米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087204063

作品紹介・あらすじ

稀有の語り手でもあった米原万里、最初で最後の爆笑講演集。世の中に男と女は半々。相手はたくさんいるはずなのに、なぜ「この人」でなくてはダメなのか-"愛の法則"では、生物学、遺伝学をふまえ、「女が本流、男はサンプル」という衝撃の学説!?を縦横無尽に分析・考察する。また"国際化とグローバリゼーション"では、この二つの言葉はけっして同義語ではなく、後者は強国の基準を押しつける、むしろ対義語である実態を鋭く指摘する。四つの講演は、「人はコミュニケーションを求めてやまない生き物である」という信念に貫かれている。

感想・レビュー・書評

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  • 米原さん亡き後に出版された講演録。よくもこんな下ネタをというのから、翻訳と通訳の違いに関する話など4篇。サミットの同時通訳の日本語立ち位置が変な事や言語を孤立語・膠着語・屈折語に分別する事や同時通訳の技術披露等さすが楽しませ上手。

  • 米原万里の4つの講演での講演録。高校生向けの講演が2つと、愛知県主催の講演、神奈川新聞社主催の講演。後者2つが米原さんが職業としていた通訳に関してのもの。後者2つの講演の方が前者2つの高校生向けの講演よりもずっと面白い。それは、同時通訳という、普通の人間があまり知ることのない世界の職業的専門性について、ご自身の経験をもとに話をされているから。前者2つに比べて、経験に裏付けられた、圧倒的に地に足のついた内容だからだと思う。
    私の妻はタイ人で、かつ、日本語がほとんど出来ない。会話はタイ語で行うが、困るのは、私の知り合いの日本人と会話をするとき。妻はタイ料理をつくってふるまうのが好きなので、これまで多くの知り合いに私の家に来てもらって一緒に食事をした。その時の会話の通訳は私の仕事になる。私のタイ語はとても流暢とは言えないレベルではあるが、辞書を使いながらではあるが、一応、何とか会話がつながる程度の通訳の役割は果たせている。それは逐語訳を諦めているから出来ているのではないかと思う。双方の言いたいことが何で、タイ語に訳す場合には、それを出来るだけ簡単な単語に(簡単な単語しか知らないから)する必要がある。それが何とかうまく機能しているのだと思う。
    本書の中で米原さんがプロの通訳も限られた時間の中で、時には話を端折りながら「意味を通じさせる」「コミュニケーションを成立させる」ことに集中するのだという意味のことを書かれていて、私の方法も、あながち間違っているわけでもなかったな、と心強く感じた。

  • 講演集4編。標題作で笑い転げ、以後はフムフムなるほど。著者だからこそ辿り着いた境地に足を踏み入れる...。
    ムダな言葉を削るのは、プレゼン資料を100作って50まで絞り込むプロセスと似ているなぁ。通訳、翻訳のお仕事をしたい方は読んで損なし!

  • 同時通訳、作家、エッセイストとして活躍していたが、がんで惜しくも死去した米原万里氏の唯一の講演録集。
    転移がんの苦痛に耐えながらの公演は、サービス精神に溢れている。
    第1章「愛の法則」と題された高校生相手の講演では、もてる男と全然もてない男をフランス革命やロシア革命になぞらえて「フル」ジョアジーと「フラレ」タリアートと洒落ている。
    彼女の説によると、社会が安定し栄養がいいと女の子が生まれ、逆に栄養が行き届かないと男が生まれるらしい。
    第2章「国際化とグローバリゼーションのあいだ」も、高校生相手の講演。
    国際化という時、自動的にグローバリゼーションと訳しているが、大きな違いがあると。
    日本人が言っている国際化は、国際的な基準に自分たちが合わせてゆくという意味だが、アメリカ人の言うグローバリゼーションは自分たちの基準を世界に普遍させるということ、自分たちが正当で自分たちは変わらないということだそうだ。
    日本人はこのことをちゃんと自覚すべきだと警告する。
    第3章「理解と誤解のあいだ」第4章「通訳と翻訳の違い」と、同時通訳を担当した時の苦労話などが面白く語られている。

