黒人差別とアメリカ公民権運動 ―名もなき人々の戦いの記録 (集英社新書)

  • 集英社
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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087203929

作品紹介・あらすじ

アメリカ社会はいかにして、苛烈な黒人差別の慣習や諸制度を温存してきたのか。そして、建国以来の巨大な暗闇に光を灯そうと試みたのは、いったい何者だったのか?本書は、名もなき人々の勇気と犠牲に焦点を当てた、公民権運動の本当のヒーロー、ヒロインの物語である。

感想・レビュー・書評

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  • 公民権運動を題材としながらキング牧師を初めとする主要人物にスポットを当てるのでなく、副題にもあるように"名もなき人々"の視点、行動から見た公民権運動が書かれていて非常に入り込みやすかった。
    この本で扱われた運動は歴史的に重要なもので、恐らく実際にはもっとたくさんの"名もなき人々"が行動を起こしたものの、その多くが実を結ばぬまま人知れず亡くなっていったのだろうと考えると胸が痛い。

    この本で書かれた一連の運動は決して過去のものではなく、現在のBLM運動に繋がる潮流の一部に過ぎないと感じた。
    運動により進行したのはあくまでも法と権利と保証の問題で、差別感情、人間の心の問題は置き去りにされたままのように思う。

    また、扱う題材の性質上黒人の視点、感情でこの問題を見てしまい"差別をする側"に対する怒りや失望を覚えてしまうが、果たして"差別をする側"の視点で見た場合はどうなのか?と言うことがとても気になった。
    伝統的、盲目的に差別をしている人もいれば同調圧力に屈したり、本当に黒人に対する恐怖心から差別意識が発露した人もいるはずで、だからと言って暴力を肯定するわけではないけれど、する側の感情も理解する必要があると感じた。一方の視点だけで差別問題を扱うのは少々危険なように思う。
    この本では少ないながら"差別をする側"の感情にも触れており、中立的でとても好印象だった。

    現在の世情を見ていると、市井の人々が国や法を動かすと言うこの結果が行き過ぎた差別への配慮を生み出しているきらいがあるように個人的には感じるが、黒人差別に関しては一日も早く、昔話として話せる日が来るよう願いたい。

  • 2020.4.10. 読了。
    ●ジェームス・М・バーダマン著『黒人差別とアメリカ公民権運動』<集英社新書>(07)

    https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html

    黒人音楽を趣味とする私は、黒人文化や人種差別問題等に関しても気にはなっている。ジム・クロウ法、ローザ・パークス、バス・ボイコット、NAACP、キング牧師、KKK、アーカンソー州リトルロック、シット・イン、フリーダム・ライド、ジェイムズ・メレディス、ウィー・シャル・オーヴァーカム、アラバマ州バーミングハム、教会爆破、ケネディー大統領暗殺、長く暑い夏、ワシントン大行進、ミシシッピ・バーニング、マルコムX、アラバマ州セルマ・・・などなど知識としては捉えていた。

    しかし、本書を読んで、各事柄の把握が不十分なのを痛感した。もちろん一読して完璧に把握できたとは言い難いが、丁寧に描かれている事でより深く理解できたのは事実だ。「名もなき人々の戦いの記録」と副題にあるように、大局的な、歴史的政治的流れを背景にしながらも、一般の社会人や学生の言動を主体に描かれている為リアリティーを感じたのも一因だろう。

    さらに、各事案のあらましは、学術的考察というよりストーリーテリングの感触で語られる。その為映画のような衝撃を伴う。闘争というより戦争であり、悪役の底意地の悪さは、フィクションでは逆にやり過ぎと言われそうな非情さを生み出している。

    これらが実際に起きた事であると改めて気づくと、怖ろしさとやるせなさに包まれる。人種差別についてはある程度改善されてはいるものの、日本でも話題になっているヘイト問題などを合わせて考えると人間の醜い部分を見せつけられ、逆に、光明が見える箇所では人間の果てしなき勇敢さも感じる。

  • 「パパ、どうしておじさんは殺されたの?」
    「そうだな、ただ黒人だったからさ」
    「じゃ、パパも殺される?」
    「奴らの気に入らないことをしたら、きっとそうされるよ」

    父親の「黒人だった」を違う言葉にしたら今でも使えそうだな。

    キング牧師やマルコムXのような公民権運動指導者ではなく、
    南部諸州をはじめとしたアメリカ各地で黒人差別と戦った市井の
    人々の記録である。

    お針子の黒人女性がバスの座席を白人に譲らなかったことから
    逮捕された。この出来事をきっかけに、乗り物での人種隔離を
    撤廃させようとバスボイコット運動が起こる。

    ある者は徒歩で、ある者は黒人運転手のタクシーで、職場や
    学校に通う。高齢の労働者は仕事場への5マイルの道を歩き
    続ける。「孫の世代のために歩くのさ」と言って。

