終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202977

感想・レビュー・書評

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  • ユーゴスラビア解体後の”セルビア・モンテネグロ”の戦慄する現状がレポートされている一冊。
    著者が直接現地に赴き、取材を重ねて、その現状を赤裸々に綴っている。

    セルビア人が他民族を「民族浄化」したことは間違いない、しかしその”逆”が現在行われているのが現実。。。
    「暴力」は絶対悪なのに、”される”側と”する”側が入れ替わりそれが消滅しない現実、思考を破壊する”憎悪”、、、。

    どうすれば解決できるのか...!
    解決には長い”時間経過”を待つしかないのか。。。
    答えが出てこず、今も考えているっ。

  • 現場からの取材から伝わってくる民族紛争の悲惨さ、やるせなさが痛々しい。冒頭は読み続けるのも辛い事実が続く、恨みの連鎖には言葉がない。

  • あくまで現地取材にこだわった筆者のルポ。
    他民族国家の旧ユーゴとしてまとまっていた国が、あっという間にここまで分裂、崩壊してしまうとは...。民族の違いとは何なのかすら今ひとつ実感として刷り込まれていない自分のような日本人には、本質的に理解してない(出来てない)部分があるような気もする。

  • 数年前、ボスニアヘルツェゴヴィナを旅した。ヴィシェグラードという国境付近の街を目指して、スルプスカ側(セルビア人共和国側)に入ったとたん、旅行者の目にも何となく貧しさが感じられた。そういうものの背景に何があるのか、どういう事態が引き起こされていて、それに対しひとりひとりどんな気持ちでいるのか、じっくり考えることが出来るルポだった。

  • 1999年のコソボ空爆以来、西側には終わっていると報道されている現地の状況報告。何年も現地で丹念に取材した、ルポタージュ、報道(ジャーナリズム)とは、このようなことに原点があるのだと思う。

    アカデミズムとは一線をおいた現地の現状であるので、その評価は読者やそれを読んだ人にゆだねられていると思う。

    近親憎悪という形や、恐怖が次々と惨劇を生んで行くことなど、人間の業の深さを感じてしまった本だった。巻末の東大の柴教授との対談もよかったと思う。

  • 現地に何度も足を運び、両側の意見をきちんと取材し、スポークスマンでなく民間人の声に耳を傾ける。これこそが正しいジャーナリズムの在り方だと痛感した。

    昨年訪れた、美しいバルカン半島の国々。あの美しい景観が2度と破壊される事のないよう、悲しい歴史が繰り返されない事を切に願う。

  • 複雑な、ボスニア戦争のその後が分かりやすくまとめられてて読みやすかった。政治家たちと先進国の残した傷跡は、あまりにもひどい。。

  • [ 内容 ]
    1999年のNATO軍の空爆により、コソボ紛争は公式には「終結」したことになっている。
    しかし現地では、セルビア系の民間人が三〇〇〇人規模で行方不明になるなど、空爆前とは違った形で「民族浄化」が続き、住民たちは想像を絶する人権侵害の危機にさらされている。
    また、空爆による劣化ウラン弾の被害は甚大で、すべての回収には一〇〇年を要するという。
    本書は、空爆終了後六年間にわたって現地に通い続けた唯一のジャーナリストが、九・一一やイラク戦争の開始以降ほとんど報道が途絶えてしまったセルビア・モンテネグロの現状を告発した、渾身のルポルタージュである。

    [ 目次 ]
    第1章 大コソボ主義(二〇〇一年~二〇〇二年)(消えた一三〇〇人―セルビア人拉致被害者たち;真っ先に見た事務局長 ほか)
    第2章 混迷の中で(二〇〇二年)(劣化ウランとユーゴスラビアの核;一〇月革命の裏側)
    第3章 セルビア・モンテネグロの誕生(2003年)(新憲章発布とモンテネグロ;新憲章発布とコソボ ほか)
    終章 語り部(二〇〇四年一〇月)(コソボ紛争終結後、最悪の暴動;スミリャネ―「民族浄化」された村にて ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 背景をある程度知っていれば、文章は平易で逸話や対話も具体的。特定の主張ではなく混沌とした様子がじわじわと伝わってくる。インタビューされる人たちが著者にかける言葉はしばしば優しく、しばしば厳しい。これが著者を通して読者にも届く。

    ちょうど現在(2009年11月)、NHK制作の番組でコソボの風景が少しだけ紹介される。「世界遺産への招待状 24 コソボ 戦禍を越えた教会へ」(2009/11/09) http://www.nhk.or.jp/sekaiisan/invitation/archives/archive091109.html
    (2009/11/13, 16時台に再放送)。

  • 木村さんの現地取材主義は相変わらず。わたしはこの人の本を読まなければセルビア難民の存在も知らなかったかもしれません。内戦で一方の陣営からは被害が出ないなどということはあり得ないにも拘わらず。巻末の柴宜弘先生との対談も(短いですが)興味深いです。セルビア内の自治州としてやや影の薄いヴォイヴォディナが取り上げられていたのも印象的。もうひとつの自治州がコソヴォじゃ影が薄いのもしかたありませんけどね。(追記:とか言ってるうちにコソヴォも独立か…)

著者プロフィール

1962年愛知県生まれ。中央大学卒。ノンフィクションライター。東欧やアジアの民族問題を中心に取材、執筆活動を続ける。おもな著書に『オシムの言葉』(集英社文庫)、『蹴る群れ』(集英社文庫)、『無冠、されど至強 東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代』(ころから)、共著に『さらば、ヘイト本!』(ころから)など。

「2019年 『13坪の本屋の奇跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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