麻薬取締官 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087200515

感想・レビュー・書評

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  • 「ダメ、絶対」という違法ドラッグ撲滅キャンペーンのキャッチコピー」。
    著者は「人間やめますか」というような超越的な能力が得られると誤解の余地を生むコピーよりもこのコピーが有効であると考える。
    違法ドラッグに触れる瞬間に「ダメ、絶対」という言葉が頭をよぎるはずだからだというのだ。

    「ダメ、絶対」という言葉は理屈を超越させようとしている。
    一時『何故人を殺してはいけないかを論理的に説明する』のが流行した。
    理屈以前の絶対禁忌というものはあると思う。

    しかし、タバコやアルコールはよくて大麻やコカインが違法であるというのもそういう理屈抜きの禁忌に入るのだろうか?

    インドやジャマイカでは宗教的理由を背景に(法では禁じられているが)大麻が嗜まれているし、ここ日本でもかつてそういう文化はあった。

    LSDや覚醒剤などは法が整備される以前は合法だった。それを取り締まる法が出来たから違法になっただけである。

    須らく全ての法は遵守されるべきだが、同時にその法が適切であるかも常に考えなければならない。
    ましてや理屈抜きで何かを禁じる法は悪法としかいいようがない。

    この本は「ダメ、絶対」的な思考停止が目立つ。


    以下に特に酷いと思った箇所を抜書きする。

    <blockquote style="background-color:silver; padding:0.5em;">しかも、この大麻草は、やせた土地でも、ぐんぐん育つ。この植物繊維をパルプの原料として用いれば、地球の森林伐採も食い止められ、もしかしたら、緑の地球を取り戻せるかも知れないほどの能力を持っているが、残念なことに、そのたくましい生命力をもつ大麻葉は、人間を滅ぼしかねない麻薬になる。</blockquote>
    引用が手間なのでこの一文だけにするが、この後に渡ってどう大麻草が人間を滅ぼしかねないのかには一切触れられない。
    せいぜい、酩酊するくらいだろうか。それならばアルコールとの差異は? という疑問が出てくるがその疑問に答えてくれることはない。

    <blockquote style="background-color:silver; padding:0.5em;">
    日本軍兵士の勇敢な戦いぶりが、この薬のせいと考えたくないが、神風特攻隊の出陣の前には、覚醒剤である「特攻錠」が支給されていた。</blockquote>
    本書のコンセプトとはずれるが端的に著者の思考停止ぶりが出ていると思った。
    何故そう考えたくないのか? は明記されていない。
    特攻隊を勇敢な戦いぶりという言葉で安易に語ってしまうのにも疑問が残る。

    つまり、これは国が国民を操っていたことの証拠ではないか。
    そしてそれを続けるが為に法で禁じることによってコントロールしているのではないか?
    押収した違法薬物はどう処分されるのだろう?
    この疑問は取締官なら答えてくれそうなものだが、答えるそぶりすらなかった。

  •  最初に、筆者と編集者に「このタイトルは本書の内容に相応しくない。『日本の薬物汚染』という安直なタイトルのほうがまだマシではないか」と物申したい。
     この本は、確かに元麻薬取締官・現医師の筆者が執筆したもので、麻薬取締官の業務についても書かれてはいる。だが、ドラッグの説明と世界の動向について多くのページを割いていて、肝心の「麻薬取締官の業務」に関する記述がどうも物足りなく、もっと一つ一つの業務を掘り下げる事が出来たのではないか、と感じてしまった。はっきりいって、麻薬取締官の事を詳しく知りたい人には、この本はあまり適していないのではないかと思う。

     おとり捜査が麻薬取締官だけに許されているのは「犯罪を誘発し、人権を傷つける恐れがあるから(例として「追い越し禁止区域」にも関わらず、「前の車」が遅いために追い越して行った車を、道路交通法違反という理由で覆面車であった「前の車」が検挙する、というものを挙げている)」、地区麻薬取締官事務所内の異動が頻繁に行われるのは、暴力団に顔を覚えられないようにするのと、全国の取締官と親しい関係になることでチームワークを保つというのも理由だそうだ。


    自分用キーワード
    おとり捜査 麻薬特例法 麻薬取締員 

  • [ 内容 ]
    「麻薬取締官」あるいは「麻薬Gメン」という職業の人たちがいることは、誰でも知っていると思うが、実際に会ったことのある人は少ない。
    大きな事犯をあげても、けっして報道陣の前には姿を現すことがないからだ。
    彼らは厚生省の職員で、行政官である。
    文明の発達に伴い、麻薬事犯は巧妙化してきた。
    覚せい剤乱用も、増加の一途をたどってきた。
    世界の麻薬汚染の濁流は、日本にも押しよせ始めている。
    捜査機関はその対策に懸命である。
    活躍する麻薬取締官の仕事、そして麻薬の恐怖を語る。

    [ 目次 ]
    第1部 麻薬取締官と規制薬物(麻薬取締官の組織の概略;薬物乱用;薬物乱用取締りの実際;医療用麻薬類の流通の監視;中毒者対策;相談窓口;薬物乱用防止活動)
    第2部 医療用麻薬

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 大麻に関する知識は、ダメ・絶対のキャンペーンで言われていることぐらいしか触れていない。ただし、大麻法ができた経緯としてアメリカ兵向けの法律だったのではないかと少し触れています。

  • 調べ物に使用(笑)やっぱり地味で地道な仕事だなと。

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著者プロフィール

鈴木陽子【北海道文教大学助教】

「2023年 『栄養士・管理栄養士のための栄養指導論 第8版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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