深層水「湧昇」、海を耕す! (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
2.83
  • (0)
  • (1)
  • (4)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 26
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087203639

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 久米書店

  • 湧昇による深層水からの栄養供給を利用した水産物によって食料需給を満たすことを考察する。湧昇のメカニズムはていねいに説明されているし、食料供給の概算も示されていて大きな実態をつかむのに参考になる。

    ただ、海洋の全光合成生産のうち全海洋の新生産(河川、湧昇、大気からの窒素供給によるもの)の割合であるf比は0.3〜0.5、あるいは0.1という推定もされており、それによって現在の漁獲量が限界とも2〜3倍可能とも考えられるというのが現在の研究状況らしい。

    海の生産力
    ・地球上のすべての動物の総重量100億トンのうち、人間が3億トンで、家畜が7億トン。
    ・湧昇域では光合成生産の5%、漁業生産の80%が行われている。
    ・海流は風成による表層循環と熱塩による深層循環がある。

    食物連鎖
    ・炭素重量は植物プランクトンが10〜30億トンC、動物プランクトンが5億トンC
    ・珪藻はセルロースが少なく、デンプンやタンパク質、脂質が多い。また、EPAやDHAを多く含み、食物連鎖を通して魚に蓄積する。
    ・典型的な食物連鎖である生食連鎖のほかに、マリンスノーに付着して繁殖した微生物を原生動物、動物プランクトンが捕食する腐食連鎖がある。
    ・渦鞭毛藻は細胞壁がセルロースでできており、毒をつくる。大発生して赤潮になることがある。
    ・河川に砂防ダムや堰堤をつくると、海へのケイ素の供給が減少して珪藻が減少する可能性が指摘されている。中国の三峡ダムや三門峡ダムによって、黄海の漁獲量が減り、クラゲが増えた可能性がある。
    ・珪藻をカイアシ類(橈脚類、コペポーダ)やオキアミ類などの動物プランクトンが食べ、サンマなどの魚やクジラ、ペンギンの餌となる経路もある。

    湧昇流
    ・水深200〜100mの間に酸素極小層があり、硝酸NO3を用いた嫌気呼吸による脱窒が行われている。窒素固定とともに窒素循環を担っている。
    ・湧昇には、沿岸湧昇、赤道湧昇(南北の表層流が離れることによる)、南極湧昇(南極周極流と南極沿岸流が離れることによる)があり、いずれもコリオリの力によるもの。太平洋の赤道湧昇域や南極海は高硝酸・低クロロフィル(HNLC)。
    ・鉄分は岩石から地下水に溶け出し、河川に入って海にたどり着く。落葉広葉樹の落葉によってつくられる腐葉土に含まれる腐植質が鉄を保護して海に運んでいる。
    ・中国山地は鉄分の多い花崗岩帯のため、斐伊川流域の古代出雲は製鉄遺跡が多い鉄器王国だった。

    海の食料供給
    ・海洋表層に新たに入ってくる窒素は、河川や湧昇による深層水からのものと、微生物による窒素固定がある。
    ・海洋の全光合成生産のうち全海洋の新生産の割合であるf比は0.3〜0.5、あるいは0.1という推定もされている。

  • 深層水だけでなく海の生態系のことが広く取り上げられていた。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

広島大学大学院生物圏科学研究科教授

「2017年 『ポケット版 続・「なぜ?」に答える科学のお話100』 で使われていた紹介文から引用しています。」

長沼毅の作品

ツイートする