- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087203189
感想・レビュー・書評
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読み辛い 変
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自分の持つ「欲望」は幻想かもしれない。
不要な物を必要と感じさせ、欲望を喚起させることが果たして本当に求められているのか?
消費活動によってしか自己を表現できないような生き方はしたくない。 -
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経済は経国済民を語源とする。
つまり、"世の中を治め、人民を救うことを意味する"言葉をECONOMICの訳語としたのだから、国が介在するという前提がある。だからこその護送船団方式であり、日本株式会社なのだ。
そうすると内閣総理大臣は社長となり、外交先で日本国製品を売り込むと言う行為は「社長が現場に顔を出す」という見っとも無い(と現場が思う)ことになってしまう。故に日本は貿易外交に弱いのだ。
本著はこのように「論理を逆転」させ、当たり前を考える。
テーマは「どう生きていけばいいか判らなくなった」。
判らなくなったから、「勝ち組」と「負け組」に二分化させて単純化させようとする。
しかし、安易な階層化にみえるその区分も語源の通り、既に負けているという前提があり、それを認識しなくて良い者と直面しているモノに分かれているのではないだろうか。
何に負けたのか? グローバリズムや金融ビッグバンといった経済戦争にだ。
誰が負けたのか? 日本経済だ。
勝ちという判定は何時覆るか判らない。
それでも「勝ち」と判定されるのは「勝ち組」が日本経済(負け側)から脱却しているからだ。
これを読んで三部作の第一部「わからない方法」の真意がつかめた気がする。 -
20170131読了。今後5才の息子に「我慢しなさい」と言うときに、引用した箇所を思い出すことになるのか。読み終わって数日経って、強く記憶に残っているのは「我慢」の箇所。
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知らなかったが、過去に読んだ「上司は思いつきでものを言う」「「わからない」という方法」を合わせて三部作なのだということ(著者曰く、何の三部作かはわからない)。
この人の本は「わかりそうでわからない」「わからなそうでわかる」のが特徴だけど、読み進めながら薄々その理由がわかってきた。
自分の理解をいうと、この人は複雑な話をいくつかのセグメントに分けている。そのわけられたセグメントの一つ一つの話は単純なので理解しやすい。しかし、そのセグメントを集めてきた話はいくつもの要素が重なり合っているので難しい。
しかし、複雑な話をする時にはこういう方法をとるしかないと思う。複雑な話を単純にして「まあ、要は金の問題なのです」というのは簡単だが、複雑な話はそう簡単に単純化できないから複雑なわけで、単純化を図ることは複雑な話を説明することの責任を回避しているといえる。
以前村上龍だったかがインタビュアーに新作のことについて「で、この本で言いたいことを一言で言うと何ですか?」と聞かれて、「それが言えたらこんな長い話を書いていない」と言っていた。結局そういうことだと思う。
橋本治が偉いのは複雑な話を「ちゃんと」噛み砕いてくれるからだと思う。 -
「大不況には本を読む」もそうだったが、主題は「もう経済成長を続けようとしても無理があるのだから、皆が主体的に不便さを選択して成長しない社会(=必要のみに基づく暮らし)を楽しもうよ。」と言う事だと理解した。それが「市場原理は嘘」に端的に表れている。確かにこうやって回りくどく説諭されるとそんな気にもなるのだが、ふとした瞬間に「そんな我慢はできないなぁ」と考え直してしまう。やはり欲望の力は大きいのだ。
複雑な事象でも物事の本質を的確な比喩で分かりやすく表現する能力には脱帽。本当に頭の良い人だ。読み物としても純粋に面白い。 -
経済とは勝ち負けではなく、幸せでありたいと思う人間の普通の感情である
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「勝ち組」「負け組」という二分法が、経済的な勝利だけを唯一の指標とする考え方を前提としていると著者は指摘し、その前提の外側の世界があるということを疑うことさえしない怠惰な知性を批判しています。
著者は、「経済」という語が「経世斉民」に由来することを指摘して、「生きることが幸福でありたいという感情。これこそが経済という人間行為の本質ではなかろうか」と述べています。とはいえ、竹中平蔵でさえ「エコノミー」がギリシア語の「オイコノミア」に由来する語だということに触れつつ、経済学がほんらい人びとの幸福の実現をめざす学問だということを語っており、著者の指摘にそれほど目新しいものはないように思います。
もし、現在の経済より理想的な状況を描き出すことができるのだとすれば、じっさいにその方向へと舵を切ってソフト・ランディングを実現するための具体的な方法を見いだすことが、本当の問題なのではないかと思うのですが。 -
初版の日付を見て驚く。こんな前の本だったのか。
書いた当時よりも状況はもっと悪くなっていると思うが
今読んでも至極まっとうな内容が詰まっている。
橋本さんは本当に頭が良い。
戦国武将の時代から話を始め、
バブル後の「勝ち組負け組」の単純な言葉の裏にあるめんどくささを一つ一つほどいてみせ、
経済とはもともとなんなのか、と根本に帰り、
今や「フロンティア」は「欲望」にしかない、まで来た時は
素晴らしすぎてひっくり返りそうだった。
恐ろしい話だ。
「必要」はもう十分に満たされ、
それでも発展していくにはもはや「欲望」というマーケットに進出する以外の場所はない。
「欲望」には具体的な形がないし終わりがない。
作って売って稼ぐのはまどろっこしい。
作って稼いでいるやつに乗っかって金を動かす方が早い。
ダメだと思ったら手を引けばいい。
もはや投資先なんてないのに、
エコノミストと投資家によって動かされる世間の欲望というマーケット。
「(昭和30年代に「商店街」という日本経済を成り立たせていた)日本人は
"我慢”という現状に抗する力を、まだ持ち合わせていた」
の一節を読んだ時は、目というか全身のウロコが落ちるような刺激。
最終章でもう一度この「我慢」についての一節が入るところが橋本さんです。
これだけの複雑な状況について、過去と現在とをまっとうさで繋げ、
シンプルに人間の力を掘り起こす文章を書ける人はそういない。
今橋本さんは難病を患って長く深く物を考えることができないそうだが
こうした本が読めなくなるのは大きな損失だと思う。
というか、もっと橋本さんの本は読まれないとマズイと思う。