きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086800587

感想・レビュー・書評

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  • 『スモールワールズ』がとても良かったので…やっと2冊目の一穂さん。

    舞台は2025年の夏休み。高校生の明日子と双子の弟・日々人は、ある日突然、父から今日子といういとこがいること、そして彼女と一緒に暮らすことを告げられる。実は今日子は1978年生まれ。30年前の1995年、今日子が17歳の時に低体温治療のため仮死状態となり、2年前に長い眠りから目覚めたばかりだという…。

    集英社のオレンジ文庫ということで、どちらかと言うと若い人向けかなぁと思いつつ読み始めたところ、低体温治療の仮死状態ってつまりはコールドスリープってやつよね…これってSF?どうなることやら…と心配になりましたが、やはりそこは一穂さん。17歳という繊細で多感な時期の、明日子と今日子と日々人のやりとりも良かったし、今日子の謎や家族の問題もあり、余韻を残す切ないラストに満足のいく内容でした。

    今日子の高校生時代が…MD、ポケベル、ルーズソックス、ファミコン…などなど、若干私の高校生時代とはズレていますが懐かしいものばかり。30年前と現代との言葉の違いもおもしろかったです。

    タイトルの元となっているであろう曲の歌詞が…読み終わった後に思い出してめっちゃ切なくなりました。しかもこの曲、描写としてはタイトルも歌詞もダイレクトには出てこないってのが、すごい。これもひとつのテクニックなんでしょうね。

    最後に短編が2つあるんですが、今日子の同級生だった沖津くんの話とエピローグ的なものと、これも何気にすごく良かったです。

  • 現代に対しての皮肉?ディスり?がテーマかなーなんて思いながら、その面白さを感じながら読んでいたが、様子がガラッと変わり、その後、ガラガラっと変わり…ついていけなさそうになったが、どんなにいろいろ進んでも、人の気持ちの奥底は変わらないんだなーと思った。

    何年か後、明るい未来が見たい。

  • その先の話が気になるけど、続編出たらガッカリするから、この終わりは好き。
    下校の歌本当にある歌なのかな。知りたいけどすぐ調べて出てきたらこの話に反するよな。
    おばあちゃんとは言わず、おばちゃんになるまでに会えたら良いね。

  • 2025年夏、1995年を生きていた従妹が眠りから目覚めて我が家にやってきた

    JKの明日子は一瞬戸惑うものの、母は亡く、父は不在がちの家で普段は会話のない双子の弟・日々人と共に30年前のJK・今日子とそれなりに楽しく過ごしていたが…。

    ある日過去や未来から見知らぬ人がやってくる、テーマとしては書かれがちなものの、30年前と同じこと、違うこと、どっちがいいの?と自問自答したり、昔の彼氏になりかけの人を見つけたり、と2人の女子高生+男子高生の冒険あり、ミステリあり、一穂さんの筆力が冴えてる作品。

    最後がもうやっぱりすごい、ガツンと来ました。切ないなぁ。

    発行が2016年。少し前に描かれた2025年、というのも楽しめました。

  • なるほど。
    そーゆー理由か。で、今日子はどうなるの?と思うけどタイトルもラストも含めて納得かも。

  • 目覚めたら教えていただきましょう。

  • 2025年が舞台。出版は2016年なので、少し未来の話、ということになる。ちなみに私が読んだのは2023年。
    ネットに接続するのにIDが必要だったり、決済が全て携帯でできたりと、リアルな未来予想図にワクワクする。
    そして、1995年からやってきた女子高生・今日子との交流。望まぬ形でのタイムスリップで困惑するかと思いきや、意外とすんなり馴染んでいたのは、若さゆえの柔軟性か。
    そんな彼女と生活を共にする双子の高校生たちの、順応性にも驚かされる。
    今時の話し言葉や、検索したら何でもすぐに分かる利便性に、「それなに?」「それって必要?」と問いかけてくる今日子の感性に、何かをどこかに置いてきてしまったような寂しさを感じた。
    ラストは淡々と流れていく。胸が痛む一方で、あっけらかんな別れに救われる。
    願わくば、早く3人が再会できますように。

  • 冷凍睡眠から、30年ぶりに目覚めた「従姉妹」と過ごす奇妙な夏休み。

    1995年と2025年。失われた家族の絆。そして、歳月の差を超えて、二人の女子高生はわかりあえるのか。

    一穂ミチ作品、初読みでした。とても良かったです。

    オレンジ文庫は、やはりかつてのコバルト文庫読者がメインターゲットなのか??

