上司は思いつきでものを言う (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202403

感想・レビュー・書評

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  • まさにタイトルそのままの現象について考察し、解説を試みた本。
    終始上から目線で綴られる文体は少々気になるが、少し話がややこしくなってきたなというところで、絶妙なタイミングで要点をまとめる非常に読みやすい文章である。

    著者の言う、「思いつきでものを言う上司はバカではない」という話にはとても納得できるものがある。なぜ思いつきで言ってしまうのか、その理屈も大変よく理解できた。もちろん人にもよるだろうが、著者の指摘は的を射ていると思う。結局、上司も人間、部下も人間。人間は感情で動くのである。

    その感情を生む土壌が、日本では儒教(ちょっと違った解釈の)に求められるという著者の考察にも、納得できる。とてもバランスよく物事を理解できる人なんだろう。


    それにしても特徴的な文体で、むしろそちらに興味をそそられた。真面目に持論を展開していたかと思うと、ややこしくなってきたところでそれを放り出し、また別の角度からの議論を始めるといった文章構成は、あまり書物では見られないように思う。個人的には、こういう展開はとても好きだ。

    私自身、よく会議や会合の席で話す機会があるとこの本のような進め方をするので、「はじめとおわりは合ってるんだが、間があっちこっちにいって結局話が長くなっている」などとよく指摘される。自分にとっては全部つながりがあることで、大事だと思われる物事をできるだけ網羅して話したいがゆえにそうなるのだが、結論を急ぐ人が多いのがどうにも悩ましいところである。

  • 上司との関係に思い悩んだ時に買いました。

    わたし、好きだったなぁ、この本(笑)

    例え話もねちっこく重箱の隅々まで生き届き、さすが橋本治氏!

    現実離れしたまさかの展開の中に「あるわー!」を見つける面白味。

    ねちっこさ、くどさでしんどくさせといて、
    サッと的を得た発言を発するあたり、橋本氏、うちの上司にソックリ(-_-)

  • 真面目な部下ほど上司に期待する。この本を読んで目から鱗。そうか、何か言わなくちゃと思うからどーでもいーことを言うんだな。上司が可愛く見えてきた。

  • (2010年8月23日より読書開始)
     これもタイトルにつられて購入した本の一つ。最初は納得しながら読んでいたものの、どんどん内容が拡散していっているような感じで、途中で投げ出しそうになることが数回あった。
     読了後、終わりの数ページの部分で済むような内容を200ページ以上を割いて書いているなあという感覚を持った。
     そしてお約束のamazonレビューを見てみると、賛美・批評が合い交える結果となっている。なんでも評価している人の話では著者の文章に慣れていないと批判的になってしまうとのこと。つまりはタイトルだけにつられて読んでしまうと大変な目(それほどでもないが)にあうということのようだ。
     常に利益のみを求めて本を読んではいけないということを「節約の王道」に引き続き学習できた一冊であった。

  •  まず、タイトルが面白いです。タイトルだけでなく内容も読み応えがあります。上司という存在を日本が辿ってきた歴史から振り返る壮大な内容になっています。

     「上司は思いつきでものを言う」、誰もが経験のあるはずです。上司の理解し難い発言に失望し、憤りを感じ、無力を味わう経験は一度や二度ではないでしょう。そのような上司の思いつき発言には、上司個人の問題ではなく、会社全体さらには日本全体の抱える問題に原因があるというのが本書の主張です。

     本書では、現場を知る部下と現場を知らない上司の対立として論じられています。このままではいけないと現場の問題点を部下が吸い上げ、上司に報告します。しかし上司は、会社側の人間として会社の意向を尊重したあげく、現状を否定することはできず、部下の建設的な意見を却下します。

     上司としても何も考えていないから部下の意見を却下するわけでなく、会社の立場を守るという考えのもと、苦渋の決断で部下の意見に反対するのです。そこで、出てくるのが「思いつきでものを言う」シチュエーションです。部下の意見に耳を傾けつつも、会社の方針には逆らえないという板挟みの状況で、突拍子も無い発言が飛び出るのです。

     本書では、上司という存在をさらに大きく捉え、日本の官僚制度に例えて論じています。右肩上がりで成長している時代では、この官僚制度はうまくいくけど、現在の日本のような成熟時代ではうまくはたらかないとの考えです。日本社会のあり方まで考えさせられます。

     

  • 四、五年前に本屋で平積みされていた時に、
    買おうかな、と思って、
    「また、騙されそうだな。」
    と思い直したこの本を、図書館で見つけて
    迷わず借りた。

