集英社ギャラリー 世界の文学 (18) アメリカ3 その日をつかめ/ビール・ストリートに口あらば/酔いどれ草の仲買人
- 集英社 (1990年3月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (1284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784081290185
作品紹介・あらすじ
現代社会における宙吊りの人間状況に光を当て、人間性の回復を希求するユダヤ人作家・ベロー。アメリカ社会の原罪とも言うべき人種問題を通して、人間性の本質に迫る黒人作家・ボールドウィン。現代人の虚無感を直視して、前衛性に富むメタフィクションを生み出した・バース。
感想・レビュー・書評
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この中に収録されているジェイムズ・ボールドウィン の「ビールストリートに口あらば」を読みたくて図書館で借りた。
これは映画「ビールストリートの恋人たち」の原作。映画はほぼ忠実に原作を再現している。
小説もティッシュの一人称で語られていく。
作家自身が黒人でマルコムXらとも親交のあった人物。当時は黒人差別に対する反対運動が盛んにされていたと想像するが、この作品は黒人の恋人同士とその家族の暮らしを描くが、そこに激しさや、怒りはあからさまには描かれない。
実際に起きた事件をモデルにしているということだが、白人の警官に恨まれたことにより、無実の罪を着せられ、逮捕された青年を救おうとする、彼の恋人とその家族の姿を淡々と描く。
彼の生き方に理解を示さないその母と姉たち、彼女たちと対立する父親。恋人であるティッシュ、娘のために彼の無実を晴らそうと奔走するティッシュの母と姉。
彼の無実を晴らそうと努力するものの、孤立無援な白人弁護士。
現実の世界がそうであるように、ヒーローが現れて彼の窮地を救うようなこともなく、彼をはめた白人警官が裁きを受けることもない。
ただそこには恋人を思い、愛情と不穏の中で揺れる女性と、その家族の普通の姿があるだけ。そこに肌の色や容姿による差はない。黒人も白人の家族と同じように生きているのだということを描いている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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