天気晴朗なれど波高し。 (コバルト文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086001977

作品紹介・あらすじ

ルトヴィア帝国で代々海軍提督を輩出する名門ギアス家の三男として生まれたランゾット。一見ひ弱そうに見えながら頭脳明晰の彼は小説家志望だったが、海軍への入隊は本人の意志に関係なく決められていた。士官候補生としてジュリエンド号に乗る前夜、彼は酒場で乱闘に巻き込まれる。そこで出会った同じ海軍士官候補生の男とは!?流血女神伝の姉妹編は、愛と笑いと冒険の青春海軍コメディ。

感想・レビュー・書評

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  • 名門ギアス家の三男として生まれたランゾットは本当は小説家になりたかったが、代々海軍提督を輩出する家の宿命でしぶしぶ海軍の士官候補生となる。初航海の前夜、酒場の乱闘に巻き込まれたランゾットは同じく士官候補生の男、トルヴァン・コーアと出会う…。

    図書館で借りて読了。
    流血女神伝の姉妹編。こないだうっかり本編の全22冊を再読してしまった勢いで読んだことのなかった番外編(これ自体で独立しているけど)を読んだのだけど、何だこれ、大好きだ。
    全体的にコメディだけれど、文献を調べるだけじゃなくイギリスまで実際に船の取材をしに行ったという作者の船の描写が本格的で、また主役のランゾットの人を食ったように見せかけて情に厚い天才型の性格が面白い。
    流血女神伝でのランゾットとトルヴァンの行く末を知っているだけに時折切なくもなったりしたけれど、読んで良かったなぁと思った。

  • <2巻までのネタバレを含みます>

    小説を読んでこれだけ笑わせられたのも久々かもしれない。とにかく面白さ抜群のタイトル!読んでいる途中のわくわく感、そして読み終わった後の突き抜けるような爽快感は、本編が暗く絶望的な雰囲気に満ちたものであるがゆえに、かえっていっそう感慨深い思いを読者にもたらしてくれる。
    正直、須賀先生の作品は流血女神伝しか読んだことのなかった私は、この2冊を読み終えた際「何だ…須賀先生ってコメディもめちゃめちゃ書けるんじゃん…」と拍子抜けするやら感動するやら――もちろん、本編のあの政治色に満ちた重厚なカラ―も好きなのだが、本編でもちょこちょこ差し挟まれるギャグシーンにいちいちウケまくっていた自分としては、作者いわく「読者へのサービス」的位置づけにある本作品の底抜けの明るさは、まさに「須賀しのぶの本領発揮!」という印象だった。
    とにもかくにも、主役のギアス、そして脇を固めるトルハーンのキャラが素晴らしい。理屈っぽい冷めた見た目とは裏腹に、底知れぬ情熱を秘めたギアスと、粗野で豪快なだけに見える性質の奥に、絶望の過去を乗り越えてきた強靭な精神力と優しさとを備えたトルハーンの阿吽のバランスが見事だ。この二人に関しては、先の展開を知っていると落ち込むところも大きいので、あえて「姉妹編」として本編とはきっぱり切り離された時間軸で物語が語られたところも良かったと思う。じんわり胸が温かくなるラストも、この先のトルハーンの処刑やギアスとの決別などという悲劇を微塵も感じさせない。ただ明るく賑々しい作品の雰囲気を壊さぬままに、二人の前に広がる前途洋洋の未来をにおわせたうえで、思いやりに満ちた幕引きを用意されていたのが本当に嬉しかった。

