英国マザーグース物語 聖夜に捧ぐ鎮魂歌 (英国マザーグース物語シリーズ) (コバルト文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086017299

作品紹介・あらすじ

ジュリアンが優しかったのは、子爵家の事情を探るためだったと知ったセシル。彼は新聞社を去り、セシルは一人で記者を続けていたが、クリストファーによる新たな危機が迫っていた――!

感想・レビュー・書評

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  • まさかここまでするとはな
    山田風太郎作品の明治ものを思わせる驚きの大展開
    アレクサンドラ妃がシュレースヴィヒ=ホルシュタイン問題を口にして
    怪盗が水晶宮から飛行船で逃げていくところから予想されていたとも言えるが
    げに少女向けライトノベル恐るべし

    同年代男子向け仮想戦記のしているのとは格が違う
    今巻1話目も理詰めで進むはコバルト文庫読者がついてこれるか不安になったが
    わかっていないのはこちらだった

    それはともかくヴィルヘルム二世の三流悪役ぶりは流石の味わい

  • ジュリアンは政府のスパイだったーー
    彼がセシルに近付いた目的が、彼女の父や子爵家の内情を探ることだったと知ったセシルは、ジュリアンの「愛している」という告白を信じることができない。
    彼が去った新聞社で、ひとり記者の仕事を続けるセシルのもとへ、王家主催の舞踏会への招待状が舞い込む。
    この裏にはクリストファーの思惑が絡んでいると予測したセシル。
    父からの秘密のメッセージからも、何かが起こることは必至。
    引き離されたふたりに、危機が迫る!

    第1話 Golden slumbers
    破談と友情再確認。
    やっぱり男装女子なのはバレバレだよね‐
    身近な周囲が容認してくれてるけど…割と危険な状態ではなかろうか?街中のごろつき的なのに出会ったら。
    すぐに気を失う時代の乙女にしては、ヒロイン・セシルはやっぱり気丈だな‐

    第2話 聖夜に捧ぐ鎮魂歌
    愉快なパートは令嬢アメリア、怪盗ブラックバードとの再会。
    しかし何故こうも悪手をとるのか…
    物語上しょうがないけどさ‐
    国の命運と自身の気不味さなら前者が大事でしょうに。
    直接話せないなら、手紙とか兄伝手で敵からのヒントを教えて探偵役に解いてもらえよ~やきもきする~
    助かって、次巻でハッピーエンドなのは分かってるけど!

  • しあわせやまどろみが あなたのひとみに キスをする
    あさがくれば ほほえみがおこしてくれる
    おやすみ なかないで
    こもりうたを うたってあげる
    すてきな すてきな こもりうたを
    Golden slumbers kiss your eyes,
    Smiles awake you when you rise,
    Sleep, pretty wantion; do not cry,
    And I will sing a lullaby:
    Rock them, rock them, lullaby
    しんぱいは なにもいらない だからねむって
    たいせつなあなた いつまでもまもってあげる
    おやすみ なかないで
    こもりうたを うたってあげる
    やさしい やさしい こもりうたを
    Care is heavy, therefore sleep you,
    You are care, and care must keep you,
    Sleep, pretty wantions, do not cry,
    And I will sing a lullaby,
    Rock them, rock them, lullaby
    *
    ねこ ねこ こねこ どこにいたの?
    じょおうみたくて ロンドンへ
    ねこ ねこ こねこ なにをしたの?
    ぎょくざのしたの こねずみを びっくりぎょうてん させてきた
    Pussy cat, pussy cat, where have you been?
    I've been to London to look at the queen.
    Pussy cat, pussy cat, what did you there?
    I frightened a little mouse under her chair.

  • 顔も金も社会的地位もある男が身も世もなく女子にすがる修羅場って最高にニヤニヤ。
    ジュリアンは諜報活動とはいえ非道でしたね、結果恋に落ちたとしても酷い。
    殴られても仕方ないw
    前作も衝撃のラストだったけど今回のはもっと衝撃のラスト。

  • “乱暴に顔の雨をぬぐうと、殴られた頬が痛んだ。
    重い身体をひきずるように、下宿の階段をのぼる。すると足音で帰りを察したのか、自室の扉からレナードが出迎えた。
    「ジュリアンさま」
    こちらの顔を見たとたん、レナードが目をみはる。
    「話なら明日にしてくれないか、レナード。今夜はもう休みたいんだ」
    「いえ、そうではなく——」
    なおもなにか伝えようとするレナードにはかまわず、ジュリアンは部屋をよこぎる。
    だが寝室の扉に手をかけようとしたところで、足はとまった。
    無言のまま、じっと扉の向こうを見つめる。
    ジュリアンは目を閉ざした。ひとつ、深く息を吸いこんでから、寝室に足を踏みいれる。
    ゆれるランプの灯りのなか、本棚に向かいあっていた人影が、こちらをふりむいた。
    労働者ふうの、くたびれた身なりをしているが、見まちがえるはずもない。
    均整のとれた長身。光を透かす銀の髪。青みのほとんどない灰の瞳。
    その怜悧な表情は、三年の時を経て、精悍さを増しているだろうか。
    そしてジュリアンは微笑を浮かべた。
    「おかえりなさい、兄上」”[P.60]

