クルド人 もうひとつの中東問題 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087201499

作品紹介・あらすじ

祖国なき最大の民といわれるクルド人。居住地域はクルディスタンと呼ばれ、おもにトルコ、イラン、イラクにまたがり、面積はフランス一国にも匹敵する。さらにその人口は二五〇〇万人とも推定され、パレスチナ人約八〇〇万を大きくしのぐ。クルドの名は、古代シュメールにまで遡り、かのイスラムの英雄サラディンもクルド人であった。十九世紀末以降、自治、独立を求める戦いを激しく繰り返すが、常に居住国の中央政府、西欧列強、近隣諸国の利害に翻弄されつづけ、分断されてきた。九一年の湾岸戦争後、クルドはようやく日本でも報道されるようになるが、問題の大きさに比べて、その認識はまだまだ低い。本書は、パレスチナとならぶ中東地域における大きな火種のひとつ、クルド問題に光をあてるものである。

感想・レビュー・書評

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  • クルド人 もうひとつの中東問題
    著:川上 洋一
    集英社新書 0149A

    クルド人は、難民問題が生じるまで、中東にて、ハイライトされることはなかった
    本書は、中東問題の裏側にある、クルド人問題を中心に中東の複雑な問題を扱っている

    構成は6つのブロックに分かれています

    クルド人とはなにか
    クルド人前史 オスマントルコ敗北まで
    クルド各国事情
     ①トルコ
     ②イラク
     ③イラン
    クルドをとりまく国際関係

    ■クルド人とは

    ・祖国なき最大の民
    ・トルコ、イラク、イランの三カ国にまたがって住んでいる その地域は、クルディスタンと言われている
    ・その人口は、20世紀末で、推定2000~2500万人 ちなみにパレスチナ人は、1000万人
    ・クルド語は、印欧語族のうち、古いペルシア語系、でも独自の文字はない
    ・クルド人の75%はスンニ派、25%はシーア派

    ・クルドは、部族の集合であり、まとまりがない
    ・クルドが民族として、まとまりを意識したのは、オスマントルコ崩壊前後の1920に始まる
    ・クルド生息地の三か国は、クルドを封じ込めるために、敵対国にいるクルドをたすき掛けで支援している
    ・クルド人は、それぞれの国で内戦として、当時国と闘う一方で、クルド部族同士は仲が悪く部族闘争が
     発生している。このため、現在まで、クルドが統一した国家を建設するには至っていない

    ■クルド人前史

    ・BC2000のシュメール碑文に、カルダカの名でクルドの記述がある
    ・イスラム成立時に、遊牧民と言う意味で、クルドと呼称された
    ・ウマイヤ朝(661-750)、アッバース朝(750-1158)の時期に頻繁に叛乱を起こす
    ・11世紀、クルドは強奪者、略奪者の意味で使われる
    ・1139-1193 サラディンは、最も高名なクルド人である
    ・クルディスタンは、オスマントルコと、ペルシア、サファビー朝のはざまで戦場となる
    ・1639 エルズムル条約で、クルディスタンは、分割され、西2/3はオスマントルコ、東1/3はサファビ朝に分断
    ・クルド人は、優れた戦士として、トルコにも、ペルシャにも戦士の供給地として重宝がられた
    ・1919シムコの乱
    ・1923ローザンヌ条約にてクルディスタンは、トルコ、イラク、イランの3つに分割された

    ■トルコ

    ・オスマントルコの後継者ケマルパシャは、近代化のために、世俗主義を採用
    ・トルコには、もともと、クルドと言う概念はなかった、そのためにもっともゆるやかであった
     それでも、クルドの反乱は頻発した

    ・1923 ローザンヌ条約
    ・1925 シャイフ・サイードの蜂起
    ・1926-27 デルシム、ピトリスの騒乱
    ・1928-30 アララト山争奪戦(トルコvsイラン)
    ・1936 デルシムの虐殺
    ・PKK クルド労働党
    ・1970's 左派と右派で対立顕著、クルドは左派へ
    ・1984 PKKゲリラ闘争へ
    ・1992 イラク KDPと、PKKとの戦闘
    ・1993 PKKと政府休戦へ

