- 本 ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087201406
作品紹介・あらすじ
恋を入り口に江戸を語り、江戸を入り口に恋を語る。初恋、恋文、性愛、心中、めおと……それぞれの章で、著者自身の体験、恋への想いを織り交ぜながら、いつしか読者を江戸文化の妙味へと誘う。
感想・レビュー・書評
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とかく「鎖国」や「封建社会」など、閉鎖的で古めかしいイメージがつきまとう江戸時代ですが、「好色」、「浮気」、「遊女」、「心中」などを主題とした黄表紙や洒落本、浄瑠璃などに多くみられるように、人々の生活や行動は自由で人情味に溢れ、時代は「粋」に満ちていた、ということがこの本から読み取れます。
本書には、当時の恋愛のテクニックや結婚の合理的な仕組み、女性の自立、更にゲイなどのエピソードや物語がふんだんに紹介されていて、これが本当に三百年も昔のことなの? と疑いたくなるほど内容が瑞々しく感じました。
そう感じる要因は、現代仮名遣いによる軽妙な文章、そして作者の経験を織り交ぜることで、「なんだ、昔も今も同じじゃん」と親近感が湧くことにあるのでしょう。
また、当時の浄瑠璃や小説などの作品からの引用が多く、江戸時代の作品が次から次に展開され、飽きず、勉強になることも要因の一つです。何点か掲載された図版も効果的。
読者は引き込まれ、江戸の文化をもっと深く知りたいと思います。江戸文化へ誘う入門書として、最適な読み物だとの感想を持ちました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
論文とちがって著者の個人的経験がちらちらと書かれているのが面白かった。
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江戸の色恋に関するエッセイ集。軽やかに読めます。300年前のこととはいえ、明治期以降の近代の教育や倫理観の影響で読み取れなくなっていることが多いように思います。西鶴とか近松の原典を読みたくなりました。
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江戸時代の恋愛事情を入口に、江戸文化や現代にも通じる人生のあり方について書かれた本。
江戸時代における「好色」とは、「流行に敏感でセンスがよく、人への気遣いや教養もあって、恋心をよく知っている」人を指すとのこと。そんな人に私はなりたい(未だなれていない・・・)。 -
高校の日本史や古典で習ってきた
江戸時代の文学、浄瑠璃、狂歌、歌舞伎etcから
恋というものを分かりやすく解説してくれる。
江戸時代の恋と現代の恋は
似ても似つかないが通づるものがある。
例えば、知識で惚れるのではなく、
知性で惚れるというのが個人的に共感したところ。
現代の人は割と色んなところで知性を発揮できるが、
江戸時代の人はその知性というのは、恋文で示した。
ただの知識だけでは発揮できないセンス。
他にも 恋は贅沢だということ。
性に目覚めたら親戚の皆で笑ってくれること。
"浮気"な結婚は数少ないこと。そもそも浮気って何?
こういう疑問もこの本が分かりやすく教えてくれます。
自分の力では中々学べない分野なので、とても面白かった。 -
江戸時代は何も、武士と官僚ばかりではない。
市井の人々、つまり町人、パンピーだって日々を暮らしていたわけです。
何も生類憐れみの令や、ペリー来航で日米修好通商条約やら、五稜郭やら倒幕やら親王派だとかは関係なく、一般市民はせっせと色恋なんかもしてたわけだ。
江戸には恋が溢れている。小説、音曲、芝居、浄瑠璃、浮世絵、黄表紙、洒落本...好色であることが誉高く、人が粋に通じ、人情に満ちたこの時代の恋は、どこか切なく、辛い覚悟を秘めている。
ほんのり温かい一冊でした。 -
読了。面白かった。奥が深いと思った。古典も勉強さしたくなった。
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田中優子先生が江戸の恋を入り口に己の恋愛観を語る!といった趣向だが、それはそれで面白い。
離縁・再婚が多かったり、堂々とした遊郭通いやら男色やら自由闊達な江戸の恋だが、以前に読んだ歴史人口学の本にあった記述、江戸はほとんど人口を再生産せずに地方からの人口流入で人口を保っていたと言うくだりとの符合を感じた。当時の生活水準の中で子供まで育てていこうと思うと、なかなかそう遊んではいられぬだろう。
ところで、数百年前の日本人の恋愛観に接して、自分の観念も相対化されて少し自由になった? -
江戸の男女関係について。へ〜、現代とはずいぶん違うんだな。
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田中優子センセイの
江戸学に裏付けられた
エッセイ
いつの時代にも
どんな国でも
男と女がいる
当然のことながら
そこにまつわる
いろいろな
あれこれが発生する
優子先生の
当意即妙の具体例と
歯切れのよい解説が
心地よい
著者プロフィール
田中優子の作品