    5巻目。
    曰く、怒濤の言い訳篇。
    物理的にも精神的にもジュリアンふるぼっこ。
    四人兄弟で演奏してるシーンが楽しくて好き。
    再びガブリエルが出てきたのは嬉しかった。
    読んでいて言い得ない難しさが気の短い従者の行動で落ち着く。レナードのこの行動が好き。
    そこからのセシルの気持ちの変動と、驚きの終わり方に続きが気になる。

    “「ごめんなさい、ジュリアン」
    ごめんなさい。ごめんなさい。
    伝えたいことはたくさんあるのに、もう時間がない。
    「——二」
    あなたに出会えてよかった。あなたを好きになれてよかった。
    だからわたしを忘れないで。でもどうか苦しまないで。
    あなたには、誰よりも幸せになって欲しいから。
    「——一」
    耳許で、金属音が鳴る。
    その刹那、セシルは手首をかえし、銃口を自分の胸に押しつけた。
    こうすれば、セシルの身体を貫いた銃丸は、クリストファーまで届く。あとは、ジュリアンがなんとかしてくれる。
    たちまち目をみはるジュリアンの顔を、セシルは瞳に焼きつける。
    「——セシル、やめろ!」”[P.313]

  • ラスト直前巻です。
    自分の正体を明かした彼の全ての言葉を否定し殻に籠るセシルの気持ちも、彼女との関係を失ってしまうことを恐れた彼の焦燥、苦い後悔、それでも諦められない想いも、とってもグっとくる巻。
    あきさんのイラストで、寂寥感、増量。

    レナード従者の鏡。
    http://books117117.blog110.fc2.com/blog-entry-2983.html

  • お話の濃度が高くてかなりボリューミーに楽しめました。

  • 急激に面白くなった巻。
    やっと短編集ではなくて、一つの物語を本にした印象。

    初めの段階から、ジュリアンとセシルの心の動きが
    とらえられていて面白く読めました。

    何といっても最後のセシルの銃を向けた行動は、
    これぞヒロインという感じで、ナイスだった。

    ところで、クリストファーはなぜセシルにそこまで
    執着するのかわからない。最後の巻で判明するのかな?

    セシルの美少女っぷり、実際は出来るはずのレナードの仕事ぶり、
    ジェフリー兄様の必要性、もう少し高められれば、
    もっとお話が盛り上がったのでは?

    特にセシルは、いじめられるほどきれいなのならば、
    ヴィルヘルムに捕まった時も、きれいな人うんぬんを
    入れるべきでは??

    最終巻気になります。

  • シリーズ5冊目。
    読む前から表紙のジュリアンの表情の暗さに不安が募ります。

    「怒涛の言い訳編」という事でしたが、物語の始まりから終わり迄ジュリアンとセシルの苦悩が続きます。
    いつしかセシルに惹かれていたジュリアンは自分の胸の内を正直に告げようとしますが、必死に言い募るほどセシルは疑心暗鬼を深くしていきます。

    最初から最後迄ハラハラドキドキの展開に、頁を繰る手が止まりませんでした!
    そして、ラストシーンにはただただ呆然としました。
    次巻はとうとう最終巻という事ですが、早く続きが読みたくてたまりません。
    どうかセシルとジュリアンの辿り着く結末が、手を取り合って笑い合える未来に続いて欲しいと願うばかりです。

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著者プロフィール

東京都出身。東京音楽大学器楽科ピアノ演奏家コース卒業。『始まりの日は空へ落ちる』で集英社ノベル大賞受賞。本書は大英帝国を舞台に若き日の小泉八雲の活躍を描いたホラーミステリー『奇譚蒐集家 小泉八雲 白衣の女』(講談社文庫)の続編にあたる。他の著作に、本シリーズの前日譚「ふりむけばそこにいる」シリーズ(講談社タイガ)、「王女の遺言」「倫敦千夜一夜物語」シリーズ(ともに集英社オレンジ文庫)、「英国マザーグース物語」シリーズ(集英社コバルト文庫)などがある。


「2022年 『奇譚蒐集家 小泉八雲 終わりなき夜に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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