSO18に惹かれる理由について、作者も触れていたけど、やっぱりエンタメは「緊張と緩和」なんやなぁ〜と。
    とかいう私も、ノンフィクションに対して同じ気持ちを持ってる気がする。フィクションだと、イマイチ緊張しなく、ノンフィクションだからこその緊張感がエンタメを加速させる

    人間を超える化け物の存在が緊張させ、駆除する事で緩和される、この緩急がどうしても人を魅了させてしまうんじゃないのかな。
    まぁ、個人的には人間がいようといまいと、こういう異形は自然界でも生まれるだろうし、こういうストーリーに乗せて色々考えるのが好きなのが人間らしくてかわいいよね笑

  • 手に取るきっかけはラジオ内砂鉄堂書店の砂鉄さんの話を聞いていた息子の頼み。9歳には難読漢字が多く、ほぼすべて読み聞かせた。

    評価は2か3で迷う。正直2だけれど、綿密な取材に敬意を表して3に。

    NHKの2人のディレクターの取材記録。
    これはノンフィクション?
    OSO18を実際に目にできなかった2人だから仕方がないが、エピローグがポエムすぎる。OSO18の最期の描写(2人の想像)などはテレビ用の絵コンテを書き起こしたよう。
    それ以外にも、ところどころがかなり客観性に欠ける決めつけのような表現があり、つっこみたくなる。自分たちをかっこよく書きすぎなのかもしれない。

    ノンフィクションとしては微妙だけど、ネットニュースより詳しくOSO18のことを知りたい人には一読の価値があると思う。

    さて、OSO18はあっけない最期の一報も記憶に新しく、映像でも文筆でも題材としてはおもしろいに決まっている。

    テレビ番組制作のため、謎のヒグマOSO18の姿とその捕獲の瞬間をどうしてもカメラに押さえたい2人。OSO18を通して、人を撮るのだと。

    テレビ番組をつくることへの執念のみで動くNHK2人は、町の安全のために駆除に奔走しているハンターたちと気持ちがすれ違う。かなりあからさまに避けられているが、その理由は書かれていなくてぼんやり。謝罪したとは書いているが、NHK2人が何をしたか書いたらいいのに。ノンフィクションぽくないのは、そういうとこだぞ。

    矛盾もある。藤本さんが入院している期間に、藤本さんがOSO18を目撃した、との記録。一時退院してたのかな?だったら書いて欲しい。退院祝いの焼肉の盛り上がりにいまいちついていけなかった。

    プロデューサーの「テリー伊藤」発言でのNHKのノリがわかる記述は良かった、ちょっとズレているテレビ局の人たちって感じで。NHKの軽薄なノリがハンターに受け入れてもらえなかったのかなってぼんやりと浮かび上がる。

    テレビではOSO18を通して人が描かれていたのかもしれない。
    でも、この本ではNHKや2人の仕事や世間からどう思われているか、そこも浮き彫りになっているように思う。

    ハンター側の藤本さんもOSO18の顛末を書かれているそうなので読んでみようと思う。


  • 色々な職業の人が頑張っているなあーと思いました。

  • 実際にOSO18の姿をカメラで撮られていない、OSO18を追うハンターには取材を拒否され限られた情報しかないという状況で、ここまで密度が高い内容になっていることがすごい。膨大な時間と労力により生まれた素晴らしいノンフィクションだと思います。

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/736197

  • oso18全く知らなかったが、
    面白かった。

  • NHKディレクターたちによるノンフィクション。テキストでなく映像で見た方が面白いかな。ただ序盤~中盤にかけてOSOの身体的怪物性は否定されてもその知性的怪物性は存分に強調されていたのに後半ではその知性性すら強調されなくなりただの熊扱いされてしまっているのには納得いかない。最期がその高い知性に見合わなかったことがその一因なのかもしれないがその理由の一つの可能性がきちんと開示されている。だったら前半で強調されていた高い知性は後半でも十分に考察される点だと思う。そしてノンフィクション書きたちの宿痾とでもいうべき相変わらずの最後でのかっこつけ的文章。いやホントそういうの興醒めですからやめてくれるのを希望します。そういう手法は最近の特に大衆向け作家さんたちにも伝播されているみたいですし。そういうのって言語化は得意じゃないけど身体的表現力の優れた人たち(たとえば、優れたお職人さんや芸術家)の長年の実体験から湧き出るような言及であれば頭を低くして傾聴したいほどだけどちょっとかじった体験からさも有益な情報を教えてあげます的な言及は私たちみたいな本と向き合って会話したい層からするとマジバイブスサゲだから。

  • ドキュメンタリーも見て、結末も知っているので「でも、この人らはみんなOSO18を捕まえられないまま終わるんだよね……」となる。

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