英仏百年戦争 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202168

感想・レビュー・書評

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  • フランスはいつからフランスか、イギリス人はいつイギリス人になったのか。
    うーむ、刮目の一書。

    百年戦争のはじまりの頃、それは「フランス人」同士の戦いであった。

    ノルマンコンクウェストがフランス人によるイングランドの征服であったこと、イングランド王室の宮廷ではフランス語が話されていたこと、一つ一つの知識はあったはずなのに、それがどういうことなのか理解してなかった。
    失地王ジョンは何をなぜ失ったのかも、全然わかってなかった。

    非常に勉強になった。

  • 石川雅之『純潔のマリア』から「英仏百年戦争」へ。
    イングランドを治めていたのは、フランス人。と言うことは、英仏と言いながら、実はフランス人とフランス人の戦いであった訳だ。まだまだ知らないことは、多い。
    また、「〇〇史」(←〇〇には国名が入る)とカテゴライズしてしまっているが故に見えなくなってしまっているものがあるという指摘も納得。文学も又然りである。
    このまま「百年戦争」に関する小説を読んでみたいと思う。

  •  英仏百年戦争に対して抱いていたイメージが一変した。まずこの戦争は出自的にフランス人同士の戦いであるということが驚き。またフランス人といっても当時は今の国民国家の意識はない。してみるとイギリスとフランスが国家の誇りを賭けて戦ったというロマンあふれるイメージはなんと的外れだっただろうか。一方で百年戦争の過程で国民国家の意識が醸成されていった側面もあるようで歴史認識を改めさせられた。
     全体的に史実の羅列という印象で退屈ではあった。人名、地名が雪崩のように出てきて途中から分からなくなってしまったし。予備知識があると違うんだろうけど、世界史でも詳しくやる項目ではないし…。読んでいてヴィジュアルイメージがないのが辛かった。テレビで百年戦争を扱った番組があるといいんんだけど、
     

  • 歴史についてというより雑学本な感じがした。
    戦争についての細かい所が描かれてなくて少し読み足りない

  • 「王妃の離婚」や「物語フランス革命」などヨーロッパを題材とした小説で有名な佐藤賢一。エンターテイメント小説を手掛けているためか、大変読みやすく100年戦争が描かれている。
    100年戦争が終結する以前のヨーロッパは、地方領主がひしめく中、ローマ教皇や神聖ローマ皇帝が歴史を動かす軸として存在感や影響力を持ってきた。それが100年戦争の終結によりフランス・イギリスという国民国家の萌芽が生まれてくる。
    ここにおいて、それ以降の歴史がイギリスやフランスのイタリアとドイツに対する優位という構図となる。ある意味で歴史の主役が逆転してくる。戦争を継続的に行ってきたためか、それまでより強い王権のもとで現在で言うところのイギリスとフランスは国内を統一していく。その一方でドイツ、イタリアの国民国家の萌芽はウエストファリア体制を経てさらにナポレオン戦争を待たなければならなかった。そう考えるとこの100年戦争の結果がフランスとイギリスにとって後の歴史における大きなアドバンテージを生み出す要因であることが理解できる。
    本書を読んでとりわけフランスの影響の大きさを感じるのは、まずイギリスはフランスの地方領主が征服した国であること、そして100年戦争中動員できる兵力はなんだかんだでフランスが上回り続けていたこと、それから後世においてフランスの統一された国家は、ドイツ領邦に刺激を与え続けてきたことなど。100年戦争以降のヨーロッパ史の主役がフランスであることを思った。
    本書が現代に投げかける課題も目をひく、ひとつは後世で歴史は自国に都合よく書き換えられること。もうひとつは忘れられた救国の英雄は、時の権力によって都合よく偶像化されること。確かに今でもそんな感じ。

  • 英仏が百年戦争を戦ったのではなく、フランス的なところの諸侯がくんずほぐれつやって、落着してみたらあら不思議、イングランドとフランスなる国家が出来ていましたよ、という方が正しいというお話。

    国民国家なんてなかった中世ヨーロッパが近代国民国家制度を産み落とす過程のひとつが鮮やかに描かれていると思います。

  • 2014.1.21

    中世ヨーロッパの英仏を知るための入門。これをよんで面白く感じれば、入っていける。
    結の そろそろ国民国家の次の分岐点が訪れてもよい ということに賛同できる。

  • 百年戦争はイギリスとフランスという二つの国を作る戦いだったというまとめ。
    なるほどなぁと思わせる話だった。しかしややこしいくらいいろんな名前が…エティエンヌがスティーブンてわけわからん。

  • 英仏100年戦争というが、実のところ、イギリスとフランスの戦争ではない。それをつらつらと説明していく解説本だ。

    グレイト・ブリテン島は古来、ケルト民族の土地だった。かのカエサルの上陸を契機に、ローマ帝国の支配に組み入れられても、基本的な民族構成は変わらなかった。が、4世紀に始まるゲルマン民族の大移動で、アングロ・サクソン人が段階的に移住してきた。このとき辺境に追いやられたケルト民族の末裔がスコットランド人であり、ウェールズ人であり、また、アイルランド人であるといわれる。新たに渡来してきたアングロ・サクソン人が建てたことから、イングランド(フランス語ではアングルテール=アングル人の土地)と言うわけである。この国に強力な王朝が据えられたのは、ようやく王ウィリアム1世の時代からだった。王位に付いた経緯を言うと、ノルマンディ公ウィリアムは、非力なイングランド王ハロルド1世を打ち負かし、かわりに王位に付いたのだ。そして、即位したウィリアム1世は、御恩と奉公の封建制を全土に敷いて、かつてない中央集権的な国家を築く。これがイングランド史に言う、ノルマン朝の成立である。

    すんなりと読めてしまうが、よくよく考えてみて欲しい。ノルマンディ公とは、読んで字のごとく、ノルマンディを治めていたわけだが、ノルマンディという土地はフランスの一地方である。ウィリアム1世は、元を正せば、フランスを荒らしたヴァイキングの首領であり、フランスの懐柔策でノルマンディ(北の人の土地)と呼ばれる土地を与えられ、臣下とされた。ノルマンディ公のフランス語の名前はギョームであり、単純な英訳がウィリアムということであり、フランス育ちのフランス語を話す歴としたフランス人なのだ。イギリス人はウィリアム1世をイギリス人として疑わないだけなのだ。シェークスピアがそのような誤解を与えるような文学史を作り上げ、それが一般論となっただけなのだ。イングランド王国は、フランスのノルマンディ公がドーヴァー海峡をまたいで支配していた土地ということだ。

    イングランドはフランス人に征服された国だった。征服王ギョーム(ウィリアム1世)の徹底した仕事によって、この王国には、日本人の感覚にいう、外様がいなかった。イングランドでは圧倒的に王の力が強いのだ。フランスとイングランドは同じフランス人の王が、様々にかわりつつ、時にはイングランド王がノルマンディ以外の土地を征服したり、ノルマンディ公以外がイングランドを征服したりと所有がいったりきたりしていく。時間をかけて、誰よりイングランド王自身が、次第にフランス人であることを止め、ノルマンディ等の大陸の領地に固執しないようになっていった。もう外国だから、もう言葉も通じないから、海を隔てた向こうの国だから、互いに異質なものとして、もうイングランドはフランスから切り離されてしまったのだ。英仏100年戦争とは、フランスがフランスとして、イングランドがイングランドとして、さらにはイギリスとして歩む道が定められた100年なのである。英仏が100年の戦争をしたのではなく、その100年が英仏の戦争に変えたのである。

  • 13/07/17 百年戦争の新しい視点が提示されている。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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