    合衆国最最高裁判所にまで上がった人種隔離撤廃問題は黒人
    たちに勝利をもたらす判決を下した。

    「私の足はくたびれ果てている、でも魂はやすらいでいるのよ」

    来る日も来る日も、歩き続けた黒人女性の言葉である。不覚にも
    泣きそうになった。

    凄まじいばかりの差別と虐殺の歴史である。南北戦争で敗れて
    以降、奴隷解放のなったアメリカ南部では依然公然とした黒人
    差別が続く。

    黒人であるということだけで、ある者はリンチの対象にされ、ある者は
    命さえ奪われる。犯人が見つかったとしても、白人である為に有罪に
    などなるはずもない。

    肌の色が違う。それだけでここまでの憎悪が湧きあがるものなの
    だろうか。そして、その憎悪の裏にあるのは恐怖ではないのだろうか。

    新書という紙数の関係で深く追求した部分が少ないが、アメリカ公民権
    運動の入門書として最適な良書である。

  • 新書文庫

  • 暗澹たる気分になるとともに希望を持つ。人間のどうしようもなく醜い部分と誇らしく思える部分の双方が見える。そういった複雑な思いを誘発する優れた書。内容はもちろん、筆力も確かで読ませる。

  • 無茶の果てに滅んだ日本に、人権の大切さを教えてくれたはずのアメリカ合州国が、それから二十年近く経ってもまだ途方もなく惨い差別を内に持っていた。

    教科書的に分かっているつもりでも、具体的事例を読むと戦慄します。人間とは何たる生き物なのか。

    しかし、差別に抗して立ち上がる人もいて、それによって制度が改まり、少数ながら差別を捨てた人も出てくるわけで。

    甘ったるい考えかもしれませんが、それが続いていけば、ある人が差別を抱いたまま死んでも、その子や孫はいつか差別を捨てられるのではないでしょうか。著者バーダマン氏みたいに。

  • 黒人差別、公民権運動の主な出来事や事実がわかりやすく記載されています。また白人である著者と黒人との関わりも興味深いものでした。

  • 今オバマさんが大統領をやっていることは、たった数十年前の黒人の人たちからしたらおとぎ話にしか聞こえないんだろうなー。黒人差別はもっと前のことだと思ってた。こんなに最近のことだったなんて。

    • koichihiroseさん
      まだ完全にはなくなってないけど、差別も人間の努力でこんなになくせるならいつか戦争もなくなる日が来るのかな?
      まだ完全にはなくなってないけど、差別も人間の努力でこんなになくせるならいつか戦争もなくなる日が来るのかな?
      2011/05/19
  • ほんの数十年前の出来事である。決して過去のことではない。
    読めば読むほど、暗澹たる気持ちになってしまうような事実が、ここには沢山、記されていた。
    文化的な生活を営む「普通の」人たちが、肌の色だけを理由に続けてきた酷い仕打ちは、人として異常なものばかり。何かに脅えた集団ヒステリーのようでもある。現実に起こっていたなんて、信じたくないけれど、これらは全て、実際にあったことばかり。そして今も、こうした差別は消えたわけではない。
    日本でだって、排他的な人々による似たような事件は起こっているのだ。 そう、テレビで報道されていないだけである。

  • [ 内容 ]
    アメリカ社会はいかにして、苛烈な黒人差別の慣習や諸制度を温存してきたのか。
    そして、建国以来の巨大な暗闇に光を灯そうと試みたのは、いったい何者だったのか?
    本書は、名もなき人々の勇気と犠牲に焦点を当てた、公民権運動の本当のヒーロー、ヒロインの物語である。

    [ 目次 ]
    プロローグ 名もなき人々の公民権運動
    第1章 訴訟の始まり
    第2章 高なる心
    第3章 「運動」の始まり
    第4章 旗を掲げて-公教育の差別撤廃
    第5章 公共施設の差別撤廃にむけての新たな運動
    第6章 ミシシッピ州での戦い
    第7章 勝利と悲嘆の一九六三年
    第8章 一九六四年の長く暑い夏と約束の地
    第9章 運動の結末

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著者プロフィール

ジェームス・M・バーダマン(James M. Vardaman, 1947-)
1947年、米国テネシー州生まれ。ハワイ大学でアジア研究専攻、修士。1976年に来日以来、大学で教鞭をとる。現在、早稲田大学文学部教授。著書に『英日対訳日本現代史』(IBCパブリッシング)、『アメリカの小学生が学ぶ歴史教科書』(ジャパンブック)、『アメリカ南部』(講談社現代新書)、『ミシシッピ=アメリカを生んだ大河』(講談社選書メチエ)、『ふたつのアメリカ史』(東京書籍) 、「黒人差別とアメリカ公民権運動」など多数。

「2020年 『日本の宗教』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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