    ■イラク

    ・1923 ローザンヌ条約
    ・1927 クルド バルザニ族 中央政府に抵抗
    ・1935 クルド族長会議
    ・キルクーク油田が派遣されて、クルドとイラクとの取り合いとなる
    ・KDP クルド民主党 PUK クルド愛国同盟
    ・1958 イラク共和国へ
    ・1959 カセムで騒乱に
    ・1961 ペシュメルガ騒乱 クルドは、トルコへ避難
    ・1965 政府軍10万の攻撃
    ・1968 バース党政権 クルド政策融和
    ・1970 キルクーク油田を巡って、政府軍とクルド衝突
    ・1972 イラク・ソ連友好条約締結
    ・1974 イラク政府 クルド自治法
    ・1980-88 イランイラク戦争
    ・クォシュ・ティパ 毒ガス大虐殺
    ・1988 戦争終了 イラク軍がクルド掃討へ
    ・1994 KDP/PUKで武力衝突
    ・1995 KDP イラク政府と和解

    ■イラン

    ・1942 クルディスタン復活委員会
    ・ソ連vs英国の舞台になっている
    ・1946 いったん、クルド人民共和国ができるも、ソ連の傀儡
    ・そのソ連は、イランの石油権益と見返りに、クルドを見捨てて撤退した
    ・1950 クルドとイラン政府軍が衝突
    ・イランクルド民主党(KDPI)
    ・パーレビ国王は、キッシンジャーと、CIAは、反イラクのクルドを密かに支援していた
    ・1979 ホメイニ革命 革命防衛隊とクルドの衝突
    ・1989 ホメイニ死後に、融和を持ちかけられたKDPIの幹部はイランによって暗殺される

    ■クルドをとりまく国際関係

    ・ロシア地域にもたくさんのクルド人がいる コーカサス、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン
     スターリン時代後は、クルド語による新聞や放送が行われている
    ・1993 トルコ、シリア、イランの三国外相会議
    ・トルコのNATO参加,EU加盟検討

    目次

    はじめに
    第1章 クルドの地を訪れて
    第2章 トルコ、オジャランの武装闘争
    第3章 イラクの「クルド地域政府」
    第4章 クルド人とは
    第5章 クルド前史
    第6章 第一次大戦が終わって
    第7章 新生トルコとパーレビ王朝
    第8章 バルザニ兄弟の抵抗―イラク
    第9章 幻のマハーバード共和国―イラン
    第10章 ホメイニ革命とクルド―イラン
    第11章 クルド戦争―イラク
    第12章 バルザニとタラバニの反目と抗争
    第13章 イラ・イラ戦争はじまる
    第14章 PKK、トルコ政府と対決
    第15章 トルコでの弾圧
    第16章 国際関係のはざまで
    第17章 “祖国”建設への展望
    あとがき
    引用・参考文献

    ISBN:9784087201499
    出版社:集英社
    判型:新書
    ページ数:208ページ
    定価:720円(本体)
    2002年07月22日第1刷発行

  • パレスチナ問題に関しては、ニュースで取り上げられることもあり、書籍も豊富にある事から結構目にする機会も多い。
    ところがクルド問題になると急にトーンが下がるし、あまり詳しい事は分からないのが正直なところ。
    先日日本に住むクルド人の難民をテーマにした小説を読み(マイスモールランド)、急に興味が湧いたので一冊読んでみようと思って手に取ったのが本書です。
    日本でのクルド人の話題と言えば、蕨周辺でコミュニティーを形成しており「ワラビスタン」なんてポップな名称も付いているのですが、彼らがどれだけ不安定な状態で日本に住んでいるのか分かっている人は非常に少ないと思う。僕自身あまり知らなかった。
    そもそも難民として日本にいるものの、日本は難民として認めておらずあくまで一時的な措置として日本に居住しているだけで、いつ在留資格を失うか分からないという状態です。この辺は是非「マイスモールランド」を読んで頂きたい。

    そしてこの本はかなりディープにクルドと周辺諸国との軋轢を書いているので、正直読んでいて全然覚えられないのが正直なところです。無数の争いを細かく書いているので、もっとおおざっくりな本もう一冊よみたいなあ。あるのかな?

