死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (集英社新書)

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  • 集英社
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レビュー : 156
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202212

作品紹介・あらすじ

敬虔なカトリック教徒であり、国王を崇敬し、王妃を敬愛していたシャルル‐アンリ・サンソン。彼は、代々にわたってパリの死刑執行人を務めたサンソン家四代目の当主であった。そして、サンソンが歴史に名を残すことになったのは、他ならぬその国王と王妃を処刑したことによってだった。本書は、差別と闘いながらも、処刑において人道的配慮を心がけ、死刑の是非を自問しつつ、フランス革命という世界史的激動の時代を生きた男の数奇な生涯を描くものであり、当時の処刑の実際からギロチンの発明まで、驚くべきエピソードの連続は、まさにフランス革命の裏面史といえる。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに目をひかれ、帯イラストのカラフルぶりに目をひかれ、立ち読みし始めたら止まらなくなって購入。

    軽妙な語り口はまるで自分が見て体験してきたかのように臨場感があり、心理も情景も描写が細かい。
    構成も全体を通してよく練られている。
    その辺の小説を読むよりよほど面白かったです。

    面白さの原点は、やはり著者が好きで楽しんでかいているのがわかるからでしょうか。

    フランス革命時の話としてはベルバラを読んだくらいですが、その下敷きでいくとルイ16世のイメージは大分変わります。

    何よりあの時期に命令とはいえギロチンの操作役に徹した人物が、上流階級並みの知識人で医術の腕にも優れ、一般人からは忌避されながらも暮らしもよいものであったことは目から鱗でした。

    なにより本当に人間臭く優しい。故に縁故ある人や尊敬する人物たちを手にかけるのはどれ程辛かっただろうと、自分のことのように胸が痛みました。

    底本にあるのはサンソン家の日記と主人公の孫が作家に語った事実をもとにかかれた小説。
    その他あまたの資料と著者のフランスの歴史や文学に関する深い造詣と愛情が見事に融合した、読み物としても面白く、フランス革命時の情景を知るにも参考になり、なにより死刑制度を考えさせられる一冊でした。

    発行されたのが十年前ですが、今だからこそたくさんの人に読んで知ってほしいことがたくさん詰まっています。

    ちなみにこの本は、私が一言一句漏らさず読んで最後までたどり着けた数少ない新書です。

  • ムシュード・パリ。死刑執行人の筆頭である。パリの執行人はそうばれた。サンソン家は代々、パリの死刑執行人として世襲されてきた。これは貴族と同じである。初代よりサンソン家には日誌が残されていたようだ。処刑後の死体の解剖を行ったり、人間の急所を心得ており、医術として役立てられ、代々受け継がれた。また、高等教育が世継には行われた。法律の知識、精神的な教育は必要であった。
    公開処刑では、見世物としての一面も持っていた。極刑の八つ裂きの刑、車引きの刑など、見物人も多かった。剣による斬首は難しいことがしめされている。人道的な方法として、ギロチンが誕生する。ルイ16世は名君であったと語られる。フランス革命が起こり、王政は倒れる。国王は裁判で有罪となり、ギロチンにより、処刑される。3代目のシャルル・アンリ・サンソンが執行人である。心身ともに衰弱したサンソンは、贖罪のミサを行ってもらう。サンソンの回想録(6代目の著作)。

    人間を処刑する、精神力の強さは、すごいと感じる。アンリ・サンソンにその源となる、使命感、職務を与えたのは、国王ルイ16世である。革命により前国王を処刑したことで、人間の尊厳をなくしてしまったのではないか?国王は罪を犯していないのだから。また、ギロチンにより、多くの人が死んでいくことになる。狂気か?
    ギロチンと切腹が比較されている。切腹は武士に行うため、罪人の精神面、介錯人の技術、首が前に出る姿勢など、容易に出来るようになっている。現在のフランスでは死刑は廃止されている。