  • 気取らない講演集で、とても読みやすかった。
    書名は1つ目の講演にのみ関係したもの。他は、国際化や通訳業についてストレートに語られた講演で、その全てが興味深く読めた。

    サミットでの同時通訳は、日本語だけが一旦英語に訳されそこから各国語に訳されることを紹介した上で、日本の国際化は強国である米国の基準に合わせる形での英語重視だと指摘し、様々な国の文化・言語に触れ(英語を媒介とすることなく)直接の関係を築いて行くことで日本も世界も豊かになるはずという主張には、納得させられた。

  • 一読の価値ありってこういうときいうのかしら。
    とにかく一読しておけ。飽きさせはせん!
    と太鼓判を押したいです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「一読の価値あり」
      此れは講演録だから、音声ソフトにでもすれば良いのに、、、と思っている。米原万里って、どんな声、どんな話し方だったのか聞い...
      「一読の価値あり」
      此れは講演録だから、音声ソフトにでもすれば良いのに、、、と思っている。米原万里って、どんな声、どんな話し方だったのか聞いてみたいものです。。。
      2013/02/18
  • 東京の往復の新幹線の中で一気に読み終えました。

    テレビでのコメンテーターとしてのコメントがすごく鋭くて,すごい人だなと思っていたのですが2006年に亡くなったのがとても惜しいです。

    わかりやすい表現で,いろんな講演をしていたのですね。聞いてみたかったです。普通,文化講演会というと眠くなりそうなイメージですが,この本に掲載されている講演会はどれも面白い。
    たくさんの知識,同時通訳としての経験や本当にたくさんのことを話しながらわかりやすく伝える。すごいと思いました。

    印象に残ったのは,「第三章 理解と誤解のあいだ 通訳の限界と可能性」です。
    〜コミュニケーションというものは,不完全なもので,完璧なものにするのは永遠に不可能です。しかし同時に,人間というのは,常にコミュニケーションを求めてやまない動物であるという確信が,私にはあります。たぶんそれが現在も通訳をしてる原因ではないかと思うのです。みんなが同時に笑えて,一緒に感動できる。いつもそれを目指しています。不完全だけれども,とにかくいつもそれを目指し続けるというのが,通訳という職業ではないかと思っています。」という締めの言葉ですが,自分だけ理解していてもコミュニケーションはできないんだなと。当たり前なんですけど,言葉にしなくては,伝えようという努力をしなくてはいけないものだと。黙っていては分かってもらえない。言葉にしても,相手に分かるように伝えなくては仕方ない。私の反省点です。

    4つの講演会の内容,どれも本当に,最後まで飽きさせず,思わず笑いながらうならせる内容で,読んでいて時間があっという間に経ちました。

  • この人の本は始めて読んだ。2006年に亡くなって、その前年の講演やそれ以前の4回の講演をまとめて本にしたもの。
     第1章は「愛の法則」高校での講演を男女のことを面白おかしく、きわどい話もさらっと述べている。この講演は高校生相手にしてるけど聞いていた男子学生は赤面でなかったか。
     後の章では語学の習得とか国際理解のありかたなど現役の学生には非常に為になるのではないかな。

  • 通訳の方って、
    キャラの濃い方、結構いらっしゃるけど、
    ここまで面白い方はそうそういらっしゃらない。
    今の時代、
    コンピュータが通訳も翻訳も
    お上手になってしまったから
    なかなかこういう方は表に出てこないのかしらん。

  • 講演集
    第1章 愛の法則
    第2章 国際化とグローバリゼーションのあいだ
    第3章 理解と誤解のあいだー通訳の限界と可能性
    第4章 通訳と翻訳の違い

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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