文明の衝突と21世紀の日本 (集英社新書)

  • 集英社
3.44
  • (47)
  • (120)
  • (228)
  • (15)
  • (7)
本棚登録 : 1124
レビュー : 120
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087200157

作品紹介・あらすじ

93年に発表された「文明の衝突」理論は、その後のコソボ紛争、さらに東ティモール紛争でその予見性の確かさを証明した。アメリカ合衆国の「21世紀外交政策の本音」を示して世界的ベストセラーとなった「原著」の後継版として、本書は理論の真髄を豊富なCG図版、概念図で表現。難解だったハンチントン理論の本質が、一目のもとに理解できる構成とした。その後九九年に発表された二論文を収録、特に日本版読者向けに加えた「21世紀日本の選択」は、単行本「文明の衝突」の読者必読の論文である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 私の中には、「ヨーロッパはおしゃれ、アジアはださい」という感覚がどうしてもこびりついてしまっていて、それを取り除くことがとても難しいことだと感じています。

    ローマ帝国がNo1、中国がNo1、イギリスがNo1だったこともあるという内容を読んで、世界は文明が盛り上がったり、衰えたりの流れの中で動いている、ということを改めて認識しました。50年後、もしくはもっと早い段階で「中国っておしゃれだよね」となる可能性があるということを頭の中に入れておこうと思います。

    「イスラム文明」や、「中国文明」と同じ並びで、「日本文明」というのがある、というのがびっくりでした。私は無意識のうちに、どこかの文明の中にあるのだという感覚を持っていました。

    そして日本は同じ文明を持つ国がないから、孤独だと書いてありました。これからアメリカにつくか、中国につくかという選択を迫られ、筆者は中国につくと予想、訳者はアメリカにつくだろうと予想しています。

  • <新たなファクターとしての文明>
     93年に世界的ベストセラーになった『文明の衝突』の後継版として位置づけられる本書は、衰退する西欧文明がもたらす世界認識を知る事が出来る。筆者によると、冷戦後の世界は(7〜8の文明で分けられた)多極化へ向かい、従来のパワーという概念に加え、文化•文明が民族(国家)の行動を動機付けるものとなりうるという。そして文化文明の差異が分裂を招く危険性を指摘しており、もっとも紛争をもたらしそうな分裂線を西欧文明と中国及びイスラームの間に引いている。本書から、相対的に衰退する西欧文明の代表者たるアメリカの、多文明化した世界における一つの提言を見ることが出きよう。

    <アメリカのアジアへの眼差し>
     本書の一番主要な主張は、国家の行動様式がパワーを巡るものから、伝統的に自らを基礎付ける文化文明に基づくものになり、そこから異文明間の断層部における紛争の可能性を指摘するものである。しかしより興味深い認識は、西欧文明の衰退というものであり、他の文明(中華、イスラーム)の台頭に直面しているという認識である。アメリカは、国内において多文化主義が「国民の団結よりも、むしろ多様性を熱心に奨励」(p179)する事で西欧文明の遺産を危機に曝し、アメリカを「引き裂かれた国」にしてしまう可能性を抱えており、事によると異文明間戦争よりアメリカにとって危機になりうると主張する。そのため対外関係において来るべき多文明化した世界に備え、アメリカが一極支配者たる振る舞いをやめ、自国の価値の普遍性を前提に行動するのではなく、自らが西欧文明の代表として他国の協調を促し自国の利益にかなうように振る舞うべきだという。そこから引き出される提言は、アメリカ外交は「一つの文明の中核国はその文明圏の国々の秩序を、文明圏外の国がするよりもうまく維持できる」(p89)という前提の下「その地域の大国が第一に責任を負うように」治安維持に努めるべきであるというものだ。
     筆者は来るべき多文明化した(多極化)世界で「潜在的に最も危険な紛争」がアメリカと中国の間で生じうるという。「異なった文明間の新興中核国と没落する中核国家の間の紛争に、勢力バランスという要因がどの程度まで影響するだろうか?」と問い、日中間の文明の差異とパワーシフトの相互作用に関心を向ける。筆者はアジアでは中国(中華文明)の台頭とアメリカ(西欧文明)の衰退、日本(日本文明)の停滞があり、文明の差異とパワーバランスの著しい変化があり、日米中の関係は文化文明の断層線に隣接する国家同士であることから協調は難しいという。アメリカの対アジア関与はこれまで、パワーの観点から中国の域内大国化を日米同盟で押さえ込む戦略がとられて来たが、今後もこの関係は続けられるのか?中国の台頭の前に、「揺れる国家」たる日本はいかなる戦略をとるのか?
     すべて明示的に答えられている訳ではないが、衰退し挑戦を受ける西欧文明という世界観を前提に、アジアにおけるアメリカがとりうる戦略を考えるにあたって、重要な土台となりうる議論が展開される。