    読んでみた率直な感想としては、
    「面白かった。」
    である。
    どこが良かったかと言うと、
    先ず、
    読みやすかった。
    次に、タメになった。
    と言う点を挙げたい

    内容は、
    何故、上司が思いつきで物を言うのか?
    その原因を、日本の社会が抱える構造的な問題点として捉え、
    官僚的思考の類似性と、歴史的な儒教的要素から考察している。

    その対策についても、
    あまり現実的な対応方法とは言いにくいが、

    「上司に呆れる」
    「呆れるだけの教養と自信を持て」

    という考えを提案している。
    私、個人としては、
    初めの方の例え話(埴輪を売る会社の話)が、
    非常に分り易く且つ、面白かったので
    一気に引き込まれ、その中で、

    「無自覚に上司を非難している」
    「真の主張とは関係ないところで、上司の心の琴線に触れている」

    事が、思いつきで物を言わせている事に
    繋がっていると言う点に、
    ある意味、目から鱗が落ちた気がしました。
    むしろこの部分で、

    「自分の主張には上司に対する配慮が欠けている。」

    とう言う反省が得られた点が、
    読んで良かったと思える部分だった。

    まあ、分かったからといって、
    どうにかなるかというと、
    それはまたべつの話なのだが・・・。

    前半の面白さと裏腹に、後半はグダグダ。

    儒教の、日本における歴史の話は、
    まあ、読み物として面白かったけど、
    徐々に、イデオロギー的なものが匂い初めて、
    文章全体が、宗教じみた様相を帯びてくるように
    感じられたのは私だけでは無いと思う。

    誤解が無いように言っておくと、
    「儒教に」ではない。
    どちらかと言うと、
    新興宗教に感じられるような
    啓蒙的な何か。
    まあ、殆気にならない程度のものかも知れないけど。

    それは差し引いても、
    読み物として充分に面白かったし
    買ってもよいかなと思うくらいの本だった。

    こういうふざけた感じの
    面白い文章を書く人って
    東京大学の文系出身の人に多い気がする。

    いや単純に、土屋賢二と同じような
    レトリックを感じただけだけど、

    何と言うか、うん、私に合っている。

  • [ 内容 ]
    この本はサラリーマン社会の閉塞を嘆じるものではありません。
    「上司は思いつきでものを言う」ということが、なぜ起こってきたのかを、儒教の伝来まで遡り、とてもスリリングに解剖していく本です。
    日本の男たちが、なぜ戦国時代と幕末維新の時代ものが好きなのか。
    こんな「なぜ」も見えてきます。
    そして、では日本はどうするのか―「現場」の声を聞く能力の復活に向けて、上司のみなさんにも、上司でないみなさんにも、懇切丁寧な今後の道中案内の書であります。

    [ 目次 ]
    第1章 上司は思いつきでものを言う(「思いつきでものを言う」を考えるために いよいよ「上司は思いつきでものを言う」 ほか)
    第2章 会社というもの(誰が上司に思いつきでものを言わせるのか 上司は故郷に帰れない ほか)
    第3章 「下から上へ」がない組織(景気が悪くなった時、会社の抱える問題は表面化する 「下から上へ」がない組織 ほか)
    第4章 「上司でなにが悪い」とお思いのあなたへ(「上司はえらくて部下はえらくない」というイデオロギー 儒教―忘れられた常識 ほか)

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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • これ読んで、組織って面倒だなー、って思わないでね。

    面白かった。大分前に読んだんだけど、もう一度読んでみようかな。
    自分の立場が変わった今だからこそ。

  • 図書館から借用。
    前書きに書かれているように本当に面倒臭い話です、だけどおもしろい。上司とは「立場」であって同じ人間であって、また上司もその上司の部下であり、、、、、

  • うん、題名のまんまのことを思ったから読んでみた。
    (でも今の会社というよりは前職(の退職にまつわるエトセトラ)に対してかもしれない)
    自分の考え方に偏りがあるっていうことを気付かされるよ、橋本さんの本は。
    最終的に儒教へ行くと思っていなくて、そして、儒教はなんか最近のワタクシ内キーワードのため、興味深く読ませていただきました。
    新書っぽく概要が載っているという印象を受けたので、もっときちっと調べてみたくなることがいくつか(儒教とか会社組織とか歴史とか)でてきたので、そのあたりを深めていきたいです。

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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