異世界食堂 1 (ヒーロー文庫)

著者 :
  • 主婦の友社
3.84
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本棚登録 : 814
感想 : 69
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784074113293

感想・レビュー・書評

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  • たまたま手にしたこの本のお試しコミック版が予想外に面白かったので、原書の本書を読んでみました。これがもう大正解!
    「ライトノベル」「異世界」ときたら、もうお馴染みの「何の取り柄もないニートな主人公が異世界に転生してチートな技を使って異世界で最強になり、そして異性に超モテモテ!?」みたいなのを想像しちゃいますがこの本は全く違います。

    「異世界」ではありますが、本書の舞台はどこにでもある普通の日本の洋食屋さん。そして主人公は転生もなにもしていないただの洋食屋の店主、というかこの主人公の店主は名前すらでてこない中年のオジサン料理人。はっきり言ってほぼ料理を作って、お客さんと簡単な会話をするだけで読者が想像するような主人公的な活躍は全くしません(笑)。
    本書の本当の主人公は、この洋食屋「ねこや」に訪れる異世界の住人達です。

    7日に一度「ドヨウの日」だけに異世界に扉が開かれるこの洋食店。訪れる客達は人間族もいますが、エルフやリザードマン、ドラゴンや小人など異世界ではお馴染みのクリーチャーたち。
    この客達が食べるこの洋食店の料理。これが凄いのです。
    異世界の料理なのだからとドラゴンの卵のオムレツだとか、水晶のゼリーだとかそんな物を想像しているあなた、全く外れです。

    本書に登場するのは僕たちが普段食べている何の変哲もないメンチカツやミートソーススパゲティ、カレーライスにとんかつとごく普通の料理なのです。

    じゃあ、なにが面白いのでしょう?
    ここからがこの「異世界食堂」の凄いところなのですが、異世界のクリーチャー達は当然私たちが普通に食べている洋食など今まで食べたことはありません。彼らが、初めてそれらの料理を口にしたときのリアクションと文章表現力が絶妙なのです。

    え、カレーライスってこんなにおいしそうな料理だっけ?
    と二度読みすること間違いありません。

    そして、この本は超短編集で1章が約10~15ページ。一章につき料理が一品登場し、小気味良い異世界の住民達のエピソードと美味しそうな料理の描写が繰り返されます。一つ一つのエピソードは独立していますが、全体として読むと一つの大きな物語ができていそうな感じです。例えるなら吉田篤弘先生の『月とコーヒー』を異世界風味にして料理を前面に押し出した感じでしょうか。

    う~ん。いまいち私の貧弱な表現力ではこの本の良さが伝わらないですね、それでは本書をちょっと引用しますね。
    これは若き女性冒険者サラが『メンチカツ』を生まれて初めて食べる場面です。


    『口の中に広がるのは、たっぷりとした肉汁。それが良質な油を含んだ軽い食感の衣と混ざり合い、口の中で弾け、ほどけていく。塩と胡椒が効いた、けれど決して効きすぎていない絶妙な味加減の肉と、その肉に混ぜ込まれたオラニエのほのかな甘み。
    それがサラを素晴らしい美食への世界へと誘う。
    「そういえば、・・・・・・レモンとソースとかいうのをかけると美味しいって言ってたわね」
    さらに盛られたメンチカツの半分、丸々一個を瞬く間に胃に落とし込んだ後で、店主の言葉を思い出し、今や残り1個となってしまったメンチカツを慎重に半分に切り分けて、サラは青い水差しを取る。
    そっとメンチカツに向けて傾けると、濃い茶色のソースが水差しからこぼれ、メンチカツにかかっていく。明るい茶の衣に黒味を帯びた濃い茶色のソースがとろりとこぼれたメンチカツに場違いに添えられた鮮やかな黄色の果物・・・・・・レモンを搾って汁をかける。
    メンチカツが汁を吸い、少しだけ柔らかくなる。それから、サラは再びメンチカツを口に運び・・・・・・
    それから先は無言であった。余計な言葉を言う暇があれば、少しでも味わいたいと考えた故に。
    複雑な旨みを持つソースと、さっぱりとした酸味のレモン。それが加わることで、先ほどまで天上の美味と思っていたメンチカツがまだ『物足りない』代物であったことをサラは悟った。
    たっぷりの肉汁と油、甘いオラニエ。その料理に足りなかった要素である酸味。それがソースという調味料とレモンという甘みがまるでなく酸味のみを持つ果物の汁が加わることで付与され、メンチカツは完成に至った。
    深い満足感を与える肉と衣の持つ、くどさ。一口、二口と食べ続ければ胃にもたれ、手を止めさせてしまうそれを、酸味が程よく中和することで、満足感を残しながらさっぱりとした後味を与えている。
    これならば、いくらでも食える。そんな確信を抱かせる、まさに天界に住まうという神の料理だった。』


