ナポレオンを創った女たち (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087201093

作品紹介・あらすじ

フランス革命からナポレオン第一帝政にかけての時代は、今われわれが暮らしている現代社会の出発点にあたる。世界の覇者として大胆に近代史を塗り替えたナポレオンは、『ナポレオン法典』によって今日の男社会の根幹を築くことにもなった。しかし、天才的軍人、鉄の意志を持つ男というイメージが強いナポレオンだが、意外と女性に影響されやすい面があり、その運命は女性との関わりによって大きく左右されたのであった。日本の民法にまで影響を及ぼしている『ナポレオン法典』を一つの軸に据えて、現代男性の原点を探りつつ、人間ナポレオンの知られざる側面に新しい光をあてる。

感想・レビュー・書評

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  •  ナポレオンと女性というテーマでまとめている。
     近代社会に男尊女卑の考えを定着させた張本人は,ナポレオンだという。ナポレオン法典では,夫は妻を保護する義務をもち,妻は夫に服従する義務がある,と定められ,女性の権利はほとんど認められていなかった。この家族観は,法典とともに全ヨーロッパへ弘められ,日本をはじめ,欧州に続いて近代化した諸国もこぞって採用する。男の筋肉がまだ機械に取ってかわる前につくられたこの制度は,現在にも大いに影響し,完全な男女同権は未だ達成されていない。
     そんなナポレオンが,どんな女性とどうかかわってきて,彼女たちは彼の女性観にどのような影響を与えたのか。そのあたりを読み解いていく。主に三人の女性が登場。母レティツィア,二人の皇后ジョセフィーヌとマリー=ルイーズである。これは彼にまつわる三大女性として文句なしの人選。初恋の人で後にスウェーデン王妃となるデジレ,ポーランド妻ワレフスカ,彼の才覚をいち早く見いだすがあっさり振られ,後に彼の批判の急先鋒となるスタール夫人その他にも触れる。

  • facebookの知り合いが推薦されていて興味をひかれ購入。ナポレオン法典の近代性が日本の明治時代とからめて語られるが、何より面白いのはナポレオンの女性にたいする二面性に関する語りだった。明快でエピソードにあふれ、読み物としても十分楽しめた。ナポレオンが没落していく過程も女性と関連づけて説明されており、人間ナポレオンの姿がはっきり浮かび上がってくる。

  • ナポレオン法典を軸にして、それに影響したと思われる女性たち、および、ナポレオン法典が現代にまで及ぼしている影響など、幅広く論じられている。ナポレオンや女性たちの人となり、当時のフランスの考え方、明治時代の日本など、話はいろんなところに飛んでいくけれど、巧みな文章で興味深く読み進められる。ナポレオンだけに焦点を当てた本かと思っていたけど、良い意味で裏切られた。

  • ナポレオンはじめ周りの人々の人柄が血肉を持った存在として書かれていて親しみが持てる。面白かった。
    男社会の根幹を作った人なのに、自分自身は女性に運命を左右されているナポレオンが人間くさくて可愛い。
    田舎の下級の位から努力でのし上がったこと、敵に温情をかけたばっかりに凋落していく姿には親しみが持てて
    ただ強いだけのヒーローだと思っていたら違ったんだなと思った。
    ジョセフィーヌとナポレオンの運命的な繋がりもドラマチック。
    ナポレオン法典が与えた現代の日本への影響や、いまの社会との比較もされているのでわかりやすいし勉強になった。
    かなり自分に近い距離感で歴史を説明してもらえた本だった!

  • ジョゼフィーヌはやはりどのナポレオン関連の本読んでも凄まじい女性!

