氷雪王の求婚 〜春にとけゆくものの名は〜 (コバルト文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086014694

作品紹介・あらすじ

冷酷さから"氷雪王"とも渾名される、皇帝エドリックが皇后に選んだのは、地方伯の娘にすぎないアイリス。逆らうことなどできるはずもなく、アイリスは幼馴染みへの淡い恋心を殺し、皇帝との華燭の典に臨んだ。しかし皇帝は渾名通り情のない男だった。互いを名前で呼ぶことすら許さず、"皇后"として公務を果たし、世継ぎをもうけることだけを要求し…!?2010年度ロマン大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • “氷雪王”と評されるエドリック三世に嫁いだ田舎貴族の娘・アイリス。エドリックが彼女に求めることは「世継ぎをもうける」ただ一点だけ。しかし彼女によって彼の堅い氷の鎧はいつしか溶かされていく。それが悲劇の始まりだとも知らずに――

    昨年のロマン大賞受賞作。もう一方の方と同じく「政略結婚」モノだったのですが、私はあまりこの題材を好かない。けどまあ、カタブツが段々素顔を見せて関係が柔らかくなっていくというものは好きではあるのだけどね…… コバルトの文体ってどうしても読みにくい、なのに(見た目)易しい文体なのに、この作品はそうではない。どちらかというと堅い文章なのですが読みやすいなと。作者さんもインタビューで言っていましたが歴史書を読むのが好きだとか。博覧強記ぶりがうかがえて、とても面白く読めました。もっとこういうしっかりした文体のコバルト増えるといいな!
    内容もとても面白かった。あんまり西洋系の話は得意でないしカタカナ苦手なのだけど、そういうの関係なく。エドリックとアイリスが互いにラブラブ、というよりも「一緒の夢を持って共に進んでいこう、共に助け合っていこう」とする夫婦像だったので多分好感が持てたのかもしれない。カルスとのイベントのあとの二人にきゅんきゅんした。アイリスは後半になるととても頼もしい女性になるのでそれも好感だったかな。戯曲とルイを絡めるやり方も非常に上手い。

    最後結局エディス一世は二人の息子ってことでいいんかな? と思った。おそらくそうとしか読めないが。全体が歴史書のような構成&引用部分で節が終わるのですがそういう書き方も「にくいな~」と思える程うまかったです。現代ものも読みたいです。まる。

  • 他のよくある少女小説とは一線を画する。
    夫婦であり、同志であったふたりの選択に胸が締め付けられた。
    こういう、重厚さと少女向けらしい甘さとを持ち合わせた作品が増えてほしい。
    唯一つ、内容の重みと低年齢向け少女漫画のようなイラストとの不協和音が凄まじかった。

  • 新人さんとは思えない文章力だと思いました。考え込まれた設定に時代背景・丁寧に描かれた登場人物たちの心の動き。
    コバルト文庫では珍しい悲恋物語でしたが、最後まで面白く読ませていただきました。切ないラストではありましたが、二人が自分たちの想いのために行動した結末だと思います。最初は仲違いをしていた2人が少しずつ想いを重ね合わせ、国を良くしていきたいと共に頑張っていく姿がとても素晴らしかった。
    過去と現代が交差しながら少しずつ謎が紐解かれていく様子も「上手いなぁ~」と思いながら読みました。
    しっかりと書き込まれた話だと思います。まさにロマン大賞!

  • 挿画に似合わぬ悲恋だった。

  • 息つく暇なくという感じではないけど、面白かった。
    最近のデビュー作にしては、ちゃんと読み切りというスタイルで仕上がっていたのも好感が持てた。
    恋愛小説だからどうしても最後はくっつくのがお約束みないな暗黙のルールみたいなのがある中で、それを守った上での悲恋物語。
    本当に新人?と疑いたくなるくらい、力のある新人さん。
    次回作も楽しみ。

    ロマン大賞受賞の、甘く切ない政略結婚物語!
    冷酷な皇帝エドリックに、后にと望まれた地方伯の娘・アイリス。輿入れしたアイリスだったが、皇帝エドリックは彼女に王妃の公の務めを果たすことだけ求め、一片の愛情すら示そうとはせず──!?

  • 『後宮小説』(酒見堅一)を思い出したり。
    完全オリジナルなのに史実っぽい書き方とか。ラストとか。
    ジャンルが違うのに比較してしまい、複雑な気分に……。

  • 弟が凄かった

  • どれか忘れましたが、「瑠璃花」か「赤き月」を買ったときに、おまけペーパーに入っていたのを読んで、気になっていたお話でしたが、買って正解!面白くて一気に読んでしまいました。

    主人公アイリスの死後350年経った頃、アイリスのお墓が発掘されるというところから始まったのですが、その内容から、これはもしかしてハッピーエンドではないのかもと思ってたんですが、見事に悲恋ものでした。

    最初はケンカばかりしていたアイリスとエドリックですが、アイリスの視点が自分と同じであることに気付いてからは、どんどんアイリスに惹かれていって、ずっと覆ったままだった氷雪王の氷の鎧もはがれていき・・・。

