ゲノムが語る生命 ―新しい知の創出 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202700

作品紹介・あらすじ

地球上の生物は必ず細胞をもち、そこにはDNAがあり、人間も例外ではない。すべての生物のゲノムには、生命の起源からの歴史が書き込まれている。生物は皆仲間であり、人間も生きものの一つなのだ。しかし、生命の時代とも言われる二十一世紀、生命科学研究が飛躍的に進展する中で、果たして科学技術文明は正しい方向に向かっているだろうか?もう一度、日常の感覚、生きもの本来の感覚から、「生きているとはどういうことか」を、捉え直す時期に来ているのではないだろうか。「生きる」「変わる」「重ねる」「考える」「耐える」「愛づる」「語る」という七つの動詞をキーワードに、生命を基本とする知の可能性をさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • 科学と技術を一緒くたにしない、遺伝子ではなくゲノムとしてとらえる…単なる言葉使いの違いではなく問題をきちんと認識するために必要なこと。もっともだと思う。
    生命を生きていることそのものとして、複雑なものであることをそのまま受け入れて捉えよう。
    ここには一貫した優しいまなざしがある。
    ジャコブの引用という形で、経済・政治面からの科学の扱いに対してチクリと皮肉を入れるあたりも奥ゆかしくてかつシャレている。
    遺伝子がどうやって子孫に情報を伝えるかということよりも、個々の生物がどうやって生きているのかを大事にしたい…その通りである。
    11世紀の虫を愛づる姫の話が印象的、毛虫が育って綺麗な蝶になるまで…その全てを愛づる。それはまさに科学的な視線。カイコが糸を吐くから絹ができる。蝶になったらできない…今の時代でもかなり変な女の子だが、周囲もまたその姫を愛づる。
    その姫がナウシカのイメージになっていたというのも納得。
    「物」をブツと読むか、モノと読むかでその印象が大きく異なるという点も納得してしまった。
    生物、物質、物体ではなく、生きもの、食べものという読みによってその親近感が異なる。
    『ロゴスの名はロゴス』での音読みと訓読みではないが、日本人が昔から使っていた大和言葉はやはり身近に感じられる。
    科学でも言葉の大切さを感じさせられる。
    中村の視点は理想に過ぎないのかもしれない。
    でもこういう暖かい視線が今科学に一番大切なんだろうなとつくづく思う。心温まる一冊。

  • 「生きる」―生きものとしての人間
    変わる―科学技術文明の見直し
    重ねる―分ける方向からの転換
    考える―第二のルネサンス
    耐える―複雑さを複雑さのままに
    愛づる―時間を見つめる
    語る―生きものは究めるものではない

    著者:中村桂子(1936-、東京都)

  • 生命は予測不可能性のものであるのに、現代の科学は生命を交換可能な機械のように考えている。科学技術は経済発展のための産業化ばかりになっている。
    生命志について書こうとしているのだが、こういう風に書きたいという内容だけで終わってしまい、生命志については一切書かれていないのがガッカリ。新しい価値観を求めると期待外れ。
    生命志の考え方の基本は、全ての生命はつながっているということですばらしいのだが。DNA、遺伝子、ゲノムは全ての生命に共通であるから。

  • 生命科学に限定されることなく、生命にまつわるさまざまな事象を幅広く扱う「生命誌」という営みを提唱する著者が、そうした包括的な視野に立つことで、どのようなテーマについて語ることができるのかを、親しみやすい文章で綴った本です。

    「生きる」「変わる」「重ねる」「考える」「耐える」「愛づる」「語る」という7つの動詞をキー・ワードにして、生命現象についての洞察が展開されていきます。

    著者の「生命誌」についてあまりよく知らなかったので、本書の内容を十分に理解できたとは言えないのですがが、生命をテーマにしたエッセイ集としておもしろく読みました。

  • ・科学と技術の、そもそもの出発点の違い。
    ・科学技術ありきで人の営みがあるのではなく、あくまで人が先にある。
    ・生命科学を産業へ応用する前に、「生きる」とは何かを考えることから出発すべきである。
    ・科学技術によって、人の社会が生きづらいものになっているのは何故か。
    それは分解主義、差異への注目を進めすぎたためである。ルネサンス期に芸術が果たしたように、閉塞した社会を脱却するための役目として、生命誌が考えられる。すなわち、ゲノムを起点として生物を時間軸、種族問わず俯瞰することによって、全ての生物は同じである(同じようにゲノムによって続いている)という共感(愛でる感覚)を得る事が出来る。この共感こそが、これからのキーワードである。

    科学者必読の良書。

  • 11月の初め、高槻にある生命詩研究館に訪れた際に、購入。実は著者の中村さんはここの館長である。
    学生時代以来、生物学のことについてはあまり触れる機会はなかったが、この研究館の展示に魅了されて勢いで読んでみた。
    iPS細胞の研究が各国で競争のように進んでいる仲、この先どのような時代になっていくのか、考える必要があるなぁと。

  • [ 内容 ]
    地球上の生物は必ず細胞をもち、そこにはDNAがあり、人間も例外ではない。
    すべての生物のゲノムには、生命の起源からの歴史が書き込まれている。
    生物は皆仲間であり、人間も生きものの一つなのだ。
    しかし、生命の時代とも言われる二十一世紀、生命科学研究が飛躍的に進展する中で、果たして科学技術文明は正しい方向に向かっているだろうか?
    もう一度、日常の感覚、生きもの本来の感覚から、「生きているとはどういうことか」を、捉え直す時期に来ているのではないだろうか。
    「生きる」「変わる」「重ねる」「考える」「耐える」「愛づる」「語る」という七つの動詞をキーワードに、生命を基本とする知の可能性をさぐる。

    [ 目次 ]
    はじめに 「生きる」―生きものとしての人間
    第1章 変わる―科学技術文明の見直し
    第2章 重ねる―分ける方向からの転換
    第3章 考える―第二のルネサンス
    第4章 耐える―複雑さを複雑さのままに
    第5章 愛づる―時間を見つめる
    第6章 語る―生きものは究めるものではない

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    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 「自己創出する生命」とどちらを買うか迷って、とりあえずこちらを購入した。文体としては日常語としての科学を考えているだけあり読み易い本である。ゲノム研究の現状を簡単に知る事ができる。
     ゲノム研究の現状を知る事以上に著者のゲノム研究者としての視点から見た世界観がこの本の一番の売りとするところである。複雑な世界を知る一つの在り方を一つの分野からの視点から説明してくれている。科学の分野の話しを冒険・開拓的な視点ではなく、ここまで簡易な言葉で豊かに語っている人はなかなかいないように思われる、そういう著者の言葉の使い回しや表現は非常に参考になると思う。それは男性ではなく、女性の視点だから可能な事なのか、とにかく素晴らしいの一言に尽きる。
     ゲノムなどの生命の世界を教養として知りたい人にはぜひともおすすめしたい人物である。たぶん、簡単に読んだ感じでは、どの本を買っても著者の本質外すことはないと思う。この本自体は文庫なので、ぜひとも一度興味があれば読んで頂きたい。

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著者プロフィール

1936年東京生まれ。JT生命誌研究館名誉館長。理学博士。東京大学大学院生物化学科修了。ゲノムを基本に生きものの歴史と関係を読み解く「生命誌」を提唱。JT生命誌研究館を開設し、2002年より同館館長。『生命誌の扉をひらく』『自己創出する生命』(毎日出版文化賞)、『ゲノムが語る生命』ほか著書多数。

「2022年 『科学はこのままでいいのかな』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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