    それにしても、最後のオーリアとのシーンで思わずギアスの口から漏れた「だがオーリア、私は寂しい」の一言には何度読んでもほろりとさせられてしまう。1巻冒頭、海軍に入ろうとする前の冷めきった彼と比較してみると本当に驚くべき変貌だと思う。「ギアス家」という圧倒的な名前のもとに、自分でも気付かない無意識の淵で自我を抑圧してきたギアスが、トルハーンや海軍の若い衆達との血の通った交流(時には、ただの乱暴や暴力に満ちたものでもあったけれど)によってだんだん自分の感情の素直になっていく過程が丁寧に描かれていて気持ちも救われる。あと、やっぱりトルハーンがはんぱなくかっこいい。琥珀の左眼のせいで人並以上の能力と苦労を引き受けてきたのに、その中から力と自信と優しさだけを拾い上げて、他の暗く冷たい部分は少しも衆目に晒さない彼のストイックさが好きだ。ウェインが「この二人の出会いは海神ワーデンのお導きだ」というようなことを言うけれど、本当に文字通り運命的な引き合わせだったのだと思う。それが、彼らの未来にとって結局は悲劇的な結末をもたらすだけのものであったのだとしても。

    最後に、大事なことを書き忘れていた。何はともかく、この作品の一つの目玉と言えば「グンダホア・ジンガ」だ。今思い出しただけでもいろんな意味で胸が熱くなるが、これのせいで私は電車の中で危うく爆笑してしまいそうになり、あと一歩で不審者の仲間入りだった。例の股間のオロキ鳥も…海神ワーデンはよっぽど懐の広い神なのだなぁとしみじみ感じ入る。一つだけ残念だったのはジール・ウェインも交えたギアス家三兄弟の共演でこの神舞を見れなかったことだが、そんなことになったらなったでトラウマものの記憶になりそうで恐い。特に、ジール兄上。彼はなぜあんなにもグンダホア・ジンガにご執心なのか。幼い頃のギアスがショックのあまり記憶の奥底に封印していた、腰布一枚で踊り狂う兄二人のシーンは本当に傑作だった。「そんなへっぽこな踊りでは、水夫たちに舐められるぞ!ギアス家の人間たるもの、艦上では完璧でなければならん。たとえ芸でも同じこと!」は名言だ。そしてそれを自ら率先して体現するジール兄上、さすがは名門ギアス家の男です!

  • 本編でやってくる
    政治的な未来を知っているからこそ
    この頃の
    若い時代を
    こうして読めるのが良いです。
    こんな時代もあったねと思えるのが面白いです。
    最初は、あれだけすぐに船を降りたいって
    思っていたのに
    ラストシーンは全然違うのがまた面白いです。
    この一冊の中での大きな成長というか
    大きな変化です

  • ラノベ。
    海軍見習い士官となったランゾットとコーアの物語。ランゾットの独特の感性が好きだ。

  • 海軍にはいった名門の3男坊

    青春コメディ

  • 2011年9月13日〜9月15日

  • どんな苦難も、これは小説の格好の題材になると思えば、とたんになにものにも代えがたい快楽となるのである。
    とはいうものの、悲劇の親友同士の若かりしころのお話と来たら、キラキラしてるに決まってるじゃありませんか!
    もーギアスの頭のよさ、からだの弱さがツボすぎるよ…
    船も密室になるんだな、と思いました。

  • トルハーンとギアスの仕官見習い時代スピンオフ。

  • 流血女神伝シリーズ外伝 後に海賊となるコーアと悲劇の海軍提督となるランゾットの若き頃の話 本編での二人と重ねるとせつない

  • 『流血女神伝』のスピンオフ。
    コバルト文庫だからって侮るなかれ。
    普通におもしろい。
    二巻まででているけれど、続刊しないかな・・・

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著者プロフィール

『惑星童話』にて94年コバルト読者大賞を受賞しデビュー。『流血女神伝』など数々のヒットシリーズを持ち、魅力的な人物造詣とリアルで血の通った歴史観で、近年一般小説ジャンルでも熱い支持を集めている。2016年『革命前夜』で大藪春彦賞、17年『また、桜の国で』で直木賞候補。その他の著書に『芙蓉千里』『神の棘』『夏空白花』など。

「2022年 『荒城に白百合ありて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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