    ミスチル、ポケペル、MD、マリオにスト2、北斗の拳、炸裂する1980年代後半〜1990年代ネタのオンパレードに、該当世代の方は感涙すること間違い無いかと思われます。

  • やべえ切ない。でも良かった。
    最初は若者ノリのわざとらしさとか90年代ageとかダルって思ったけど、最後の方はマジで今日子を好きになってしまった。
    もう少し丁寧に進めてほしいと思うところがなくはなかったが、まあ夏休みのお話なのでね、儚いのもよしということで。
    今日子……あまりにも悲しい。ずっと普通に振る舞ってたけど元は普通の高校生なんだし、傷ついて当たり前だよね。沖津くんに気づいてもらえない(と本人は思ってたけど)ところが切なかった。
    いざ本人を目の前にしたら彼女が昔の堂上今日子ちゃんに戻っちゃったみたいで、でも時代の隔絶は確かにあって、好きな人は年をとっててもう結婚してて……
    自分だけは変わらないまま。周りだけが変わっていく。
    こんなのつらすぎるだろ。
    おまけに病気って。
    今日子の家族も悲しいな。元々は普通に仲良かったはずなのに。
    自分の家族がいきなり死んじゃったらどうする?
    私は怖くなった。
    それでもなお気丈に振る舞うのも健気だった。
    日々人の告白を断る(というか告白させてもらえない)のもかなり良かったな。彼女の……あけすけに見えて優しい思いやりのある性格を感じる。そういうところが沖津くんも好きだったんだろうな。
    あ〜〜でも最後の……思考が分かるところ本当につらかったよ。
    ずっと明るかったけど、怖くないわけないんだよな。冬眠できる肉体でも寒いものは寒いんだよな。
    こわいし、ママ助けてって思っちゃうよな。だって普通の女子高生だもん。まだ16?17歳だよ……。
    最後のどかんアドバイス泣いた。
    全部ひらがななのもなんだか……。
    かのじょのあたまからひっしにとけだしてきたさいごのことばみたいでせつないんだ。
    でもいい演出だ。

    日々人と明日子も可愛い。父親とまた少しずつでいいから仲良くできるといいな。
    明日子の人生は切ないんだけど……明日子のおかげであの三人はまた親子をできるようになったんだよな。
    三人で明日子のことを待ってるんだろうな。会話の端々に仲良いっていうか、気楽さの名残みたいなのが滲んでたし。

    最後の短編マジで良くなかった?
    ちゃんと覚えてたんじゃん。堂上今日子のこと。
    あんな普通の青春してたのに……堂上今日子……。
    沖津くんは普通に、今日子じゃない人と結婚してお父さんやってるけど……たしかに今日子のこと覚えてて……今日子がどこかで元気に生きててくれたらって……思って……。
    生きてはいるよ、生きてはいるんだ……。

    今度こそ本当に、堂上今日子のことを忘れるだろう。

    これはもう沖津くんが高校生のころの沖津くんじゃなくて今の沖津さん(誰かのパパで夫)に戻ったってことなのかな。
    彼は未来を生きていくもんな。

    さようならを言うごとに、思い出している。

    これ本当……。
    少しずつ別れを重ねて……とは言ってるけど。
    別れ……別れこそが彼女を思い出させるものなんだよな。
    これで『きょうの日はさようなら』でしょ?天才か?
    誰かに別れを告げるってことは、その人のことを思い出すことなのかな。その人のことを思い浮かべてさようならって、言うたびにその人は頭の中に何度でも現れるんだろうな。
    きっといつかの未来、つまり今日子にとっては明日……今日子にとっても、何年後でも何十年後でも明日……に会えるといいな。さようならじゃなくて……また会えたねって言ってほしいな。

    この本を読み終えたあとに今日の日はさようならを聞くと、めちゃくちゃな気持ちになる。

    けどハッピーエンドを匂わせてくれる物語で良かった。悲しいけどいい話だった。
    この小説は人からもらったので、タダでこんなええもん読んでええんか?という気持ちだな。

    じゃーん、やったね!

  • さすが!!
    最初から
    最後まで
    流れるようなお話
    みんなに会ってみたい

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著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。

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