いちばん大事なこと ―養老教授の環境論 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 570
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202199

作品紹介・あらすじ

環境問題のむずかしさは、まず何が問題なのか、きちんと説明するのがむずかしいことにある。しかし、その重大性は、戦争、経済などとも比較にならない。百年後まで人類がまともに生き延びられるかどうかは、この問題への取り組みにかかっているとさえいえる。だからこそ、環境問題は最大の政治問題なのである。そもそも「人間社会」対「自然環境」という図式が、問題を見えにくくしてきたし、人間がなんとか自然をコントロールしようとして失敗をくりかえしてきたのが、環境問題の歴史だともいえる。本書は、環境省「二一世紀『環の国』づくり会議」の委員を務め、大の虫好きでもある著者による初めての本格的な環境論であり、自然という複雑なシステムとの上手な付き合い方を縦横に論じていく。

感想・レビュー・書評

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  • 20100803

  • 【要約】


    【ノート】
    ・「人はなぜ逃げおくれるのか」のカバーの「関連本」で

  • 「環境問題は政治問題である。」
     最初は意味がわからなかったが、読み進めていくうちに、なるほどそういうことかと納得させられた。システムを理解することの難しさ、現代の科学が秘めている問題点、進歩しているとばかり思っていた科学の世界が実は情報化という方向にのみ進歩していたという新たな気付きも発見することができた。
     しかし、私は都会から田舎に出てきた若者として思うのは、楽を知ってしまった都会人に田舎に強制的に住めというのもどうかと思う。もちろん、皆が環境問題を看る医者としての意識を個人個人が持つ必要があるのだろうが、現実問題としてそんなことが可能なのか。まだまだ考える余地が残されている問題ではないかと感じた。

  • 人工衛星からの夜の日本列島付近を撮った写真を見て驚いた。日本中が光り輝いている中で、山脈だけが黒く抜けて見える。これほど歴然とエネルギー消費を表すものはない。単位面積あたりの夜の明るさを調べれば、その国のエネルギー使用の状態がわかると思う。
    努力・辛抱・根性と言う日本人の国民性は、自然と付き合い、手入れする中で培われてきたのである。最近の人は一言で言ってくださいとか、脳の謎はいつ解明されますかとか性急な答えを要求する悪い癖である
    学ぶとは、自分が変わることである。目からうろ子が落ちる。それを先生に教えてもらって、やるのではない。自分で目のうろこを落とせ。私はそういいたい

  • 読了。2003年の新書であるが、特に古臭いように感じなかった。

  • 環境問題こそ最大の政治問題。そう、帯に書かれています。これが本書で著者が訴えていることのすべてだと思います。それでは本文は読まなくていいか、というとそんなことはなく、なぜ環境問題がもっとも大きな政治の問題になるかを、経済だったり、戦争だったり、そんなことに時間を使ってる場合ではないということを本書を読んで納得してほしいと思います。ただし著者は環境原理主義に走りすぎることには否定的です。私の家には車がないし、ケータイもありません。(当時)だからといって、車に絶対乗らないなんて言うわけにも行かないし、必要があればタクシーも利用します。ただあまり必要性がないから、少し我慢すれば十分に生活できるから自家用車は持っていないのです。必要があれば購入すると思います。すべての人に今の便利な生活を我慢して、環境に優しい生活をしなさいというわけには行かないでしょう。でも少しずつみなが我慢をし、そして日本には今もたくさん残っている里山などの自然をいとおしく思ってくれれば、大きく生活はかわってくると思います。著者は最後に大胆な具体案を提出しています。それは参勤交代。とは言っても、東京に行くのではない。年に3ヶ月は田舎暮らしをせよと言うのです。したい人がするのだけではダメです。全員強制的にする。その間の仕事は別の人が替わってする。たしかに、ずっと田舎生活と思うとちょっとしり込みするし、仕事を完全に辞めてしまうのも不安。でも、年に3ヶ月くらいだったらいいかなあ、なんて思う人は多いのではないですか。実現するとおもしろいなあ。他人事ではなく、自分たちで何とかしていかないといけないんでしょうね。何か出きることはないのかなあ。若かりしころの近藤勇の気分です。(ちょっと新選組にはまってます。2004年2月)

  • かなり前の本だけど、かなりよかった。大学一年生くらいのときに読んで、影響を受けた。環境の話のような、生き方の話。

  • 環境問題は最大の政治問題。西洋の人間対自然という考え方は絶対保護につながる。日本では里山に代表される手入れの自然観を持つ。
    中国の思想は、自然とつきあう老荘思想と世間とつきあう儒教(孔子、孟子)に分かれる。

  • 「虫屋」の著者による環境論。

    著者は、近代に入って加速的に進められることになった、人間の意識に扱うことのできる情報だけしか見ようとしない傾向を、「脳化」や「都市化」という概念によって捉えています。本書は、そうした視点から環境問題の何が本当の問題なのかを論じています。

    「ああすれば、こうなる」という、意識によって捉えられた筋道がすべてだと考える発想が、全面的に開花したのが「都市」です。だから都市では、何か問題が起こると、その原因が追究され、責任者が見つけ出されることになります。しかし「自然」には、そうした意識の筋道によって捉えられないものがたくさんあります。

    環境問題は、「ああすれば、こうなる」という意識の論理で突っ走ってきた人間社会が、自然という意識の外部の存在を見落としてきたために生じたと、著者は考えます。それゆえ著者は、環境問題を解決するための方法を手っ取り早く求める環境保護論者たちにも反対します。なぜなら、そうした発想は「ああすれば、こうなる」という従来の考え方を一歩も出ておらず、「自然」を意識によって理解できるものと考えているからです。

    「じゃあ、どうすればいいんですか」という短兵急な問いかけに対して、著者は半ば投げやりに(だと思うのですが)、参勤交代を義務づけるべきだ、と答えます。1年のうちに3ヶ月は田舎で暮らすことを義務づけるというのです。「そうしたらどうなる」という問いには、もはや答えはありません。著者はただ、「やってみれば、自分の考えが変わるであろう。どう変わるか。やってみればわかる」と言います。

    環境問題に対する性急な答えを求めることを戒めた本と言えるように思います。

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著者プロフィール

解剖学者

「2019年 『世間とズレながら、生きていく。(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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