ヤマトタケル 歴史ファンタジー (コバルト文庫)

著者 :
  • 集英社
3.53
  • (12)
  • (5)
  • (24)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 96
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086108201

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 私にとっての「ヒーロー」といえば、この作品のヤマトタケル。
    何度読んでも、ヤマトタケルの勇壮さにときめき、大王の仕打ちに傷ついている繊細さに愛しさが募り、亡妻のオトタチバナヒメをこい続ける姿に切なさマックス、涙がとまらない状態になってしまう。

    もう何度読み返したか分からないくらい、幾度となく手にとっている作品。そして森田じみいさんの美しい挿絵も素晴らしい!相乗効果で作品の魅力を高めてくれている。

    ところで、今回再読したのは、田辺聖子さんの「隼別王子の叛乱」の余韻もあって。両作品は古事記から題材を得ている点も同じだけど、登場人物の独白スタイルでストーリーが進んでいく点も同じ。私の中では兄弟作品として位置づけられている笑。

    後書きによると、氷室冴子さんは、ひとり芝居の舞台を想像しながら執筆したそう。その通り、一文一文がそのままセリフになってしまう美しさと簡潔さで、スラスラと読めてしまうのも大きな魅力。

    ヤマトタケルを題材にした作品は、黒岩重吾さん、漫画では山岸涼子さんの「ヤマトタケル」と手塚治虫さんの「火の鳥」を読んだけど、もっと色々読んでみたいです。小説・漫画・映画などで面白い作品をご存知の方、ぜひ教えてください!

  • 絵がごついので、若い人は読まないだろうなと思われる初期傑作小説。
    氷室冴子の好んでいたであろうモチーフに恋愛ではない切ない片思いってのがあるが、タケルと父大王の葛藤が彼女の作品の中で一番印象深い。
    ネタバレ全開でレビューすると、タケルは父に認めてもらいたいがためにどんな困難にも立ち向かい、そうすることで英雄になっていくが、そのまぶしさに大王は嫉妬し、彼を遠ざける。
    大王も種類は違うものの、タケルのようにすべてに愛される存在にかつて父の愛情を独占され苦しんできた過去があるからだ。
    けれども、タケルを愛しいつくしみたいと熱望している。
    ただ、その絶対条件は彼がみじめに苦しんで、父に助けを乞う凡人、『人間』に降りてくることが前提なのだ。
    タケルはというと、父の期待に応えられなければ愛されないと思っているから絶対そうしない。
    この二人の愛憎を軸に主にタケルを愛したものたちの回想で物語がつづられていく。
    ごつごつとした短いセンテンスと、きらきらした漢字。
    いやもう、若さと勢いで書かれた小説です。
    昭和に書かれた小説ですが、平成に読んでも面白い、それだけの力がある。
    後に書かれた銀金の方が洗練されているが、こっちは一冊だけということもあるが、とにかく濃厚。
    BLや少女破瓜とか、さらっととんでもないシーンもあるけれど野性的でいやらしくないし、抵抗もそんなにない。
    図書館や古本屋で発見したら絶対読んどいて損はない小説だと思う。

  • 氷室作品はどれも好きですが、一つだけ選べと言われたらこれを迷わず選びます。

    彼女が描く人の切なさが凝集している作品です。

  • 2016年5月29日購入。

  •  高校時代、何度読んだか、そして何度泣いたかわからない作品です。読むのに体力がいる気がして、今はあまり読みたくないかも(笑)。
     古本屋で最初見かけたときは、挿絵に「うわっ」と引いたけど、氷室冴子の本だし……と手に取り、家で読んで感動しました。こんなに悲しい話があっていいの? と。
     最初抵抗があった挿絵の絵柄も、あとがきに「濃艶な体臭たちこめる絵」と書かれていて、もうこの話にはこれしかないと気に入りました。当時珍しかったフルカラーなのも、いちいち匂い立つようで良いです。
     この本と銀金の影響で、私は短大の卒論テーマを古事記にしました。

  • ビ、ビアズリー。なんかサロメ、と驚愕。すごい、何か北欧の神話みたいです。
    え、そんなに少女小説で漢字は受けないものなのか。

  • 昭和61年の本。

  • あとがきでこんな漢字だらけの本を読んでくれて、とありますが、そこがいいとこなんだなあ。こういう字をこう読ませる、というのがまた雰囲気を高めている。素晴らしいお話でした。しかし、みんながみんなこんなに哀しい想いを持っているなんて涙涙でした。古事記をちゃんと読んでたらもっともっと楽しめるかしら?

  • 小説というより、大いなる叙事詩。
    銀の海金の大地はこれをもとに生まれたんだなあ。
    古代の雰囲気、やまとことば、ヒコイマスや佐保彦・佐保姫、白い生き物、話ができないモノミなど……。
    セーラーVとセーラームーンみたいに。
    プロの作家ですらこうやって習作のようなものがあるんだ。
    うん、頑張ろう。

  • 詩のように美しい文章で語られる
    ヤマトタケルのものがたり。
    切なくて最後には泣けました。

    タカラヅカファンだった作者の氷室冴子さんが、
    以前、当時まだ在団中の一路真輝さんと、
    誌上対談したことがあったのですが、
    そこでこの「ヤマトタケル」を、
    一路さんに演じてほしい、
    みたいなことを話していたのを覚えています。

    宝塚でヤマトタケルはショーにはなっていますが
    お芝居にはなっていないので、
    いつかこのお話しが舞台がされるといいな、
    と思っています。

    ちなみに、この小説は
    田辺聖子の小説「隼別王子の叛乱」と、
    似たところがあるのですが
    こちらは昔宝塚で舞台化されてるんですよね。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

氷室冴子(ひむろ・さえこ)
1957年、北海道岩見沢市生まれ。 1977年、「さようならアルルカン」で第10回小説ジュニア青春小説新人賞佳作を受賞し、デビュー。集英社コバルト文庫で人気を博した『クララ白書』『ざ・ちぇんじ!』『なんて素敵にジャパネスク』『銀の海 金の大地』シリーズや、『レディ・アンをさがして』『いもうと物語』、1993年にスタジオジブリによってアニメ化された『海がきこえる』など多数の小説作品がある。ほか、エッセイに『冴子の東京物語』『冴子の母娘草』『ホンの幸せ』など。 2008年、逝去。

「2021年 『新版 いっぱしの女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

氷室冴子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×