  • 世界で唯一国家をもたないクルド人の歴史と今も続く戦いについて詳しく書かれている。PKK(クルド労働党)所属の知人について知りたいと思い購入。第一次世界大戦の各国の無責任な土地争いにより国土を奪われ、虐殺され、イラク・イラン戦争でも兵隊として使われ、あげくのはてに言葉と教育を奪われトルコへの強制同化政策を強いられた人々。 今もまだ彼らの悲しい闘いは5国にまたがり解決は困難を極めている。

  • つい最近『日本の異国――在日外国人の知られざる日常』という本を読んだら、埼玉県の蕨あたりにクルド人が多く住んでいて云々ということが書いてあった。そして彼らを疎ましく扱うようなこともときどき見聞きする。いったい、そもそもクルド人ってどういう人たちなんだろうと思い、何か参考になる読みものを地元の図書館で探して見つけたのがこの本だった。2002年刊行だからだいぶ古い。でも地元の図書館にはこの本以外に、クルド人を概説してそうな本がなかった。つまり、クルド人って日本にとってはそのくらいマイナーな存在ということか。
    この本から知ったクルド人とは、古くから中東、トルコ、イラン、イラクあたりに住んでいて、最近だと移民してドイツあたりにも一定数が住んでいるのだとか。クルド人という民族としてよりもっと小単位の部族間での結束と他部族との小競り合いが多く、近代まではそれほど「クルド人」としての民族意識は希薄だったようにも読めた。一方で、クルド人の国は古来からなく、各国内の一民族として時によっては厚遇、冷遇されてきた。近代になって独立や自治を求める動きが出てきても、各国の事情や為政者の無責任な言葉に翻弄されてきたといった感じのよう。
    この本は書きぶりが淡々としていて事実を書き連ねているばかりで解説が少ないと思う。もっと起こった事実の背景とかが知りたかった。そして自分のそもそもの疑問としての、なぜ日本にいるクルド人が疎まれているのかはわからず。おそらくこの本に書いてあるような古くからの中東での扱いが影響しているのではなく、新参者のくせに騒動起こすみたいなことが理由なんだろうけど。

  • 【概略】
     クルディスタンと呼ばれる居住地域を主とし、しかし国を持たない最大の民族・クルド人。その人口は2,500万人とも推定される。また由来も古代シュメールにまで遡る。19世紀以降、自治・独立を求めるクルド人を取り巻く環境は、過酷である。本書では発行された2002年までのクルド人の歴史、もう一つの中東問題として、取り上げるものである。

