原発列島を行く (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087201161

作品紹介・あらすじ

日本の美しい海岸線を不気味に変容させている巨大な建築物の群れ。それが原子力発電所である。過疎地を狙ったように建ち並ぶ原発が、いかにその地の人々に犠牲を強いてきたか。都会の繁栄の陰で、いびつに進行するエネルギー行政の矛盾がここに凝縮されている。日本全国の原発立地点をくまなく歩き続ける著者が、淡々と綴るドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • (*01)
    原発について、福島の事件事故の以前(*02)の原発に否定的な言説を確認すべく手にとった。列島とあるからには北海道や九州、四国も取材され、また原発の立地の特性上、辺鄙な土地の政治が描かれている事に興味を感じた。
    発電は、供給先の都市の論理に組み込まれており、ローカルな問題が、都市的な論理、特に不動産の転売や建設利権などの金権で丸め込む方法に共通がある。金が列島全体に流通し共通していることを示唆する。
    一方で、問題となるローカルは、換金されない価値に立脚し反対運動を組織している。例えば、資源というより環境としての漁業や農業の基盤、過去からの持続性や継続性のもとに資本投下された先祖代々の土地、健康にあるべき身体などで対抗する。
    しかし、原発立地としては、弱っている土地が目指されるのであって、一次産業の衰退、都市への流出によるローカルの人口問題など、対抗手段そのものが既に弱っておりウィークポイントとなっているところが悩ましいところである。

    (*02)
    本書では既に古参としての福島原発の問題が取り上げられており、他の原発も「週刊金曜日」的な視点から、安全でない事がとくとくと説かれている。
    ローカルな政治、原発をめぐる地方行政、電力会社の営業体質が、ややタイピカルに過ぎる様にも見えるが、それぞれの抜け作っぷりを読み込むのも楽しいだろう。

  • [ 内容 ]
    日本の美しい海岸線を不気味に変容させている巨大な建築物の群れ。
    それが原子力発電所である。
    過疎地を狙ったように建ち並ぶ原発が、いかにその地の人々に犠牲を強いてきたか。
    都会の繁栄の陰で、いびつに進行するエネルギー行政の矛盾がここに凝縮されている。
    日本全国の原発立地点をくまなく歩き続ける著者が、淡々と綴るドキュメント。

    [ 目次 ]
    中央に翻弄されつづける悲劇の村―青森県六ヶ所村
    首都移転とともに進む“処分所研究”―岐阜県東濃地区
    遅れてきた無謀に抵抗する漁民の心意気―山口県上関町
    活断層新発見に揺れる「諦めの感情」―島根県鹿島町
    おこぼれにすがる原発中毒半島の悪習―福井県敦賀市
    「金権力発電所」と闘いつづける“悪人たち”―愛媛県伊方町
    カネに糸目つけぬ国策会社への抵抗―青森県大間町
    ハーブと塩と核のごみ―石川県珠洲市
    ロケットの島に蠢く不穏な野望―鹿児島県馬毛島
    臨界事故のあとにはじまった軌道修正―茨城県東海村
    三○年前からつづく電力の“秘密工作”―鹿児島県川内市
    貧すれば鈍す赤字市魔の選択―青森県むつ市・東通村
    世界最大の原発地帯に吹くカネの暴風―新潟県柏崎市・刈羽村
    矛盾噴き出す原発銀座の未来―福島県双葉町・富岡町
    進出を阻止したあとの住民のダメ押し
    精神を荒廃させる“植民地”経営
    反発強まる地震地帯の原発増設

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • この本はてっきりここ1、2年で発行されたものかと思っていたが、初版は2000年。この頃から原発が問題視している人がいたのかと思うと、あんな事故が起きるまで何も考えていなかった自分が恥ずかしくなる。

  • 原発の土地として有名なところもあれば、住民の反対運動が実った場所も含まれている。左派的な面白い一冊。

  • 約10年前の本です。でたらめな国策にあらためて強い憤りを感じる。

  • 初版は2001年、震災からちょうど10年前の刊行である。
    この頃すでに、これだけの取材をし、世に出している人がいたのだ、ということと同時に、こうしたことが(おそらくは)ごく一部の人にしか知られないまま、原発推進の世論がまかり通ってきたことに、改めてショックを受けた。

    ここには、札束で頬をはたき、真実を隠したまま推し進められてきた原発建設の実態、テレビにも新聞にも登場してこなかった現地での事実が、その場に何度も足を運んだ筆者によって赤裸々に綴られている。

    粗雑な安全管理や握りつぶされる労働災害。行き場所もないのに増え続ける、危険極まりない廃棄物。そして、それらを隠蔽するために、だまし討ちのような方法で通過していくご都合主義の法案。

    全国各地で行われ続けてきたその手口は、どれも、驚くほど単純で、強引で、そして汚い。政府の意向に沿った報道と選挙に、ジャーナリズムも民主主義もあったものではない。一体、どこの国の話かと思う。

    原発を押し付けられた自治体が、アメとして与えられた華美で巨大な施設維持のために、また補助金をねだらざるを得なくなってしまう仕組みを「麻薬」とはよく言ったものだと思う。依存状態になった自治体の横で潤うのはいつも、受け入れた町でも住民でもなく、関連団体の天下り役員と首都圏に住む政治家たちばかりである。

    全国各地に注ぎ込まれた、この桁外れの金額を別のエネルギー開発に使えば、一体どれだけのものが生み出せることか。

    冒頭に、著者のこんな言葉がある。
    「大事故が発生してから、やはり原発はやめよう、というのでは、あたかも二度も原爆を落とされてから、ようやく敗戦を認めたのとおなじ最悪の選択である」

    その「最悪」が現実となった今もなお、「再稼働」などという言葉が話題に上るなんて異常以外の何物でもない。これまでの、真実を知ろうとする意識不足の非を棚に上げるわけではないけれど、伝えるべき側のあまりに無責任で利己的な隠蔽体質には、本当に開いた口がふさがらない。

  • 淡々と綴っているというよりは、一面をしっかりととらえたものではあるが、原発立地地域を丁寧にまわってとらえた、確かにそこにある問題点

  • (2002.02.01読了)(2002.01.04購入)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    日本の美しい海岸線を不気味に変容させている巨大な建築物の群れ。それが原子力発電所である。過疎地を狙ったように建ち並ぶ原発が、いかにその地の人々に犠牲を強いてきたか。都会の繁栄の陰で、いびつに進行するエネルギー行政の矛盾がここに凝縮されている。日本全国の原発立地点をくまなく歩き続ける著者が、淡々と綴るドキュメント。

  • 大して驚くような話はなかったが、あちこちで原発が作られているのだと実感した。

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著者プロフィール

鎌田 慧(かまた さとし)
1938年青森県生まれ。ルポライター。
県立弘前高校卒業後に東京で機械工見習い、印刷工として働いたあと、早稲田大学文学部露文科で学ぶ。30歳からフリーのルポライターとして、労働、公害、原発、沖縄、教育、冤罪などの社会問題を幅広く取材。「『さよなら原発』一千万署名市民の会」「戦争をさせない1000人委員会」「狭山事件の再審を求める市民の会」などの呼びかけ人として市民運動も続けている。
著書は『自動車絶望工場―ある季節工の日記』『去るも地獄 残るも地獄―三池炭鉱労働者の二十年』『日本の原発地帯』『六ケ所村の記録』(1991年度毎日出版文化賞)『ドキュメント 屠場』『大杉榮―自由への疾走』『狭山事件 石川一雄―四一年目の真実』『戦争はさせない―デモと言論の力』ほか多数。

「2016年 『ドキュメント 水平をもとめて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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