これは経費で落ちません! 5 ~落としてください森若さん~ (集英社オレンジ文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086802383

作品紹介・あらすじ

天天コーポレーション社員の悲喜交々の日常。
経理部の佐々木真夕、営業部の山崎柊一、総務部の平松由香利……森若さんを取り巻く、一癖も二癖もある彼らの物語。

佐々木真夕が経理部に異動してきて一か月。異動直後にミスをしてからは、数字が恐くて仕方がない。
そんな真夕のストレス発散を兼ねた趣味は、ビジュアル系バンドの追っかけだ。
イチオシはCAROLINEのボーカル“アレッサンドロ"。
追っかけ仲間からアレッサンドロも参加するという、複数バンドの合同打ち上げに誘われるけれど……?
(「初恋アレッサンドロ」)など5編を収録!


「佐々木真夕 初恋アレッサンドロ」
「山崎柊一 カラークリスタル」
「平松由香利 ゾンビと嘘と魔法の笛」
「中島希梨香 それでもあたしは男っぽい女」
「田倉勇太郎 三十八歳の地図」

感想・レビュー・書評

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  • <経理部の森若さん>シリーズ第5作。

    今回は趣向を変えて、天天コーポレーションの社員たちそれぞれの物語が描かれる。
    これまでの作品で出てきた、あんな事件あんなエピソードの、当事者側からの視点も描かれたりするので新たな視点で振り返ることも出来る。

    佐々木真夕「初恋アレッサンドロ」
    真夕は天天コーポレーションの社員の中でも唯一というくらい裏表がなくて安心出来る。
    広報課にいたころは織子に気後れし、経理部に来てからは田倉と森若に気後れし、まるで周囲が精密に出来た『4D映像』のように見えるというのもわかる気がする。
    だが彼女は分からないことは分からないと言い、理解出来るまで必死に覚えようとするし、良い社員になりそうな気がする。

    山崎柊一「カラークリスタル」
    やっぱり闇がありすぎる。しかし得てしてこういう人がとんでもない才能を持っているというのも皮肉。なるほど、山崎はそういう能力の持ち主だったか。人の感情が丸見えというのもなかなか辛いものがあるかも知れない。
    上から目線で人を見くびっていた積もりが思わぬところで足元を掬われる…ということすらワクワクしながら待ち受けているところが怖すぎる。
    そして太陽、実は彼のほうが山崎の上を行くとんでもない才の持ち主だったりして、とホラーな想像を思わずしてしまう。

    平松由香利「ゾンビと嘘と魔法の笛」
    前作までに出てきた彼女の見方が少し変わった。山崎の方はその背景が分からないからただただゾッとしていたが、彼女の方はいつの間にか丸め込まれるタイプだったのか。
    真面目に懸命に働いているだけなのに、何故か貧乏くじを引いてしまう。
    何故頑張ってきた自分が評価されないで、行き当りばったりな人生の妹が大事にされるのか。悔しいよね。
    そして前作登場した三並愛美は、山崎とは別のタイプだが怖い。しかもこういう人はどこにでもいそう。
    前作の話で彼女が森若に面倒を押し付けた形になっていて、ずるいように見えたが、それは彼女の心の悲鳴だったのか。最終的に毒親からも毒妹からも毒友人からも解放されればいいのだが。

    中島希梨香「それでもあたしは男っぽい女」
    いや、私から見ればとっても女っぽいですから。サバサバしているというのと男っぽいというのとは全く違いますから。それに実態はサバサバしていないし。
    それにしても天天コーポレーションはネイルOKだったり個人の裁量でいくらでも費用を使ってもOKだったり上司が部下を名前呼びしたり随分と先進的な会社だと思っていたが(皮肉です)、結局は旧態依然な会社だったのね。

    田倉勇太郎「三十八歳の地図」
    十七歳の地図ならぬ、三十八才の初恋か。しかし相手が悪すぎる。苦労するのが目に見えているのに、走り出したら止まらない。困ったもんだ。
    田倉の視点で見ると真夕の言う『4D』はどこへやら、感情や義理に振り回される大変人間臭い男ではないか。
    この話の中でいよいよ専務の円城格馬が動き出している。シリーズとしても次作で大きな展開があるのか。

    エピローグはいつもと逆で森若視点。
    やっぱり森若も怖い。前作で盗撮した、ある人の不倫現場データをそんなところに隠すなんて。見つけた人によっては計算か!と思われてしまう。
    この会社、怖すぎる。いや、逆にこんな人達が働ける懐の深い会社と言えるのか。もちろん天天コーポレーションにはたくさんの社員がいるわけで、こんな人達ばかりではなかろうが。

    ドラマ版を先に見ておいて良かった。こちらを先に読んでいたら、とてもドラマは見る気になれなかっただろう。

  • エピローグの真夕以外の初めての他者視点の巻だった。

    意外とこういう作品の他者視点は好きな傾向にある、、、。普段は主人公視点で物語が進むため、こうやって違う視点が入ると思っていること、その登場人物の関係などが見れて面白い。

