考える胃袋 ―食文化探検紀行 (集英社新書)

  • 集英社
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感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202717

作品紹介・あらすじ

「食」の世界-ここに満々たる知的好奇心を注ぎ、人生の多様性と楽しみを発見してきた民族学者とフォトジャーナリストが、その豊富な現地体験と薀蓄を傾けきった、とっておきの対話篇。日々の身近なことでありながら、地域・民族・時代によって様々なかたちを見せる「食」の豊かさを、研究し尽くし、味わい尽くそうとした、それぞれのフィールドワークの現場を語る。食するだけでなく料理をつくる側に立つことも多い二人による、食文化の探検紀行。

感想・レビュー・書評

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  • [ 内容 ]
    「食」の世界―ここに満々たる知的好奇心を注ぎ、人生の多様性と楽しみを発見してきた民族学者とフォトジャーナリストが、その豊富な現地体験と薀蓄を傾けきった、とっておきの対話篇。
    日々の身近なことでありながら、地域・民族・時代によって様々なかたちを見せる「食」の豊かさを、研究し尽くし、味わい尽くそうとした、それぞれのフィールドワークの現場を語る。
    食するだけでなく料理をつくる側に立つことも多い二人による、食文化の探検紀行。

    [ 目次 ]
    第1章 “食いしん坊と料理好き”からの出発
    第2章 魚醤・シオカラ談義
    第3章 旅が食を、食が旅を
    第4章 文化“麺”談
    第5章 サルから文明まで
    最終章 食の現状をどう見るか

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 2012年7月21日読了。「文化麺類学」など食を研究した著書もある「鉄の胃袋」石毛直道氏と、職と旅に詳しい写真家森枝卓士氏の対談本。各章で取り上げられているテーマは異なるが、「魚醤」「麺」「旅」「酒」などのキーワードがすべて引っかかる、東南アジアについての話が中心になっている。「食」に関する学問は伝統的に存在せず、考古学的に土器や住居跡を調べても「そこで人々はどのように食事をしていたか」と想像をめぐらすような学者はおらず、「それで自分が始めてみた」という石毛氏の探究心・学者魂はさすが。文化麺類学の本でも触れられていたが、アジア全域で好まれて食べられている「麺」が、なぜヨーロッパのそれもイタリアでのみ国民食とまで受け入れられているのか?というミステリには未だ決定的な説は得られていないようだ。旅行や人との交わりでも、記憶に残るのは食事だもんね。食は面白い。

  • 食のことをとやかくいうのは恥ずかしいという風潮があった。学問として成立しないと考えられていた。
    それを研究テーマにしてしまった石毛氏と森枝氏の対談。
    これには石毛氏が京大時代、関西で「面白そうやんけ」というノリに出会ったことも大きかったらしい。

    わたしが面白かったのは「第二章 魚醤・シオカラ談義」と「第四章 文化“麺”談」。
    P65図2「うま味の文化圏」は、東南アジアが魚醤卓越地帯で、北海道を除いた日本と朝鮮半島、中国北東部あたりが穀醤卓越地帯であることを示す。魚醤はシオカラがもとになっているんだとか。それが液体になった。
    穀醤とは醤油や味噌ね。
    魚醤は、高温多湿な東南アジアの水田地帯で、増殖された魚が乾季になって水が引くときに川に移動する。それを長期保存しようとして生まれたものだという。
    P69「日本にも水田漁業はあった。(略)歴史的記録を相手にして、内陸部の農民にとっては、承認から買う塩蔵魚や干物がごちそうで、無塩の魚、つまり鮮魚を食べる機会はめったになかった、などといわれますが、それは、魚といえば海産魚という思い込みです。水田漁業の産物の淡水魚から、動物性のたんぱく質を補給していたはずなのですが。」

