真夜中の動物園

  • 主婦の友社
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本棚登録 : 123
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784072778074

作品紹介・あらすじ

「走りなさい!子どもたち」それが、母さんの最後のことばだった。廃墟となった村にとりのこされた、幼い三人兄弟は走りつづけ、そして-父と母をうしなった3人兄弟と廃墟にとりのこされた動物たちが見たものは-アストリッド・リンドグレーン賞受賞作家が描く、哀しみと希望の物語。2011年オーストラリア児童図書賞受賞、2012年カーネギー賞候補。

感想・レビュー・書評

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  • 物語は、激しい爆撃にあった瓦礫の村を
    逃げ回る、兄妹を
    (夜)から眺める視点で始まる。
    それが、より一層、3人の子どもたちが
    自分たちではどうしようもない大きな時代の波に、戦争に巻き込まれ必死で生きようと彷徨う姿を
    描く。
    赤い凧を上げていた、(黒いサラ)の日
    サッカーボウルを拾いに山に入ったことで
    命は助かったもの、草むらの影から
    ロマの一族が、異国の民族に
    ひどい目に合う一部始終を見ることになる。
    お母さんの
    走りなさい こどもたち
    という、言葉から
    始まる2か月と夜の動物園で過ごした
    最後の1晩の物語。
    心の鍵で開けた檻から
    動物たちと脱出するラストは
    なんだか、ロバの音楽座の
    音楽が流れてきた。
    現実は、悲惨だけど、本当は
    こうであったら良かったなという
    ファンタジー観が、すこしだけ救いになる。

  • 戦争が背景にあり、読んでいて胸が張り裂けそうな境遇の子どもたち。
    それでもこの一冊を読み切れるのは、美しい表現と子どもたちの年相応な物事の受け取り方や前を向いて歩いていく姿に元気をもらえる物語だからと感じました。

  • 【所在・貸出状況を見る】 https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/207077

  • 以前から気になっていた本。動物がしゃべりだしたりするし、子供向けのファンタジーなんだけれど大人が読んでも響く本。舞台は第二次大戦下のチェコ・スロヴァキア。ロマたちが侵略されるという背景がある。

  • ハラハラしたけど
    最後でホッとできてよかった

  • 平成26年4月18日
    第二次世界大戦のチェコスロバキアが舞台らしい。ロマ人の兄と弟と赤ん坊の妹は目の前で自分たちの一族が侵略者によって連れ去られる。たまたま森にいた三人は難を逃れるが、生きていくのは困難。たどり着いたところは荒れ果てた動物園。人間の言葉をしゃべる動物達と交わしたことは…

  • 『銀のロバ』がすごくよかったので、こちらも読んでみました。最初はずっしり現実が重くのしかかってきますが、最後はふわっとファンタジー。独特です。

  • 保護者を失った子供たち(ロマの3兄弟妹)と、世話するものを失った動物園の動物。戦争で最も大きな被害を受けるか弱き者たちの不思議な交感が描かれている。

  • 二人の兄弟が赤ん坊を連れて焼け野原を歩く。
    そして辿り着いた動物園でのお話。

    寝る前に少しだけ読むつもりが…。
    とまらず最後まで読んでしまった。

    児童書ながらテーマが非常に重たく、読んでいてとても辛かったけれど、これが真実なのだろうなぁと思った。

    動物園や水族館、ペットショップに行った時に感じる、どう言葉にしていいのか解らないあの気持ち。

    動物と人間の、真夜中の交流。
    もしかして、とは思っていたけれど、最後に思わず苦しい涙がでた。

    読めてよかったと思う。

    記憶に残る、印象的な夢のようなお話。

  • 戦争で一族をまるごと殺された幼いロマの兄弟が、放浪するうちに動物園にたどりつく。
    ファンタジー設定で幻想的に描く戦争。

    戦争は第二次世界大戦で侵略国はドイツで虐殺はホロコーストだろうし執拗に破壊された村はリディツェやレジャーキを思い起こさせる。
    けれど、国名や地名や時代は明記されていない。

    訳者いわく、第二次世界大戦下のチェコスロバキアだろうとのことだけど、これは架空の舞台なんじゃないかな。
    限りなく現実に近い、モデルがどこかを隠さない、けれどファンタジーでフィクションだから、現実を侵さないため、あえて「どこか」に設定したんじゃないかと思う。

    移動する道を奪われるロマも、海や山やサバンナから連れてこられた動物たちも、失ったルーツを求めている。
    ルーツと自由は重なっている。それをどうにか補おうとするような話。
    救いはないけど希望はかすかにある。

    詩的な(詩的すぎるくらいの)文章、章題を飾る枠、装丁、舞台設定、みんな美しい。
    月やら風やら森やら動物やらがふんだんに使われた美しい舞台で、被差別者の少年が主人公で、動物たちもそれぞれ辛い目に合っている。
    こういう本は往々にして「かわいそうな子萌え」に走りやすい。
    綺麗でロマンチックな設定として虐殺を選んだのならそれは悪趣味極まりないことだ。
    だからかなり警戒しながら読んだんだけど、意外なくらい嫌な感じがしない。
    地雷臭はプンプンするのに、ギリギリで回避している。悲劇萌えの気配がない。

    動物たちの人間への目線が厳しいからだろうか。
    ガジェ(定住者)とロマ、大人と子供といったくくりで見れば主人公兄弟は犠牲者だけど、人間と動物というくくりで見れば加害者になる。
    それぞれの語る言葉にも、「したいこと」と「できること」の矛盾があらわれる。
    立場によって見方は変わる。正しい答をくれない。それは児童書として正しい姿だ。


    本当に戦争を体験した人の話には、「どれだけ伝えようとしても伝えきれない。場所を見せても言葉を尽くしても伝えられるものじゃない」という言葉が出てくる。

    この本を読んで、最初は、この設定はどうなのかな、ファンタジーにしちゃっていいのかなと思った。
    腹を空かせるシーン以外は飢餓を感じてなさそうな、つくりものっぽさも嫌だった。
    だけど、この本がファンタジーなのは、本物を描くどころか理解すらできない、それでも伝えたいと思う、知らない者としての誠意なんじゃないかと思う。

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著者プロフィール

1968年生まれ、オーストラリア・メルボルン在住。作家。
これまでにオーストラリア児童図書賞、ガーディアン賞など数々の文学賞を受賞。

「2021年 『青い花の えかきさん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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