    たまにはこういう巻が入るのもよし。

  • 森若さんの登場が少なく、さらにまわりの人達目線の話にので少しガッカリしたが、読後はわりと満足。

    平松由香利さんの話、中島きりかの話が好きだった。

    由香利さんの場合、大人になってからできた貴重な友達のはずが、いつの間にか利用されているようになってきて、楽しかったはずなのに疑問が沸々と湧き上がってくる。
    相手を助けているはずなのに、何故か自分が悪いように毎回言いくるめられるという怖いトモダチの話。
    あぁ女は怖い。

    きりかさんの場合、真の敵は仕事出来ない馬垣でも、馬垣をかばう課長でもなく、理解者を装うあいつだった!男社会で奮闘する女の敵はやはり男なのだ。あぁ男も怖い。

    大人って怖い。

    美華さんが好きなので、次はもっと登場するといいな。

  • 脇キャラ目線の短編。
    あ〜あの時、この人達の背景にはこんな事がありこんなふうに思っていたんだぁと前4巻を良い形で復習出来た。
    シリーズも長く続いてくると細かな事を忘れてしまったりする。
    読むのに前巻から間が空いてしまう事も多々あり…
    (自分が悪い)なのでこういう形で時々おさらいをしてくれるのはありがたい!

  • 脇役たちの短編ではあるが、皆キャラが立っており、楽しく読み進められた。山崎といい、勇太郎といい、何となく破滅に向かっているような予感がする。

  • 冒頭「アレッサンドロってさ……なんだって……」
    末尾「唇が触れあう寸前、すずらんの花が散り、ゆっくりと落ちていくのが見えた。」

    もともとドラマを全部見た後で小説を読んでるから頭の中で時間の感覚がごちゃごちゃ。しかも他の読書を適当に挟みながらだし。その結果この本全体がスピンオフということに気づかなかった。最後に太陽が出てきて、なんか久しぶりに出てきたなとは思ったけど。

    平松由香利や田倉勇太郎は二人とも、勉強や仕事は真面目で優秀。だけど虚しさを感じている。この二人のエピソードは共通するものがあって、それが自分にも当てはまるようで感じるものがあった。真面目にやってるのに。

    もう一回ドラマ見てみようかな。

  • この5巻はこれまで出てきた話の裏側!スピンオフとはまたちょっと違う別視点の話。
    同じエピソードを別視点からというのは他ではなかなかあるようでなかったような気がします。

    これが成り立つのは、ここまででしっかり各キャラのアイデンティティーが確立してるからですね。
    わたしのお気に入りは希梨香ちゃんの話。ポンコツな先輩とのらりくらりな上司と戦いながら、営業企画としてちゃんと成果上げて頑張る姿は応援したくなる。

    続きだと思って読みはじめて時系列にあれ?となったけど、エピローグでいつも通り森若さん視点に戻って懐かしさと嬉しさがあった。過去のエピソードをもう一回思い出すことでいっそう記憶に残るし、効果的な巻だと思う。

  • これまでの4作に登場した森若さんの同僚たちの目線から描いたスピンオフ作品。
    経理部の真夕や総務部の由香利など、普段は森若さんの視点からしか描かれない裏側を知ることが出来るのが面白い。
    ただ、本編同様、むかつくキャラはやはり方向性を変えても、むかつくので、余計嫌いになったキャラも…
    でも、このシリーズのファンならば、面白いのかも。
    純粋に経理のからくりを楽しみに読むには、物足りないというか、ほぼ経理の話は出て来ないので、私は読んで後悔…3作目で恋愛要素に傾いて、遠ざかってしまっていたのを復活して、4作目でまた経理の話に戻ったと思ったのに、また脱線…
    作者のあとがきに、まだまだシリーズも続くし、同じようなスピンオフも考えていると書いているが、普通に経理の話だけ読みたいファンがいることも知って欲しい。

  • 2019年8月4日読了。サラサラサラーっと読了。スピンオフ作品なので今までのシリーズを読んでから読まれるのがいいかなと思います。この作品結構ブラックな人がいるんだなーと思った。真夕がとても素直ないい子だなと思う。さぁ、次は?

  • シリーズ作品の中の、森若さん以外の登場人物の視点で、それぞれのエピソードを書いたスピンオフのような巻。
    久しぶりすぎて、どなたでしたっけ?と思う人々もいるけれど、問題なく読める。

    いつもは淡々と過ごす森若さんの印象が多いこの作品も、
    物語の主人公が変わるとこんなにも賑やか。
    それぞれの登場人物が際立って描かれることで、今後のストーリーの鮮やかさが増す気がする。

    総務の平松さん、愛美から離れられて個人的にほっとした。
    こういう主導権を握ってくる人からは、早く逃れるべし…。
    特に、お金を貸しているはずなのに、こちらが借りてるような言い方をしてくる人間、ほんと怖い…。

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著者プロフィール

あおき・ゆうこ
『ぼくのズーマー』が集英社主催2002年度ノベル大賞を受賞してデビュー。『これは経費で落ちません! 経理部の森若さん』シリーズがドラマ化、コミック化され人気を博す。『派遣社員あすみの家計簿』も好調!

「2021年 『コーチ! はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

青木祐子の作品

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