    2024年05月23日 読了
    【書評】
     戦争・紛争または戦争紛争行為において、どれぐらいの人が亡くなったのか、その凄惨さについては、比較はできないしするものじゃないと思う。ただ本書のタイトルにある「もうひとつの中東問題」のとおり、イスラエルを中心とした中東問題と比肩する問題だよなぁ・・・でも、実際のところ、後ろ盾がないことでイスラエルとはまた違った世界線を歩くことになってしまっているよなぁと、終始感じてしまった。
     もう一つは「多様性の限界」ということかな。世間でよく言われる皮肉で「多様性多様性と叫んでいる人ほど、自身の主張を通すことに執着して周囲を排除している」なんてあるじゃない?多様性と(この言葉は能動的なネガティブ感があるので好きじゃないけれど)分断って、ある意味表裏一体なところは否定できないと思う。相手の存在を否定、抹殺するような分断はダメだけれど、相手は相手、自分は自分と踏み込まないという意味の線引きは、どこかで必要で。でもコミュニティという器の上で生活している以上、バランサー的な解を選ばないといけなくて。もうそれって昨今の多様性の前から「公共の福祉」という言葉が(少なくとも日本の法制度、憲法の理念として)使われてる訳ですよ。
     この本を読んでいて多様性の限界を想起してしまったのはなぜか?というと、クルド人そのものがさ、思想だけじゃなくて部族とか村レベルで衝突しまくってるのよ。一つの村の風習や慣習を一つの多様性として考えると、もう一段上のレイヤーである「クルド人」という部分が、どうでもよくなっちゃってるみたい。少なくとも本書に記録されてる歴史の事実を見るとね。そこにプラスして、思想・イデオロギーの要素が加わるとさ、もうひっちゃかめっちゃかだよ。
     実は今回(2024年)のトルコ遠征の際、5月1日をイスタンブールで過ごしてしまった(まさしく「過ごしてしまった」という表現!)のよね。メーデーですよメーデー、労働者の日ですよ。すごかったよ、(まぁ、実際には警察の許可で可能らしいけどね)レインボーブリッジを封鎖するのに右往左往してる日本なんて、しょぼいしょぼい。イスタンブール中心部、全部封鎖だから!歩行者はいいのよ往来しても。でも、車・バス・地下鉄・・・全てNG!そのおかげで30キロのスーツケースを何時間もひいて歩く羽目に。それぐらいまだ労働者階級の闘争が、あるということなのだよね。1900年代から2000年代への時代などは、ソ連という存在があった訳だから、もっと色んなことを想像しちゃうよね。
     もう一つは、大国の思惑がとんでもないということ。自分は自分を極端な左とも極端な右とも思わないし、国粋主義者でもないのだけどもね、「歴史は繰り返される」という教えを元に今回のクルド人の歴史を読んでいくと、周辺国に対しては「軍事上は」やはり「~かもしれない国防」を前提に国防を考えておいた方がいいと思うし、友好国というか同盟国に対しては「軍事上は」考えたくはないけれど、「急に袖にされたら」ということを踏まえたプランBやプランCは極秘でもいいから考えておいた方がいいのではと思ってしまった。大国の思惑で支援があったりなかったり、攻撃されたり擁護されたり、それはクルド人がお互いに喧嘩してるからなのかわからないけれど。大変よ。
     あとさ、イラク戦争で大量破壊兵器はなかったという報告が後からされて・・・って話があったと思うけど、かつてイラクはイラク戦争よりも前にクルド人に対して使用したしてないという実績(?)があるから、まぁ相当に疑われてたのね。疑いだけじゃ戦争の理由にはならないかもだけど。
     さて、本書を手に取る理由の一つ、埼玉県川口市のクルド人のお話。直接目撃してないからヘタなことは言えないけれど、前述の部族ごとに思想ごとに衝突が激しいという気質からすると、異国に順応するのは相当に・・・難しいのではないかなと想像できちゃうね。
     多様性を尊重しながら、国そして市町村というコミュニティを維持していくならね、法治国家を徹底することと教育だと思う。法治国家の徹底というのは、おかしな在留資格の発行はしない、人権問題もあるから長期間の拘留などせず対応する、というもの。この辺り、動画で観た川口市議会議員さん、もったいないよ。警察に取り締まりを強化なんて言い方をしちゃうから〇〇人によって扱いがかわるという誤解になる。警察には〇〇人関係なく、取り締まってもらう。そこには在留資格のチェックも含まれる、でいいのに。〇〇人だからじゃなくて、それはもう法律だから。
     ディズニーランドのファストパスを買える人はその恩恵を受けるという意味で言えば上級国民(そんな言葉を使うこと自体、精神は上級ではないのだけど)は存在してもよいのだよね。でも、法の執行という意味において、根拠なく免れることができるという上級国民は、絶対に存在してはいけない訳で。それが国民の枠から〇〇人という枠に広がるだけの話なのだよね。
     川口市のクルド人の方達は、国籍としてはトルコだと思う。かつてはトルコ政府はクルド人をかなーり迫害してたみたいだね。でも今は?そう考えるとどれだけ川口市のクルド人の方達が難民申請を行おうがその申請許可が下りないというのは、明白だよね。だって今、トルコは(一部局地的なものはのぞいて)紛争がないもの。

