行動分析学入門 ―ヒトの行動の思いがけない理由 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087203073

作品紹介・あらすじ

失敗行動や犯罪の原因は、"心"に求められることが多い。「あいつはやる気がない」「過去のトラウマだ」等々。しかし、これでは評価にこそなりえても、問題解決にはつながらない。行動分析学は、ヒト及び動物の行動を「行動随伴性」という独自の概念によって明らかにするもので、行動の原因を個体内部、つまり心ではなく、個体を取り巻く外的環境に求めていく。アメリカの心理学者スキナーが創始した学問体系である。介護や医療、ビジネス、スポーツ、家庭などさまざまな現場で応用されており、大きな成果をあげてきた。本書は、日本における第一人者による、わが国初の一般用入門書である。

感想・レビュー・書評

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  • ◾️Good◾️
    ジュディス・コマキの有能なリーダーの指示タイミングの研究や、デイビッド・ロンバートの指示方法の違いによる遂行率の研究など、行動分析学で頻繁に引用されている先行研究が、例文とともに分かりやすく掲載されていた。

    ◾️More◾️
    レスポンデント行動、オペラント行動、シェイピング、は運動学習やコーチングでも出てくる説明だった。

    ◾️New◾️
    「チェイニング」は初めて聞いた手法だったので、業務で早速試してみたい。

    【チェイニング】
    多くのプロセスを経て完遂される行動は、プロセスの1つ1つを書き出してみる課題分析作業を行い、プロセスを順序正しく遂行できるようにする。
    ⑴⑵⑶⑷⑸のプロセスがある場合、⑸をまずやってみてもらう。⑸が出来るようになったら⑷⑸をやってみてもらう。というように、最後の締めだけは自分で実行し、達成感を味わわせるのが大事である。

  • 横書きである。
    心理学であるようだ。書いてあること、例示されることは感覚的に分かる。⇒それが行動学ということ。分析学となると難しい。行動の原因を考える=(心理学)。行動の実験分析=(行動分析学)。行動を起こさせるための原理=行動原理。
    好子(よい結果)が出現する⇒強化(たくさん起こる)。嫌子(悪い結果)が消失する⇒強化(なくなることが多い)
    好子と嫌子は著者の造語である。

    心理学的
    ・般化 もともと強化された刺激だけではなく、それに似ている刺激に対しても、行動を起こした。
    ・行動をどのように変えるか 技能的、シェピング(形作る)、チェイニング(つなげる)、随伴性を変える、抹殺・消去、代替行動など
    ・消去抵抗は 連続強化<部分強化でおこる バースト(エスカレートする)
    ・言語行動 学問としてみると難しい。言語オペラントの種類。
    マンド・タクト・エコーイック・ティクテーション・コピーイング・テクスチュアル・イントラバーバル。

  •  行動分析学とは、人や動物がある行動をとる原因を心ではなく、個体を取り巻く外的環境に求めていく学問です。やる気や心に原因を求めず、環境操作によって人(や動物)の行動を変えようとするアプローチをとるわけです。やる気HACK系の本で言われている「心理学」の少なからぬ部分はこの行動分析学だと思います。

     本書で示されている行動分析学の基本モデルでは、次のように示されます。

     直前の状態→行動→直後の状態

     そして注目すべきは、行動によって直後の状態がどう変化するか、だとします。行動により直後の状態が望ましく変化すると、その行動は「強化」されます。逆に、行動によっても直後の状態が変わらないと、その行動が強化されなかったり「弱化」(減っていく)されたりします。
     本書ではもう少しバリエーションが示されていますが(第2章、第3章)、非常にシンプルなモデルによって行動の原理が説明されています。が、このモデルで考え直すと今まで上手くいかなかった行動(ダイエットだったり習い事だったり)の原因が見えてきます。

     本書は教科書的で、行動分析学の概略やモデル・理論の説明がメインになっていますが、視点・発想の型としてこれらを知っておくと物の見方・考え方は変わってくると思います。

     本書を読めば、心的要素(意欲・やる気・根性)によって自分や他人の行動を変えようとすることは非生産的だということを、改めて思い知らされます。根性論が嫌いな人にも、根性論で考えちゃいがちな人にもオススメです。

