偶然のチカラ (集英社新書 412C)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087204124

感想・レビュー・書評

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  • ■僕が野良犬に咬まれないといけない理由■

    宝くじに当たる人、詐欺にあって破産する人。裕福な家に生まれる子、ハンディキャップを背負って生まれる子。たまたま事故に巻き込まれる人、寝坊して命拾いする人。自分の身に起こることは偶然なのか?必然なのか?そもそも偶然って何?必然って何?

    こういった疑問に理屈で答えるのは難しい。僕たちは幸運や不運にどのように対処したらいいのだろう。もちろん正解など存在しないと思うが、理屈ではなく考え方のヒントを与えてくれる。

    著書中には数学者、ギャンブラー、占い師から矢沢永吉まで登場し、実話はもちろん、ギリシャ神話、言い伝えから笑い話、マーフィーの法則まで多彩なエピソードを使って、「人生いろいろ」を堪能させてくれる。

    おもしろいと感じたエピソードの一つを使って思考実験を行ってみる。例えば僕がニューヨークで野良犬にかまれたとする。「なんで善良な僕が!?」運が悪いとしか言いようがない。

    少し視点を変えてみる。ニューヨーク市で犬に咬まれて届出がある一日平均人数は毎年ほぼ一定しているという。もちろんニューヨークの犬たちは、今年はもう十分咬みついたから今日はやめておこうとか、まだノルマに達しないから毎日咬まないと、なんて考えるわけではない。いつどこでかはわからないが、誰かが咬まれる運命にあるのだ。

    このように個々の事例では不運や理不尽と思えることも大局的には(統計的視点で見ると)おおむね必然で理にかなっていることは少なくない。ここで納得できる人もいるかもしれない。

    しかし、統計だけではこの不運をこうむるのが、よりによってこの僕である理由にはなってない!
    ここで、神様目線で考えてみる。咬まれるのが僕である必要はない。が、僕ではダメな理由もない。つまり誰でもいい。ただ、いちいち「こいつは咬まれるべき」とか、「この人はかわいそう」とか選別しているほど神様は暇じゃないかもしれない。

    そんなことを考えているうちに僕が咬まれるのは必然とまでは思わないまでも、だんだん「まあいっか、そういう運命だったんだろう。」という気がしてくるから不思議。

    もちろんすべての幸運・不運をこんな風に達観できるほど僕は人間出来てない。
    でも、こんな風に柔軟に視点を変えることができれば、見える景色が違って人生おもしろいかもなと思う。

    例えば、そんなことを考えさせてくれる、楽しく、おかしいエピソードと、あたたかいヒントに満ちた著書だ。

  • なんとなく手に取った本、著者名を見て「あ!」と。学校時代に数回授業を受けただけですが、かなりインパクトのある先生だったので、思い出しました。これも「偶然のチカラ」かなぁ。

    とはいえ、「偶然」てあるのかな?

    スピリチュアルな方面では「すべては必然だ」と言いますねぇ。
    因果の法則、カルマの法則とか。

    となると、これから起きることはもう決まっているの?
    と、疑問も生まれてくるんですけど、

    原因→結果の流れは、「良いことしたから良いことが起きる」という一直線で単純明快なものばかりではなくって、もっと複雑に絡み合ってて、どうしようもないこともあるんだな、っていうことが、さまざまなエピソードとともに書かれています。

    古代ギリシャの物語、キリスト教と仏教、確立と賭けなどなど、それぞれ掘り下げたら深い話が、ちょっとずつ紹介されてるので、ここからまた、興味を持ったほうに進みたくなる本でした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「興味を持ったほうに進みたくなる本でした。」
      確率論じゃなく、宗教学的な話なんですね、、、胡散臭く感じるのは他著書のタイトルからかな「競馬...
      「興味を持ったほうに進みたくなる本でした。」
      確率論じゃなく、宗教学的な話なんですね、、、胡散臭く感じるのは他著書のタイトルからかな「競馬の快楽」「官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか」etc…決め付けてはいけませんが、、、
      2014/04/28
    • newrose33さん
      植島先生、ギャンブラーだからこその洞察もあるんじゃないですかね。
      植島先生、ギャンブラーだからこその洞察もあるんじゃないですかね。
      2014/04/29
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ギャンブラーだからこその」
      ナルホド、、、心構えや、勝負を掛け方とか根本的に違いそうですね。
      「ギャンブラーだからこその」
      ナルホド、、、心構えや、勝負を掛け方とか根本的に違いそうですね。
      2014/05/08
  • 思ったよりも大きな話題だった。読みやすくてわかりやすいけれど、「人生の心得」が理解できる。この内容がわかっている人生とそうではない人生はとんでもない差になるはずだ。
    生きるために自分が知らなければならないことで欠けていることが見つかる。