  • ナポレオンの母や姉妹、二人の妻などの大きな影響。
    コルシカ島は、ナポレオンが生まれる前の年にフランス領になったのだそうです。運命ですねえ。
    政治家としても有能だったナポレオンは、ナポレオン法典で人は皆平等という革新的な体系を築き上げた。
    ただし、ナポレオン法典には女性差別的な要素があり、日本にまで影響を及ぼしたという指摘。現代から見れば、「皆平等だが女性は除く」というぐらいなのだが、「人は皆平等」と宣言したことは後にじわじわと効いてきたそう。
    女性の権利を制限する法制は、19世紀という市民社会の要請が大きかったが、彼自身の教育や体験の影響も感じられるのですね。
    母親レティツィアがしっかり者で厳しくしつけたので、母親の権威や能力はかなり認めていた模様。そのためか家庭内に限っては女性の自由を以前よりも認めていた。それは日本では明治になっても受け入れがたいほど進歩的だったそうです。
    軍人だから、女性を劣った性とまで言い切ったのもあるでしょう。
    しかし、若い頃にはロマンチックな文学青年のような一面もあり、熱愛した妻のジョセフィーヌに浮気されたのが大ショックだったことも原因だったのではと。
    ジョセフィーヌは革命前に結婚して社交界の女性になったので、その頃の常識としては、貴族は家名と財産を全体で守れれば良かったので、個人の貞節は問題ではなかったそう。
    ナポレオンを一人前にしたのはジョセフィーヌで、社交界の事情に通じ、旧貴族とも革命家層とも付き合うことが出来た。皇后としても人当たりが良く、国民に愛されて貢献したと同情的。
    ナポレオンはフランスの体制を固め、王族に肩を並べようとハプスブルグ家から妃を迎えたのが裏目に出たと。
    お姫様育ちの若いマリー・ルイーズはわがままで、皇后としてはあまり人望を集めることが出来なかった。
    革命家からスタートしたナポレオンのイメージを国内的には損なうものだったし、ヨーロッパ列強の王家は元革命家など同格と認めてはいなかったので、失脚のチャンスを虎視眈々と待っていた。
    確かにそうかも~。
    ナポレオンの妹やジョセフィーヌの連れ子が各国王室に嫁いだりして、後の世まで変えていったのはなんだか不思議ですね。
    とても面白く読みました。

  • [ 内容 ]
    フランス革命からナポレオン第一帝政にかけての時代は、今われわれが暮らしている現代社会の出発点にあたる。
    世界の覇者として大胆に近代史を塗り替えたナポレオンは、『ナポレオン法典』によって今日の男社会の根幹を築くことにもなった。
    しかし、天才的軍人、鉄の意志を持つ男というイメージが強いナポレオンだが、意外と女性に影響されやすい面があり、その運命は女性との関わりによって大きく左右されたのであった。
    日本の民法にまで影響を及ぼしている『ナポレオン法典』を一つの軸に据えて、現代男性の原点を探りつつ、人間ナポレオンの知られざる側面に新しい光をあてる。

    [ 目次 ]
    英雄ナポレオン
    第1部 今日の男社会の根幹を築いたのはナポレオンである(ナポレオンとフランス革命 フランス革命期の女性たち 人間は自由にして平等、しかし女性は別)
    第2部 ナポレオンの運命は女性たちによって大きく左右された(母レティツィアと社交界の女たち 勝利の女神、ジョゼフィーヌ ハプスブルク家の姫君、マリー‐ルイーズ)
    ナポレオンとわれわれ現代人

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    [ 参考となる書評 ]

  • いまや絶対の信頼を置いている安達正勝の本。いつも期待以上の手ごたえです。筆者にとってナポレオンは得意中の得意分野ですが、著書「ジョゼフィーヌ」と一線を画しているのは、考察が多いということかしら。
    テーマはナポレオンがいかに現代における女性のありかたに影響を与え、同時に、いかに自らが女性の影響を受けたか、というものだが、退屈させない段取りでもって(この手並みがまたすごい)仏革命時に活躍した女性の紹介や、ナポレオン法典の意味とそれが日本に与えた影響などが説かれている。

    改めて安達正勝の何がすごいかというと、誰もが知っている「ナポレオン」という人物に血と肉を与え読者があたかもその時代の空気を知っているかのように感じさせる文章だ。それは研究一辺倒の鋼鉄の論文調でもなく、過度に脚色を加えられた英雄・ヒーロー賛美でもなく、まさに絶妙といっていい史実と自身の考察のミックスで当時のフランスを再現してみせるのである。彼の興味・専門がたまたまフランスにあったということでこの度わたしも18Cフランスについて知識が増えていくことになっているが、仮にこれがドイツや中国だとしても、間違いなくルターや魯迅が活き活きと動き出すと思う。

  • 安達さんの本はこれで読むのが3冊目で、前の2冊が面白かったからかなり期待していたのですが、ちょっとイマイチでした。でも昔テレビの歴史バラエティで「ナポレオンは妻に頭が上がらなかった!!」とかやっていたのが、あながち間違いではないのかなーと思いつつ、やっぱり全然違うのかも、と思いました。笑

  • ジョゼフィーヌは師匠・笑。

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著者プロフィール

フランス文学者。1944年岩手県盛岡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業、同大学院修士課程修了。フランス政府給費留学生として渡仏、パリ大学等に遊学。執筆活動の傍ら、大学で講師も務めた。著書に『物語 フランス革命』『マリー・アントワネット』など。

「2020年 『サンソン回想録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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