  • クルド人には祖国が無い。最近ハマスのイスラエル砲撃に端を発したイスラエルのガザ侵攻。パレスチナ人も特定地域に封じ込められ虐げられている現状があるが、その数は凡そ1000万人、クルド人はその4倍以上の4600万人程居るそうである。どちらも世界中に散らばっており、数としては前者が半数以上がガザに居住するもののパレスチナ国として国家が存在する。後者クルド人には国が存在しない。彼らも世界中に居住地を求めるが、移民受け入れに積極的なドイツやフランスに多く、中東近隣ではトルコが最大の受け入れ先となっている。その数2500万人近くに上っている。だがそれも移住者の扱いに変わりなく、クルド人は国を持たない最大の民族と言われる所以だ。
    ニュースでイスラエルとパレスチナ人の戦いが流れる度にクルド人の事が頭に思い浮かぶので本書を手に取り、その歴史に触れてみた。内容としては期待通りクルド人の歴史から現状までを新書という少ないページながらもコンパクトに纏まっており、一挙に概要を掴むには丁度良い。
    読んでいて常に思い浮かぶのは何故人は争うのかという根本的な部分に尽きる。クルド人は確かに国という安定した居住地を持たず歴史を過ごしてきた。それは大半外部との戦いであるなら納得できるが、複雑なアラブ諸国の中にあり、彼らは同じ民族同士でも争う。各国の利害にまき込まれるだけでなく、同じ民族同士でも宗派の違いや、利益関係のもつれ、主義主張の違いにより争いが絶えない。こうなると国を持つ以前に民族の統一すらも困難な状況になってくる。そしてそれは民族とは別次元の問題になってしまい、本質的に人が争う性質であることを体現しているように思えてくる。
    彼らが国を持つ日がやってくるのか、それとも民族内の対立を続け世界に散らばり続けるのか、それは彼ら自身の選択でしか無い。因みに日本では埼玉県の川口市に大きなコミュニティを築いているようである。どの様な考え方を持っているのかいつかインタビューしてみたくなる。そうした気持ちになる一冊である。

  • 映画『東京クルド』を観て以来少しずつ読書しようと思い手に取った(2冊目)

    クルド人問題についての概説書。20世紀頃までの歴史が新書でまとめてある。コンパクトながら内容充実。世界史・地理の知識不足の自分は読み進めるのに苦労した(中東関連書籍を読む時毎度感じる事だけど)

    読みながら非常に複雑で根深いものがあるのだなと痛感させられた。大国の国際政治に翻弄され、内部の分断で対応がままならない様子にはやり切れない思いを抱いた。こんな事言うと怒られるかもしれないが朝鮮近代史を読みながら感じたやり切れなさに近いものを思い起こした。

    未消化部分が多々あるので、理解を深めながら読み返していきたい。

  • 中東問題で広範囲にからむクルド人について、特におおむね20世紀までの期間における、彼らの複雑な政治活動の様相をまとめた本。もともと閉鎖性の強い部族制の中で生きてきたこと、近代に分画された国家によって分断されていることが、問題を複雑化していたことが理解できた。出版から約20年経過したので、さすがに現状を反映はしていないが、問題の発端を知るには手軽な一冊だと思う。

  • トルコ、イラン、イラク、シリアを中心に各国における内部的クルド人勢力との争いや、外部勢力の支援の様子など、クルド人を中心とする中東の歴史が分かりやすく語られている。
    最後のまとめがわかりやすい。
    他の中東の本とも混ぜ合わせながらもう一度時系列を整理していきたい。

  • 祖国を持たない民族クルド人について書かれた本。
    2002年なので、少し古いが歴史を見るのには充分。
    基本的に20世紀の話題になる。
    宗教、部族、居住地などから自治区がほしいけれども、
    クルド人という塊自体がうまく機能しなくて、内輪揉めで失敗しまくっているように見える。
    もちろん離間の策をとった周りの国の対応のおかげもあるんだけど。、
    ISからキルクーク奪還にクルド人が活躍したのもこの歴史があるからかな、とか。
    多少テレビなどで報道されるようにはなったけれど、相変わらず中東の火種の一つのまま変わらないところが現実。

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