白蝶記 3 ―どうやって獄を破り、どうすれば君が笑うのか― (ダッシュエックス文庫)
- 集英社 (2016年9月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784086311410
作品紹介・あらすじ
市内で起こったテロ事件から一年と少し。一見普通の生活を取り戻した旭だが、父親の室井に連れ去られた陽咲のことばかり考えてしまう。そんな時、時任と再会、陽咲の居場所を知る手がかりを得る。感動の最終巻!
感想・レビュー・書評
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るーすぼーいの作風からして、そして表紙やアオリからして、ハッピーエンド以外考えられないが、ともかく大団円でよかった。
でも作者の代名詞でもある大逆転劇は、ちょっとインパクトが弱かったように思う。
これまでのるーすの作品には、知的で優秀な主人公と、それを上回るかっこいい悪役との対決があった。
個人の能力にしろ、持っている手札の量と質にしろ、1枚も2枚も主人公を上回る悪役に対して、どう振舞うのか。
繰り返されるどんでん返し、そして最後の逆転劇が見どころだった。
2巻までは時任がその悪役として君臨していた。
彼女との戦いはハラハラしたし、主人公たちは芯の強さも見せてくれた。
ところが、2巻の最後で更なる強大な悪役として登場した室井がよくなかった。
いや、小物だったというわけではないのだが、肝心の対決があまり見られず、魅力的な悪役に映らないのだ。
それに、2巻まで敵対していた時任と手を組むのだから、もっと知的な戦いやどんでん返しの連続になるかと期待していた。
しかし、二人を上回る強敵が現れないので、その能力を発揮する機会がなかった。
室井は病気で動けないし、裏切るかと思われたあのヤクザも動かないし。
おなじみの芯の強いヒロインも、陽咲よりも朱理のほうが近かったかも。
あんまり陽咲の見せ場がなかった。
そのせいで、「無関心であれ」という室井と、「主人公のことだけを考えていた」陽咲の対比もうまく活きていなかったように思う。
「黒い蝶の章」のような、るーすらしいやり口が見れたし、普通に面白い。
でも、期待値が高かっただけに……という感想。
車輪向日葵>車輪悠久>>G線>>>ぼくの一人戦争>>白蝶記詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
離島に招聘された人間には辟易したが、時任や旭の自分を省みずに想う人を救おうという精神に心が救われた。1〜3巻にかけて、旭と時任はメインキャラであり続けたが、とりわけ、この巻では時任の魅力に焦点が当てられていたと思う。彼女の魅力は、明晰な頭脳を持ち、どこか近づきがたい雰囲気を醸す姿とその実弱く旭からもらったたった一輪の花に執着する姿とのギャップにあると思う。終わり方も心地がよく、読後感は良好である。