  • 死刑執行人という仕事を代々受け継いできたサンソン家。その役割を担うに至った宿命と使命、数奇な運命について綴った歴史裏話。

    世襲制であり、その当時必須の職業だったにも関わらず、周囲からは分かりやすく忌み嫌われていたこと。特別な手当を受け比較的裕福だったこと。差別を受けつつも、自ら志を高く保ち役割を全うしてきたこと。「死刑」という制度の裏には手を下す人もいる、という当たり前のことに気付かされました。
    死刑の様子や、死刑器具の紹介については生々しい描写もあります。「ギロチン」誕生の背景にはそれまでの死刑執行人の苦労があり、むしろ彼らにとっても受刑者にとっても救世主とも言えるような器具だったとは驚きです。

    時代とともにその地位も方法も変化を見せ始め、「死刑」という制度自体が見直され始めます。そんな矢先の、4代目サンソンに舞い込んできた「国王死刑」の仕事。心と行動が相反する時の苦しさは想像しきれません。
    歴史、社会、文化、人間模様、そしてサンソンの人間性。読みやすいのに血の通った、色々と考えさせられる一冊でした。

  • 不謹慎を承知で言わせてもらえれば、物語のようだと思いました。

    フランス革命といえば、実際には前向きに?歴史的事件として理解している人が多いと思うのですが、実際にはその前から、革命に至るまでサンソンのような、絶対に必要とされながら、人々から理解されない理不尽な状況にある人々が多くいたんだろうと思うと切なくなりました。
    彼は、父や祖先たちの行いに誇り?を持ちながらも、葛藤し、悩み、苦悩しています。王政を廃止するために最初は平和的に動いたはずの人々の心の変わりように対しての彼の怒りの叫び、尊敬していたはずの王を自分の手をくださなくてはいけないことへの悲しみがとつとつと、わかりやすく書かれています。。

    何というか、ひたすら哀しくなりますが、これも「革命」の現実として教科書に載せるべきではないでしょうか。。。 
    もちろん革命があったおかげで今があることは事実なのだけれども、一人一人を扱っていたのではとても時間がないのかもしれないけれど、こういう人達がいたことをもっと知るべきかなと思います。
    悪とか善とかはものすごく曖昧なものであることを知るきっかになります。。その上で、自分はどう生きていきたいと考えるのか? そのヒントにもなるかも。
    名著だと思います。

    • だいさん
      >物語のようだと思いました。
      これいい表現ですね。私もその様に思います。
      (挿絵があるけれど)目に映るような。
      >物語のようだと思いました。
      これいい表現ですね。私もその様に思います。
      (挿絵があるけれど)目に映るような。
      2013/10/26
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「悪とか善とかはものすごく曖昧なもの」
      否定からしか始められない世界には、善悪も未来もないのかも知れません。生き延びた人間を見習う気にもな...
      「悪とか善とかはものすごく曖昧なもの」
      否定からしか始められない世界には、善悪も未来もないのかも知れません。生き延びた人間を見習う気にもなれないけど、殉じた人間にも同情出来ない。。。
      と言いながら、幕末の負け組には、肩入れしてしまうのは何故だろう、、、
      2014/07/07
  • 「ムッシュー・ド・パリ」
    それはパリの死刑執行人の別名。

    本書は、その4代目当主、シャルル-アンリ・サンソンの半生を紹介したもの。
    本来、死刑執行人は注目される事はないのだが、ある出来事が彼の名を後世に残すことになる。

    それは「フランス革命」
    フランス革命で処刑された人のほとんどすべてに関わったのだ。

    シャルル-アンリ・サンソンが職務を実行した記録は、そのままフランス革命の歴史。
    本来ならば記録にも残らないはずの死刑執行人の目から見たフランス革命の裏面史、と言える。


    シャルル-アンリ・サンソンは信心深く、自らを厳しく律する人物だったと言われている。

    当時、死刑執行は一般公開(というよりお祭り騒ぎ)されていたため、死刑執行の場で問題が起きた時、自分が真っ先に批判を浴びてしまう。
    場合によっては興奮した群集に囲まれるなど、身の危険さえある。
    が、そんな事情以上に、彼自身、パリ市民から理不尽な差別を受けていたからだろう。