  • へーなるほどなるほどと軽く関心しながら読んでいた。
    と、数時間かかった鳩の調教を一羽数分で終えることが出来るようになった、というむねの一文が目に入る。
    これには、マジか!、と驚いた。熟達した行動分析術師やべえと思ったね。
    善良な学生を嘘つきに変える実験の話も面白かった。

  • 著者Twitter:https://twitter.com/BOBO_705

    「はじめて行動分析学にふれる一般の読者のために書」いた「行動分析学はもちろん、心理学にもなじみのない読者のための、本当の意味での入門書」(「あとがき」より)

  • "入門"の謳いに乗じた自分を恥じました。素人には中々の歯応えです。

  •  先にこれを読めばよかったな…とも思ったのだが,具体例の出ている『使える行動分析学』を読んでいたから読みやすかったのかもしれないと思い直して,たぶん,どっちでもいいと思う。
     学問としての歴史が書いてあったり,行動分析学の初歩的な部分をしっかり説明してくれているので,これからこの分野を囓ってみようという人にはピッタリだと思う。

     あとがきを一部転載する。行動を分析することの中身がよく分かる文章だ。

     目の前にお菓子がある。なぜ食べるのか。食べたかったからだ,と。あるいは,好きなお菓子を目の前にして,食べないで我慢するという人もいる。なぜか。痩せようと思うからだ。
     行動分析学という心理学は,それでは納得しない。食べたいという欲求や,痩せようという意志が生まれる,さらなる原因を考える必要があるからだ。欲求や意志のような心は,行動を生みだす原因ではなく,それ自体が、原因を求められるべき研究対象なのである。さらにいえば,心は,目に見える行動と同じ原理で制御される「行動」なのである。(本書p.185)

     どうです,読みたくなりませんか?
     この行動分析学は,とくに障害児教育の世界でとても力を発揮しているようです。
    だらしないから…,根気がないから,我慢できないから…,どうせ生まれつき…と思っている方,それは考え違いです。

  • B・F・スキナーによって創始された心理学の一体系である行動分析学(behavior analysis)が分かりやすく解説されている。
    行動分析学の真骨頂は行動随伴性と説かれている。
    行動随伴性とは、行動の原因を分析する枠組みで、行動とその直後の状況の変化との関係を指す。
    ・好子出現の強化:行動の直後に好子が出現すると、その行動は繰り返される。
    ・嫌子消失の強化:行動の直後に嫌子が消失するとその行動は繰り返される。
    ・嫌子出現の弱化
    ・好子消失の弱化
    この原理は、自分の行動変容にも有用であると思われる。実践してみようと思わせる内容であった。

  • あることがキッカケで行動分析学に興味を持ちはじめに買った本は本書と同名(副題なし)の行動分析学入門でした。

    ところがその本は内容も面白く良書であることは間違いないのですが、今回購入した本書のあとがきにもかいてあるとおり入門書としては分厚く必ずしも入門書とは言い難いものでした。

    本書は新書ということで行動分析学のエッセンスを抽出したような本となっていて入門書としてはこちらの方が良いと感じました。

    この本を読んでから分厚い方の入門書を読むというステップにすれば理解が深まっていいと思います。

  • 心とか意志とか性格というあやふやな実体を説明には用いず(あくまで日常の語彙に限定する)、行動を説明しようとする。
    行動と前後の状態の変化(行動随伴性)で考える。好子/嫌子が増えたり/減ったりすることで行動は規定される。あくまでその前後と強化・弱化だけを考えることを徹底する。
    言語もlangageではなくverbal behaviorと規定し、行動として考える。
    個人的な関心として、日常の言語使用がじゃあ全く本質を反映していない無意味なものかというと分からないし、内面から離れて行動主義的な記述が可能なのは何でなの、とか思う。引き続き勉強が必要。

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著者プロフィール

星槎大学大学院教育学研究科教授
慶應義塾大学大学院社会学研究科心理学専攻博士課程単位取得退学。
山脇学園短期大学准教授を経て2013年より現職。
順天堂大学医学部非常勤講師。日本心理学会代議員。元日本行動分析学会常任理事。元日本動物看護学会副理事長。
主要著訳書:『行動分析学入門:ヒトの行動の思いがけない理由』(集英社)、『行動分析学入門』(産業図書)、『行動分析学マネジメント:人と組織を変える方法論』(日経BP)、『特別支援教育:特別なニーズをもつ子どもたちのために』(明石書店)など。

「2021年 『VB指導法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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