コレクション 戦争×文学 6 日清日露の戦争 (コレクション 戦争×文学)

  • 集英社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (680ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784081570065

感想・レビュー・書評

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  • 古い戦争から、現代まで、果ては創造の戦争までと、そういう作品を集めた本はなかなかないと思い、全集を購入。その6巻。

    226事件のものもあって、シベリア出兵なんかもあったりして、何ならシリーズの題名を変えればいいのにとか、そういう狭い話は抜きにして(笑)

    いいたいテーマが同じ気がして、読み進めているうちに飽きてくる。当時の世界の空気とか気配とか言ったものから一線退いていて、せっかくのアンソロジーなのだから、違うものも欲しかったというのは個人的な好み。
    ついでにいえば、きっと、現代の思考や立場からじゃ見えないのだろうなそういうものは、と、だから、集めたところで「現代の目で過去を見る」という、それでは何の意味もなく、学びもできないことになるのだろう、と、清水幾太郎を思い出したのだった。カーだっけ…。ちょっとおぼろげなので、そっちも読み直してから、このアンソロジーシリーズを読んだ方がいいかなと思ったのだった。

  • 2012年1月22日読み始め 2012年1月28日読了
    日清日露の戦争を描いた短編を収録…と思って読んだら、226事件の短編まで入ってました。うーんどれも面白かったけど、もっと日露戦争の小説ってあると思うし、タイトル通りの作品を集めて欲しかった…とは思います。
    新美南吉の児童小説?など珍しかったです。稲垣足穂もこういう戦争のエッセイ書いてたんだなという驚きがありました。久世光彦の父親についての小説も美しかったです。

  • はじめて読んだこのシリーズ、編者の顔ぶれから期待されたとおり、いわゆる「戦争文学」の枠におさまらない現代作家のものも含めて、なかなかにユニークだ。
    特に強烈な印象を覚えたのは、泉鏡花の「凱旋祭」。耽美にふけったブルジョア作家というイメージがあったが、ファシズムの時代に熱狂しつつなだれ込んでいく人々の上にたちこめる不穏な空気を、次のように書き留めている。
    「銅像の頭より八方に綱を曳きて、数千の鬼灯提灯を繋げ懸け候が、これをこそ趣向と申せ。一つ一つ皆真蒼に彩り候。提灯の表には、眉を描き、鼻を描き、眼を描き、口を描きて人の顔になぞらえ候。さて眼も、口も、鼻も、眉も、一様普通のものにてはこれなく、いずれもゆがみ、ひそみ、まがり、うねりなど仕り、中には念入にて、酔狂にも、真赤な舌を吐かせたるが見え候。皆切取ったる敵兵の首の形にて候よし。されば其色の蒼きは死相をあらわしたるものに候わんか。下の台は切口なればとて、赤く塗り候。上の台は尋常に黒くいたし、辮髪とか申すことにて、一々蕨縄にてぶらぶらと釣りさげ候。一つは仰向き、一つは俯き、横になるもあれば、縦になりたるもありて、風の吹くたびに動き候いき。・・・ただ人のけはいの轟々とばかり遠波の寄するかと、ひっそりしたるなかに或は高く、或は低く、遠くなり、近くなりて、耳底に響き候のみ。・・・仰げば打重なる見物の男女が顔も朧げなる、中空にはむらむらと何にか候らん、陽炎の如きもの立ち迷い候。」
    日露戦争はただ映像のなかでのみ起きていたのではないかとつぶやく稲垣足穂の「人工戦争」、朝鮮人に対し絶対的権力者として立つことの快楽と、他人を殺して生き延びる虚無に浸されていく「英雄」たちを突き放した視点で描いた長与善郎の「誰でも知っている」、正気を窒息させていく軍神の歌に対する嫌悪と無力感に満ちた石川淳の「マルスの歌」、尼港事件の直後に現地に赴いたらしき父のトランクから出てきた美しい生首の写真に魅せられた少年の日の思い出をつづる久世光彦の「尼港の桃」など、ここで初めて知った作品が多かった。侵略への熱狂と他国民への暴虐を批判する作品も少なくなく、まだ1910~20年代には言論統制もそこまで厳しくはなかったことがうかがわれる。
    しかし、文学的価値の低い、ただの時代の証言のような作品もおさめられていて、どういう選出の方針なのか、よくわからない気もする。また、沖縄の山城正忠の作品が収録されているものの、中国や朝鮮、ロシアの人々に同情的なものであっても、やはり日本人作家の一方的なイマジネーションによる作品がほとんどで、外の視点の弱さが気にかかる。シリーズ全体としての編集方針が気になるところだ。

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