    まいった。

  • 「自分の身に起こったことをすべて必然と考える」習慣をつけたい。

  • この本を読んで気分が楽になった。人生は「全てはなるようになる」に尽きるということを学んだ。つまり「世の中にはどうにもならないこともある」ということなんだろう。いいことが起こっても悪いことが起こっても全てが「運」「偶然」によって起きたものなのだ。

  • 最近、「運・不運」「必然・偶然」がマイブームです。この本で著者は多彩な話題でそれを語っていて、読んで興味を持った所は更に自分で深掘りしていけば良いと思います。ちなみに僕は南方熊楠のマンダラや仏教の縁起、確率のベイズ理論などをもっと知りたいと思いました。『起こった事は全て良い事である』、きっとこの本を読んだ事も。

  • 42の断章によってつづられた、偶然についての哲学的考察です。

    「われわれの人生を決めているものはいったいなんだろう」という問いかけで始まる本書ですが、問題の解決を求めて宗教的な次元にいっきょに飛躍するのでもなく、かといって主観の領域に問題を封じ込めてしまうのでもなく、パスカルの「中間者」の立場から見えてくる広漠とした問題領域のマイルストーンを、いくつかの印象的な事例を飛び渡るようにして考察を展開しています。

    そういう構成になっているので、問題の解決を見いだすことよりも、むしろ問題の広がりを探索するといった印象があり、けっきょくのところどういう結論に行き着いたのか、やや見通しがたいという欠点はあります。とは言うものの、それは問題そのものが然らしめるところという面もあるのではないかと、つい少し甘い評価をしたくなってしまうような、どうにもおもしろくて仕方のない読書体験を味わわせてくれます。

  • 東京タクシードライバー、つながり

  • 人生なるようにしかならんなぁ
    と、いう当たり前のことを再認識することのできる一冊でした。
    付箋は7枚付きました。

  • 偶然のチカラについて書かれた本。あまり期待しないで読んだのですが、内容的にはとてもよかった。偶然というものはたった一人の世界では訪れない概念、という言葉が何より新鮮でした。いつか改めて読みたい本。
    以下抜粋。
    -------------------------------
    ・うまくいきる秘訣はなるべく選択しないですますこと(あれか、これかではなく、あれもこれも)
    ・買う前は欠点に敏感だった人も、買うと決めると調書ばかりを強調することになる。
    ・自然が秩序を持って進行している、ことに気づくことになると、一方では占いが生まれ、他方では賭けがうまれることになった。
    ・雨乞いのダンスはそのまま雨をふらすものではなく、社会的に危機意識を共用するものであり、実際それによって人々の結束は著しく強まった
    ・ヴァーチャルリアリティを作ろうとした時、インディアンのキヴァを参考にした。そこは日常から離れて色々なものに変貌出来る場所。自分を解きほぐしてくれるもの、眠り、赤ちゃんに戻してくれるもの、恍惚、ぐちゃぐちゃにしてくれるものが必要。
    ・良い時は未来は決まっているように見える。
    悪い時は未来は一瞬にして闇に閉ざされてしまう。
    ・人生で誰の身も起こることを不幸と呼んではいけない。
    ・もし無人島で暮らしていたら、果たして偶然ってあるのだろうか。
    →偶然とは人間の力の及ばない事象と思われてきたが、もしかすると極めて人間的な出来事かもしれない。

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著者プロフィール

1947年東京都生まれ。宗教人類学者。京都造形芸術大学教授。東京大学卒業。東京大学大学院人文科学研究科(宗教学)博士課程修了後、シカゴ大学大学院に留学、M・エリアーデらのもとで研究を続ける。NYのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ(人類学)客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。四十年以上、世界各地で宗教人類学調査を続けている。主な著書に『生きるチカラ』『偶然のチカラ』(共に集英社新書)、『官能教育』 (幻冬舎新書)、『賭ける魂』(講談社現代新書)ほか。

「2017年 『運は実力を超える 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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