    <本書の功績と問題>
     この本及び「文明の衝突」議論の最大の功績は、従来の国家の行動要因であるパワーに加え文化文明という概念を新たに加え、両者の相互関係から紛争の要因を探っている点である。特に文明の盛衰からとりうる戦略を考えるという発想は、旧来の国際関係学にはない新しい視点である。
     もっとも「文明の衝突」の議論に問題は少なくない。筆者が「文明の衝突」として挙げる旧ユーゴ紛争においては民族別の経済格差の問題があり、さらにボスニア紛争やコソボ紛争ではイスラム文明を西欧が(直接間接の)援助をしている事実から、文明の親近性だけで国家の行動を説明出来ない。だが、筆者の主張では、その点の考慮が無い。しかし、より重要なのことはアメリカの価値を普遍だとの前提で行動をとらないことや、異文明への不干渉を主張する世界観がどのようにして生まれ、どこまでアメリカ国内で支持を受けるのかであろう。さらに私たちに関わるところでは、アメリカと日本の関係にその世界観がどのような影響を与えうるのかを本書で考えることが出来る。      

  • 本書では冷戦後の世界の構造が、文明によって決定づけられるとし、そんな中で国々がとるべきスタンスを主に東アジアを舞台に論じている。

    内容はまず、冷戦後の社会構造を文明、パワーバランスの観点から分析し、その上で文明的に孤立した日本がどのようなスタンスをとればいいのか提示している。次に、冷戦後、文明というひとつの尺度に対して未だに時代遅れな支配的な立場をとっているアメリカを批判し、新時代においてアメリカのとるべき立場を提示している。最後に過去の文明間の衝突の原因を踏まえて、東アジア、さらには世界にまたがるフォルトライン戦争を避けるにはどうすればいいのか論じている。

    著者の文明という切り口は鋭く、文明という要素と過去の事実がつながっていく論旨の展開は読んでいて非常に面白い。

    同時に他の「文明」という自分がどんなに理解に努めても理解できず、認めるしかない事実を再認識し、何か背筋に走るものを感じた。

    しかし、この本を読んでいると文明というものはほぼ普遍的な事実としてとらえられているように思えるのだが、昨今情報の民主化、金融の民主化が整いつつある中で、この文明という枠組みがどれぐらい普遍性・支配力を持つのか、そして持っていくのかは論じる余地があると思う。

    ただ、おそらく著者はそんなことはわかっていて、にも関わらず、あえて文明という切り口で切り込んだ覚悟は素晴らしいと思った。

    読んでいて若干裏付けが足りない部分が多くも感じたので、文明の衝突も読んでみたい。

  • 本書は、講演録「二十一世紀における日本の選択」、フォーリンアフェアーズ誌掲載論文「孤独な超大国」、抜粋版「文明の衝突」を収録。内容的に重複がある。
    1990年代の著述であるにもかかわらず、内容が示唆に富んでいて、今でも十分に通用すると思った。