    穀醤は魚醤のあとにできた。
    P74
    「穀醤がつくられるようになると、穀醤の方が上等の食品だとされ、また大量につくることができる……。魚なんて一家にとれる量なんて知れている。魚醤は、もともと自家消費用につくったものなんです。大量につくれる穀醤は、商業に結合し、商品化されやすい。そういったことで、どんどん東アジアでは穀醤がとってかわってしまった。
    じゃ、東南アジアではどうして魚醤のまま残ったのか。
    東南アジアでコウジを利用した発酵食品は、酒くらいしか発達しなかった。発行には高度な技術が必要だということもある。気候の問題もある。発酵管理には温度や湿度が関係するが、高温多湿の東南アジアの環境では、温度や湿度のコントロールが困難だ。(略)また、中国人がやってくるまで、東南アジアでは、商業経済の発達が遅れていたという事情もあった。そういったことで、穀醤を生産するには不利な条件にあったことが考えられる。」

    麺談義は面白い。パスタも中国から伝わったのでは?という説が有力みたい。どのようにしてかはよくわからないみたいだけど。
    P112
    「石毛 麺は中国語では小麦粉という意味なんです。小麦粉を加工した食品が、餅。胡餅の「胡」というのは中央アジアを経由して、西側から中国にもたらされた文物をさす。胡餅は、発酵させない小麦粉生地を円盤形にして焼いた食べもので、ゴマ粒をたくさんくっつけたものが多い。ゴマ(胡麻)も胡の字がつくでしょ。西域からの伝来。
    現在の中央アジアもナンをよく食べますよね。ナンというのは、タヌール、タンドールなどといわれる円筒形のかまどを熱して、かまどの側壁に発酵させた小麦粉生地を薄く延ばしたものを貼りつけて、焼く。最初、小麦と一緒に中国に伝わった食品は、ナンや胡餅のたぐいじゃないかという気がする。」

    台湾に行ったとき、朝から皆さん外でもりもり食べていてびっくりした。
    P137
    「石毛 中国南部からインドシナ半島にかけての都市部では、朝飯を外食ですますことが多い。そのとき、麺食が好まれる。」

    これ、強烈!!!
    「石毛 ハッザが、積極的に調味料として使うものが一つあるんです。何かといったら、クサムラカモシカなどの草食動物の腸管の中身をしごいたやつです。腸の内容物というといい言い方だけど、別の言い方をしたら製造過程にあるウンコですからね(笑)。それを肉につける。茹でるときの湯に放り込む。彼らにとっては、おいしく味をつける調味料です。しかしわたしにとっては…
    糞の臭いがするのと、(略)胆汁が混ざっているから苦いんですよ。」

    ところで料理を音楽に例えるというのはよくあることだけど、あまり音楽をご存じない方がやると、???となりますね。
    P15
    「石毛 本を見ずに、即興で、本には書いていないような料理ばっかりつくるようになっちゃったんですね。
    森枝 もう完全なフリージャズの世界に入っちゃった。いや、即興音楽、アドリブ(笑)。」
    フリージャズこそすべてが即興なのだからして、「いや」と打ち消すのはおかしい。

    P151
    「ピアノソロくらいだったら、音楽の素養がない人でもそれなりに楽しめるかもしれないけど、オーケストラの楽しみって、それなりに素養がないとむずかしいじゃないですか。ワインにもそのようなところがあるってこと。」
    そうかなぁ。ピアノとオケと比べるのはおかしいし、ピアノソロのほうがとっつきやすいかなぁ。逆のことも多いのでは???

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著者プロフィール

1955年、熊本県水俣市に生まれる。高校在学中、アメリカ人写真家ユージン・スミスと水俣で出会い親交を深め、写真家を志す。国際基督教大学で文化人類学を学び、以後、アジアをはじめ、世界各地を歩き、写真、文章を新聞、雑誌に発表。
現在は写真家、ジャーナリスト。大正大学客員教授。早稲田大学などでも食文化を講じる。人気カレーマンガ『華麗なる食卓』(集英社、全49巻)を監修。
主な著書に、『食の冒険地図』(技術評論社)、『世界の食文化4 ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー』(農文教)、『考える胃袋』(石毛直道民族学博物館名誉教授と共著、集英社新書)、『食の文化フォーラム31 料理すること』(編、ドメス出版)、『食べもの記』『手で食べる?』『食べているのは生きものだ』(以上、福音館書店)などがある。

「2015年 『カレーライスと日本人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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