    彼ほど、自分の行動が、自らの意に反することになってしまった人物も珍しいかもしれない。

    死刑執行人でありながら、死刑廃止論者。
    これは、皮膚感覚として染み込んだ死刑制度に対する矛盾の発露だろう。
    また、国王から死刑執行を任された身でありながら、その国王の処刑で手をくださなければならなかったことには、特に葛藤があったようだ。

    さらに残虐な刑罰に対して反対であったが、ギロチンの発明に携わったこと。
    ギロチンの方が死刑囚に苦しみを与えることなく、処刑できる、という事でギロチンが導入されるが、逆にそのギロチンで、一族の中で最も多くの人間を処刑しなければならなくなってしまった。

    本書の最後は「死刑制度廃止」の(著者の)主張になっている。
    それについて、賛成・反対は、軽々しく言えないが、死刑制度がある限り、手を下さなければならない人も必ず存在する、という事も忘れてはならないだろう。

  • 代々、パリの死刑執行人を務めたサンソン家四代目のシャルル-アンリ・サンソンの半生を追いながら、フランス革命を違った角度から捉えた好著。

    歴史的事実を追っているのだが、まるで小説を読むような臨場感にあふれぐいぐい読ませる。処刑シーンなどやや残酷な部分もあるのだが、興味本意ではなく時代の側面を知る上で必要な暗部であったということだろう。
    またサンソンという人物の、差別と誇りの間で苦しみ、死刑の是非にも悩み続け、それでも任務を全う、革命期にあって真っ向から世の中の動きに向かっていくその人格者ぶりには、目を見張るものがあった。
    フランスで死刑が廃止になったのは1980年代になってから。彼の訴えは175年早かった。
    先見の明をもった賢明な人物だったのだ。

    死刑制度を考える上でも、非常に示唆に富む。
    また、フランス革命の別の一面を捉えたという意味で、フランス革命を知る良い材料の一つでもあると思う。

    シャルル-アンリ・サンソンという一人の人間のドラマに、大きく心を揺さぶられた名著であった。

  • ムッシュ・ド・パリを代々勤めたサンソン家4代目シャルル・アンリ・サンソンの物語。
    ジョジョ好きにはジャイロ・ツェペリのモデルとなった人物というと分かりやすいだろうか。


    「事実は小説より奇なり」というが、これほど数奇な運命に翻弄された人々は数少ないと思う。
    一人の青年の恋から始まった世襲の処刑人一族。
    社会の最底辺として蔑まれながらも、並みの貴族を上回る収入で多くの使用人を抱え、また医師として高度な医術で多くの病傷人を救い、貧しいものへの施しも欠かさなかった一族。
    それがサンソン家だ。

    なかでも四代目当主シャルル・アンリは、若い頃こそプレイボーイとして慣らしたものの、差別と闘い、処刑に当たっては人道的配慮を心掛け、フランス国王を敬愛して忠誠を誓う厳格な執行人であった。
    だが、フランス革命の趨勢に応じて国王ルイ16世その人の首を刎ね、遂にはナチスの執行人ヨハン・ライヒハートに次ぐ史上第二位となる2918人もの死刑執行を行うことになってしまう。


    ムッシュ・ド・パリに関する書籍を探していたので手にとってみたが、本書は興味深いサンソン家の物語は勿論として、著者安達正勝氏の文章がとても面白かった。
    平易で馴染みやすい文体ながら、時折挟まれる既知に飛んだ表現や、ここぞという時の強調表現はまさにジョジョ的。

    最近、日本でも刑務所の死刑執行場が公開されるなど、死刑廃止論に関連した動きがあったけれど、そうした死刑の意味を考えるうえでも意義ある識見を備えた本だと思う。
    サンソンの時代から1世紀以上を経てヨーロッパ諸国では死刑が廃止された訳だけど、そうした国々でも凶悪事件が起きるたびに死刑復活論が再燃し、復活派が数を増しているらしい。
    日本で死刑廃止論が多数を占めるのは、まだまだ先の時代に持ち越されるのだろうか。






    P.S.
    メトロポリタン美術館でフランスで使われていた「処刑人の剣」を観たことがある。
    切っ先が平らになその剣は、刀身には精巧な彫刻が彫られている一方、刃は切れ味よりも斧のように重さで断ち切る事を重視したものだった。