    著者は、イスラム国家では若年層の激増が好戦性を生み出しているが、イスラム教徒の年齢が高くなっていくにつれてやがて激情は沈静化する、と予測している。時間が解決してくれるといいのだけれど。

    日本は、固有の文化を共有する国を持たない孤立国とのこと。要は、他国とは利害得失で関係することは出来ても、真に信頼し合う関係は構築できないってこと。いざというときに頼れる国が無いってことは肝に命じておく必要があるな。

  • 文明を推し広めようとすると対立[conflict]が起こりやすくなる。その指摘は間違っていないと思う(どうして、こう至ってマトモな意見の出てくるアメリカが「正義の戦争」なんて始めちゃったんだろう)。だけれども類似する文化圏では必ずしも協力は進まないし、宗教すなわち文明と捉えるのはあまりに粗雑過ぎないだろうか(第一、みんながそれらしく使っている「文明」って何なんだろう)。もちろん、これが冷戦終結直後の文章であるという点で現実認識の鋭さは間違いないし、論争を喚起したという点からも一読に値する内容だとは思うけど(あぁ、ハーバードの先生の著作を前にして何を言っているんだ、自分は)。

  • 世界を文明の違いによって分けて、そのなかでの日本の役割とかポジションとかを論じた本じゃなかったでしょうか。とはいえ、東北大震災から福島原発事故が収束しないという歴史を歩むことになった今の日本に当てはまるかどうかは、やっぱり当てはまらないんじゃないかと思えてしまいます。もはやこの本で論じられる日本は歴史のifの日本であるかもしれませんね。文明で分けることの、その文明の捉え方などの精妙さや分析のブレなさなんかはよく覚えていないので、よかったとか面白いとかは言えません。

  • ハンチントンの有名な著作「文明の衝突」をもうちょっと読みやすくした新書の著作「文明の衝突と21世紀の日本」です。

    国際交流、国際協力による世界平和を目的とする財団にいるせいもありますが、冷戦前の国際情勢というか、世界のパワーバランスというか、それが大きく変わってきているというのはあちこちの文書で目にしてきました。

    本書では、それを文明という切り口で説明しています。

    新書版になって、しかも、日本の立場についても焦点を当てた章があって、読みやすくはなっているのですが、内容的にはやっぱり、やや難解です。

    言ってることは理解できるのですが、その意味合いを十分に理解できたかというと、私自身の勉強が足らないせいか、ちょっと???

    米国とソ連の2超大国によってバランスしていた冷戦時代から、米国という1超大国とその他の国々、地域、あるいは文明圏のパワーバランスのあり方が、述べられています。

    唯一の超大国となった米国ではあるが、その唯一であるというのをあまりにも全面に出しすぎるのは危険であると説きます。

    日本は、ますます力を増す中国との関係を、これまでの米国との関係との兼ね合いでどう処していくべきなのか?

    一度は読んでおくべき書籍ですね。

    ところで、先の「文明の衝突」はハードカバーでかなり分厚いので、買ったはいいけど、まだ読めてません(笑)

  • 著書『文明の衝突』でめちゃめちゃ有名なハンチントンの講演記録?みたいなやつ。
    講演記録タイプの新書は同じことの繰り返しが多いのがいつも気になるんやけど、今回のはそうでもなかったかな。

    グローバル化した21世紀という時代はどのような世界なのか、そしてこれから世界はどのようになっていくのか、という点についての意見が述べられている。
    冷戦の前後で、世界を取り巻く環境が大きく変わり、冷戦中まではアメリカとソ連を軸とした二極対立だった。しかし、冷戦が終わり、文化が取り戻され、8つの文明(西欧、ラテンアメリカ、中国、日本、イスラム、ヒンドゥー、仏教、東方正教会、(アフリカ))に世界は主義ではなく、本質的に再構成された。

