冒険の森へ 傑作小説大全 13 飛翔への夢 (冒険の森へ 傑作小説大全13)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (600ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784081570430

作品紹介・あらすじ

ジャンルを越え、小説の面白さをとことんまで追求した画期的アンソロジー。第9回配本、第13巻『飛翔への夢』は、古今の飛ぶことを夢見た人間が巻き起こすさまざまな悲喜劇を、長編から掌編まで17編収録!

[編集室から]
人はむかしむかし、鳥だったのかもしれない。というのは、たぶん間違いだろう。しかし、飛ぶ夢は人間なら誰でも見たことがあるはずだ。イカロスからライト兄弟までの夢だったのである。が、なにも飛ぶのは飛行機ばかりではない。凧も飛べば鷹も飛ぶ。気球も飛ぶ。人間もタヌキも飛ぶかもしれない。しかし最大の興味は、いちど飛翔したものがどこにどういうふうに着地するか、あるいはしないか、である。

[収録作]
【長編】
佐々木譲「ベルリン飛行指令」
【短編】
水谷準「お・それ・みお―私の太陽よ、大空の彼方に―」
新田次郎「鳥人伝」
戸川幸夫「爪王」
豊田穣「われ特攻に参加せず」
野坂昭如「凧になったお母さん」
城山三郎「死の誘導機」
筒井康隆「五郎八航空」
稲見一良「麦畑のミッション」
椎名誠「ねずみ」
清水義範「翼よ、あれは何の灯だ」
東野圭吾「超たぬき理論」
【掌編】
芥川龍之介「仙人」
阿刀田高「地震対策」
田中光二「ゴースト・フライト」
原田宗典「鳥の王の羽」
本渡章「飛ぶ男」

感想・レビュー・書評

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  • 逢坂剛、大沢在昌、北方謙三、船戸与一、夢枕獏を編集委員に迎えたアンソロジー。『冒険の森へ 傑作小説大全』第13巻のテーマは飛翔。翼あるものを主題にした小説を集めているが、編集委員の顔ぶれを見るに全体的に集まった作品はハードボイルド風味。

    実はイリオモテヤマネコ発見の功労者であり動物文学の第一人者、戸川幸夫氏の『爪王』を読みたくて、掲載された資料を探して見つけたのが本書。
    鷹と鷹匠の視点でその生態や往年の鷹狩りの実態を丹念に描いている。前半は鷹vs人間、後半は鷹vs狐と、それぞれの誇りをかけた死闘の描写に圧倒される動物文学の傑作だ。動物文学とはいえ、このアンソロジーに収録されたということでわかるように、ハードボイルド小説と言ってもいいほどとにかく格好良い。

    秋田県と山形県の県境に聳える神室連峰。そのふところに生まれた一羽の野生の角鷹は、己の人生最後の “名鷹”を育てあげようとする老鷹匠に見出され生け捕りとなる。
    鷹匠の60年間の体験と、鷹の野生の3年間。屈服させようとするものと、決して屈服しないものとの壮絶な戦いの末、鷹は豁然として鷹匠に慣れ、〈吹雪〉と名付けられる。
    鷹匠によって飼い鷹として鍛えられた吹雪は、忍従の歳月を経て数多くの獲物を狩る見事な俊鷹となるが、その頃近隣の村には家畜を食い荒らす老獪な赤狐が現れ被害が拡大していた。鷹匠は吹雪を伴いこれを屠りにゆくが――。

    鷹匠と鷹が信頼を築きあげるまでの烈しい葛藤と、吹雪の宿敵となる赤狐との、二度に渡る殺し合い。吹雪がそれぞれに誇りを賭けて繰り広げる闘いが大迫力で、思わず手に汗握って夢中で読みふけってしまう。

    この作品を平岩弓枝氏が脚色した『爪王』が歌舞伎の演目となっている。昔の歌舞伎座さよなら公演で、中村勘九郎・七之助兄弟が演じていた。原作の骨太さを損なうことなく、それでいて壮麗な舞踏作品となっている。こちらも機会があったらぜひ鑑賞してほしい。

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著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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