    ・・・って引用していて、もうメンチカツが食べたくなって仕方がないです(笑)。

    この絶妙な文章だけでも破壊力抜群なのですが、ここでじわじわ私たちの胃袋を攻撃してくるのが、異世界ならではの表現です。例えば、私たちにはお馴染みのジャガイモとかにんじんとかタマネギとかそういう言葉を異世界の住人達は知らなかったり、自分達の言葉で表現するので(例えば、引用にあった「オラニエ」はオニオン→タマネギのことね)、薄黄色の野菜とか橙色の野菜とかと表現されます。

    ・・・うん?カレーライスに入っている薄黄色の野菜・・・?あ、ジャガイモか!っという感じで一旦、頭の中で言葉の意味を咀嚼する必要があるのです。

    つまり、本書を読む際には頭の中でその料理を具体的にイメージしなければならず、無条件に脳に対して美味そうな料理の描写が具体的かつ強烈に浴びせられるのです。著者の料理へのあふれんばかりの愛とともに・・・。
    これはもう我慢ができる訳がないです!極めつけの飯テロ小説の完成です(笑)。

    本書はライトノベル分類ですので、いい歳した大人が電車の中で読むのはちょっと恥ずかしいですが、このちょっと可愛い感じの表紙はブックカバーで隠し、本文中にたまに出てくるイラストは瞬殺のページめくり術を駆使すれば全然大丈夫(笑)。ライトノベルである本書ですが、その文章は引用でも分かるようにふわふわした感じは全くなく、むしろ硬派の方に属しているくらいで読み応えはあります。

    もしあなたが、食べることが大好きで、ダイエット中でもなくて「ワタクシ、エルフとかドラゴンとかが出てくる本を読むとじんま疹が出てきてしまうザマスの~、ごめんアソバセ~」という人でないならば、本書は絶対におすすめです。
    と言う訳で、もう我慢の限界なので、近くのコンビニでゲンコツメンチ買ってきますね。ごめんアソバセ~☆。

  • 海老フライが食べたい!!!!!

    読み終わってまずそう思った。食べるという行為をきちんと描ける作者にハズレなし! 大当たりですね。

    出てくる料理、デザート、どれもこれもおいしそうで、読んだのが食後だったので良かったけど、お腹空いていたら、うう、となるので空腹時の読書は止めた方がいいでしょう(笑)

    突飛な設定だと思うけれど、食べ物を通じて世界を描いていることに間違いはなく、そこにあるのはこちら側と変わらない世界だったりするのがとてもいい。
    主人公(と言っていいのかな)の店の店主が深く別世界の人物たちと関わりあいになるわけでもないし、ただそこではみんながそれぞれの事情を抱えながらも食を楽しんで、救われていく姿だったりする。そこがいい。

    今とにかく海老フライが食べたいと思う!!
    (今夜は我が家は騎士ソースのシチューなのよぉ)

  • 異世界に週に一回現れる扉は日本の洋食屋に繋がる魔法の扉。
    異世界の人々がひたすらに洋食食べるのが堪らなく美味しそう。

  • 友人が気に入っていたようだったので買ってみた本。大変おもしろく読んだ。
    ニッチなところを巧く突いてきたなぁという印象。

    もともと、料理漫画というのはよくあるが、料理小説というのはあまり多くない。というのも、視覚的情報をうまく伝えられないからだと思う。
    絵で伝わる情報量というのはすさまじい。
    例えば素材の良さ、調理法の目新しさ・または伝統のすばらしさなどは、究極VS至高のアレみたいな漫画だったり、意外な組み合わせで日常にも使える手軽さを教えるレシピ風なら、お料理パパ的なアレだったりする。
    けれどアレらも、絵が無ければちょっと伝わりにくい。