    このままハッピーエンドで終わりそうな方向にもいけそうだったのに、忘れていた弟と母の陰謀により失脚。アイリスの助けも不要として、エドリックがそのまま断頭台に消えてしまったのは、悲しい結果でした。エドリックの死後、それぞれのその後の様子も書かれていて、もしかしてエドリックとアイリスの子の血統が皇帝になったのでは?と思わせるところもあるのですが、やっぱり主人公二人の幸せな姿がもっと見たかったです。

    残念だったのが、カルスの存在。
    最初ストライキを起こすくらい、アイリスはカルスのことを好きなのかと思ったのですが、その後は全然出てこないし、アイリスも意外とすんなり陛下と仲良くことを優先してたりして、カルスはいつ出てくるんだろうって感じでした。最後まで読んだあとは、いなくてもよかったのかなあ、なんてね。

    物語の途中で、他の人間の回想録や手紙の内容などが挟まれているところも、なんかあまり見かけない感じでしたが、一気読みしたいと思わせる作品でしたので、湊ようこさんの新作出たらチェックしようと思います。

  • うわぁ……。

    コバルトにしてはすごい重い話だな。花嫁ものとしては王道の政略結婚から相思相愛になる話なわけだが、既に冒頭から悲劇の匂いが漂っているので、嫌な予感がしていたのだが。
    コバルトでこれはアリなんだ、と、思わずにはいられない。
    この手の話は結構好きだが、コバルトで、というのは微妙かも。
    ええい、涙ぐんでしまったではないか!
    まあ、でも、『風の王国』の例もあるので、コバルトだからと言って、花嫁の頭の中が花畑なものばかりではないというのはわかってはいるのだが。
    悲劇が好きな人にはオススメ。ただし、後味が悪いのは事実。私は好きだけど、読む人を選ぶ話。そういうのが嫌いな人は読まない方がいいかも。

  • 2010年度ロマン大賞受賞作。
    氷室冴子さんが好き、という方あって、系統が似ており、とっても好感が持てました。
    しっかり作り込まれた政治理念、キャラクターの動機と行動、ちらほら垣間見られる文学と歴史の教養。
    歴史本をひもとくような構図は、歴女の心をくすぐります。
    あとがきでは、「皇女和宮の三角関係が書きたくて」とあり、日本の歴史を西洋に転化し、西洋の歴史の面白さにプラスした作品で、その構想が面白いと思いました。

  • 地方貴族が、突如として皇帝陛下の妃に。
    よくあるパターンです。
    が、輿入れするまで、輿入れした後、納得できる内容でした。

    輿入れ内容も頷ける理由でしたし、皇帝陛下の性格も分かりやすかったです。
    視点の入れ替えもそれほどでした。
    が、行きつく先というか、人物の動きが分かりすぎといいましょうか。
    非常に安心しては読めましたがw

    現代から歴史書や勤めていた人達の日記や記録を元に紡がれる過去。
    これからどうなるのか、という未来が分かるものの
    不安なく一気に読めるものでした。
    問題があるとすれば、抜け出すような暇が
    本当にあるかどうか、という所ですか?w

  • コバルトにしてはハッピーエンドではないんだな。
    途中途中で入る手記で最終的に悲劇で終わるんだな、ていうのが分かっていいのか悪いのか…。
    話的には面白かったんだけどなんとなく中途半端な気がする。
    あと絵があまりにもキラキラ少女漫画系で外では読めないのが残念。

  • コバルト文庫ロマン大賞受賞作品。
    中世ヨーロッパ風の架空の世界を舞台に描かれる王と王妃の悲劇の物語。
    実の父を殺して帝位に就いた皇帝エドリックは "お世継ぎ" を得るため結婚・離婚・死別を繰り返し、ついに国内に妃にふさわしい女性は地方の伯爵令嬢アイリスのみとなってしまう。アイリスには婚約者がいたのだが引き離され、皇帝に嫁ぐ。心を氷で覆う皇帝にアイリスは…。

    内容は王道の恋愛小説。ツンデレ系皇帝と頭に花が咲いてるかと思いきや語学堪能で広い視野を持っていた田舎の伯爵令嬢出会って、お互いをかけがえのない人と思いあう物語ですから。
    ですが読み口は少女系ヨーロッパ版『後宮小説』のよう。後世の歴史家がアイリスの墓の修復中に新事実を発見し、その最新の研究がベースになっています、という体裁で物語は展開、彼女はなぜ「そのように埋葬されたのか」歴史を紐解く感じなのです。
    結末は決まっていて、それに向かって突き進むスタイルで話は進むのですが、架空の世界を説明する部分も主人公の二人の心情や取り巻く人々の心情も、どちらも中途半端でもったいない。狂言回しが不在だったからかな。
    エンディングへの伏線とかすごく良いんですけど(思わずニヤリとしてしまう伏線ですね)…投稿作品にするには詰め込み過ぎだったんじゃないかなぁなんて思いました。

    世界を整理して、エンディングに登場する伏線の人物で続きが出ることに期待♪

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