    だからこそサンソンの様な熟練した死刑執行人が必要とされたわけだけど、失敗の無い「人道的」な処刑用具として発明されたギロチンの登場と同時に、死刑そのものの回数が加速度的に増加してしまったのはなんとも皮肉な事だと思う。

  • 大学の西洋史(ドイツメインだったが)の講義で、車裂き・八つ裂きの刑と衝撃的な死刑の執行方法があったことを知って、他国はどうだったのか興味が湧いていた。+荒木飛呂彦先生の帯で、購入を決意。

  • フランスで代々死刑執行人の役目を担ってきたサンソン家の四代目にして王党派・死刑廃止論者のシャルル=アンリ・サンソンの生涯を書いた本。歴史書というよりは小説に近い形式で楽しくスラスラ読める。
    前半は国民から蔑まれ、差別を受けながらも一方で貴族並みの生活水準を持つ死刑執行人の特殊な立ち位置とその営み、後半からは王党派である4代サンソンの目から見たフランス革命の描写が主。分かりやすくフランス期の時代を学べると同時に、歴史には様々な側面があることを教えてくれる本。

  • 代々、パリの死刑執行人を務めてきたサンソン家。その四代目シャルル-アンリ=サンソンについて書かれたと一冊。
    シャルル-アンリ=サンソンはフランス革命においてルイ16世を処刑した人物。

    差別と偏見に苦しむ死刑執行人とその家族。たとえ報酬が良くても辛いことが多いだろう。
    誰かがやらなくてはならない仕事だと頭では理解しても、その誰かにはなりたくないし、その誰かが家族にいて欲しくない。
    現代でも監守などで明らかに死刑執行人となったひとを、きっと人々は差別する。
    同じように差別と偏見の目で見られる職業として屠殺業があるだろう。
    大抵のひとは肉を食べる。しかし、その肉が肉となる過程に思いを巡らせることはしない。肉が肉となる前には、生きた牛であり豚であり鶏でありその他の動物であることは考えない、考えたくない。
    肉を美味しく食べる癖に、動物の命を落とさせ肉とする仕事に携わるひとを、人々は忌まわしいものを見るように避ける。
    人間は本当に勝手だ。


    マリー・アントワネットに比べると印象の薄いルイ16世だが、当時取り調べとして行われていた拷問を廃止したりと国王を思いやる国王であったと書かれている。
    フランス革命が起きたとき、ルイ16世ではない他の人物が国王であったとしても革命は避けられなかっただろう。ルイ16世ひとりが無能だったから起きた革命ではなかったから。誰が国王であったとしてもいずれ処刑されていただろう。
    そう考えると、長く無能とされてきたルイ16世は何とも気の毒に思える。

    フランスでの死刑方法は、死刑執行人による刀での斬首だった。この方法は死刑執行人の技量は元より、死刑囚が恐怖を堪えて動かないことが肝要となる。死刑囚が恐怖に負けて動いてしまうと、死刑執行人の狙いが定まらず無用の苦しみを与えてしまう。死刑執行人は当然焦るだろうし、死刑囚は痛みのため更に動いてしまう。そうなったらそれはもう地獄だろう。

    死刑囚と死刑執行人の負担を軽くするためにギロチンが発明される。
    そのギロチンの刃の形状を改良したのは、なんとルイ16世の指摘によるものらしい。
    自分が提案し改良されたギロチンによってルイ16世は処刑される。こんな皮肉なことはないだろう。
    しかし、このエピソードからしてもルイ16世の高い知性をうかがわせる。
    日本の徳川綱吉も意外と名君だったと最近になり明らかになっているようなので、ルイ16世の名誉もいつか挽回されるかもしれない。

    フランスやフランス革命などに興味のあるかたには、別の角度から歴史を覗くことのできる本書は面白く読めることと思う。

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著者プロフィール

フランス文学者。1944年岩手県盛岡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業、同大学院修士課程修了。フランス政府給費留学生として渡仏、パリ大学等に遊学。執筆活動の傍ら、大学で講師も務めた。著書に『物語 フランス革命』『マリー・アントワネット』など。

「2019年 『バルザック 三つの恋の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安達正勝の作品

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