あたしの中の…… (集英社文庫―コバルトシリーズ 75C)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086104449

感想・レビュー・書評

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  • 新井素子先生の作品再読中なのだけど、この作品は未読でした。
    表題作『あたしの中の…』の佳作受賞に際し、文体で賛否両論あったとのこと。コバルトシリーズ読んでた自分は問題なく読めるかと思いきや、少しあった違和感。。なんというか若さやパワーみたいなもの、女の子のはしゃぎっぷりがそのまま文章になったかのようで、ちょっと気恥ずかしい気持ちになりました。。すいません。。大人の先生方は躊躇いを感じたかも。とおばさんになった自分は思ってしまいました。とはいえ文章がバラバラにならないし、伝わるものはあるし、話は進んでいくしで、やはり先生はすごい。
    収録作品全てSF題材で『あたしの』の人間に対する冷ややかさ『ずれ』のホラーっぽい所とか『チューリップさん』のグロテスクさ。。そういえば、コバルト外の先生の作品はそういう雰囲気のものが多かったなと今更ながらに思い出した。初期作品だからこそ先生のこれからがつまっていたのだと思わされた。

    ・あたしの中の…集英社1996年『あたしの中の…』『ずれ』『大きな壁の中と外』『チューリップさん物語』収録

  • 年末年始の帰省中に実家に置きっぱなしにしてあった10代の頃の愛読書を再読。新井素子は中学生の頃いちばん沢山読んだ作家かもしれない。それにしてもこのデビュー作が16歳(高2)で書かれたというのは驚く。いまどきのラノベ的文体一人称小説のはしりというか先駆者というか元祖みたいな人だけど、やはり地の文章の上手さがあってこそと今ならわかる。

    表題作は命を狙われていて記憶喪失で不死身の女の子が自分自身について探るうちに巻き込まれて死んだ周囲の人の意識がどんどん同居しだして・・・という妙な設定のSF。宇宙人というのが安易な気はするけれど、ちょっとブラックめなオチが効いてる感じ。

    個人的には王道アイテムである鏡をモチーフにした短編ながら意外な展開の「ずれ」が面白い。鏡のこっち側で死んでしまった女の子、しかし鏡のあっち側では生きているのでおかしな事態に・・・という、これもオチがいいなあ。

    「大きな壁の中と外」もあの頃のSFには多かった、人類滅亡後の未来、壁で隔離されたディストピア、でも実は・・・という話でこれはわりとベタな展開&オチ。でもこれを高校生の女の子が書いたのだからやっぱりたいしたもんだ。

    ※収録作品
    あたしの中の……/ずれ/大きな壁の中と外/チューリップさん物語

  • 高校時代に読了。
    さほど読み返すこともないからと手放してしまったが、たまにふと思い出して探しては「もうないんだった」となってしまう。ちょっと後悔。

  • 「大きな壁の中と外」は面白かった。他はいまいち。私が短編苦手ってこともあるでしょうけど…。

  • (2000.05.21読了)(2000.03.20購入)
    (「BOOK」データベースより)
    あたしが目を覚ますと、そこは病室。なんでもあたしの名前は田崎京子で、バスの転落事故に巻き込まれて奇跡的に助かったらしい。しかもこの一週間で二十九回も事故にあっているのに、まったくの無傷らしい。けれどあたしには記憶がない!警察はあたしのことを疑っているみたい。あたしは誰なんだろう…!?(「あたしの中の…」)表題作ほか三編を収録。新井素子デビュー作の新装版。

    ☆新井素子さんの本(既読)
    「星へ行く船」新井素子著、コバルト文庫、1981.03.15
    「通りすがりのレイディ」新井素子著、コバルト文庫、1982.01.15
    「扉を開けて」新井素子著、CBSソニー出版、1982.03.05
    「ラビリンス」新井素子著、徳間文庫、1987.12.15
    「くますけと一緒に」新井素子著、新潮文庫、1993.03.25
    「ディアナ・ディア・ディアス」新井素子著、徳間文庫、1993.06.15
    「チグリスとユーフラテス」新井素子著、集英社、1999.02.10

  • <「萌え」だけで残るほど、小説は甘くない★>


     えっと、昭和52年、高校生だった新井素子の作品にして、奇想天外SF新人賞佳作のデビュー作、です☆ 当時の審査過程を読む機会が(今頃★)あって、審査委員の意見はどれももっともで、ひどく考えさせられました。

     何度も事故にあっているのに、ふしぎに不死身で記憶喪失の女の子。自分でも状況がのみこめずにいるうち、「あたし」の中に別人の意識が入ってくるように! 以後、近くで誰かが死ぬたび、「あたし」の中に別の意識がお邪魔するものだから、「あたし」に寄生して暮らす人数はきりもなく増えていくのです。ドミノ倒しのユニークさが光ります☆

     背伸びせずに、女子高生らしさが垣間見える幼形成熟な文体で書かれていることも、魅力を倍加させています。明るく弾んで、じかに新井素子が語りかけてくるよう。特に、同世代である中高生がひき込まれるような磁力を放っています。今で言うところの「萌え」的なものかな?

     素子文体が放つ光を、偏見なく受け止めた星新一氏は慧眼でしたが、萌え文体は大賞を逃す理由にもなりました。筒井康隆氏が受け入れがたいとしたのも分からなくはなく、否定の動機こそが興味深かった。小説について、それを形成する日本語についての考えがあって、言葉の将来について危惧したのです。
     新井素子よりも、新井素子以降の世への危惧が正しかった。現代を見れば、若い人が発信する文化は大きな力を持ったものの、日本語が乱れて日本を乱している点は否定できないですよね★

     しかし、再読してみた『あたしの中を……』は、ネックになったはずの可愛すぎた文も、存外しっかりしていました。確かに自由度高いけど、そこはかとない品が滲んでいる☆ ただの思いつきで現象だけを書いたわけじゃなく、なぜそんな事態になったのかというSF的な設定にも軸が通っていました。
     可愛いけど、「萌え」だけが素子作品の力ではないのは、はっきりしていますね。

  • 既読本

  • 作者が16歳の時SF新人賞の佳作に入選した作品を含む、初期の4短編が収録されている。4編中3編は地球が滅亡、もしくは、人類が滅亡の危機にさらされる。そうそう、昔こんなの読んでたよねと、とても懐かしい雰囲気だが、内容は古くない。特に、「大きな壁の中と外」の本当の計画が素晴らしかった。

  • コバルトの中でも特に古い作品が読みたくなってネット古書店で購入。短編4作。
    「この当時は流行ってたんだろうな」というような文章がそこかしこに。でも意外と古臭さはそれほど感じず、楽しく読むことが出来た。
    中でも『大きな壁の中と外』が一番好き。2作目の『ずれ』は何だか中途半端な感じがした。

  • 大きな壁の内と外(新井素子)

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著者プロフィール

1977年「わたしの中の・・・・・・」が奇想天外新人賞佳作に入賞し、デビュー。以後『いつか猫になる日まで』『結婚物語』『ひとめあなたに・・・』『おしまいの日』などを発表。1999年に発表した『チグリスとユーフラテス』が第20回日本SF大賞を受賞。

「2022年 『絶対猫から動かない 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

新井素子の作品

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