    文章表現のみで「美味しそう」と思わせるなら、誰もが想像できるもの、一度は食べたことがあるものじゃないと難しいのだ。
    では定番料理に……となると、それをきちんと大げさに表現してくれる設定なりキャラクターなりが必要になる。味皇的な人が。
    ただ、普通に考えて、コロッケやメンチカツ、エビフライは、どんなに良い材料を使っても、どんなに腕の良い調理人が仕上げても、味皇みたいなリアクションをする人は現代日本にはいない。
    この小説の巧いところはそこだ。

    定番料理を丁寧に解説することで読者の「美味しそう感」を煽る。→今までにもある。特に漫画には多い。

     +

    いわゆるファンタジー的な「異世界」と定期的に繋がる扉で異種族と交流を持つ。→よくある。ライトノベルや漫画などに多い。

     +

    「異世界」の住人に「現代日本の定番料理」を食べさせる。(!)

    最後にコレを持ってくることで、「食べたことのない美味さ」を自然に引き出すのが巧い。

    現在もネットに連載中ということで、連載中のものや、改稿前の掲載作品も読んでみたが、編集さんがしっかり良い仕事をしていると思う。もちろん、作家の筆力あってのものだけれど、編集さんに導かれたのかなと感じる部分が幾つか見受けられた(邪推だったら申し訳ない)。
    結果として、ネットで読んでいたとしても、本を買って損はない1冊になっている。

    ヒーロー文庫ってあまり聞いたことないのに…と思ったら、ちょっと意外な主婦の友社だった。
    さすが料理に関する本はしっかりしている……というべきだろうか。

    とりあえず、続刊に期待。

  • ずっと洋食の紹介ばかりで、
    このまま終わるのかと思ったら、
    最後の最後で、従業員になるべく人が現れた。

  • 立派な飯テロ小説。一週間に一度、ファンタジー世界と繋がる洋食屋のねこやに訪れたファンタジー系異世界の人々の飯テロ小説。作りとしてはオーソドックスで、語り手が章ごとに変わり、様々な料理を味わい驚き貪る。料理の解説は割とオーソドックス。異世界よりも現代料理の方がレベルアップが高いとしている点がややマイナスか。飯テロ小説としての役目は十分果たしている。

  • コーヒーブレイク本。

    毎週土曜日、こちらの世界と異世界が繋がる扉を持つ、雑居ビルの地下1階にあるレストラン「ねこや」の特別な一日を描くグルメファンタジー(?)小説(2015/03/31発行、626E)。

    エルフやドワーフと云った亜人から、リザードマンやドランゴンと云った魔獣(?)に魔法使いと騎士等々がいるファンタジー世界の人々が、基本的にこちらの世界の料理に講評付きで舌鼓を打つだけの話ですが、何故か「ほのぼの」と、そして少しだけ「わくわく」させられる楽しい作品でした。

  • ううううお腹が減る…!
    表紙の扉メインのイラストが印象的で買った後に気づいたけど、イラストエナミさんだったのか…!
    悪魔のケーキの話好きだなあ…。ラムレーズンってあんまり好きじゃないのに食べたくなった。
    あとカレーライスもストーリー的にすごく好き。
    メニューもキャラも、次は何かな~とワクワクさせてくれるので、次の巻も楽しみです!
    しかし、とにもかくにもお腹が減るので、夜中に読むもんじゃないな…。

  • 可愛い猫の扉の表紙に惹かれて購入しました。
    ネット連載されていて人気の作品のようです。

    まだ途中ですが、描写やストーリー展開が
    とても私好みなので、きっちり読み終わったら
    いろいろな人にお勧めしたいと思っています。

    2巻も出るようなので、今からもう楽しみです。

  • なにこれめっちゃお腹すく

    読んで第一声。とりあえず腹がへる

    異世界の住人達が、週に一回現れる不思議な洋食屋さんでご飯を食べる。ただそれだけの話なのにめちゃくちゃお腹がすく。ご飯食べたい米持ってこい。これをおかずにご飯が食べれる

    異世界の住人達がそれぞれの事情でそれぞれ好きなご飯を食べている姿が印象的でほんわかする。
    個人的には「メンチカツ」「サンドイッチ」「パウンドケーキ」のお話が好き。「コーヒーフロート」のお兄さんめっちゃ応援します。

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