    本質的な再構成の根底にあったものは、「文明」であり、「文化」であった。文化は芸術や祭事、信仰に関する部分であり、文明とはその国がより豊かな生活を求めた末に生み出された、知恵(機械とか技術とか)である。そして、文明は文化的なまとまりから生じるから、政治的な結びつきではない。もちろん、ある文明を持つ集団が同じ政治思想を持ったとしても、それが直接的に文明=政治とはならない。
    ここから、フォルトライン(ざっくり言うと紛争)について考えると、これには文化的なものと文明的なものがある。文化的紛争については、特定の集団内で解決されることが多い。しかし、文明的紛争には、多くの利害関係人が参入するため、拡大されていく傾向にある。そして、現代においては、その文明的紛争が「国際化」している。

    日本はオリジナルの文化と文明を持つ国だが、周囲の文明的紛争に巻き込まれる可能性も高い。


    だから、気をつけてね、ってお話(笑)
    久しぶりに頭使って読んだから、結構ごちゃごちゃしとる・・・・・

    また時間を置いて、再読します。

  • これは凄い!!社会科学・自然科学問わず、科学を扱う者は一度は読んでおいて損は無い、と断言できる一冊。

    前著「文明の衝突」講演「21世紀における日本の選択」論文「孤独な超大国」の三部作になっている。内容は難解な部分もあるが、各々がほぼ同じ内容になっている(そして次第に詳細になる)ため、最後まで読み進めることが可能だ。

    21世紀以降の国際情勢を予想した本書。
    世界が一体となる「グローバル化」が今後の方向であると世論を覆っていた当時、「文明ごとに世界がグルーピングされ、その間での衝突や融和が、今後の国際情勢を左右する」というハンチントンの視点は、大変トリッキーであり、先見の明を持っていたと言わざるを得ない。

    内容も機知に富んでいて読み応えがある。まず文明とは何ぞやを説き、世界を8つの文明に、さらに超大国、地域大国、No.2の地域大国、その他の国々と細かくカテゴライズすることで、政治的なパワーバランスを明確にし、今後の議論を容易にしている。

    まあ中身はこのくらいにして(自分で読んでほしいから)、本書がなぜ科学者に読んでもらいたいかについて触れる。それは、厳密すぎるくらい俯瞰的かつ中立的に物事を語る一方で、自身の考え(具体的には、母国アメリカへの愛)を、しっかりと滲み出している、という点だ。
    サイエンスを扱う科学者は、自身の内面を表現してはいけない、という一般論に対し、私は大いに反対だ。
    一人の人間として、その理論に懸けた思い、理由、情熱を前面に押し出してこそ、科学者として輝ける瞬間なのではなかろうか。
    そういった視点でから見ても、このハンチントン理論は必読に値する作品であると感じる。

    他にも、個人的には、8大文明の中でも異質な存在として日本を挙げ、日本の挙動が今後の東アジア、ないしは太平洋地域の動向を大きく左右すると指摘している点が、何とも嬉しい。中国とのパワーバランス等、18年前のハンチントン予測が今、現実となってしまっている点も尊敬せざるを得ない。

    「道徳的に発達するのが文明の高度化であるはずなのに、近代文明では犯罪が横行している。これは致命的なパラドックスだ。」とする本書最終ページの一文から、国際政治のパワーバランスを冷静に語る学者の姿と、世界の未来を憂うメッセンジャーとしての姿がダブる。

    政治学の権威の、魂の声が聞こえる。

  • 『文明の衝突』を読み切る前に読んだけど
    切り口が斬新でおもしろい。
    斬新だけど指摘は的確。
    日本がいかに独特な文明(文化)をもっているか
    よくわかる。
    今後の世界も予想できそうだから、
    これに基づいて議論したら面白そう。

全120件中 1 - 10件を表示

サミュエル・ハンチントンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
サミュエル・ハン...
三島 由紀夫
フランツ・カフカ
ヘルマン ヘッセ
ロバート キヨサ...
マックス ウェー...
ヘミングウェイ
有効な右矢印 無効な右矢印

文明の衝突と21世紀の日本 (集英社新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする