冒険の森へ 傑作小説大全 15 波浪の咆哮 (冒険の森へ 傑作小説大全15)
- 集英社 (2016年4月5日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
- / ISBN・EAN: 9784081570454
作品紹介・あらすじ
ジャンルを越え、小説の面白さをとことんまで追求した画期的アンソロジー。第15巻は「冒険物語」の原点ともいえる「海」を舞台とした傑作小説を、SFから恐竜ものまでバラエティ豊かな全14編収録!
●編集委員/逢坂剛 大沢在昌 北方謙三 船戸与一 夢枕獏
[編集室から]
海の巻である。そもそも「冒険」物語は大航海時代のイギリスに始まった。
「冒険」イコール「大海」だった時代があったのである。
鎖国と呼ばれた時代があったせいか、日本にはこの種の小説の伝統がない。
なければ詭弁を弄しても作ってしまおう。編集委員諸氏もそう言っておられる。
海が舞台の椎名SF長編と景山恐竜長編を核にすえた。
やはり、「冒険」に「海」がないと、画龍に点睛を欠くのである。
[収録作]
【長編】
椎名誠「水域」
景山民夫「遠い海から来たCOO(クー)」
【短編】
小川未明「赤いろうそくと人魚」
蘭郁次郎「地図にない島」
笹沢左保「赦免花は散った」
北杜夫「遙かな国 遠い国」
田中光二「二人だけの珊瑚礁」
中島らも「セルフィネの血」
熊谷達也「潜りさま」
【掌編】
川端康成「竜宮の乙姫」
夏目漱石「第七夜」
三島由紀夫「伝説」
生島治郎「暗い海暗い声」
原田宗典「岬にいた少女」
感想・レビュー・書評
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「冒険小説」叢書だと思っていたが、「ジャンルを超えた傑作小説」を集めたんだそうだ。高野秀行さんが解説を書いているというので手に取ってみたら、確かに選書がユニーク。「夢十夜」や「赤いろうそくと人魚」なんか載っているではないの。ショートストーリー五篇、短篇七篇、長篇二篇という構成で、分厚いけど楽しんで読んだ。
ショートストーリーは「夢十夜」(第七夜)以外もう一つかな。こういうのってよほどの切れ味じゃないと「それで?」って感じになっちゃう。
短篇は充実していた。特に笹沢佐保「赦免花は散った」にしびれた~。時代小説をあまり読まないので、木枯らし紋次郎ってテレビで観たことしかなかったのだが、こんなにかっこいいハードボイルドだったのか。これはちょっと読まなければ。
「赤いろうそくと人魚」は子どもの頃読んで、なんとも言えない恐ろしさを感じたのをよく覚えている。ろうそくを赤く塗りつぶすくだりと、ラストの海の描写の凄味たるや、もう…。昔話の残酷な場面をカットしたり、ハッピーエンドに改竄したりするらしい昨今、こんな暗い童話、まず出版にこぎ着けられないだろうな。
思いがけず引きつけられて読んだのが、北杜夫「遙かな国 遠い国」と熊谷達也「潜りさま」。巻名「波浪の咆哮」にふさわしい、どっぷり昭和なお話で、こういうのって久しぶりだなあと堪能した。
一方、「地図にない島」「二人だけの珊瑚礁」の二篇はイヤな古臭さで、ブブー。
長篇一つ目は、椎名誠「水域」。いやもう、これは傑作!以前読んだときは、盛りだくさんの造語や架空の水棲生物名が新鮮でおもしろいと思った覚えがあるが、今回読み返して、その圧倒的なリアリティ、イメージ喚起力に参った。解説の池上冬樹さんが「純文学的とも言える」と書いていて、これにはまったく同感だ。サバイバルものであり、終末ものでもあるのだろうが、生きることの強さ、また、それと裏腹の孤独が惻々と胸に迫ってくる。シーナSFで一番好きかも。
掉尾を飾るのは景山民夫の直木賞受賞作「遠い海から来たCOO」なんだけど、私はこれはダメだった。底の浅い活劇にしか見えなくて、途中からは飛ばし読み。直木賞選考委員の評価も真っ二つだったそうだが、かのナベジュンと自分が同じ感想だとはなんとも複雑な気持ちだ。
著者プロフィール
景山民夫の作品





